「とりあえず、エリナの修行はこれでいいな」
「え? 修行、これで終わりですか?」
この一週間の特訓で強くなったなエリナに向かってリュウダがそう言うと、彼女は首を傾げて聞いてきた。
「ああ。今のエリナだったら、よっぽど油断しない限り、そこら辺の亡者やモンスターに負けたりしないだろ。だから俺の特訓はこれで終わり。お疲れ様」
リュウダが自分の指示に従い、一週間ただひたすらに石の鎧を着た巨人を倒し続けたエリナに労いの言葉を告げると、彼女は僅かに俯いてかと思うとすぐに顔を上げて彼に話しかける。
「あの……師匠? 師匠はこれからどうするつもりなんですか?」
「俺か? 俺は巡礼の旅を続けるよ。元々そのつもりで火継ぎの祭祀場にいたんだからな」
「……師匠。その巡礼の旅、私もついていっていいですか?」
「何?」
エリナに聞かれてリュウダがこれから巡礼の旅を再開するつもりだと言うと、彼女も巡礼の旅に同行したいと言い出し、これにはリュウダも驚いてエリナの方を見た。
「私、特訓をつけてくれた師匠に恩返しをしたいんです。師匠から見ても私、強くなりましたよね? 足手まといにはなりませんから連れていってください」
「いや、いいって恩返しだなんて……。俺はそんなつもりで特訓をしたわけじゃないし」
元々リュウダがエリナの特訓を申し出たのは、北の不死院で彼女を置き去りにした罪悪感からくるものであった。そして特訓が終わった以上、リュウダにはイレギュラーであるエリナと一緒にいるつもりはなく、何とか彼女の同行を断ろうとするのだが……。
ヒュボッ! ドゴォン! メキメキメキ……ズゥン!
「……っ!?」
リュウダがエリナに断りの言葉を言おうとした時、それよりも前にエリナは強化クラブを持つ右腕を振るった。ノーモーションで振るわれた強化クラブは彼女の側にあった大木に激突すると一撃でへし折り、それを見たリュウダは思わず言葉を失った。
現在のエリナの筋力値は「40」。脳筋戦士としてはまだ完璧とは言えないが、それでも大抵の重量武器は片手でも振るえるし、両手を使えばダークソウルの世界にある全ての重量武器を使うことができる。
ちなみにリュウダの筋力値は「16」で、これは常人よりはいくらか高いのだがそれでもエリナの半分以下であった。
「………」
「私、強くなりましたよね? 足手まといにはなりませんから連れていってください」
脳筋戦士の怪力によって繰り出された一撃を目の当たりにして固まるリュウダに、エリナは先程と同じ言葉を言って巡礼の旅の同行を願い出る。それに対してリュウダは……。
「ソ、ソーデスネ……。それじゃあ、お言葉に甘えて……協力してもらいましょうか?」
と、あっさりと少し前までの考えを捨て去り、震える声でエリナの同行を許可したのだった。
ここでリュウダのことを意志の弱い臆病者と思わないでほしい。もしあのままエリナの同行を拒んでいたら強化クラブの一撃がお見舞いされ、そんなものを食らったら下手すれば即死だし、即死しなくても地獄のような痛みに苦しむことになるだろう。
死んでも甦る不死者でも痛いものは痛いし、命は惜しいのである。
「ありがとうございます、師匠! 私、頑張ります!」
同行を許可されたエリナは思わず喜び、それに対してリュウダは心の中で呟いた。
(いやいやいや……!? 何だよ、これ? エリナって実は暴力系ヒロインだったの? ふざけんなよ? 暴力系ヒロインにつきまとわれて苦労するのは俺の役じゃないって。こういうのは諸星とか横島とか、諸星とか横島とか、諸星とか横島とか、諸星とか横島とかの役だろう……!)