R×R ーレイパー×レイパーー   作:ケツマン=コレット

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念能力者図鑑

 卯月

 特質系念能力『霧雨魔理沙(ウヅキコウセイ)

 霧雨魔理沙(きりさめまりさ)とは弾幕系シューティングゲーム『東方(とうほう)Project』の主人公である。
 卯月が自身を魔理沙と深く思い込むと発動し、思考や言動がゲーム内のキャラクターと同じものに変わる。
 卯月のときの記憶も失い、周りの人間や現象も『東方(とうほう)Project』のものと考えてしまう。
 戦力も非常に強化されるのだが当の本人は自覚していない様子。



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 卯月の変化。

 それに全員が気取られ、一瞬の静寂が訪れたのち、それを破ったのはコンクリートが激しく砕ける音だった。

 音の方に目を向けると、竹刀を振り下ろされぺしゃんこになった日生と、その後ろ。

 全身が浅黒く染め上がり、一回り体を大きくした蓮。

「オメェら……いいかげんにしろよ」

 蓮は自分を無視して卯月の元へと向かった日生に対し、凄まじい怒りを覚えていた。

 蓮の念能力『アングリーアンクル』は単純な思考に入ったときほど、本領を発揮する。

 そのオーラ量はすでに日生を超えていた。

「どいつもこいつも、訳わかんねぇことしやがって。俺を無視すんじゃねぇ!」

 ツバを吐き、怒号を放つ蓮に対し、

「きゃぁ~!」

 打って変わって、似つかわしくないまるで乙女かのような声を日生があげた。「助けてぇ、魔理沙ぁ~!」

 その声に反応すると、卯月は玲兎と柚子湯の2人を建物の上に放り投げると、蓮に向かって突撃。

 箒でタックルをぶち当てると蓮は吹き飛んだ。

「おい! 大丈夫かアリス……って、アリスがいっぱいいる?」

 日生のことをアリスと思い込んでいる卯月は、5人もいる日生を見て首をかしげた。

「ここ! 私が本体よ!」

手を降る日生を見た瞬間、颯爽と側に寄った卯月はお姫様抱っこで日生を抱えると、空へと飛んでいった。

「全く、人形遊びも大概にしてくれよな、アリス!」

「いや~ん。ごめ~ん、魔理沙」

 日生が猫撫でごえで甘えると同時、卯月の周りに4つのミカンが飛んできた。

 それはまばゆい閃光を放ったと思うと、次の瞬間に炸裂した。

青春爆弾(オレンジボム)

 周りに風が荒れ狂うほどの爆発だったが、巻き込まれたかと思いきや卯月はいつの間にか玲兎の元へいって日生をおろしていた。

「うぇ? マァジかよ」

 そういったのはミカン投げ、建物の上に降りた梓。「あれ避けられるの? 完璧にやれたと思ったのに。ショックなんだけど」

「だめね」

 その隣で腕を組む神奈。「あれはオーラの質も量も、何もかも変わってる。変身って言っていいわね。多分、特質系かしら。あのクソ雑魚なめくじの卯月と同じ人間と思わない方がいいわね」

「オイてめぇらなんだゴルルァ! ぶち殺すぞ!」

 突然の刺客に蓮が巻き舌で叫ぶと、拓哉がその肩に手を置く。

「蓮さん。アイツラは大佐組の奴らです。顔を見たことがある。神奈と梓」

「あら、そっちの乳首は話がわかるのね」

 神奈は2人を見下ろしていった。「そう、ウチらは大佐組。あんたたちとは同盟組んでるから攻撃しないし、そっちからも攻撃はやめてね。ただウチらも標的は卯月組長だから。早いもの勝ちってことで」

