「美神さん! アンタねぇ! ……って、え?」
美神が黒騎士を倒した直後、壁にめり込んでいた横島が顔から大量の血を流しながら抗議の声を上げようとしたが、美神の身体に起こった変化を見て止まった。
現在の美神は軽装の鎧を着て槍を持った
「これって……?」
「さっき倒した敵の力が貴女に流れ込んで、霊能力が強化されたんですよ」
自分の身に起こった変化に美神が驚いていると、そこに小竜姫が説明をしてきた。
「最初に言いましたがその姿、影法師は貴女の分身のようなもの。貴女が力をつければその分だけ変化しますよ」
「へぇ、そうなの」
「あれ? ちょっと待ってください。俺は亡者ばかりだけど敵を倒しましたよ? それだけど全然外見が変わっていませんけど?」
小竜姫の説明に美神が嬉しそうに自分の身体を見ていると、リュウダが小竜姫に質問をする。すると小竜姫は一つ頷いてから説明をする。
「ああ、それは二人の修行の内容の違いからですね。美神さんは純粋に霊能力の強化が、藤沼クンはダークソウルの力を使いこなすことが目的ですから、敵を倒した時の変化も違うんですよ。藤沼クンは敵を倒しても美神さんのように急激な強化はされませんが、その代わりに一度に出せる武器やアイテムの量が増えたり、武器などを出すまでの時間が短縮されるはずですよ」
「なるほど。そういうことですか……」
小竜姫の説明を聞いてリュウダは納得して頷く。
美神のように直接的な戦闘力が上がらないのは確かに残念だが、ダークソウルの世界で手に入れた武具やアイテムを短時間でいくつも出せるようになれるのは、充分に魅力的に思えた。
「ようするに出てくる敵を倒せば倒すほど強くなれるのね。そうと決まれば……行くわよ! 藤沼クン!」
「えっ!? 美神さん!」
実際に黒騎士を倒したことで強くなれた美神は、好戦的な笑みを浮かべると北の不死院の通路を駆け出し、その後をリュウダが追いかける。
それからリュウダと美神は襲いかかってくる亡者を倒しながら北の不死院の中を探索して行く。黒騎士のような強い敵は美神が倒した一体だけで、それ以外は亡者しか出てこなかったのだが出てくる亡者の数は多く、倒しているうちにリュウダも美神も順調に強くなっていった。
そして北の不死院の探索を開始してからしばらくすると、リュウダ達は中庭のような空間に辿り着いた。中庭の中央には一本に刃が捻れた剣が地面に突き刺さっており、それを見た横島が首を傾げた。
「何だ、この剣は?」
「それは篝火だよ」
横島の疑問に彼の後ろからリュウダが答える。
「俺達ダークソウルは、その篝火の近くで休むことで現世に帰ることが出来るんだ」
「なるほど。これが今までのダークソウルの人達が言っていた篝火なんですね。……あれ? でも火がついてませんよ?」
リュウダの説明を聞いて小竜姫が興味深そうに捻れた剣に近づくが、そこで今は火がついていない事に気づいた。
「ああ、篝火はダークソウルの世界に来て数時間経たないと火がつかないんですよ。それまではいくら近づいて休んでも現世には帰れませんよ」
それはリュウダが転生して初めて知った、このダークソウルの世界でのルールで、それを聞いた横島が表情を引きつらせる。
「うええ……。それってこの世界に来たら最低でも数時間は現世に帰れないってことか? しかもその間はあの亡者達がずっと襲ってくると……!?」
横島の言う通り、リュウダは一度ダークソウルの世界に来てしまったら数時間経って篝火に火が付くか、敵に殺されるまで現世に帰ることができなかった。今までのダークソウルとなった者達は、きっとこの危険に満ちた数時間に耐えられず、自ら命を絶ったのだろう。
「それより美神さん。気をつけてください。ここが俺の記憶を元にした異空間だったら、この先に『ボス』がいますよ」
リュウダは美神にそう言うと、中庭の先にある大きな扉を指差した。
「へぇ……? 見るからにソレっぽいと思っていたけど、一体どんな奴が出てくるの?」
「文字通りの悪魔です。俺達の三倍くらい大きくて両手に巨大なハンマーを持った悪魔が……!?」
記憶ではこの先に登場する敵、不死院のデーモンについてリュウダが説明しようとしたその時、隣から何者かの足音が聞こえてきた。リュウダ達が足音が聞こえてきた方を見ると、そこには軽装の鎧を着て鉄仮面を被った騎士、最初にここに来た時に牢獄の鍵(死体つき)をくれた人物の姿があった。
「おお! アイツはあの時の! 何だ? この先の悪魔退治を手伝ってくれたりするのかな?」
突然現れた騎士を見て横島が期待するように言うのだが、リュウダはそれに首を横に振って答える。
「いいや。アイツは敵だ」
「……………え?」
「あの騎士も俺と同じダークソウルで最初は助けてくれたんだが、この北の不死院で力付きて次に会った時には亡者になって襲いかかってきた。……もう一度言う。今のアイツは敵だ」
「……」
横島に向けて言ったリュウダの言葉の通り、騎士は腰の剣を抜いてこちらに向かって来ていた。それを見て美神が薙刀を構える。
「やるって言うなら上等じゃない。いくら恩人とは言え、かかってくるなら……え?」
「ーーーーーーーーーー!!」
美神が騎士に向けて攻撃を仕掛けようとした時、突然扉が凄まじい勢いで開かれ、扉の奥から手に木のハンマーを持った巨大な悪魔、不死院のデーモンが雄叫びを上げながら飛び出てきた。