女神「暇なのでヒト雄をTS異世界転生させますわ!」   作:怪文書製造機withノベリスト

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吉政「明日はそのピアス外してきてくださいね」

 

現世 田中吉政

 

 

私はよく、その夢をみる。

これが始まった時期はよくは覚えていない、いや、思い出したく無い。

その夢の内容はこう言ったものだ。

 

いつも唐突な始まり方をする。

獣の様な悍ましい雄叫びと、聞き慣れた声の少女が、苦痛に悶え泣き叫ぶ絶叫が響く空間。

辺りを漂う、暴力と獣性が混ざり合った、むせ返る様な倒錯的な淫臭。

そんな中に唐突に、私は地面に転がされる。身動きが取れない。

そして、私の目の前で、いつも獣は笑っている。

その口元を醜悪に歪ませながら、支離滅裂な淫猥で残虐な言葉を喚き立てながら。

そして、在らん限りの暴力をもって、私の愛する彼女を、私の眼前で、傷つける。

 

そんな夢だ。

 

泣き叫ぶ声を聞きながら、その身を昂らせ、

その恐怖に満ちた顔に自らの獣欲をぶつけ、嬲る。

馬乗りになって首を絞め、磔にして鞭を打ち、腕を折り、爪を剥がし、目をくりぬき、

舌を噛みちぎり、何度も、何度もその欲望をぶつける。

 

やめろ、何でもする、どんな事でも構わない、だから彼女を傷つけないでくれ。

と私は泣き叫ぶ。

だが、夢の中の獣は、それを嘲るように、歓喜に満ちた遠吠えを叫び獣性に狂う。

目の前で、何度も、何度も、執拗に。私達の幸せな日常を踏み躙る様に。

 

そんな夢だ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

放課後になった。

学生達が活気好き、思い思いの言葉を発して、廊下に楽しげな喧騒が満ちている。

笑い声を上げながら生徒たちが私の隣を通り過ぎてゆく。

 

女子生徒「おっ!よしちゃんじゃん!またね〜!」

 

吉政「ええ、さようなら。明日はそのピアス外してきてくださいね。」

 

部活動へ向かう者、街中へ遊びに行く者など、三者一様、様々だ。

 

遠くから大きな足音を上げ、駆けて行く生徒が見えた。…しょうがない。

 

吉政「廊下は走らないでくださーい!危ないですよー!」

 

遠くから「はーい」というわかってるんだか良くわからない調子の声が聞こえてくる。

…確か、一年生の人だったか。何度も一風紀委員として注意しているのだが、

その廊下を走る癖は一向に治る気配がない。困った人だ。

 

賑やかな校舎、活気溢れる生徒。

そんないつもの日常を肌に感じながら、

私はいつもの様に淡々とした足取りで旧校舎へ向かっている。

 

空いた窓からは春の陽気な陽が差し、温かな春風が身を包む。

外は爽やかな青で染まり、雲一つない。いい天気だ。

 

今日の帰り道は、散歩がてらに一緒に河川敷を歩いて帰るのもいいかもしれない。

そんな事を歩きながら考えていると、目の前に古ぼけた扉が見えてくる。

 

私はいつもの様に手をかけ、扉を開く。

古く傷んだ扉が軽い木の軋む音を上げる。最初は気になっていたが、慣れてしまった。

 

扉の向こうは狭くニ方を本棚に囲まれた部屋、我らが文芸愛好会の部室だ。

勝手知ったる我が家の様な場所、そしていつもの様にそこに座っている女子生徒に声をかける。

 

吉政「お疲れさまです、愛莉。」

 

愛莉「あ、やっときた!よしちゃん遅いよ〜、あたし、すっごく暇だったんだけど!」

 

吉政「あ〜ごめんなさい、ちょっと風紀委員の仕事が立て込んでまして…」

 

このリスの様に頬を膨らませている彼女は、佐々木愛莉。

私の幼馴染みで、クラスメイトで、文芸愛好会の一員、そして私の親友だ。

 

