新庄
変化型念能力「ギザギザ
念を刃付きのチェーンに変化する能力。
刃は表面を高速移動するため、巻きつけるだけで攻撃性がある
純粋にチェーンとして使えるので応用の幅が広く、使い勝手がいい。
内部戦争当日。
早朝。
「ーーてなわけでな、ウチの
「ほう、そんなことが」
平野組、組長室。
机の前に座る平野は電話越しに大佐の話に返答した。
内容は大佐の命を狙ったヒットマンを返り討ちにし、殺害したというものだ。
「それは災難だったな」
なぜ組長直々にこんな話を、内部戦争当日に電話してきたのか。おおかた察しはついていた。「うちはやってない」
「まあ、やったやつはみんなそういう」
怒っているわけではない。しかし、こちらを疑っているのは明らかな言い方だった。「まずありえないのが卯月組。あいつらはもともと武闘派じゃないし、いまは準備で手がいっぱいや。わざわざ裏のネットから傭兵を雇うぐらい戦闘員に困ってる。ほんで豪組。あそこも戦闘員は少なめ。
「だから我々がやったと。そう言いたいんだろうが、それは見当違いだ。ウチだって準備で手がいっぱいで、わざわざヒットマンを送り込んでいる暇はない」
「そうかぁ? 戦争でメインになるのは武闘派の多いウチらとあんたら。先に目の上のタンコブ潰しとこって思わんこともないんちゃうか?」
「僕のことを馬鹿にしているのか? そんなくだらない理由で無意味なリスクをーー」
「新庄」
大佐がその名を口にした瞬間、平野は語るのをやめ、眉を寄せる。
なぜ、そのことを。
「海外から帰って来たんやろぉ? ウチらの情報網なめたらあかんでぇ。あんたはそんなことをせんかもしれん。でも、そっちのイカレ野郎はどうやねん」
「勝手に差し向けた、ということか」
平野は数秒、思案する。「それはないな。彼が勝手なことをすることはわかっている。一応、こちらでも監視しているさ」
「監視? 監禁の間違いやろ。あいつのせいで、どんだけウチらが迷惑こうむって、どんだけの組員が死んだかわかってるんか」
返す言葉がなかった。
新庄が起こした他のヤクザとの火種で、多くの多田野会の組員が死んだことは理解している。
「そんときは味方やったからなぁ。まあ助けられた事もあったし、あんたが頭下げたから許したってたけどなぁ、今はわけがちゃうで。まだ戦争はスタートしてない。それでももう明確に敵や。暴れ馬やけどあんたに対してはそこそこの忠誠心はある。ほんで腕も立つとなれば、無視できひんで」
電話を持つ手がじっとりと汗で濡れる。
新庄の復帰。組長へのヒットマン。
2つの情報を悪意をもって流布されれば、新庄とヒットマンの存在を結び付けられてしまい、戦争内での平野組の孤立は免れない。
新庄がいるとしても、3派閥を一気に相手取るのは難しい。
そうなれば敗色濃厚。
平野が奥歯をぐっと噛み締めたとき、
「まあ、そんなんはどうでもいいわ」
先ほどとはうって変わって、あっけらかんとした大佐の声が聞こえた。「そっちがやったとは限らんしなぁ。まあ、可能性は十二分にあるんやけども、それは目をつぶろう。そっちよりも今後のことが大事や」
2秒ほど、大佐は間を開ける。
「手、組もうや」
大佐の提案は共闘。
手を組んだときに得られる利点としては、当面の大佐組との争いを回避できることだ。
戦闘能力の低い卯月組はおいておき、先に豪組を潰せれば疲弊したときに攻められる危険性は下がる。
しかし、平野にはわかっている。
裏切りと策略。大佐をイメージするとこの2つのワードが思い浮かぶ。
正直、この女よりも頭の回る人間を平野は知らなかった。
この提案も、おそらく裏がある。しかし、これを蹴るということは新庄とヒットマンの件を流布されることを意味している。
拒否はできないが、手を取ったとしてもその先は暗い。
ほんの数秒の沈黙。その中でも平野は膨大な情報を考慮し、思案を繰り返し、結論を出した。
「わかった」
答えは賛同。
大佐がどのように今後を描いているかは定かではない。
させはしない。手を組みながらも、その裏で必ず謀略を暴いて見せる。
最後に立っているのは僕だ。