R×R ーレイパー×レイパーー   作:ケツマン=コレット

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念能力者図鑑

優乃

操作型能力 『刺激的な接吻(ディープキス)

視界内にいる対象の口呼吸を封じる


23

 やれやれ、こんなとこから始まるとは。

 と思いつつも、とりあえず豪の作った穴から覚醒剤工場へと、聖也は降り立った。

 工場のど真ん中。メインの覚醒剤製作所。

 カラフルな薬液が、チューブを通ってビーカーや試験管に詰められている。

 熱烈な歓迎、があるかと思っていた。

 非能力者の20や30を相手する予定だったが、そのような洗礼はなく静かだ。

 敵がいないわけじゃない、先程までせっせと覚醒剤を作っていたのか、割烹着にマスクをしている構成員がピストルや日本刀を持って、周りにまばらに10名ほど見える。

 それでも、攻撃する様子も、近づく様子もない。

 手を出さない様に言われているのか?

 それ以前に、状況と飲み込めていない雰囲気も見える。

 どうもきな臭い。そう思った瞬間、顔にめがけて飛んできた念弾を首を傾けて避けた。

「私が合図したらこいつを殺せ!」

 そう叫びながらやってきたのは、優乃。

 その後方には頭に包帯を巻いた桜も見える。

 とっさに、近くにあった机の下に聖也は潜り込んだ。

 アレは真締の報告にあった、能力者姉妹。

 流石にアレを相手しつつ、周りの奴らに責められたら俺といえど苦しい。

 ならーー

 聖也は自分の体を包む様に両腕を交差させ、胸の前でクロスを作った。

 そのまま跳躍。

 机の少し上までくると、飛び立つ鳥のように、両手を広げる。

飛翔拡翼(スプレッドフェザー)

 聖也を中心に八方へと広がる、念で作られた羽。

 それらは周りの構成員たちを貫いた。

「姉様、後ろへ!」

 手負いの桜をかばう様に、優乃は全身を堅で固めて前に出る。

 各所からうめき声が聞こえ、バタバタと大佐組構成員が倒れる。

 堅で固めているというのに、優乃の体は各所から血が吹き出る。

 防御を固めた念能力者でこの威力なら、非能力者はショットガンを全身に浴びたようなものだ。殆どが死んでいる。

 息があるものもいるが、戦闘に参加はできない。

「やるじゃん」

 フラスコなどを踏み砕き、机の上に降りた聖也は笑って見せた。「雑魚なら今ので死んでるぜ」

「優乃、行きなさい! 援護する!」

「分かりましたわ!」

 桜は左手、優乃は右手に、槍型に固めた念を握り、優乃が近づいて来る。

 なるほど、と聖也は思う。

 鼻呼吸と、口呼吸の阻害と、中途半端な能力と思ったが、最初からコンビネーションを前提とする能力にすることで、放出系の念能力の威力をあまり落とさないようにしている。

 念も弱くないーーただ、考えが甘い。

 真締を仕留められなかったお前らに、

「俺を討てる分けないだろ」

 親指の付け根を重ね合わせ、手で鳥の形を象る聖也。

 念を込め、それを前に突き出す。

鷲の軌道(イーグルショット)

 鷲を型どった念弾がその手から放たれる。

 距離は十分にあった。警戒もしていた。

 しかし、その速さ。

 優乃はとっさに横に避けたが、右の肘を弾がカスり、切断。

 優乃の右腕が血を拭きながら宙を舞った。

「ウグッこ、このチンカス野郎っ」

「ゆ……の」

 ハッとした優乃は、目を見開いて振り向く。

 そこに見えたのは、左の鎖骨あたりを中心に、念弾によってポッカリと穴が開き、力なく膝をついていた桜の姿。

「逃げ……な……さい」

 床に落ちた桜はそういって事切れた。

「素直に遺言、聞いとけよ」

 両手を広げて、優乃に語りかける聖也。「俺はいいぜ、邪魔しないならな」

 何も語らず、ただ桜を見つめていた優乃は、ゆっくりと顔を聖也のほうにやった。

 その顔に、聖也は言葉を失う。

 優乃の目は白目が黒く、瞳孔は血の様に赤く染まっていた。

 鮮血を散らしたような匂いの、圧縮された念が、体の周りを漂っている。

 殺意。逃げる意思なし。殺す。

 そう思った瞬間に気がつく。

 息ができない。鼻も口も。

 死念。

 桜の優乃を思う気持ちが、死後、優乃に自分の能力とオーラを受け渡した。

鷲の(イーグル)ーー』

 聖也は胸の前で手を交差させたが、優乃の放った槍を躱すた、構えを解いてその場でしゃがむ。

 速い。

 反撃の姿勢を取ろうとするが、一瞬にした間を詰めた優乃の裏拳が、聖也の頬を叩く。

 衝撃で横に吹き飛び、床を転げ、机に激突して止まる。

 依然、息はできない。

 優乃は間髪おかずに追撃の姿勢。

 とっさに起き上がる聖也は、低姿勢のまま、左手を前にし、弓を番えるような構えを見せる。

燕の軌道(スロワーショット)

 低く、鋭い軌道をした念弾を飛ばすが、それを優乃は軽く避けて見せると、胸を蹴り、仰向けに倒れた聖也の肩に槍を突き立てた。さらに腹を踏み込み、身動きを取れなくする。

 呻く聖也。息は一度もできず、視界が霞む。

「簡単には殺さない、なぶって殺す」

 優乃のギョロリとした目が聖也を更に睨むと、首を締め付けられるような感覚になる。

「ウグっ……カッ」

 締めつけは顔を近づけられると、更に強くった。

「死ね……死ねっ……死っ」

 瞬間、聖也の眼前は赤く染まった。

 それは優乃の背中を貫いた、燕の念弾。

 優乃は見えていなかった。

 燕は低空から上へと軌道を変え、孤を描き、自分の心臓めがけ向かっていたことに。

燕返し(バックバード)

 もたれかかってきた優乃の死体を、聖也はどかすと、ふーっと深呼吸をして立ち上がった。

「やべぇやべぇ、結構ヤバかったぜ」

 顔に掛かった血を拭っていると、後ろから近づく足音に気がつく。

 振り向くとそこに立っていたのは神奈。

「あら! ちょうど終わったとこかしら。次は私の相手してもらおうかしら」

 その顔には誰の返り血か、顎のあたりが赤く染まっている。

 脳裏によぎる、真締の顔。

「真締はどうした?」

「さあ、どっかで死んでるんじゃない?」

「そうか」

 視線を鋭くした聖也は、手を重ね、鳥を作る。「お前を殺して、ちゃっちゃと探しにいく」

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