突然通路の向こう側から現れた黒い鎧を着た騎士。その力は今までリュウダが斬り捨ててきた亡者より遥かに格上なのは明白であり、黒い騎士が現れた瞬間、空気が張り詰めたのがこの場にいる全員に伝わった。
(あれは黒騎士……。確かにここに出現する敵だったけど、まさかこのタイミングで出てくるとはな……)
リュウダは黒騎士の姿を見て心の中で呟いた。
確かに黒騎士はこの北の不死院に出現する敵ではあるが、出現するのは一度ここから脱出してそれから訪れてからのはずである。そのため黒騎士を見たリュウダは、ここが北の不死院とは色々と異なっていることを再認識した。
「へぇ……。中々気合の入っている敵が出てきたじゃない。藤沼クン、アレは私がもらうわよ?」
そう言うと美神はリュウダの前に進み出て、
「美神さん?」
「私だって、いつまでもゴーストスイーパーでもない冥子の助手にビビらされてばかりじゃないわよ? 見ていなさい」
美神はリュウダを横目で睨みながら言い、言われた本人は訳が分からないと首を傾げる。
「ビビらせる? 俺、何かしましたっけ?」
『『…………』』
良くも悪くもダークソウルの常識に染まって亡者を見たら条件反射で殺すようになったリュウダの言葉に、横島はドン引きしておキヌは顔を引き攣らせ、チェリーと小竜姫でさえも一歩引いた。
「行くわよ! ……!」
話をしているうちに黒騎士がこちらに近づいてきており、それを見た美神が槍を突き出した。しかし黒騎士は左手に持った盾で美神の槍をあっさりと防ぐと、返す刀で右手に持つ剣で突きを繰り出す。
「う……!?」
美神は間一髪で黒騎士の剣の直撃を避けたが脇腹をかすめ、予想以上にダメージを受けたのか彼女がうめき声を出して体勢を崩すと、横島が駆け出す。
「み、美神さん!」
「……! 横島クン! お願い!」
「えっ!? ちょっ! 美神さーーーん! ……ぶっ!?」
美神は自分の元にやって来た横島に気づくと、彼の襟首を掴んで勢いよく黒騎士に向かって投げた。助けにきたつもりがいきなり囮にされた横島は、恐怖で滝のような涙を流している途中で黒騎士が横に振った盾によって吹き飛ばされ、そのまま壁に激突してしまう。
「隙あり!」
「………!?」
黒騎士が盾を振って横島を吹き飛ばした次の瞬間、いつの間に距離を詰めていた美神が槍を両手に持って渾身の力で突き出し黒騎士の胸を貫いた。胸を槍で貫かれた黒騎士は一度身体を大きく振るわせるとすぐに動かなくなり、鎧ごと身体を灰にして消えていった。
しかしその様子を見ていたリュウダは首を横に振る。
「うわー……。横島のヤツ、大丈夫かよ? 助けにきてくれた人を囮にするだなんて……俺みたいな常識人にはとても真似できないよ」
「あの……常識人ってなんですか?」
「ううむ……。藤沼は藤沼で、この過酷な環境で人格に歪みが生じておるかもしれぬな」
「これって、精神修養の修行も追加した方がいいんでしょうか?」
美神の横島に対する扱いは前世の頃から知っているリュウダだったが、実際に見ると予想以上に酷くて思わず美神に聞こえない小声で呟く。すると彼の呟きを聞いていたおキヌにチェリーと小竜姫が、リュウダに聞こえない小声で話し合っていたのだった。