クラーナ達姉妹を無事に再会させて巡礼の旅に出た次の日。リュウダか現実世界で学校に登校すると、そこに横島が話しかけてきた。
「よう、藤沼。随分とご機嫌だな?」
「え? そうかな?」
どうやらクラーナ達姉妹を再会させると言う最初の目標が達成されたことで、リュウダは自分でも気づかないうちに上機嫌になっていたらしい。その事を横島に指摘されてリュウダが聞き返すと、横島はどこか面白くなさそうに頷いた。
「ああ、そうだよ。……どうせこの間の修行で霊力がアップしたのが嬉しいんたろうけど、いいよな霊能力を持ってる奴はよ。……ケッ!」
どうやら横島は先日の妙神山の修行で霊力がレベルアップしたのが嬉しいのだと思っているようで、話しているうちに不機嫌になってつばを吐いた。
上機嫌だった理由は違うのだが、ダークソウルの世界について話すわけにもいかず、リュウダが横島に何と言おうか考えていると、しのぶが二人に話しかけてきた。
「ちょっと横島君、藤沼君。私達これから図書室の掃除なんだから、いつまでも話していないで行くわよ」
『『図書室の掃除?』』
リュウダと横島が声を揃えて聞くと、しのぶが首を縦に振って答える。
「そうよ。ほら? 横島君と藤沼君って、この間ゴーストスイーパーのお仕事で休んでいたでしょ? その日に私達のクラスが図書室の掃除をするって、急に決まったの」
どうやらリュウダ達が妙神山で修行をしている時に決まったらしく、リュウダと横島はしのぶの言葉に従い、他のクラスメイト達と一緒に図書室へと向かうことにした。
「まったく……。何で俺達が図書室の掃除なんてせねばならんのだ?」
「何を言う。学校の掃除も我々生徒の役目だ。決まったことにいつまでも文句を言うな。………っ!?」
図書室の掃除がよほど嫌なのか、図書室の前で諸星が愚痴を言う。それに対して先頭を歩いていた面堂が反論して図書室の扉を開くと、図書室の中はすでに先客で満員状態となっていた。
図書室の先客は友引高校の生徒や教師ではなく、普通の人のような者もいれば、人どころか普通の生物ではない者もいて、しかもそのほとんどが「紙のように」身体の厚みがなかった。
『『………っ!?』』
明らかに人外の者達が大勢いる図書室の様子に、面堂や諸星を初めとするクラスメイト達は驚き言葉を失うが、リュウダだけは図書室に何が起こったのか大体だが理解していた。
(そういえばうる星やつらにこんな話があったな……)
リュウダはうる星やつらの原作に、図書室の掃除をしている最中、主に諸星とラムのせいで本の住人が現実世界に現れて大騒ぎになった話があったのを思い出し、それと同じことが起こっているのだと考えた。
(だけど何でいきなり本の住人達が出てきているんだ? ……ん?)
