具現化系念能力『
両の手にガシャポンのケースを発現し、その間に入ったものを100分の1の大きさにし、中へ収納できる能力。
体から離れると19秒ぐらいで能力が解かれてしまう。
武器として使うものは普段から、腰の服の裏に隠しているポ◯モンみたいな能力(小並感)
そこにいたのは腕を組み、壁にもたれかかった筋骨隆々のうんこ臭い男、田所。
体臭をコントロールできるのか、先程まで臭っていなかった異臭が部屋を包む。
「話? どうして僕がキミと話をしなきゃいけないんだろう。おしゃべりは好きじゃないよ」
「知っとるわ快楽殺人者。ただ、ウチみたいなクソザコナメクジは殺す気にもならんやろ」
「どうだろう。僕は気まぐれだから、キミみたいなお調子乗り、なんとなくで殺しちゃうかも」
「それもないなー」
大佐は体を倒し、余裕そうに田所を見上げた。
「へぇ、それはどうして」
田所の組んだ腕から、トランプがちらりと見える。
回答を間違えれば死ぬ。
「ウチと手を組んだほうがいいって、それぐらいは分かるやろ」
田所の眉がぴくっと動く。
「ふーん、手を組む……ねぇ。僕そういうの基本しない人なんだけど。それに、キミと手を組んだらどんないいことがあるんだろう。もし口だけって言うなら、その嘘つきの舌、落としちゃうかもよ」
「嘘つきて、ならあんたは自分の舌ズタズタにしたら?」
「遺言はそれでいい?」
田所がトランプにオーラをまとわせると、額に汗をかいた大佐はぴっと人差し指を一本前に立てる。
「それは……どういう意味だろう? 1週間待ってくれってやつかな」
「1番や。ウチが知る限り、1番強いやつをあんたと
「へぇ~」
口では興味ない素振りをするも、田所の目はかすかに輝く。「それは、いつ頃だろう。僕、待つのは苦手なんだ。ラーメン屋の屋台とか、並んでたら食べないんだよね」
「せっかちやな。まあその要望にお答えしたるわ」
大佐の顔が闇の中でニヤリと笑う。「明日や」
豪殿の一室。
ソファーに腰かける聖也。
ゆったりと余裕がありそうに見えるが、その心中は落ち着かず、息が詰まる。
部屋の端に置かれた椅子。
そこに座る真締は両肘を膝に付き、前傾姿勢。
表情が硬い。カッと目を開いて前の虚空を見つめている。
オーラにはその人間の性質がよく出る。感情的になったときはなおさらだ。
熱くなる者、冷たくなる者。トゲトゲしくなる者、臭くなる者。
真締は重くなる。
オーラはそれほど放出されてはいない。
それでも、真締を覆う念からは底しれぬ重さを感じる。
そばにいるだけで、丸く水を含んだ大きな綿に押しつぶされそうな感覚を覚える。
相当キレているということだ。
「卯月組と、平野組がぶつかったらしい」
聖也の方には一切目をあわせず、独り言のように真締がそういった。
「そうらしいな」
「僕らは……いつ動く」
いつになく好戦的だ。
普段ではこんなこと、まず言うことはない。
「一旦は
大佐組監視役の肉おじゃと大椙が殺されたと連絡が入ったのが昨日の昼のこと。
ある意味、覚悟をしていたことだった。
監視というが、戦争中の相手に近づくということは、最悪の場合を想定して然るべきだ。
当人たちもそれを重々理解していただろう。
組長間での連絡もついた。
先に手を出したのはこちらからという話だ。
こうなると正義は向こうにある。
大佐組は近くにいた怪しい敵を倒した。降り掛かってきた火の粉を払ったに過ぎない。
そうなると、こちらも動きを止めざるを得ない。
ヤクザ同士の、ましてや戦争中に善も悪もあったものじゃないが、筋は通さないと4大組の中で孤立する可能性もある。
無論、準備はしてある。
豪組は臨戦態勢だ。
前準備もしているし、こちらが攻め込むため、正当な理由やアリバイ作りも進めている。
やられました。でも、何もしません。
そんなことはヤクザの世界ではまずない。
だが、だからといって考えなしに突っ込んでしまえば、向こうや他の連中の思うツボだ。
「お前も分かってるだろ。筋は向こうにある。迂闊には動けない」
「筋? 大佐組の言い分を素直に信じるのか」
真締は大佐組から伝えられたことを信じていない。
実際、本当がどうかは定かじゃないが、それよりも前提として、先に向こうのテリトリーに足を踏み入れたのはこちら側だ。
