『朝のニュースです。昨日、突如日本全国で同時に起こった謎の停電ですが、調べによりますと諸星あたる君が呼び出して利用した宇宙船のタクシーの料金の徴収であることが判明し……』
「ああ、昨日の停電って諸星が関係していたのか」
朝、自宅のテレビを見ていたリュウダは、昨日起こった謎の停電の原因がクラスメイトの諸星であることを知ると、原作の知識を思い出す。
「宇宙船のタクシーってことはラムさんが地球にやってくる話か……。確か原作だったらタクシーの料金は石油だったけど……こっちの方がいいか」
リュウダが知る原作は、ラムの熱狂的なファンと言えるクラスメイトのメガネ達が再びラムを地球に呼ぼうと、無理矢理仲間にした諸星と一緒に降霊術のような儀式をするのだが、結果呼び出したのはラムではなくて別の宇宙人のタクシー。そうと知らずに諸星達は自分達で呼び出した宇宙船のタクシーに乗ってしまい、その運賃として宇宙船のタクシーは日本中の石油を徴収しようとしたが、そこで現れたラムが諸星の家で住むことを条件でタクシー代を肩代わりし、宇宙船のタクシーは徴収した石油を返還して日本全国に石油の雨を降らせたのである。
実際に日本全国で石油の雨が降れば、様々な場所で決して小さくない被害が起こったことだろう。その時の状況を想像したリュウダは、タクシー代が電気だけで良かったと本気で思った。
「まあ、これから大変になるだろうけど頑張れよ、諸星。……もっともこれから大変なのは俺もだろうけどな」
ラムが来たことでいよいよ本格的に災難に満ちた日常を送るであろう諸星に同情の言葉を送りながら外に出る準備をするリュウダだったが、その表情はどこか暗かった。先日、ソウル欲しさに無許可で悪霊を退治していたところを美神に捕まった彼は、今日から期間限定でとあるゴーストスイーパーの助手をすることになったのだが、そのゴーストスイーパーがかなり厄介な人物だからである。
六道冥子。
極楽大作戦の登場人物の一人で、美神と同期のゴーストスイーパー。大昔から続く由緒正しい式神使いの家系で「十二神将」という非常に強力な十二の式神を操り、しかも大財閥のお嬢様で美神とはタイプの違う美人と、天に二物も三物も与えられたような女性と言える。
……しかし彼女、六道冥子には大きな欠点があった。
式神とは常に霊力を送っていないと暴走してしまうという危険な一面を持っており、使う式神が強く数が多い程必要とする霊力は大きい。
そして冥子は子供の頃から十二神将を従えているため、気がつけば十二神将全てを出している癖があり、十二神将を暴走させないためには、膨大な量の霊力を出し続けながら平常心を保つ必要がある。だが彼女はいまだに子供っぽいところがあってメンタル面が弱く、ちょっとしたことで取り乱して式神を暴走させるのだ。そう、例えば……。
「キャーーーーーッ!?」
「ギャーーーーーッ!?」
今回のように……。
「キャー! キャー! キャー! 怖い!? 怖いーー!」
『『ーーーーー!!』』
とある廃工場にて一人の女性が泣き叫んでおり、その周囲では獣を模した霊体が見境なく暴れまわっていた。
この泣き叫んでいる女性が六道冥子であり、周囲で暴れまわっている霊体こそが彼女の式神、十二神将である。
冥子は廃工場に出没する悪霊を退治する依頼を受けてここに来たのだが、突然現れた悪霊の容貌に驚いて平常心を失い、現在十二神将を暴走させていた。
「いや……。アンタの方がよっぽど怖いよ……」
悪霊は十二神将の暴走によりすでに撃退されているのだが、十二神将はそんなことお構い無しに暴れまわっており、その様子を最初に暴走に巻き込まれ地面に倒れたまま見ていたリュウダは小声で呟くと意識を失った。
「……なあ、馬鹿弟子よ? 何やら最近、ここにくる頻度が増えていないか?」
冥子の助手になってから三日後。ダークソウルの世界で呪術を習うためにクラーナの元へやって来たリュウダは彼女にそう言われた。
事実、この三日間リュウダがダークソウルの世界に来る頻度は増えており、その原因はもちろん現実世界で冥子の暴走に巻き込まれ気絶する回数が増えたためである。
「そうですか?」
「うむ。それと、ソウルの集まりも以前に比べて悪くなっているような気もするな……。これでは呪術の修行もいつ終わるか分からんな」
「……………!?」
この時、クラーナが何気なく呟いた言葉を聞いたリュウダに稲妻が落ちた。
言われてみればこの三日間、現実世界で悪霊を見つけても、冥子の暴走に巻き込まれて退治することができなかった。
病み村のモンスターを倒すより現実世界で悪霊を退治する方がはるかにソウル集めの効率がいい。それが出来ないと言うことは、クラーナとの呪術の修行が遅れ、彼女がクラーガと混沌の娘と再会できる日が遅くなることを意味している。
(こ、これは何としてでも現実世界で悪霊退治を再開せねば……!)
目的のためにそう決意したリュウダは、もう冥子の式神の暴走を何とも思わなくなった。
確かに冥子の式神の暴走は理不尽で凶悪だが、ダークソウルの世界にはもっと理不尽で凶悪な敵や展開がいくらでもある。そう……。
ダークソウルのプレイヤーに、この程度の理不尽で折れるようなやわな心の持ち主は一人もいないのである!!
「よし、やるか……!」
やる気を出したリュウダは早速、現実世界で冥子に式神を暴走させずに戦わせる方法を考えるのだった。