「た、助けてください!」
原作とは違う展開にリュウダが内心で首を傾げていると、図書室の中から金髪で青い目をした、外国人の女性がリュウダ達の元へとやって来た。
「おっ! きれいなお嬢様! ボク横島……ぐっ!?」
「これはこれは美しいお嬢さん。何かお困りですか?」
図書室から現れた金髪の女性を見て早速横島がナンパしようとするが、その前に面堂が彼を押し退けて女性の手を取って話しかける。……この手の速さはある意味凄いと言えた。
「あ、あの……お騒がせしてすみません。私は『ピーターパン』の絵本から来たウェンディと言います。実は今、この図書室に恐ろしい妖怪が現れていて、私達本の世界の住人達は現実世界に逃げてきたのです」
『『……………?』』
金髪の女性、ウェンディの言葉に面堂を初めとする全ての生徒達が理解できずに困惑し、これは原作を知っているリュウダも同じあった。
「え~と……? 恐ろしい妖怪って一体どんな……?」
『『ーーーーー!』』
リュウダがウェンディに、その図書室に現れた恐ろしい妖怪について詳しく聞こうとした時、図書室の奥から複数の悲鳴が聞こえてきた。
リュウダ達が悲鳴が聞こえてきた方を見ると、そこにはタキシードを着た一人の男が立っていたのだが、その男の顔には異常なまでに大きな口しかなく不気味でいやらしい笑みを浮かべていた。
「っ!? モンタージュ!」
リュウダは口しかない男の姿をした妖怪を見て反射的に叫ぶ。
モンタージュとは「極楽大作戦!!」に登場する絵画に宿る魂を食べる妖怪である。原作では映画の世界に潜んで映画の登場人物達を食べていたモンタージュを、色々な事情から美神達が退治することになったのだが、モンタージュは自分が潜んでいる映画の世界をある程度操作することができて、そのせいで美神達も退治に手こずっていた。
「モンタージュ? なんだそりゃ? ラムの知り合いの宇宙人とかじゃないのか?」
「ウチ、あんなの知らないっちゃ」
「あれはれっきとした妖怪だ。奴の主食は絵に宿る魂で、図書室にある本の絵を食べに来たんだろう」
諸星の言葉にラムがモンタージュを気味悪そうに見ながら反論する。そんな二人にリュウダが簡単にはモンタージュの説明をするとウェンディが頷いた。
「そうです。この図書室にある本は古い本も多いので、それがモンタージュを引き寄せた原因なのかも……いけないっ!?」
『ギヒィッ!』
ウェンディの言葉の途中でモンタージュは、獲物を見つけたのか奇妙な声を上げて駆け出した。その先にはやはり現実世界に逃げてきた本の世界の住人達がいて、モンタージュは彼らに食らいつこうとするのだが……。
『『何をしとるんじゃ、貴様ぁっ!?』』
『ギヒャァッ!?』
本の世界の住人達に食らいつこうとしたモンタージュだったが、モンタージュは大勢の男子生徒達によって殴り飛ばされた。
「ええっ!?」
霊能力を持たない一般人のはずの男子生徒達がモンタージュを殴り飛ばした光景に、リュウダは思わず驚きの声を上げるのだが、男子生徒達はそんなリュウダに構わずモンタージュを取り囲む。そして男子生徒達を代表して「メガネ」というあだ名で呼ばれている眼鏡をかけた男子生徒かモンタージュに声をかける。
「貴様……! 自分が今、何をしようとしたか分かっているのか?」
『ギ、ギヒ?』
強い怒りを秘めたメガネの言葉に、モンタージュは思わず気圧されてしまうが、何故メガネや他の男子生徒がここまで怒って自分に敵意を向けているのか分からなかった。そんなモンタージュの態度に、メガネは怒りを爆発させて叫ぶ。
「貴様は! 今あの女性達を食べようとしたのだぞ!? あの美の化身とも言える女性達を!」
そう叫んでメガネが指差した先には、恐らく美術史の本から逃げてきたのであろう「ヴィーナスの誕生」や「モナリザ」の姿があった。
「他の絵ならいざ知らず! あのような美しい女性達を食おうとするとは、なんたる邪悪な妖怪か!」
「そうだ! 美女は世界の宝だと言うことを知らんのか!?」
「このような妖怪をこれ以上野放しにするわけにはいかん!」
『ギ、ギヒ……ヒィ……?』
話しているうちに怒りのボルテージを上げていくメガネを初めとする男子生徒達に、モンタージュも身の危険を感じて逃げようとするが、すでに取り囲まれているモンタージュに逃げ場はなかった。そして……。
『『くたばれ! この妖怪がーーー!』』
『ギヒィィーーーーーーーーーーーー!?』
メガネ達男子生徒はまるで豪雨のような勢いで蹴りを連続でモンタージュに叩き込み、モンタージュは悲痛な断末魔を上げて消滅したのであった。
「……………嘘だろ?」
そのあまりにも非常識な光景に、リュウダはしばらく沈黙した後、小さく呟くことしかできなかった。
次回はダークソウルサイドの話ですが、そこでオリキャラを出す予定なのでご了承下さい。