「大佐組が嘘をついてるかも知れねのは分かってる! それでもすぐに動けねぇのは、お前でも分かってるはずだろ!」
それは戒めのためか。
真締は左の拳を右手で強く握る。
ツメが食い込み、血が流れるほどに。
「GO教では、死んだ後、太陽の一部になると信じられてる。太陽の光になって、みんなを照らすんだと。今日、朝日を見ていたら、彼らの顔が浮かんだ。そして問われたんだ。僕たちはどうして死ななければならなかったんだって。このまま何もしなかったら、彼らの無念はどこに行く。彼らは、同じ仲間だったんだぞ」
「真締!」
「話は聞かせてもらった」
不意にドアの方から聞こえたのは豪の声だった。
ドア横の壁にもたれかかり、ニカっと白い歯を見せた。
「行って来いよ、真締」
深夜3時6分は闇の時間と言われている。
皆が寝静まり、物音のなくなった下北、そこからはヤクザの時間だ。
この時間が最も、殺し、殺されといった事件が多い。
今日もまた、新たな事件が起きようとしていた。
ほぼ、総動員といってもいい。
卯月組の本部組事務所を、平野組の構成員たちが囲っていた。
総勢70人。内能力者は10名。
卯月組の総戦力がどんなものかは分からないが、少なくとも本部のみにこの戦力に対抗する力はまずない。
肝心の日生もいない。
多少の犠牲はあるだろうが、ほぼ勝ち戦といっていい。
こういうときに、我先にと獲物に飛び込むのはあいつだ。
「卯月ィ!!」
突撃の合図をまたずに、2階の窓をぶち破って突入したのは新庄だった。
大方予想通り。
「新庄が勝手に突っ込んだ。全員、配置から突撃しろ」
全体統括の拓哉の指示で、次々に卯月組へと入り込む構成員達。
予想では新庄が荒らし周り、混乱しているところを叩けるだろうと思っていたーーだが、
平野は組長になってから実戦に入ったことがない。
位が上がっていけば、指示役に回るのはどこの社会も同じだ。
オーラをしっかりと練るのも久しいだろう。
それでもこの人はやはり強い。
隣に立つ蓮はそう思う。
ただ知力だけでのし上がれる程、多田野会は甘い組織ではない。
練りだされるオーラは歴戦の猛者のそれ。
その昔、首吊り平野の名で恐れられた彼は、まだ健在だった。
「僕らもいこう」
平野組の構成員が突入し終えた後、平野がそう言う。
「はい!」
これから戦いが始まるというのに、一種の高揚感を覚えていた蓮は、喜びの混じった叫びで返す。
卯月組の駐車場から中へ入ろうとしたとき、二人は足を止める。
対面から頭を書きながら、事務所から出てくる拓哉が見えたから。
「組長……まずいっず」
拓哉の表情はくらい。
悪い知らせを感じ取った平野は、眉を寄せて問う。
「どうした、拓哉」
「あいつらいないっす。ここ、モヌケの殻でした……組長、あいつら、もう解散したんじゃないっすか?」
聖夜は深くうなだれていた。
その横で、ヘラヘラと笑う豪はソファーにもたれかかりながら、スマホで動画を見ていた。
「なんであんなこと言ったんだよ」
聖也はうなだれながらも問いかける。「いま動いたら、どうなるかわかんねぇぞ」
「あいつをこのままここにいさせても、どうなるかわかんねーじゃん」
面白い動画でも見つけたのか、豪の口元はゆるい。「だったら、さっさと行かせたほうがいいかなって」
「でかい抗争になるぞ」
「なんねーよ。俺いったじゃん。いってもいいけど一人でいってこいってな。あいつはな、ただ話がしだいだけなんだよ、大椙たちを殺したやつと。そういうやつなんだよ。兵隊と一緒に行ってないんだから、ただの……訪問ってやつだな」
「向こうがそれをどう取るかだな。開戦と捉えられてもしょうがねぇぞ」
「そのときはそのとき! こっちだって準備してるんだ、大丈夫大丈夫。へーきへーき」
あまりにも軽すぎる返事に、流石に聖也もイラッときた。
「それによぉ、あいつ一人で行かせたけど、それで無事で帰ってくる保証もないだろ!」
「うーん、多分大丈夫じゃね?」
「多分って、なんだよそれ」
「だってさぁ」
豪はスマホの動画を止めて、聖也の方を見た。「能力者になって、いろんな奴みてわかったけど。あいつ、多田野会でブッチギリに強くね?」