愛莉「はぁ〜、相変わらずよしちゃんって真面目だよね〜そんなもの適当に済ませちゃえばいいじゃん。」

 

吉政「性分なんですよ。適当にやってしまうと後から気になってしまいますし。」

 

私は彼女といつもの様に他愛無い事を喋りながら座り慣れた椅子を引く。

錆びついた椅子の金具が、聞き慣れた金属音を響かせる。

 

愛莉「そんな事いって〜私より仕事の方が大事なんでしょ〜!」

 

吉政「そんな事ないですって。」

 

彼女の戯けた非難の声を受け流しながら、椅子に腰を下ろす。

ゆっくりと自重に合わせて身が沈み、いつもの視線の位置で落ち着く。

 

愛莉「え〜うそだ〜顔にかいてあるよ!ちょっとこれは許せませんね〜アイス奢ってくれないと許せないですよこれ!」

 

吉政「わかりましたって、いつもの店のいつものアイスですよね。今日の帰り道に一緒に食べに行きましょう。それで機嫌直してくれますか?」

 

愛莉「ヒュー!さっすがよしちゃん!愛してるぅ!」

 

吉政「はいはい、ありがとうございます、嬉しいですね。」

 

コロコロと変わる彼女の顔を正面に見ながら、いつもの気ままさに苦笑をこぼす。

彼女と向かい合わせの席、ここが私の定位置だ。

 

おちゃらけた彼女と、ダラダラと喋りながら文集を書く。

それがこの文芸愛好会の、設立当初から変わっていない日常だ。

私の大切で、何ものにも代え難い、幸福な日常だ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

部屋に来てからいくらか時間が経ち、部屋には2人分の文字を記す音が筆先から響く。

指先から感じる紙質、硬く短い単調な筆記音。心が安らいでいく感覚を感じる。

 

愛莉「そういえばさ〜、あれ、どうする?あれもうそろそろじゃん。」

 

滞りなく文を書きながら彼女が適当な質問をこちらに投げる。

愛莉お得意のあやふやな質問だ。

私も筆を滑らせながらいつもの癖で反射的に返答する。

 

吉政「あれってなんのこと…ああ、もしかして桜花祭のことですか?」

 

愛莉「そうそうそれそれ!まあメインはあたしらの文集だけどさ〜

なぁ〜んかもう一捻り加えたく無い?」

 

桜花祭。この青嵐学園で5月に行われる部活単位の文化祭の様なものだ。

外部からの来客もあり、規模としてはかなり大きな催し事だ。

 

吉政「別にこのままでいいんじゃないですか?もう文集は出来上がってますし。

別に新入部員を集めたいわけでもないですし。」

 

桜花祭は文化系の会に於いて重要な催し事だ。

何故ならばこの学園生活に於いて最も自分の作品をアピール出来る機会だからだ。

上手くやれば部の予算も上がるだろうし、新入部員を獲得する機会にもなる。

 

だが、私達は愛好会だ。頑張ったところで予算は出ない。

そもそも、この愛好会を立ち上げた理由は、

愛莉が2人で放課後に何かしたいと駄々を捏ねたのが原因だ。

正直なところ、私も今のままで良いと思っている節もある。

頑張る理由が見当たらないのだ。

 

愛莉「え〜そんなおばあちゃんみたいな枯れた事言わないでさ〜

せっかくのお祭りじゃん!若者ぱぅわーを一緒にぶち撒けようよ〜」

 

吉政「私は男なのでおばあちゃんじゃありません。

…そう言っても何するんですか?できる事は少ないと思いますけど。」

 

愛莉「実はさ、いいこと思いついちゃったんだよね〜

気になる?ねぇ気になる?気になってきたでしょ!」

 

吉政「いえ全然。愛莉がそうゆうこと言う時って大抵碌なこと言わないじゃないですか。」

 

愛莉「ええ〜そんな事ないって!いつも最高の案しか出してないじゃん!」

 

