病み村よいとこ一度はおいで!   作:兵庫人

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第48話

「んん……?」

 

「おっ? 起きたみたいだぜ?」

 

「そうみたいですね」

 

 空から不死者の女性が降ってきて数分後。不死者の女性が目を覚ましたのに気づいて中年の男がリュウダに話しかける。

 

「あれ? ここは?」

 

「……ここは火継ぎの祭祀場。不死者が巡礼の旅で最初に訪れる、巡礼の旅の拠点となる場所だ」

 

 目を覚まして周囲を見回す不死者の女性の言葉にリュウダが答える。彼にとって彼女はイレギュラーな存在で、何が起きても対処できるように心の中で身構えながら答えたのだが、そんなリュウダの心境とは裏腹に不死者の女性は不思議そうに首を傾げるだけであった。

 

「火継ぎ? 不死者? 不死者って何ですか?」

 

「不死者っていうのは俺達のことさ。身体のどこかにダークリングっていう黒い輪っかのアザができて、不老不死となった者達が不死者だ」

 

 次に不死者の女性の質問に答えたのはリュウダではなく中年の男であった。

 

「ただ死にすぎたり時が経ちすぎたりすると自分が誰だか分からなくなって化け物になっちまう……というか、一回死ぬだけでも化け物みたいな姿になるんだがな? ……ほれ」

 

 そこまで言うと中年の男は懐から小さな手鏡を取り出して不死者の女性に見せた。すると……。

 

「な、な……!? 何じゃあ、コリャーーーーー!?」

 

 干からびた自分の顔を見て不死者の女性が絶叫し、それを見て彼女を可哀想に思ったリュウダが中年の男に話しかける。

 

「青ニートさん? 流石にそれは酷いですよ?」

 

「あー……。そうかもしれねぇな? 悪かったよ、嬢ちゃん。……それでさっきからお前が言ってるアオニートって俺のことか? 俺はウッドって名前でそんな変な名前じゃねぇぞ?」

 

 リュウダに言われて中年の男、ウッドもやり過ぎたと思ったのか不死者の女性に謝罪する。しかし不死者の女性はウッドの謝罪を聞いておらず、慌てた様子で二人に話しかける。

 

「わ、私の顔がまるでミイラみたいになってます!? これってどうやったら治るんですか!?」

 

「ああ、それだったら、これを取り込んでから、あの火の近くで人間に戻りたいって願えば元に戻るよ」

 

 リュウダは自分達のすぐ近くにある篝火を指差しながら、病み村からこの火継ぎの祭祀場に来るまでの途中、最下層で手に入れた黒いモヤみたいな物、人間性を手渡した。すると次の瞬間……。

 

「これを取り入れたらいいんですね? 分かりました! ……!」

 

 パクッ。

 

『『食うな!?』』

 

 不死者の女性は手渡された得体の知れない黒いモヤ、人間性を何のためらいもなく食べて、リュウダとウッドが同時にツッコミを入れる。

 

「あとはあの火の近くで祈れば……!」

 

 そう言うと不死者の女性は篝火に近づいて祈り、彼女の姿は干からびた亡者の姿から生者の姿へと戻った。

 

 生者に戻った不死者の女性は、艶やかな黒髪と健康的な褐色の肌が特徴的な、愛嬌のある顔立ちをしたリュウダよりも少し年下の女性であった。

 

「おおー!? 本当に戻れました! ありがとうございます!」

 

「これで落ち着いて話ができそうだな? それで嬢ちゃんはなんて名前なんだ? あと、不死者を知らないって、どんな田舎から来たんだよ?」

 

 亡者から生者に戻れたことに喜ぶ不死者の女性にウッドが話しかけると、不死者の女性は手を上げて元気に自己紹介をする。

 

「はい! 私はエリナっていいます! 今までずっと牢屋に閉じ込められていたから、何処からきたか分かりません! 外へは最近出られました」

 

「……っ!? チッ! まさかとは思っていたが、ガキの頃から閉じ込められて追い出されたのかよ。……嬢ちゃんも苦労したんだな」

 

 このダークソウルの世界では不死者は忌むべき異端者であり、不死者が子供の頃から監禁されて隔離されることも珍しくはない。

 

 不死者の女性、エリナの言葉を聞いてウッドは不機嫌そうに舌打ちをすると、同情したような目をエリナに向ける。

 

「いえ、そうでもないですよ。……私はやることがなかったから、いつも牢屋の中で寝ていたんですけど、ある日どこからか歌が聞こえてきたんです。そしたらその後、建物が何度も大きく揺れて、牢屋の鉄格子が少し壊れて、何日も鉄格子を揺らしたら外れて外に出られたんです」

 

「歌? いったいどんな歌だ?」

 

 ウッドに聞かれてエリナは、牢屋から脱出した時に聞いた歌を思い出して口にする。

 

「え~と、確か……? 『俺は死んじまっただ~♪ 転生しちまっただ~♪ 病み村よいとこ一度はおいで♪』って感じの楽しそうな歌でした!」

 

「何だその歌は? 病み村は知っているけど、そんな歌は聞いたこともないぞ? お前もそうだろ?」

 

「……………!?」

 

 エリナの歌を聞いてウッドは首を傾げてそう言ってリュウダに同意を求めるが、リュウダには返事をする余裕などなかった。

 

(ちょっ!? その歌って、俺がこの世界に転生したばかりの頃、北の不死院で歌っていたやつじゃないか……! ということはアレか? 俺は転生に浮かれて同じ所にいたエリナに気づかず置き去りにしたってことか!?)

 

 そこまで考えたところでリュウダの中の良心が猛烈に痛みだし、気づけば彼はエリナに話しかけていた。

 

「あの……エリナ、さん? エリナさんってば、これからどうするかとか予定あります?」

 

「いいえ、ありません! というか自分が何をしたらいいかも分かりません!」

 

 リュウダは自分の質問に胸を張って答えるエリナに、視線を逸らしながらある提案をする。

 

「……だったら、まずは強くなるところから始めたらどうかな? この辺りは安全でも、ここから少しでも離れたら亡者とかが襲ってくるし、強くなれば安心だと思うよ? それで俺でよかったら特訓に付き合うけど……どうする?」

 

 リュウダが己に課した使命は、新しい老魔女の指輪を手に入れることと、クラーナ達の姉妹がいるイザリスへの道を解放することである。

 

 そのためには一刻も早く巡礼の旅を進めなければならず、正直エリナに関わっている時間なんてない。しかし自分のミスで北の不死院に置き去りにしてしまったエリナを放っておくこともリュウダにはできなかった。

 

「………!?」

 

「本当ですか!? ありがとうございます!」

 

 リュウダの態度から何かを察したウッドは信じられないといった表情で彼を見て、エリナは心から嬉しそうな笑みを浮かべてリュウダに礼を言う。

 

 こうしてリュウダは少しの間、巡礼の旅を休んでエリナの特訓に付き合うことが決まったのであった。




青ニート先輩の名前は作者のオリジナルで、とある脱走者の名前からとらせてもらいました。

新人不死者のエリナ、育てるならどんなビルド?

  • 脳筋(筋力特化型)
  • 技量(技量特化型)
  • 上質(筋技バランス型)
  • 純魔(理力特化型)
  • アンバサ(信仰特化型)
  • 信魔(理信バランス型)
  • 理力戦士(理力、物理両立型)
  • 信仰戦士(信仰、物理両立型)
  •  
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