病み村よいとこ一度はおいで!   作:兵庫人

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第62話

 冥子とリュウダとエリナの今回の仕事は、正確には殺害された被害者に霊を呼び出す時に生じる霊的トラブルから現場検証に来た警察官や近くの通行人を守ることであった。

 

 死者の霊を呼び出すという行為は目的の霊以外の霊も引き寄せることが多く、その中には生者に危害を与える悪霊も含まれることも少なくない。更に呼び寄せた被害者の霊が自分が死んだと言う事実や自分を殺した相手の恨みから発狂して悪霊となり暴れるという可能性もあり、冥子とリュウダとエリナはそうなった場合の被害を抑えるために呼ばれたのである。

 

 今回の仕事現場である殺人事件が起こった現場はとある喫茶店の店内で、冥子とリュウダとエリナが喫茶店の店内に入るとそこにはすでに数名の警察官と着物を着た一人の老婆が集まっていた。恐らくはこの着物を着た老婆が被害者の霊を呼び寄せる霊能力者で、冥子達が来たのを確認すると警察官達は霊能力者の老婆にお願いをして、早速霊能力者の老婆は被害者の霊を呼び寄せた。

 

 それから数十分後。結果から言えば被害者の霊を呼び出しての聞き込みは順調に進んでいた。

 

 霊能力者の老婆は無事に被害者の霊を呼び出せたし、被害者の霊も自分の死に悲しみながらも警察官達の質問に答えてくれている。

 

 しかし肝心の被害者を殺害した犯人とその方法が、被害者本人にも分からなかったのだ。

 

 被害者の霊は気がつけば自分が死んでいて、更には自分が殺された場所は自分の遺体が発見された場所でなく、どうやって自分が殺されて遺体が運ばれたのか分からないと被害者の霊が言うとその場にいる警察官達は揃って頭を抱えてしまう。

 

 言うまでもなくこれは犯人のマジシャン顔負けの犯罪トリックによるもので、冥子は頭を悩ませる警察官達を見て感心したような顔をする。

 

「あらー? これが噂に聞く犯罪トリックなのねー? 凄いわねー?」

 

「いや、感心してどうするんですか? ……それにしても」

 

 冥子の言葉に返事をした後、リュウダが被害者の霊を見ると、被害者の霊は捜査が進展しないことに悲しそうな顔をしていて、それを見たリュウダは霊に同情する。

 

(自分が何で死んだのか分からないってのはやっぱり辛いんだろうな。……仕方がない、か)

 

「冥子先生? 俺も捜査に協力してもいいですか?」

 

「ええー? リュウダ君って、占いとかできたっけー?」

 

「占いはできませんけど、被害者が死ぬ少し前の行動くらいなら分かりますよ」

 

『『……………っ!?』』

 

 被害者の霊を憐れんだリュウダが冥子にそう言うと、冥子だけでなくその場にいた全員の視線がリュウダに集まる。しかしリュウダは警察官や被害者の霊の視線を無視して喫茶店の店内を歩くと、ある場所で足を止める。

 

 リュウダが床に視線を落とすとそこには「彼にしか見えない血溜まり」があって、リュウダがその血溜まりに触れて霊力を送ると血溜まりから一瞬だけ火が起こり、立体化した人の影のようなものが現れた。立体化した人の影はどんな顔や格好をしているか分からなかったが、それでも被害者の霊とシルエットが同じように見えた。

 

『『……………っ!』』

 

 立体化した人の影に警察官達は驚き絶句するが、それを構わず人の影は何かの作業をしていると、突然苦しんだような動きをして床に倒れ、床に倒れた状態のまま被害者の遺体が発見された場所にと移動していく。冥子達や警察官達はこれらの動きから見て、立体化した人の影は被害者が死ぬ直前までの動きを再現しているのを何となくだが理解した。

 

「師匠、これって何ですか?」

 

「これは最近使えるようになった能力で、サイコメトリー(精神感応能力)の応用みたいなものだ。エリナもいつかは使えるようになるんじゃないか?」

 

「おおー! 流石師匠! 凄いですね!」

 

 エリナの質問にリュウダは人の影の動きを観察しながら答える。

 

 今リュウダが使ったのは、ゲームのダークソウルで別のダークソウルのプレイヤーが死んだ瞬間の動きを再現する能力だった。実は血溜まりが見えるようになったのは米花町に来てからで、この能力を使ったのは今回が初めてであり、もしかしてと試したら本当に出来たことにリュウダは内心でかなり驚いているのだが、自分を師匠と慕ってくれているエリナの手前もあって内心の動揺を悟らせないように冷静な声で警察官達に話しかける。

 

「被害者の表情とかは分かりませんし、死ぬ数秒前の行動しか分かりませんが、捜査のお役に立てますか?」

 

「え、ええ……。勿論です。ご協力、感謝します」

 

 警察官の一人がリュウダに礼を言うのと同時に立体化した人の影が消えて、リュウダの足元から子供の声が聞こえてきた。

 

「ねえ、お兄ちゃん? 今の影ってもう出せないの?」

 

「ん? いや、何度も出すことは出来るけど……え?」

 

 子供の声に答えながら足元を見たリュウダは、そこで眼鏡をかけた小学生の男の子と目があった。……あってしまった。

 

 その男の子はとある推理漫画の主人公であり、米花町に来たリュウダが何よりも恐れていた人物だった。

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