「無茶苦茶だなぁ、おい」

 と拓哉。「こんなもん邪魔以外のなにでもない。同盟違反じゃないのかよ」

「ウチらは双方、戦争しない攻撃しないって話でしょ。たまたまターゲットが同じなだけよ」

「やっぱし無茶苦茶じゃねぇか。こんなのまかり通るのかよ」

「さあ? 詳しくは組長どうしで話するんじゃないの」

「拓哉さん」

 蓮は歯ぎしりをして、今にも神奈に襲いかかろうとしている。「()っちゃっていいすか、あいつら」

「蓮さん。気持ちはわかるけど、今はその時じゃない。俺たちの目的はあっちです」

 神奈、梓。蓮、拓哉の4人が一斉に一方へ向く。

 そこには話の終わりを待っていたのか、足をバタつかせながら箒に座っている卯月がいた。

「お、もう終わったのか?」

 いつの間にか日生の分身たちはいなくなっていた。

「ホイじゃ、心おきなくーー」

 刹那。

 一瞬、視界に入るすべてが白がかったかと思うと、轟音とともに卯月の真上から地を揺らす落雷が落ちた。

 筆を取る時間はいくらでもあった。

 智がじっくりと書き上げた『落雷』の文字は、卯月の真下に貼り付けた瞬間、たしかに激しい雷を読んだ。しかしーー

「良い技だねぇ。だがしかし!」

 智の後ろにいつの間にかいた卯月。

 それに気がついた瞬間、すぐに振り返り念を込めた筆で攻撃しようとしたが。

「気配の消し方が甘い。『光符(こうふ) アースライトレイ』!」

 筆が当たる前に、卯月の指先から放たれた閃光が智を包み込む。

 光に焼かれながら壁に叩きつけられると、悟はその場で膝をつき、伏せに倒れた。

 早い。

 落雷に先に気がついていたとはいえ、その速さは目でとらえる事が出来なかった。

 それに全員が驚き、絶句していると。

「なにぼーっとしてんだよ」

 卯月は箒に乗って空に上がる。「そっちから来ないならこっちからいくぜ!」

 神奈たちに向けて手をかざすと、そこに巨大な魔法陣が現れた。

「 『魔符(まふ) スターダストレヴァリア』!」

 魔法陣から放たれる無数の閃光弾が雨のように4人に降り注ぐ。

 神奈と蓮はその体で耐え。拓哉は蓮の後ろに、梓は建物の影に隠れた。

 閃光を受けた建物や『白の特攻兵(アクメソルジャー)』が衝撃で少しずつ削られていく。

「規格外すぎるだろ!」

 建物を砕く轟音が周りを囲うなか、梓が叫んだ。「マジでやばい!」

「まずは、一番デカいお前からだ!」

 魔法陣から依然、閃光が降りしきる中、卯月は後ろにぐるっと旋回すると、

「『彗星(すいせい ) ブレイジングスター』!」

 箒から念を放出し、一気に亜音速まで加速した。

 瞬く暇すらない一瞬の内、拓哉は突進する卯月の動きを予見し、2体の『白の特攻兵(アクメソルジャー)』を蓮の前に出して守るも、まるでクッキーかのようにその2体を砕き、蓮は箒のタックルを食らうと数100m後方に吹き飛び、廃ビルに激突した。

 返す刀、卯月は180度切り替えしてまた加速した。

「うぉ!」

 今度の標的であった木村は間一髪のところで避けた。「何をするんだ卯月組長! 僕は味方だぞ!」

 卯月は通り過ぎたあと木村の頭上に来ると、目を見開いて見下ろした。「ほぉ、私の彗星(すいせい )よけるとはなかなかやるじゃん。でも私は卯月などではない!」

「はぁ?」

 木村は眉を寄せて小首をかしげた。

 自分を魔理沙と思っている卯月とは話が通じない。

「お前みたいなサングラス男の友達はいない。まあ、敵じゃないってなら見逃しといてーー」

 不意に卯月の後ろから飛びかかる神奈。

 卯月はそれをするりと避けたが、その避けた先に数個のミカンが投げ込まれる。

青春爆弾(オレンジボム)

 梓の能力は固めて放出した念弾を爆発させることができる能力。

 それはオレンジを媒体とすることで威力を増す。

「ヌォォォ!」

 爆発に飲まれ、体を焼かれた卯月は箒はぐっとつかみながらも、ぐるぐると回りながら飛んでいく。「痛っっってぇぇ。すごい火力だなこりゃ」

 箒に乗り直し、服についたすすを払いながら、卯月は苦い顔でそういった。

「痛いって。普通直撃したら死ぬんだけど」

 梓はそういって屋上でオレンジを構える。

「いや、結構きいたぜ! 良い技持ってんじゃん!」

「バカにされてる気分。マジでショック」

 梓の周りに念が込められた無数のオレンジが浮かぶ。「次は確実に殺すから」

「おぉ! なら私も」

 わくわくしているかのように笑った卯月も、周りに小さな無数の、梓のそれよりも圧倒的な数の念弾を浮かせた。「弾幕勝負と洒落込もうか!『魔符(まふ) ミルキーウェイ』!」

