病み村よいとこ一度はおいで!   作:兵庫人

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第5話

「おい、聞いたか?」

 

 ある日、朝の学校の教室で「パーマ」と呼ばれている男子生徒がよく一緒にいるクラスメイト三人に話しかける。

 

「最近聞いた話なんだけどさ。最近夜になると奇妙な幽霊が出るらしいぜ?」

 

「奇妙な幽霊?」

 

 パーマに話しかけられた三人のクラスメイトの一人「チビ」と呼ばれている小柄な男子生徒が聞き返すと、パーマは一つ頷いてから自分の聞いた噂話を話す。

 

「ああ。夜になると人気が少ない道や廃工場で、全身にボロボロの布を纏って盾を持った幽霊が現れて、奇妙な歌を歌いながら歩き回っているそうだ」

 

「何だそりゃ? 新手の悪霊か?」

 

 パーマの話を聞いて「カクガリ」と呼ばれているあだ名の通り角刈りで大柄の男子生徒が首を傾げる。この世界では夜に街のどこかで悪霊が現れるの珍しくなく、カクガリ達もそんな悪霊の類いかと思ったが、パーマは首を横に振って否定する。

 

「いや、それがその幽霊、他の悪霊が現れると手から炎を出して悪霊達を次々と消していくらしくて、ただの悪霊じゃないみたいなんだよ。それで誰かが言うには除霊中に死んだゴーストスイーパーが、自分が死んだことに気づかず除霊を続けているんじゃないかって」

 

「全く死んだ後でもご苦労なことだ」

 

 パーマの話を聞き終えると「メガネ」と呼ばれている眼鏡をかけて神経質そうな男子生徒がつまらそうに呟いた。

 

「まぁ、そんな働き者なゴーストスイーパーの幽霊さんにはこれからも頑張ってもらえばいい。それより俺達が考えるべきことは……ラムさんだ!!」

 

 そう言うとメガネは、懐からラムの写真を取り出し熱く語り始めた。

 

「ラムさんは美しかった! 是非もう一度会いたいと思う! お前達もそうだろう!? そこで、何とかもう一度ラムさんをこの地球に呼ぶ方法を皆で考えたいと思うが異議はあるか!?」

 

『『異議無し!』』

 

 メガネの言葉にパーマにチビとカクガリは異口同音で返事をすると、噂の幽霊のことなどすっかり忘れて全員でラムを再び地球へ呼ぶ方法を考えるのであった。

 

 

 

「さて、今夜も元気にやりますか」

 

 パーマ達が幽霊の噂話をしていた日の夜。リュウダは人気の無い道で準備体操をして呟いた。

 

「それじゃあ、まずはこれ……を!」

 

 準備体操を終えたリュウダは右手を胸に当てて呪術を発動させる。

 

 リュウダが今発動させた呪術は「内なる大力」。

 

 ダークソウルの世界でクラーナ達の元へ向かう途中、病み村にあった呪術師の死体から得た、一定時間体力が徐々に減っていく代わりに攻撃力とスタミナの回復速度が上がるという呪術である。

 

「しかしまさかこの世界で内なる大力を使うとこうなるなんてな」

 

 呪術を発動させたリュウダが自分の体を見ると、今の彼は先程まで無かった黒いローブを羽織っていた。その姿はリュウダが前世でダークソウルのキャラクターによく装備させていた「黒金糸シリーズ」と呼ばれる装備一式とよく似ている。

 

「これって完全に『魔装術』だよな?」

 

 魔装術。

 

 極楽大作戦のキャラクターの一人が使う霊能力であり、霊力の鎧を作り出すことによって戦闘能力を大幅に上げることできるのだが、コントロールが難しく下手をすれば自分が怪物となってしまう「悪魔の技」と呼ばれている霊能力である。

 

 戦闘能力は上がるが使いどころが難しい、と言う点では内なる大力も魔装術も同じだが、まさかこの世界では内なる大力の効果が魔装術と同じになるのは全くの予想外であった。だがこれはリュウダにとっては嬉しい誤算と言えた。

 

「まあ、普通の服でいるよりも防具があった方が安心できるけどな」

 

 そう呟いたリュウダが自分の身体にある黒いローブを見てから左腕に視線を向けると、彼の左腕には表面に刃物のようなトゲがびっしりと生えた盾があった。

 

 トゲの盾。

 

 トゲの騎士の異名を持つ悪霊カークを倒したことで手に入る、攻撃にも使える盾。盾としての性能は決して高くはないが、ゲームでリュウダは敵に攻撃されたらこの盾で防御してから殴り返す戦い方を好んでいた。

 

 リュウダは内なる大力を使って具現化した装備を確認すると、鼻唄を歌いながら人気の無い道を進んで行った。

 

「俺は死んじまっただ~♪ 転生しちまっただ~♪ 病み村よいとこ一度はおいで♪」

 

『何だ、貴様……! 奇妙な歌を歌いやがって……!』

 

『立ち去れ。今すぐ立ち去れ』

 

『さもなくばここで呪い殺すぞ……!』

 

「へぇ、結構いるな。……大当たりだ」

 

 リュウダが鼻唄を歌いながら道を進んでいると、辺りから無数の悪霊が出現してきたが、彼はそれを見ても恐れる事はなくむしろ笑みを浮かべるのだった。

 

『一体何を……ギャアアアッ!?』

 

『コイツ、手から火を……ヒィィッ!』

 

『て、テメェ! まさかゴーストスイーパーか……あああっ!?』

 

 リュウダの右手から放たれる呪術の炎によって悪霊達は次々と悲鳴を上げながら消滅していき、悪霊達を倒すたびにソウルと人間性を得られる感覚にリュウダは満足そうに頷く。

 

「やっぱりコッチでの悪霊狩りの方が効率がいいな」

 

 先日、横島に取り憑いた低級霊を呪術の炎で消滅させた時、この世界で悪霊を退治してもソウルと人間性を得られると気づいた日から、彼は夜になるとこうして人気の無い道や廃工場といった悪霊が出現しそうな場所を出歩いていた。それも全てはクラーナから呪術を習い、自分の呪術の火を鍛えるため。

 

 ダークソウルの世界にいる時は病み村でモンスターを倒し、現実世界にいる時はこうして悪霊を倒してソウルを稼ぐのが最近の彼の日課であった。

 

 しかし黒いローブを羽織って左腕に禍々しい盾を装備し、奇妙な鼻唄を歌いながら右手から放つ炎で悪霊を消滅させるリュウダの姿は亡霊にしか見えず、要するに今日の朝にクラスメイトのパーマが噂していた幽霊とはリュウダのことなのである。

 

「よしよし。いい調子だ、これなら「随分と楽しそうね? 噂の幽霊さん?」え? ……げっ!?」

 

 悪霊達を全て倒し終わった後、自分の中に溜まっていくソウルと人間性にリュウダが満足していると、背後から何者かが話しかけてきた。それを聞いた彼が後ろを振り返るとそこには……。

 

 極楽大作戦の主人公であり、日本のトップクラスの実力者であるとされるゴーストスイーパー、美神令子が鋭い目でリュウダを睨み付けていた。

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