「やっぱりそうだ……」
ズバッ! ザシュッ!
小竜姫の試練が始まり、リュウダ達がダークソウルの力と記憶を元にした異空間、北の不死院に来てから数分後。リュウダは北の不死院の通路を見回して呟いた。
「ここは本当の北の不死院じゃない」
ザン! ドシュッ!
確かに、この臭ってきそうなまでに淀んだ死の気配が漂っている通路は、リュウダが知っている北の不死院の通路である。しかしその通路の距離や出現してくる亡者の数は、すでに本当の北の不死院のそれを超えていた。
「小竜姫様。ここは俺のダークソウルの力と記憶を元にした異空間だけど、規模とか細かい構造は多少イジってある。そうですね?」
ガッ! バシュッ!
「え、ええ……。そうです……」
『『…………!!』』
リュウダの質問に小竜姫が引き気味に答え、それ以外の者達は明らかに引いた表情でリュウダを見ており、そんな皆の態度に彼は首を傾げる。
「皆、どうかしました? 顔色が悪いみたいだけど?」
ダン! ギィン!
「いや、おかしいだろ!? 何でお前、亡者斬り捨てながら普通に会話しているんだよ!」
リュウダの言葉に横島が皆を代表して大声を出す。横島の言う通り、リュウダは先程から亡者を混沌の刃で斬り捨てながら周囲を見回したり会話をしたりしていて、それが皆には異様に見えていたのだった。しかしやはり良くも悪くもダークソウルの常識に染まっているリュウダは、横島の言葉に困ったような表情となる。
「そんなこと言われてもな……。この世界ではいつも亡者と殺し合いをしてきたから、ほとんど条件反射になっているん……だよな!」
ゴシャッ!
『『……………!?』』
横島の質問に答えながらリュウダは、自分に斬りかかってきた亡者の剣を避けると、そのまま亡者の頭を掴んで壁に叩きつけて押し潰す。その衝撃的な光景に皆の表情が更に悪くなり、横島は恐怖のあまり腰を抜かしてしまう。
「も、もう嫌や……! やっぱりゴーストスイーパーの世界なんて、特別な才能を持つ人間しか入れん世界やったんや……。俺みたいなただの学生が足を踏み入れて生きていける世界やないんや……」
「いや、そんなことはないぞ? 横島にもちゃんと才能はあると思うぞ?」
「え?」
思わず関西弁となって泣き言を言う横島であったが、リュウダが即座に反論すると彼の顔を見た。そしてそれは美神も同じであった。
「藤沼クン、何を言っているの? 横島クンにそんな霊能力なんてあるわけ「いえ、横島には霊能力があると思います」」
原作知識でこれから先、横島が霊能力に目覚めて実力をつけていくことを知っているリュウダが美神の言葉を遮って言うと、横島がどこか期待するような目でリュウダは見る。
「お、おい、藤沼? それって本当か? 本当に俺にも美神さんみたいな霊能力があるのか?」
「ああ、俺はあると思うぞ。……そうだ。せっかくだから横島もここで修行してみたらどうだ?」
「俺も修行? 一体どうやるんだ?」
「簡単だよ。ちょっと待ってろ」
リュウダは横島にそう答えると、新たに出現してこちらに歩いて来る亡者に向かって行った。そしてまず折れた剣を持つ右手を混沌の刃で切り落とし、そのまま左手と両足を斬り捨てて首と胴体だけにすると、亡者の首を掴んで横島の前に投げ捨てた。
「………!?」
「ほら。その折れた剣で亡者の頭を叩き潰せ。そしたら亡者の力がお前の方に行っていくらか強くなれるはずだ」
突然の出来事に驚き言葉を失う横島に、リュウダは亡者が持っていた折れた剣を彼の足下に投げてから言う。
これまで亡者を何体も斬り捨てて分かったことだが、ここにいる亡者を倒すとソウルが手に入り、そのソウルの量は本来の北の不死院に出現する亡者よりずっと多かった。だから一体でも亡者を倒すと、横島でも多少は強くなれるとリュウダは思ったのだが、横島は再び恐怖で腰を抜かす。
「どうしたんだ、横島? その折れた剣を頭を突き刺すだけでいいんだ。早くやれよ?」
「で、できるかーーーーー! ……っ!?」
思わずリュウダに怒鳴る横島だったが、その時亡者が身体をくねらせて横島に近づき、彼の身体に食らいつこうする。
「ヒーーーーー!」
「チッ! 大人しく殺されてろよ!」
『『……………!』』
亡者が横島に食らいつこうとする直前、リュウダは亡者の頭を掴んで床に叩きつけて砕いた。そのあまりの容赦のなさに、美神達はまたしても絶句する。
「………!? ………!」
「ん? ああ、すまない横島。せっかくの経験値を奪ってしまったな」
恐怖で泣きながら声にならない声で何かを言っている横島に、リュウダは的外れな謝罪をする。
「もうこの辺りには亡者はいないみたいだし、とりあえず向こうまで亡者を探しに探しに行ってみるか。今度はちゃんと殺せよ、横島?」
「ぎゃーーーーー! イヤーーーーー!」
リュウダが横島の首根っこを掴み新しい亡者を探しに行こうとすると、横島が悲鳴を上げて美神がそれを止めようとする。
「ちょ、ちょっと藤沼クン! 横島クンにはまだ修行は早いみたいだし、今日のところはそれくらいに……!」
美神がリュウダを止めようとしたその時、美神は何かの気配を感じ取って通路の先を見る。気配を感じたのはリュウダも同じで、彼も足を止めて美神と同じ方向を見ており、二人の視線の先には大剣を持って黒い全身鎧を着た騎士が一人立っていた。