別れを告げて 作:あいす
人里の散策を再開してから約30分後。阿孋は人里の中を歩き続け疲れたのか、何処かに座れる場所がないか探し始めた。すると、阿孋は人混みの中に一瞬だが望未の姿を見つけた。阿孋は、先程まで休もうとしていた事など忘れて望未を追いかける。
「望未ちゃん!」
「わっ!?……あれ?阿孋ちゃん?」
「うん!久しぶり、望未ちゃん!」
阿孋は、望未に追い付くや否や背後から飛びついた。流石に思い切り飛び付くことはしなかったが、それでもやはり驚く物は驚く。望未は思わず声を上げてしまうが、飛びついて来た人物が阿孋だと分かると、直ぐに笑顔を作り挨拶を返した。
「久しぶり、阿孋ちゃん。まだ3日しか経ってないけどね」
「確かにそうだけど……。まあ、細かい所は気にしないで!」
確かに、3日会ってなかっただけで久しぶりなのかは疑問に思う所だろう。しかし、阿孋は余り考え過ぎない性格で、大抵の事は「まあいっか!」で片付けることの出来る人間だ。そこまで考えて発言してはいないと思われた。
「それでさ、望未ちゃんはこれから何処かに行くの?」
「えっと、私が何時も行ってるお花畑に行く予定だよ」
「そうなんだ!……あれ?でもこの近くにお花畑ってあったかな?」
「この辺りには無いかな?私が行く所は結構遠い所だから……」
望未の言葉を聞き、阿孋はガックリと項垂れる。「近ければ一緒に行きたいな〜」と考えていた矢先に告げられ、阿孋の望みは崩れ去って行った。
「そっか〜。ここから近ければ一緒に行きたかったんだけどなー」
「人里の外は危ないから……ごめんね?」
「ううん。私こそごめんね、急にこんなこと言っちゃって」
2人は互いに軽く謝罪をするが、軽くと言えども本気で謝罪をしている。そんな2人に、少しの沈黙と微妙な空気が流れ始める。だが、望未はそれを断ち切る様に阿孋に告げた。
「うーん……それなら、お花を摘んでこようかな?」
「え?良いの?」
「うん、大丈夫だよ。それで、阿孋ちゃんはどんなお花が好き?」
「私は黄色のお花が好きだわ!」
満面の笑みでそう答える阿孋。しかし、それは何時もの晴れやかな笑みでは無かった。何処か曇っているような、悩んでいる様な。作った笑みだったのだ。別に、阿孋が花が嫌いな訳では無い。むしろ花は好きな方である。では、何故か。それは……まだ分からない。阿孋自身が理解していないのだ。もし阿孋が理解する時が来るのなら、それはきっと、望未と本当の意味で友達となった時だろう。
「ふふ、わかった。それじゃあ、また明日に会える?」
「うーん、分からない。お父さんに聞かないと……」
「そっか……じゃあ、一応明日のお昼にここで待ってるね」
「分かったわ!明日のお昼にここへ集合ね。あ、もし私が来なかったら帰って大丈夫だよ」
「うん、分かった。それじゃあ私はそろそろ行くね。ばいばい、阿孋ちゃん」
「うん。ばいばい、望未ちゃん!」
2人は挨拶を交わし、別々の方向へ歩き始める。阿孋は、ふと空を見上げる。そこには先程の雲ひとつ無い青空は無く、薄黒い雨雲が空を覆っていた。阿孋は、予定を変更し家に帰る為その場を走り出した。どうやら、これから雨が降るようだ。