R×R ーレイパー×レイパーー   作:ケツマン=コレット

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 念能力図鑑

 田所浩二
 変化型念能力「バンジーファック(伸縮自在の腸液)
 念を腸液と混ぜ合わせることで、ガムとゴムと腸液の性質を持つものに変化させる能力。
 付着、伸縮、潤滑自在で応報の幅が広いため、相手に能力を知られていても戦術的なマイナスになりにくい。
 基本的に変化型念能力は放出系と相性が悪く、直接触っていない腸液のパワーは弱く離れれば離れるほど効力が下がり、時間とともに消えていく。
 秋吉の能力は直線的にしかパワーを発揮できなかったため、ギリギリそらすことができた。
 どうして腸液を混ぜる必要があるんですか(正論)


1

内部戦争4日前

 

「今日もいい天気……ってわけじゃないわね」

 窓の外の曇り空をながめながら玲兎(レウ)はふうとため息を付いて、椅子に座り、机にひじをついて。

「こう天気が悪いとさ、温かいお茶も不味くなるってもんよ。そう思わない?」

 湯気が立つ湯呑を傾けながら、そう対面に座る木村と三浦に尋ねる。

「まあ……そうですね」

 木村はなんとなくそう答える。

 こ↑こ↓は多田野会、卯月組事務所の客室。

 多田野会には大きく分けて4つの組がある

 平野組、大佐組、豪組、そして卯月組だ。

 しかしながら、この卯月組、他の3組と比べてしまえば非常に弱い。

 収益(しのぎ)もヤクザらしからぬクッキーを売るという、なんともメルヘンなもので収益も少ない。

 故に、戦力も縄張りの広さも他の組より明らかに差が出ている。

 客室に通されるまで、構成員を何名か見かけたが、内部戦争間近というのにこれといって活気がない。

 負けることを見越しているといった様子だ。

 二人は裏のネットワークを使い、卯月組が戦闘員不足からかボディーガードの募集を確認し、それに応募した。

 田所はこの内部戦争に現れる。

 この戦争に潜り込み、最終的には田所を狩る(レイプ)のが、最終的な二人の目標だ。

「えーっと、木村と三浦だっけ?」

 玲兎は手元にあるA4用紙を見ながら、どこかけだるそうに問いかける。「レイパー教会。当然、念が使えるのよね」

「あまり念に関して、軽はずみには聞かないでほしい」

 応答したのは木村。「誰が聞いてるかわからない。君も念能力者なら知っているはずだ、この力は表に出てはならないものだと」

「ここは組事務所よ。その辺は安心して」

「いいやダメだ。敵がここを盗聴していないという保証もないだろ」

 数秒の沈黙ののち「確かにね」と玲兎はお茶をすする。

「僕たちは君たちヤクザの募集を受けたレイパー教会員。それ以上の情報は必要ないはずだ。戦闘力が怪しいというのであればーー」

 木村はポケットから菊紋(肛門)をかたどった銅のバッジを見せる。「このレイパー教会バッジが保証する。君たちの依頼を、僕らは全力をもって遂行する」

「なるほど、分かったわ、詳しいことは聞かない。ただあなた達はうちの組を守ってもらえばいい」

「分かってもらえて感謝する」

「それでさ……あんたらの本当のところの目的は何?」

 じっくりと、こちらを観察するような目つきで、玲兎はそう聞いてきた。

 カマをかけているのか?

「目的も何も、ただ高額のボディーガードの依頼があったから、僕らはそれを受けた。目的というのなら金、かな」

嘘吹(うそぶ)くなよ、二つ星レイパー」

 二つ星レイパー。その言葉に木村はそっと眉を潜め、横目で三浦を見た。

 その目つきには驚愕が見て取れる。

 二つ星レイパーは50人と存在しない高位の者たち。レイパー教会内ではたしかに有名だが、レイパーの情報は秘匿。そう簡単に知れるものではない。

「二つ星犯罪者(クライム)レイパー、木村。年間の犯罪者検挙件数、1919件。主に念犯罪を扱っている。二つ星自然(ナチュラル)レイパー、三浦。これまでに364種の絶滅危惧種の保護、繁殖に成功している」

 玲兎から語られるそれは、全て事実。

 ただ黙って二人はその言葉を聞いているしかなかった。

「木村、あんたは最強のレイパーと言われているそうじゃない。立派な功績に実績……金にも困ってないでしょうし、たかだかヤクザのボディーガードをする必要なんてあるのかしら? 何も知らないと思った? うちら(ヤクザ)舐めんなよ」

 玲兎から向けられる視線は鋭く、明らかな疑りをかけている。

 このままではまずい。

「木村ぁ」

 三浦が同様と戸惑いが込められたつぶやきとともに、チラチラこちらを見ている。

「大丈夫です、信じてください」

 交渉はすべて自分がやる。そういう手筈になっている。

「まず、最初に嘘をついたことを謝ろう。僕らの目的は別にある」

 木村がそういうと玲兎の眉間のシワがぐっと深まる。「目的は田所浩二。特A級犯罪者だ。僕らのことを知っているということは、こいつも知っているはずだ」

「まあね」

 玲兎は軽い様子でそう返した。

 悪名は名声よりも広まりやすい。

「田所浩二は……僕らの師範である秋吉を殺害して、その死体の口にこの内部戦争のことを書いたメモを残した。田所はこの戦争に潜伏している可能性が高い。やつを狩る(レイプ)するのが僕らの目的だ」

