五河士道(23)によるデート・ア・ライブ   作:キラ

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恥ずかしながら戻ってきました。
大変投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。今後は2週間に1話のペースを目標に執筆していこうと思います。




狂三ネゴシエーション
喧嘩するほどなんとやら


「ふんふふふーん」

「おにーちゃん、また同じ曲聴いてるのー?」

 

 出勤前のひと時。ソファに座り、士道がスマホ+イヤホンで音楽を聴いていると、背後から琴里が声をかけてきた。

 

「よくわかったな」

「鼻歌のリズム、完璧に覚えちゃうくらい聞いたし」

 

 振り返ると、半分呆れたような表情で妹が立っている。

 

「ほんとに好きなんだね、その歌」

「おう。この人の歌全部に言えるけど、不思議と飽きが来ないんだよ」

「ふーん。ま、それはどうでもいいんだけどね」

 

 どうでもよかったらしい。

 

「今日の夜、十香の家でパーティーするのはちゃんと覚えてる?」

「もちろんだ。料理作るのは俺だしな」

 

 数日前から、十香は五河家の隣に建てられたマンションで生活している。これは、精霊である彼女が立派に人として生きて行けるようになった証だ。

 その記念として、引っ越し祝いを兼ねた小さなパーティーを開くことになったのである。一応の発案者は士道で、彼が思いつきでこぼした言葉を採用して話を広げたのが琴里だ。

 

「それなんだけど、四糸乃が鳶一さん呼びたいって言ってたよ?」

「鳶一を?」

「うん。だから今日聞いてみてくれる? 夕方来れるかって」

 

 先日の一件以来、四糸乃は折紙に心を許しているようである。士道としても、彼女達が仲良くなることは大歓迎なので、ぜひパーティーに誘いたいところだ。

 

「よしわかった」

 

 快諾するとともに、イヤホンを外した士道は鞄を持って立ち上がった。

 ぼちぼち出勤の時間である。

 

 

 

 

 

 

 数日前、折紙は十香に謝罪をした。

 対精霊部隊のASTの一員である彼女が、精霊だった少女に頭を下げたのだ。これは大きな一歩だと、士道は確信した。

 確信したのだが、だからといって何かが劇的に変わるわけではない。

 

「というわけで、夜刀神の引っ越し祝いをすることになったんだが来ないか?」

「……夜刀神十香の?」

「そんな露骨に嫌そうな声出すなよ……」

 

 一般人が聞いたらわからない程度の声色の変化ではあるが、自称鳶一検定3級の士道には彼女の感情がそれなりに読み取れるのである。

 つまるところ、謝ったからといって別に折紙と十香が仲良くなったわけではない。命のやり取りをすることはないだろうが、以前と同じくいがみ合うこともしばしばであり、担任教師である士道の悩みの種のひとつになっている。

 

「お祝いには四糸乃も来るんだ。というか、あの子が鳶一を誘ったんだけど」

「いつどこに行けばいいの」

「変わり身早いな!?」

 

 四糸乃の名前を出した途端、急に眼の色を変える折紙。ちょっと前まででは考えられないような態度に少々面食らう士道だが、悪いことではないので特に問題はない。

 

「夕方の……そうだな、6時半くらいに俺の家に来てもらえればいいんだが」

「わかった」

 

 どうやら用事もないらしく、すぐに了承の返事を得ることができた。四糸乃もきっと喜ぶに違いない。

 できれば、十香ともそんな感じで仲良くしてほしい、というのは難しい願いなのだろうか。

 彼女の気持ちをはっきりわかってあげるには、鳶一検定1級が必要になるのだろう。

 

 

 

 

 

 

 その日の夜。

 十香の部屋で行われた引っ越し祝いパーティーは、つつがなく進行した。

 当初は士道ひとりで作る予定だった料理も、早めにやって来た折紙が手伝ってくれたおかげでより豪華な出来に仕上がり、食欲が大変盛んな十香も大満足の様子だった。

 士道の心配の種であった十香と折紙の絡みも、特にお互いいがみ合うこともなく。結論から言うと、なごやかな宴に違いないものだった。

 

