エリナがリュウダと同じ冥子の助手となった日の後日。海王星ではおユキが自室でラムと通信装置を使って会話をしていた。
「そうなの。面白いことを考えるのね、ラム」
どうやらラムは近いうちに地球で何かをしようと考えているらしく、それを聞いたおユキが正直な感想を言うと、通信装置のモニターの中でラムが笑みを浮かべる。
『やっぱりおユキちゃんもそう思うっちゃ? だったら、おユキちゃんもどうだっちゃ?』
「……いいえ、止めておくわ。私の体質だと皆さんに迷惑をかけてしまうかもしれないし。弁天を誘ってみたら?」
ラムの誘いにおユキは少し考えた後に首を横に振り、代わりにここにはいない自分達の幼馴染みの名前を口にする。すると今度はモニターの中のラムが首を横に振った。
『無駄に決まっているっちゃ。弁天だったら面倒くさがるに決まっているっちゃ』
「ふふっ。それもそうね。……あら、もうこんな時間? ごめんなさい、ラム。私はそろそろ行くわね」
ラムの言葉に小さく笑っていたおユキは時間を確認すると立ち上がり、自室から出ていこうとする。
『あれ? おユキちゃん? 何か用事だっちゃ?』
「ええ。そろそろリュウダさんが来てくださる時間ですから、お出迎えにいかないと」
おユキがいる海王星は年中吹雪が吹き荒れており、それによって積もる雪の除去は放っておけば住居が潰されてしまうので、海王星で暮らす者達にとって死活問題である。
それなのに海王星では生み出されるエネルギーのほとんどをライフラインの維持に使われているので、雪の除去は手作業で行わなければならず中々進まない。
なので定期的にやって来ては呪術の炎で大量の雪を溶かし、短時間で数人どころか数十人分の除雪作業を行ってくれるリュウダは、今となっては海王星にとってなくてはならない重要人物となっていた。
「いきますよ。皆さん、危ないから離れてください。……混沌の大火球、大玉一丁!」
リュウダが放った巨大な火の球が一瞬で広範囲の雪を溶かし、その光景を見て海王星の住民達が驚きと歓喜の表情を浮かべる。
「……よし。今日のところはこんなところかな?」
「お疲れ様です。リュウダさん」
今日の分の除雪作業を終えてリュウダが一息つくと、そこにおユキが話しかけてきた。
「いつもいつも大変な雪かきをしていただいて、本当にありがとうございます」
「いえいえ、大したことはありませんよ。これくらい、いつもの仕事に比べたらなんでもないですって」
おユキの言葉にリュウダが答えると、彼が言った仕事におユキが興味を持つ。
「お仕事、ですか? リュウダさんはどの様なお仕事をしているのですか?」
「言ってませんでしたか? 俺はゴーストスイーパー……悪霊等を退治する業者の助手をしていて、それが結構大変なんですよ。しかもつい最近、同じ助手仲間が増えて、賑やかにはなりましたけど大変さも増えたって感じですね。……ああ、これが俺がお世話になっているゴーストスイーパーの冥子先生と助手仲間のエリナです」
そこまで言うとリュウダは懐から一枚の写真を取り出しておユキに見せる。その写真にはリュウダと、彼の右腕に抱きついてピースサインをしているエリナ、そしてエリナに対抗しているのかリュウダの左腕に抱きついてピースサインをする冥子が写っていた。
「…………………………」
リュウダから受け取った写真を見つめるおユキは、いつものようにほとんど無表情の静かなものでであったが、その目はいつもより冷たく感じられた。
「? おユキさん? どうかしました?」
「……………すみません、リュウダさん。私、急用を思い出しましたので、今日のところはここで失礼します」
「え? あっ、ハイ……?」
写真を見てから動かなくなったおユキにリュウダが話しかけると、ようやく動き始めた彼女はリュウダにそれだけを言って自分の部屋がある居住地へと帰っていった。
そしてそれから数日後。
「えー、今日は授業を始める前に皆にお知らせがある。今日からウチのクラスに、その……転校生が二人加わることになった。皆、仲良くするように。……それでは二人とも、入ってきなさい」
現実世界の学校で、温泉マークのアダ名で呼ばれている担任の先生が若干戸惑っているような表情でそう言うと、教室のドアが開いてそこから二人の転校生が入ってきた。転校生は二人とも女性で、そのうちの一人は……。
「やっほー! 皆、ラムだっちゃ。これからよろしくするっちゃ!」
友引高校の学生服を着て元気よく挨拶をするラム。
ラムについては、原作を知っているのである程度予想していたリュウダであったが、もう一人の転校生は完全に予想外であった。
「皆様、初めまして。ラムの幼馴染みのユキと申します。これからどうかよろしくお願いいたします」
もう一人の転校生、デザインは友引高校の学生服だが、色は全て白の学生服を着たおユキは、教室のクラスメイトに向けて丁寧に挨拶をするのであった。