「……ロートレク」
リュウダが牢屋の中にいる金色の全身鎧を着ている騎士を見て呟くと、名前を呼ばれた騎士は顔を上げて興味深そうにリュウダを見た。
「ほぅ? この俺を知っているとは……貴公、何処かで会ったことがあるのか?」
「いいや。俺が一方的に知っているだけですよ。『女神の騎士』」
リュウダは金色の全身鎧の騎士、ロートレクの質問に首を横に振って答えると、彼の異名を口にした。
女神の騎士ロートレク。
ダークソウルに登場するキャラクターの一人であり、この城下不死教区の牢屋に囚われているところを助ければ、ソラールと一緒にボスモンスターと戦ってくれる心強い味方となってくれる。しかし、物語が進むとあるイベントが発生して、結果的にロートレクはプレイヤーの敵となってしまうのだ。
「……フッ。まさかその懐かしい名をここでまた聞くことになるとはな?」
「……」
ロートレクが自分達の敵になりうる未来を知っているリュウダが内心で警戒をしていると、そんなことはお構い無しにエリナがロートレクに話しかける。
「あのー? それで貴方……ロートレクさんはどうしてこんな所に閉じ込められているんですか?」
「うむ。それは確かに気になるところではあるな」
「大したことじゃない。ある『目的』のためにここで人を待っていたら、あの六目の伝道者……『白竜』の手下とそれに従う亡者共に取り囲まれてな。不覚にもここに囚われてしまったと言うわけだ」
エリナの言葉にソラールが頷いて言うと、ロートレクは肩をすくめて自嘲するような声音で答える。
「六目の? ……それってもしかしてさっき私達が倒した変なローブを着た人ですか?」
「かもしれぬな。言われてみればアイツの兜は目が六つある変わった外見をしていたし……それで貴公の目的とは?」
ソラールは先程まで戦っていた敵のことを思い出して言うエリナにもう一度頷いて肯定すると、次にロートレクにこの城下不死教区に来た目的について聞くのだが、それに答えたのはロートレクではなかった。
「『聖女』、だろ?」
「……っ!? ク、ククク……! これは驚いた! まさか俺の懐かしい二つ名だけでなく目的まで知っているとは! 貴公は一体何者なんだ?」
ロートレクのイベントを知っているリュウダが彼の目的を推測して言うと、それは見事に当たっていたらしくロートレクは一瞬虚を突かれたように言葉を失うが、すぐに大声で笑いだした。
「まあ、いいさ。俺の目的はまさにそれよ。俺達と同じ呪われた不死者の烙印、ダークリングをその身に刻まれても神への信仰を忘れず、己の使命を果たそうとする聖女逹。彼女達は俺が信仰する『女神』の意志の体現者と言えるだろう。だからこそ女神の御前に行く前に聖女達を俺の手で『救済』してやろうと思ったのだ」
(救済、か……)
ロートレクの言葉を聞いてリュウダは心の中で呟く。
リュウダはロートレクの言う「救済」が言葉通りのものではないことを知っている。だが、ダークソウルの残酷なシナリオと設定も知っているため、ロートレクの救済に納得はできないが理解できる点があるのも確かであった。
「ある日、ソルロンドから有名な聖女がこのロードランへやって来るという噂を聞いてな。聖女がロードランにやって来たら、まずはここへ立ち寄るだろうと考えて、救済のために待っていたというわけだ」
「おおー? 話は難しかったですけど、何だかいい人みたいじゃないですか?」
「そのようだな。……よし! 同じ巡礼の旅に挑む不死者同士、ここは協力して先に煤もうではないか。幸い、この牢屋のものと思われる鍵はここに来る途中で見つけてあるからな」
リュウダとは違い、ロートレクの「救済」の言葉をそのままの意味で受け止めたエリナとソラールはロートレクをすっかり信用して、リュウダが何か言うよりも先にロートレクを牢屋から出してしまう。
「クク……。この俺がいい人、か……。まあ、助けてもらった以上は恩義を返すさ。よろしくな」
「……ああ、よろしく」
苦笑するような声音で笑うロートレクがそう言うと、リュウダは複雑な心境で返事をするのであった。