「何これ? ここが藤沼クンが毎晩見ている夢の中なの?」
リュウダがいきなり北の不死院の牢獄に移動させられたことに驚いていると、隣から美神の声が聞こえてきた。彼が声が聞こえてきた方を見ると、そこには美神の
「そうですけど……。何で美神さんだけでなく皆もいるんですか?」
「私は藤沼クンと美神さんの修行の監督役てすからね。それで他の皆さんは二人の応援ということでついてきてもらいました」
リュウダの質問に小竜姫が答えると、横島があきらかに嫌そうな顔をして牢獄の中を見回す。
「しっかし酷い部屋だな。俺だったらこんな部屋に閉じ込められたら三日で気が狂うぞ? まさかずっとここにいないといけないのか?」
「それこそまさかだ。俺は初めてこの牢獄に来た時、ある人に助けられてここから抜け出すことができたんだ」
「ある人? 一体誰のこと……?」
横島の言葉にリュウダが首を横に振って答えた時、突然天井から物音が聞こえてきた。物音を聞いた全員が天井を見上げれば、天井の穴から鉄仮面を被り軽装の鎧を着た一人の騎士がこちらを見下ろしていた。
「おおっ!? アイツが助けてくれるんだ……な……?」
ドサッ。
『『…………っ!?』』
横島が助けが来たと嬉しそうな声を上げかけた時、騎士はリュウダ達がいる牢獄に人の死体を投げ捨ててきて、リュウダ以外の全員がドン引きの表情となる。突然の死体遺棄に美神達が言葉を失っていると騎士は何処かへ去っていき、横島が震える指で死体を指差しながらリュウダに質問をする。
「お、おい……! 何だよ、その死体は……!」
「コイツか? コイツはここの看守らしい奴の死体で、俺はコイツから牢獄の鍵を剥ぎ取ってこの牢獄から脱出できたんだ」
リュウダが横島の質問に答えつつ死体からこの牢獄の鍵を剥ぎ取って見せると、恐怖のあまり泣き出した横島が大声を出す。
「それだったら鍵だけ寄越せばいいじゃねぇか!? 何で死体ごと投げ捨てんだよ! というか藤沼もなに、平然と死体から剥ぎ取っているんだよ!」
今回の場合、横島の言うことが全面的に正しいのだろう。しかし良くも悪くもダークソウルの常識に染まっているリュウダは、その言葉に困ったような顔となる。
「そうは言うけど……このダークソウルの世界だと、武装やアイテムは死体から剥ぎ取るのが普通だから、ここで慣れとかないと辛いんだけど?」
「死体から剥ぎ取るのが普通って、ダークソウルの世界って修羅の国かよ……!?」
リュウダの言葉に横島は信じられないといった顔でこの場にいる全員の気持ちを代弁すると、それを聞いてリュウダは苦笑を浮かべた。
「修羅の国……言いえて妙だな。……開けるぞ」
リュウダが牢獄の扉を開けて外に出ると、そこには裸同然の格好でミイラのように痩せ細った人間だった者、亡者が三体、北の不死院の通路を力ない足取りで彷徨っていた。
「あれが……敵なの?」
「はい。藤沼クンの記憶に私が力を与えた敵です。気をつけてくださいよ? 影法師の身体とは言え、彼らにやられたら最悪死んでしまいますからね」
『『………!』』
美神の質問に小竜姫が答えると、彼女達の声に気づいた亡者三体が、手に持っていた折れた剣や松明を振りかざしてこちらへ向かって来た。
「やる気のようね。上等よ! かかってきなさ……え?」
こちらへ向かってくる三体に亡者を見て影法師の姿となった美神は武器を構えるのだが、それより先に美神と同じ影法師の姿となったリュウダが彼女の前に出て行動を開始する。
「まず一体!」
最初にリュウダは一番前にいる亡者との距離を詰めると、亡者が振り上げた折れた剣を振り下ろすより先に混沌の刃を振るい、亡者の胴体を両断する。
「二体目!」
「………っ!? ヒーーー!」
続けてリュウダは二体目の亡者の首を一太刀で斬り飛ばし、亡者の首は丁度横島の足元に飛んでいき、それを見た横島は股間を濡らさんばかりの勢いで驚く。
「そして……三体目!」
最後に三体目の亡者の攻撃を独特の足運びで避けたリュウダは、そのまま亡者の背後に回り込むと、混沌の刃で亡者の身体を擬音が聴こえてきそうな勢いで貫いた。
ここまでの動き僅か数秒。その手慣れた動きに美神は見ていることしかできず、横島は表情を引き攣らせながら呟いた。
「こ、こんな悪夢を毎晩見ていたら、そら強くなるわな……!」