吉政「この前私に女物の水着を着せてプールに連れていこうとしたこと、忘れていませんよね?」

 

愛莉「だって〜、中学生ぐらいから2人で一緒に水着着て泳ぎに行ったことってなかったじゃん。だからムリヤリ連れていこうかな〜って思って。」

 

吉政「それも問題ありですが、私は女物の水着を私に着せようとしたことを言っているんですよ。」

 

愛莉「いいじゃん別に、よしちゃんなら絶対似合うと思うよ?」

 

吉政「良いわけがありませんよ。そんな変態じみた事はしたくありません。」

 

愛莉「つれないな〜、まあでも今回の案はきっと気にいると思うよ!」

 

吉政「聞くことだけはしますよ。」

 

愛莉「よしちゃんがメイド服を着て文集を配るの!!

どう?これって最高の案じゃない?

全校生徒みんなよしちゃんにメロメロになちゃうねぇ!」

 

吉政「……」

 

愛莉「ちょっと〜無視しないでよ〜。」

 

吉政「……」

 

愛莉「え〜冷た〜い、傷つくわ〜。」

 

戯言を宣う愛莉の言葉を聞き流しながら、気分転換に窓の外を見る。

高かった陽は落ちてきて、空は赤い夕暮れに染まり初めている。

ふと時計を見てみると、帰るには丁度いい時間だ、と時針が私に伝える。

私はこの事を伝えてようと振り向き……

 

愛莉「そぅれっ!!」

 

唐突に愛莉から抱きつかれる。

その柔らかな艶かしい体の感触が、私の背を通して、伝わってくる。

 

愛莉「あはは!ねぇびっくりした?」

 

その甘く、艶冶な香りが私の理性を狂わせる。

 

愛莉「よしちゃんがいけないんだよ〜無視するからさ〜」

 

その明るく、無邪気な笑顔が、私の中の獣性を刺激する。

 

私は、そのか細く、艶麗なその首に、手をかけようと………

 

回されている腕を優しく解く。

 

吉政「…やめて下さい。

年頃の女の子なんですから、男性に対してこんな事をしてはいけませんよ?」

 

愛莉「え〜なにさ〜ちょっとは驚いてくれてもいいじゃんか。」

 

吉政「そんなことより、もういい時間ですし帰りませんか?

アイスを食べてから帰るには丁度いいんじゃないですかね。」

 

愛莉「ん〜まぁ確かにそうかも、んじゃ帰ろっか。」

 

吉政「ええ、そうしましょうか。」

 

私達は互いに頷きあって後片付けを始める。

手慣れた作業だ、あっという間に片がつく。

 

愛莉「いやぁ〜たのしみだなぁ〜あそこのって他とは一味違うんだよね〜」

 

先に終わっていた愛莉が椅子から立ち上がって扉に向かう。

 

吉政「本当に愛莉はあそこの店大好きですよね。」

 

彼女の陽気な雰囲気に絆されながら、

私も彼女を追う様に席を立とうとして

 

 

瞬間、何か強烈な感情を背後から感じる。

 

刃を突きつけられている様な、その鋭利な感情によって背筋に悪寒が走る。

 

咄嗟に後ろへ振り向く…誰もいない。

 

愛莉「?どうしたの?」

 

吉政「あ、いえ、何でもないです。」

 

多分気のせいだったのだろう。

私はそう結論付け、彼女の後を追った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

誰もいない部屋。

夕暮れ時になり薄暗くなってきたその空間に、唐突に人影が現れる。

 

現れたのは長い緑髪をした女。

 

その女は何かを思案する様に顎を撫でながらその虚な目を宙に漂わせる。

暫くすると口元を歪め、喜ばしげに言葉を呟く。

 

「いやはや、これは結構な掘り出し物かもしれませんね。えぇ。」

 

発した言葉が静寂の中に消えてゆき、その女の姿はそれと共に夕闇の中に掻き消えた。

 

 

 

 

 

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