「クソ! 『青春爆弾・謳歌(オレンジロード)』」

 双方相手向けて攻撃した。

 ぶつかりあう梓の爆弾と卯月の念弾。

 威力は梓のオレンジによる爆発が優勢だったが、その数。

 圧倒的密度の卯月の念弾がそれを補い余る勢いで、押し込んでいく。

「ウソッ……でしょ」

 梓は動揺していた。

 中距離戦闘には自身があった。

 正面の火力勝負では負けたことはなかったし、これからもそうだろうと思っていた。

 だが、それは違った。

 周りのオレンジはなくなった。それでも『ミルキーウェイ』は圧倒的密度を保ったまま梓に降り掛かった。

 梓は両腕を前に出し、全身をオーラで覆った。

 一つ一つの威力は低くく、軽く耐えられる威力だがその数。

 もはや周りの景色も見えなくなる密度で降り注がれては、どれだけ威力が小さくとも耐えられない。

 『ミルキーウェイ』が終わると、ボロボロになった梓は力なくその場に倒れた。

「チェリア!」

 技を出し終わったその後。

 一瞬のスキのうちに神奈が卯月へと飛び上がり、蹴りを放つと卯月が乗っていた箒が真っ二つに折れた。

 帽子が飛ばないように手で抑えながら地面に着地する卯月と神奈。

「これでお得意の高速移動はできないわね」

 神奈はそう行って指をクイっと手前に動かし、挑発するかのように手招きした。「肉弾戦はお得意かしら?」

「う~ん、そんなに自信はないなぁ。なんたって私は魔法使いだからな!」

「卯……いや、魔理沙。ここは僕が」

 卯月の後ろにいる木村が派生に入ろうとしたが、手をまっすぐ横に出してそれを止める。

「多勢に無勢は良くない! 近接戦闘は得意じゃないが、こんなのはできるぞ『末符(すえふ) ダークインフェルノ!』」

 卯月は手の平を下に向けると、そこから黒紫色の1メートルほどの長さの棒が出てきた。

 両手に握り神奈にそれを構える。

「さあこい!」

 卯月の叫びに神奈は苦虫を噛んだように顔を歪めた。

 神奈のような肉弾戦主体の能力は、具現化系の特殊能力をもろに受けやすい。

 卯月の戦闘の方法を見るにおそらくメインの能力は放出系能力。

 強化系とも相性がよく、今は変身によってオーラが増強されている状態。

 それなりに戦えると考えるのが妥当。

 それに加えあの具現化した棒。

 あれに特殊能力が付与されているなら、戦いはかなり厳しい。

 そもそも放出系のくせにどうしてそれが具現化が可能なのか分からないが、特質系なら何ができてもおかしくない。

 しかしながら、オーラは決して無限ではない。

 あれだけの技を連発したのだ。体から発散されているオーラ量は目減りしている。

 あの棒には触れない。

 サクッと顎に一撃入れて、すぐに身柄(ガラ)を持っていく。

 錬によりオーラを放出した神奈は、その強化された肉体で卯月に詰める。

 2度、3度。フェイントをかけ、卯月の視線がそれた好きに右の拳を顔面に打ち込んだが、間一髪、卯月はダークインフェルノでガードをしたものの、そのまま吹き飛ばされて壁に激突した。

「卯月!」

 それを見て叫ぶ木村。

 しかし、卯月は少しダメージはあるが、ケロッとしている様子で立ち上がった。

「ひー、ガードしてなかったらヤバーー」

 感想を言っているスキに懐へ飛び込んだ神奈は、顎に向けてアッパーカットを繰り出したが、また間一髪でダークインフェルノでガードされた。

 衝撃で中に浮き、体を捻らせて着地する卯月。

 立ち位置が入れ替わり、神奈は木村と卯月に挟まれる位置になった。

 ちらりと木村を警戒すると「おーい、手出し無用だぞグラサン」と卯月が警告する。

 どうも挟み撃ちする様子はなさそうだった。

 性格が変わっているため、フェアな戦闘を望むようになっている。

 ちらりと攻撃した拳を確認する神奈。

 あの棒に触れたが、今のところ何も起きない。

 長時間触れないと発動死ないのか? さっさと殺して()らないと……まて、殺したらだめだ。周りに死んだところを見られたらだめなんだ。殺さずに連れてかないと幸福じゃないから。