 ここはあえてすべてを話す。

 あちらがどこまで情報をはあくしているかわからない以上、隠すのは悪手だ。

 最初の目的は戦争内に潜伏している田所を探すこと。そのためには彼らの協力は不可欠。

 まずは信用を作る。

「ふーん、それはそれはまたとってもとっても大事なミッションね」

 明らかに含みのあるような言い方で、玲兎はそういう。

「自分たちのミッションを優先して、君たちの依頼を無下にする。そういいたいんだな」

 玲兎の心境を見透かしたように、木村はそう語った。「だが、そこに関しては安心してほしい。僕らはたしかに、師範を殺された復讐者だ。確実に奴を殺したい。だが、それ以前に依頼を受けたレイパー。レイパー教会の名にかけて君たちの依頼を最優先に遂行しよう。奴を殺すのはその後でもいい」

「担保は?」

「これを君に預ける」

 レイパー教会のバッジを、木村は机の真ん中に置いた。同じく三浦もそれに続いて置く。「レイパーの命であり最大の商売道具だ。これがなくては僕らの活動は一気に制限される。それとーー」

 木村は右手の中に三本のナイフを具現化させた。「僕らの念能力を君に教える」

 念能力を教える。これは多大なるリスクを背負う。

 全容を知られれば対策も容易い。

 敵に知られてしまえば完璧な対策をたてられ、最悪死に直結することとなる。

 念能力者には相手の思考を読み取る者もいる。なので、能力というのはコンビネーションでも組まない限り、仲間にも教えないのがセオリーだ。

「ほーう」

 玲兎は興味ありげに、右の眉をくいっと上げる。「盗聴の危険性がある、じゃなかったっけ」

「その危険性は十二分に分かっている。ただ、先に君たちのことを甘く見て事情を隠そうとしたのはこちらだ。リスクは背負う。まず、僕の隣にいる三浦。彼の能力は『知恵捨て(チエステ)』ただでさえ低いIQを下げる事により、強大なオーラを生み出す強化系能力だ」

「見たけりゃ見せてやるよ」

 三浦はそういい『知恵捨て(チエステ)』を発動させると、どんどん顔つきが鋭くなり、まるで旧日本帝国武人の風貌に変わる。

「説明の割にはさっきより知恵がありそうに見えるけど」

「顔はそうだが、脳みそはかなり退化している。短絡的な行動しか取れないし、細かい命令も無理だ。彼はそもそも頭が悪いから、下手に策を練るより、リスク込の強化系の超強化で戦ったほうが効率がいいし、実際に強い」

「へー、面白い能力ね。鉄砲玉にはちょうどいい。で、あんたは」

 木村は右手に握られていたナイフを3本見せる。

 一見三本は同じナイフに見えるが、それぞれ柄の部分に丸く赤、青、黄色の色がついてある。

「僕の能力は通常時は『三色(トリオ)ナイフ』。三本までナイフを具現化できて、それぞれ能力が違う。赤は純粋強化。普通のナイフよりもよく切れ、威力も高い。青は付着した血をターゲットにその血の主を追従する。黄色は刺さった周辺に電気を発する」

「なにそれ」

 黙って聞いていた玲兎が突然そういった。「そっちのバカの能力はまだいい。ただあんた、その三馬鹿ナイフとかいうの、なめてるの? 典型的なクソザコナメクジ能力じゃない」

 玲兎の言っていることは正しかった。

 念能力は自分の特異な系統を極めた能力にするのが一番効率がいい。

 木村は具現化系でありながらその能力は強化、放出、変化と他の適性を必要とする。

 様々な状況に対応できるといえば聞こえはいいが、適性がないためすべての能力がその本来の力を発揮できず、全てにおいて中途半端な弱い能力となる。

 これは知識の無い念能力者にありがちなことだ。

 しかし、秋吉を師とする木村がそんなことを知らないわけはない。

「この僕の能力は気がついたら発現していた。僕が選んだものじゃない」

「それはご愁傷さま。ほんとにあなた最強と言われてるレイパーなの?」

「説明がまだだ。僕の能力は通常時(・・・)はこれで変わりない、ただーー」

 木村がグラサンを書けた瞬間、玲兎は息を呑んだ。

「あんた……なに、そのオーラは」

 木村から発せられたのは通常では感じられない、異質な重さを持つオーラ。

「僕はグラサンをかけている間だけ、全ての念系統を100%の適正で使うことができる。『逆襲時間(なめてんじゃねーぞ)』これを発動している間のみ、僕の念能力は進化する」

 そこから語られたのは木村が最強たる所以。

 それを聞いていた玲兎は驚愕とともに、どこか安堵していた。

 敵でなくてよかった。

 そう思っているのは明らかだった。

 

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