別れを告げて 作:あいす
「はぁ……怖かった」
あれから無事に家に着いた阿孋だったが、やはり両親から叱られたらしくかなり堪えた様子で自室に戻って行く。約1時間程正座をし続けたからか、足が痺れまるで産まれたての子鹿の様に震えていた。「いくら何でも怒りすぎだよー」と、親に対しての愚痴を1人で延々と呟く阿孋。親の心子知らず、か。阿孋を心配したからこそ両親は強く阿孋を叱ったのだが、阿孋はただ怒られたという事実のみにしか視線が向いて無かった。親の心理というものは、自分が親という立場にならなければ分からないのかもしれない。ただ、それ以上に阿孋には惹かれてしまう者が居た。故に、阿孋には親の話など些細な問題に過ぎず聞き流してしまったのだ。では、その人物は誰か。それは、阿孋の友達である妖怪の少女、望未だ。
彼女を一目見たとき、阿孋に今まで感じたことの無い未知の感情が身体全体に走り抜けた。まさに雷が落ちるような衝撃を阿孋は受けたのだ。精巧に作られた人形の様に整った顔立ち。宝石の様に輝き、それでいてまるで深淵を覗いているかの様な、吸い込まれそうな程に澄み切った真珠色の瞳。陽の光に照らされ輝く、肩にかかるくらいに整えられたベージュ色の髪。全てが
現在時刻、20時30分。阿孋が何時も寝る時間だ。流石に人里で歩き続け疲れたのか、阿孋に強烈な睡魔が襲い、今にも意識が飛んでしまいそうである。だが、不思議とその睡魔が心地よくて、阿孋は今すぐにでも眠りに着きたいと感じていた。既に風呂とと着替えは済ませてある為、あとはもう寝るだけだ。阿孋は布団へ入り、目を瞑る。阿孋は、思い出に浸る様に楽しかった今日の出来事を一つ一つ思い出して行く。そして、無意識に呟いた。
「おやすみ、望未ちゃん」
阿孋が眠りに着くのには、数分とかからなかった。
阿孋の思いは、望未に届くのだろうか?