 さっと神奈の頭が冷たくなった。

 思考がおかしい。

 周波数の定まっていないラジオのようにノイズが入り込む。

 ……まさか。

 額に汗が一筋流れ、神奈は「あんた……その棒」と卯月を睨みつけると、卯月はニンマリと余裕の笑みを見せる。

「効いてきたかな『ダークインフェルノ』が。こいつの能力は人を狂わせるだ! ちなみに飴ちゃんにもなるぜ!」

 やはりかと思い、神奈は表情を曇らせる。

 思考へと介入する能力。

 その能力が真価を発揮するのは操作系や具現化系といった、使用するのに脳みそを使うタイプで、強化系能力者には発揮されにくいだろう。

 神奈にとってはそれほど脅威ではない。

 ただそれは使い手が肉弾戦のレベルが低い場合。

 そこまで変わらいレベルの体術を使う者同士なら、圧倒的に使い手が有利。

 放出がメインで有りながら『ダークインフェルノ』を具現化できてる卯月の能力が稀なのだ。

 逃避一択。

 単純に考えれば勝ち目はないし、もし神奈が通常の思考ならすぐミッションの完遂は難しいとすぐに逃げ出しただろう。

 しかし、『ダークインフェルノ』に蝕まれた思考は、その答えをすぐには出させなかった。

 冷静な判断をくだす前に、卯月が神奈へと詰めよる。

 卯月の拙い棒術は躱すことは難しくない、しかし、完全に触れてはならないともなると難易度は遥かに高い。

 カウンターを狙い、2度、3度と躱すが、顔面に来た棒をとっさに腕でガードしてしまう。

 まずい。

 そう思ってももう遅かった。

 卯月はすぐに距離を取らず、ガードされた腕にグリグリと棒を押し付ける。

「クソ!」

 反撃に蹴りを繰り出すもさらりと避けられる。

 動揺がオーラの動きを鈍らせて、それによって神奈の行動の予測を用意にしていた。

 クソ、だめだ。このままじゃ。

 神奈は乱れる頭で思案する。

 これじゃあ幸福じゃない。倒せない。幸福は義務なのに連れていけない。

 ここは逃げるべきじゃないのか? ただ幸せじゃないなら死ぬしかない。いや、幸せはどうかは関係ない。今は目の前の卯月を倒して連れて幸福は義務。

 かなり思考が蝕まれ、もはや逃げるという選択肢は出てこなかった。

 ほくそ笑む卯月の顔が悪魔の用に見え、怒りも湧いてくる。

 感情に身を任せた直線的な動きで卯月へと攻撃するも、フェイントもクソもない攻撃は卯月には簡単に避けらた。

「おいおい、冷静じゃなくなってるぜ!」

 躱しざまに卯月は6発の攻撃を見舞う。

 神奈はすべてをガードするも思考が更に狂っていく。

 だめだ、幸福なのは義務だから、このままでは死ななくては行けない。いや、今は幸福は関係ない。今やるべきなのはーー

 もはや頭の中はノイズでいっぱいだった。

 逃げる、避けるといった行動がすぐに取れず、コンマ数秒、棒立ちでいると卯月は神奈を足で蹴り倒し、その腹に棒を突き立てた。

「ボーっとして、どうしちまったんだ? まだ戦いの途中だぜ!」

「ウッ、ウガアアア」

 水の中に黒絵具を流し混むように、頭の中に狂った思考が流れ込んでいくのを感じる。

 『ダークインフェルノ』を掴んで立ち上がり、卯月の脳天に振り落とすも躱される。

 コンクリに叩きつけられ、折れた『ダークインフェルノ』は細かい流砂になって消えた。

 もう、神奈の思考は完全に狂っていた。

 幸福なのは義務。だから幸せじゃないやつは義務を果たしてない。死ななくてはいけない。あいつは、卯月は、あいつは悪魔。幸せじゃない、死ななくちゃ行けない。幸福なのは義務だから。幸福なのは義務なんです。幸福なのは義務ナンです。幸福なのはギムナンデス。幸せですか? 義務ですよ。果たしてますか? 義務ですよ。幸福じゃないならーー

「絞首……銃殺」

 神奈は卯月にかすかに聞こえる声量でつぶやく。「銃殺、釜茹で、溺死、電気、火炙り、生き埋め、焼きそば、石打ち、(ノコギリ)(ハリツケ)……、好きなのを選んでね♪ ンッヒィ♪」

