病み村よいとこ一度はおいで!   作:兵庫人

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第36話

 更なる力を得るためにチェリーの誘いを受けて妙神山の修行場にやって来たリュウダであったが、修行場に来てすぐに自分の行動を若干後悔していた。

 

「ほらほら! 剣速を上げていきますから、ちゃんと受けて下さいよ!」

 

「………!」

 

 妙神山の修行場の前でリュウダは、内なる大力を使った擬似魔装術状態である黒いローブ姿で、頭に二本の角を生やした女性の剣を混沌の刃で必死で受けていた。

 

 この頭に角を生やした女性の名は小竜姫。

 

「極楽大作戦!!」に登場するキャラクターの一人でこの妙神山の修行場の管理人で、見た目こそは若くて綺麗な女性なのだが、その正体は神龍の一柱で神界から魔界まで広く知られている神剣の達人である。

 

 そんな小竜姫とリュウダが何故今剣の勝負をしているのかと言うと、これがリュウダが修行を受けるに相応しいか試す試練だからである。

 

 原作でも美神は小竜姫の修行を受ける前に、修行場を守る「鬼門」と呼ばれる二体の鬼神と戦う試練を受けていた。しかしリュウダが鬼神と戦おうとした丁度その時、長い間客人がいなくて暇を持て余していた小竜姫が現れ、彼女自身がリュウダの試練を買って出たのであった。

 

「あははっ! 流石はチェリーさんのお弟子さん! 人にしては中々スジがいい! 私の剣をここまで受けれる者は中々いませんよ!」

 

「正確にはワシの弟子ではないが……小竜姫様にそう言ってもらえるとは、ワシの目に狂いはなかったようじゃ」

 

「………!?」

 

 先程の言葉の通り少しずつ剣速を上げていく小竜姫は、それでもなんとか自分の剣を防ぐリュウダを見て楽しそうに笑い、チェリーもそれに僅かに誇らしげに返事をする。しかし小竜姫の剣を受け止めるので精一杯のリュウダには口を挟む余裕などなかった。

 

 小竜姫の剣は彼女の言う通り徐々に剣速が増していってリュウダは次第に捌ききれなくなっていき、ついには……。

 

「あ……!」

 

「はい。お終いです」

 

 小竜姫の剣はリュウダの首に当たる寸前のところで止められており、動けずにいるリュウダに小竜姫が笑いかける。

 

「ふむ。これで終わりか……。小龍姫様、試練の方はどうですかの?」

 

「ハイ、合格ですよ。これぐらい私の剣を受け止められるなら大丈夫でしょう。……それに手合わせをしていて分かりました。藤沼クンはここで強くなるべきです」

 

「え? それって、どういう……?」

 

 小竜姫はチェリーの言葉に頷くと次にリュウダの方を見て、予想外の言葉を口にする。

 

 

「藤沼クン。貴方『ダークソウル』ですよね?」

 

 

「…………………………!?」

 

「? 小竜姫様、ダークソウルとは一体何ですかの?」

 

 小竜姫にダークソウルであることを言い当てられてリュウダは呼吸を忘れるほど驚き、ダークソウルが何なのか分かっていないチェリーが小竜姫に訊ねる。

 

「ダークソウルというのは、眠る度に魂が異世界に旅立ち、その異世界で得た武具や力を使うことができる能力者のことです。彼らは能力に目覚めると、身体のどこかにダークリングと呼ばれる黒い輪っかのようなアザが現れて、その事からダークソウルと呼ばれるようになったそうです」

 

「何と、それは面妖な……」

 

 ダークソウルについての説明を聞いてチェリーは思わず呟くが、それを小竜姫は首を横に振って否定する。

 

「いえ。待ってください、チェリーさん。確かにダークソウル自体は珍しいですが、魂が過去や未来、または完全な異世界へ行ってそこの情報を得るという能力者は有史以来それなりにいますよ。つい最近だって他の世界の神々と交信した能力者達が小説を書いて、それが大人気になったと聞きましたし。え〜と、確か……く、くと……?」

 

「クトゥルフ神話ですか?」

 

「っ! そう、それです」

 

 リュウダが外国の小説家達が書いたコズミックホラーのシリーズ名を言うと小竜姫が彼を指差し、指差されたリュウダは驚きを禁じ得なかった。

 

(嘘だろ? この世界だとクトゥルフ神話を書いた小説家達は全員能力者だったってことは、クトゥルフ神話は本物だってことか? それで俺……ダークソウルもそれと同じタイプの能力者だって?)

 

「あの、小龍姫様? 俺以外のダークソウルって、一体どうしているんですか?」

 

「……それが、ダークソウルは百年に一人か二人くらいしか現れないのですが、彼らが行く異世界は非常に危険な世界らしいのです」

 

 リュウダの質問に言い辛そうに答える小竜姫が言う「危険な世界」には、リュウダはこれ以上なく心当たりがあった。

 

「ですから今までのダークソウルの人達はほぼ全員、能力に目覚めてもすぐに異世界の恐ろしさに発狂して廃人となったり自殺したりしているのです。ちなみに彼らの多くは『せっかくあの牢獄から逃げ出せたのに』とか『安全なのは篝火の側だけ』といった謎の言葉を残しています」

 

 この死んでいったダークソウル達が残した言葉にもリュウダは心当たりがあった。

 

 要するにこれまでのダークソウル達は序盤中の序盤で心が折られ、現在生きているダークソウルはリュウダだけという事なのだろう。

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