「へぇ……。なるほどねー」
リュウダが小竜姫からこの世界のダークソウルについて聞いていると、少し離れたところから聞き慣れた声が聞こえてきた。リュウダ達が声が聞こえてきた方を見ると、そこには登山着を着た美神と横島、そしておキヌの姿があった。
「美神さん? いつからここに?」
「ん? 貴方がそこの小竜姫って人と試合をしている時からよ。せっかく唐巣先生から教えてもらった近道を使ったのに、横島クンが何回も自分ごと荷物を落としそうになっちゃって遅くなったのよ」
「あんな険しすぎる道でこんな大荷物抱えていたら仕方がないでしょう! というか俺より荷物の方が大切なんスか!?」
リュウダの質問に美神が答えると、それを聞いて横島が抗議の声を上げる。しかし美神は全く聞いておらず、興味深そうな顔をリュウダを見た。
「でも、そのお陰で面白い話が聞けたわ。ダークソウルだったっけ? それが藤沼クンが強さの理由なのね。確かに昼間は冥子と一緒にゴーストスイーパーをやって、寝る時は異世界で死ぬ気の実戦なんかしてたら強くもなれるわね? ……ところで藤沼クン?」
「な、何ですか?」
そこで美神はリュウダに顔を近づけてくるのだが、その時の彼女の目は若干血走っており、リュウダは思わず一歩引いてしまう。
「今まで藤沼クンが使っていた武器やアイテムって、その異世界で手に入れた物なのよね? あの冥子の式神を回復させた硝子瓶とか? 他にはどんな物があるの?」
どうやら美神はリュウダが以前使ったエスト瓶に目をつけたようで、それ以外にも便利なアイテムや強力な武器があれば自分のものしたいようであった。
「あー……。そんな特別な物はないと思いますよ? それに俺が使う武器やアイテムは俺から離れたらすぐに消えてしまいますし、美神さんが持っても意味ありませんからね」
特別な物は、の部分はとにかくダークソウルの武器とアイテムがリュウダにしか使えないのは本当である。以前リュウダは、冥子にアヴェリンを渡して彼女の戦闘力を上げようと考えたことがあったのだが、実際に渡すとアヴェリンは霧となって消えてしまったのだ。
「ちぇ。なーんだ」
リュウダの返事に美神があからさまに残念そうな顔をして彼から離れると、今度は横島がリュウダに近づいてきた。
「なあ、その異世界には綺麗なねーちゃんは「北の不死院には亡者……ゾンビみたいな奴と見上げるほど巨大なデブの悪魔しかいなかったぞ」だったら用なんぞないわ! ケッ!」
横島が聞きたいことは容易に予測できたため、リュウダが言葉の途中で答えると横島はツバを吐きながら彼から離れていった。するとその会話を聞いていた小竜姫が何かに気づいてリュウダに話しかけてきた。
「ちょっと待ってください。北の不死院って、ダークソウルが眠ると向かう異世界のことですか?」
(あっ、ヤベ……!)
小竜姫からダークソウルの情報を聞かされたリュウダは、深く知られたら面倒事が起こりそうな予感がしたため、ダークソウルの世界の情報はあまり口にしないでおこうと決めていた。しかし決めてすぐに思わず口を滑らせた自分のうかつさにリュウダは思わず頭を抱えそうになった。
気づけばこの場にいる全員の視線がリュウダに集まっており、ごまかすのは無理だと判断したリュウダは少しだけダークソウルの世界の情報を話すことにした。
「異世界では俺達ダークソウルは『不死者』、不老不死となった代わりにいつか心を無くした怪物となる呪われた存在なんだそうです。それで不死者は見つかると捕らえられて北の不死院と呼ばれる監獄に送られると聞きました。多分、俺や今までのダークソウルが行ってた異世界はその北の不死院だと思いますよ」
嘘は言っていない。リュウダが初めてダークソウルの世界に行った時、目覚めたのは北の不死院だったし、そこにいた亡者も過去に現実世界で廃人になったり自殺したりしたダークソウルの成れの果てなのかもしれない。
「なるほどそうですか……。しかし今まで全く分からなかった異世界の情報が少しでも分かったのは興味深いですね」
そう言うと小竜姫は興味の光を宿した目でリュウダを見て、それに対してリュウダは内心で盛大な冷や汗を流す。
(しまった墓穴を掘ったかも……。よりにもよって『極楽大作戦!!』のキャラクターに、ダークソウル関連で興味を持たれるなんて……何事もなければいいんだけど……)