「何だぁ急にぃ。うーんそうだな、私は魔法使いだからーー」

 対話の意味は無いも同然だった。

 神奈の飛び蹴りをさらりと躱す卯月。

「人の話は最後まで」

 神奈の体を覆うオーラは不安定だった。オーラの薄い部分。柔い箇所を目掛け、卯月は拳を落とした。「聞くもんだぜ!」

 叩きつけられる神奈。

 立ち上がる様子もなく、一瞬で気絶した。

「オイ……オイオイオイオイ!」

 不意に響く男の声。

 その方に全員が視線をやると、鮮血が全身を染めた新庄が興奮した様子で立っていた。「やべぇのがいるじゃねぇか! とんだデザートだぜ!」

 帽子に手を置いて、はあとため息をついた卯月は「なんだよもう、次から次へーー」といったところで、咄嗟にやってきた念のチェーンを避けた。

「しかも、人の話を聞かないやつばっか!」

「強引な男はお嫌いかい?」

 チェーンを回しながら新庄が問うと、卯月は不敵な笑みで返した。

「いや、私もおんなじぐらい強引だぜ!」

「気が合う」

 返事と同時に2本のチェーンが振り降りるも、間一髪で卯月は避けて指先から念の閃光を放つ。

 新庄の胸部に直撃。服を裂き、焦げた胸部を手で撫でる。

「きくねぇ」

 新庄はそう言うが、ダメージよりも戦いによる快楽が勝ってるような顔だった。

「なんだぁ、お前変態かぁ。私にそんな趣味はないっ!」

「そう言うなよ、ちょっとぐらい付き合ってくれよ!」

 高速チェーンが卯月に迫り、それを躱して光線を返す。

 双方実力はほぼ五分。

 しかし、スピードで上回る新庄が徐々に卯月を詰めていく。

「こいつはちとまずいな。ならこいつはどうだ『恋符(こいふ) ノンディレクショナルレーザー』!」

 そう詠唱すると卯月の周りにいくつかのカラフルな念の塊が出現。

 その塊は狙いもなく8方に向かって光線を放った。

 それは新庄だけではなく味方の玲兎や木村を巻き込んだ。

「っ危ない!」

 突然きた閃光を間一髪で避ける木村。

 玲兎たちもそれを見て少し離れ、別の建物の屋上へと移った。

「ハッハッハ! ディスコみたいで楽しいな!」

 不規則な『ノンディレクショナルレーザー』と卯月からの光線をギリギリで避けながらも新庄は笑いながらチェーンを振るう。

 魔理沙と化した卯月は確かに強い。

 しかし新庄も化け物じみている。

 連戦によってダメージもあり、オーラを消費した今の状態ではおそらく負ける。

 突然、ピタリと卯月は攻撃をやめた。

「お前強いな……私負けるかも」

 そう語りかけると、新庄も同じように攻撃を止める。

「なんだぁ。降参でもするってか? つまんないこと言うなよ、どっちかが死ぬまで楽しもうぜ」

「降参? 私の辞書に降参の2文字はない! でもこのままではやばいのでこれを使う!」

 卯月が手のひらを上にして具現化させたのは、手のひらサイズ、八角形の低めの筒。

 上には規則的な模様に真ん中に陰陽のマークがある。

 それが具現化され、卯月の手の中に収まった刹那、その場にいた全員の時が止まった。

 走馬灯。

 圧倒的な強さを前に、味方ですら死を直感した。

 新庄は額から滝のような汗を流し、十分離れているにも関わらず、更に距離を取った。

 理屈や論理など関係ない。生き物としての本能が体を動かした。

 しかし、それは無意味だった。

「『恋符』!」

 30メートルほど先にいる新庄に向かって、卯月は八卦炉を構えた。

 瞬間、後退りしてしまうほどの莫大なオーラが卯月からほとばしる。

「待って! 魔理ーー」

 玲兎の警告など、耳に入るはずはなかった。

「『マスタースパーク』!!」

 八卦炉から放たれたのは閃光か。

 いや、その大きさと強烈な光は迫りくる太陽に思えるほどだった。

 避けるためにあるだけあるオーラをすべて足に込め、最大の力を使い、跳躍した新庄だったが、虚しくも簡単に光に飲まれた。

 卯月が八卦炉を少し上に構えていたため、その巨大な閃光はある一定を進んだ後は上へと飛んでいく。

 それはいつまでも続き、雲を裂いて天を貫いた。

 『マスタースパーク』が終わった後、卯月の前の建造物はほとんどが消えうせ、更地とかした。

「はーっはっはっは! ちょっとやりすぎたぜ……ああ、でも……魔法使いすぎて、眠ーー」

 バタリと卯月はその場に倒れた。

 霧雨魔理沙に、限度などあるはずがなかった。

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