 ……食事を終えた後、十香がある物を引っ張り出すまでは。

 

「じゃーん! テレビゲームだ!」

「ウルトラマンの対戦ゲーム……十香、いつの間にこんなの持ってたんだ」

「ひとりでいる時にストレスを溜めないよう、こっちでゲームを用意しといたの」

「なるほど。でもなんでウルトラマン?」

「うちのクルーの趣味」

 

 士道の疑問に答える琴里。どうやらラタトスクのメンバーの中に特撮好きがいるらしい。

 兄妹で話している間に、ケーブルの接続などをささっと済ませた十香はビシッと人差し指を前に突き出していた。

 

「鳶一折紙!」

「なに」

「私と勝負だ!」

「……かまわない」

 

 十香の誘いに乗り、手渡された2Pコントローラーを握る折紙。

 

「お、まずはそのふたりで対戦か。頑張れよー」

「え、えっと……どっちを応援すれば……」

 

 十香のことも折紙のことも好きな四糸乃は、どちらにエールを送るべきか困っている様子。そんなことで真剣に悩めるところもまたいじらしいと士道は思う。

 

「しかし、命の奪い合いをしていたふたりが仲良くゲームか……うん、いいことだ」

 

 うれしいことなので、素直にそんな感想を漏らすと、隣にいた琴里が腕を組みながら低い声でこう答えた。

 

「仲良くねえ……ま、そうなればいいけど?」

 

 

 

 

 

 

30分後。

 

「はっはっは! これで私の10連勝だな!」

「………」

「私のゾフィーにお前のエースは手も足もでない! やったぞシドー! 鳶一折紙に勝った!」

「………」

「勉強ではだめだが、これなら鳶一折紙にも楽勝だな!」

「………」

 

 勝ち誇り笑みを浮かべる十香。彼女としては大して煽るつもりはないのだろうが、そのはしゃぎようは完全に折紙を挑発するものであった。

 

「あ、あはは……。鳶一、あまり気を悪くしないでくれ。十香も悪気があるわけじゃ」

「わかっている」

 

 わーいわーいと両手を挙げる十香と対照的に、折紙はどこまでも静かだった。正座してコントローラを膝に置いたまま、ただひたすらにリザルト画面を凝視している。

 あまりに視点が動かないので、士道が気味悪さを感じるほどである。

 

「と、鳶一?」

「受けた屈辱は3倍、いや5倍、いや10倍にして返す。それが鳶一家のやり方」

「お、おう……ほ、ほどほどにな」

「心配しなくていい。あなたには迷惑はかけない」

 

 燃えていた。

 折紙の瞳は、ただ復讐の炎に燃えていた。

 

「あーあ。これは十香、あとで痛い目見るかもねー」

「お、折紙さん。がんばってください……」

『でもリベンジはやりすぎないようにねぇ』

「ありがとう。四糸乃はいい子」

 

 そして四糸乃と話す時には優しい瞳に変化していた。同じ元精霊でも、十香と四糸乃に対する彼女の反応はまったく正反対だ。

 

 

 

 

 

 

 そして、約1週間後。

 

「ウルトラギロチンサーキュラーギロチンバーチカルギロチンホリゾンタルギロチンギロチンショット」

「ぬわ、ぬお、ううっ! やめろ、ゾフィーの身体がバラバラになってしまう!」

「勝負に情けは無用」

「それにしてもだな、お前はさっきから切断技ばかりではないかっ」

「エースはギロチンの専門家だから仕方ない」

「ゾフィーはウルトラ兄弟のお兄さんなんだぞ! ナンバーワンなのだぞ!」

「もう長男の時代は終わり。いわゆる下剋上」

「ぬうううっ」

 

 再び十香の部屋を訪れた折紙は、完膚なきまでに十香の操作するウルトラマンを叩きのめしていた。一見無表情に見えるが、その口元は確かに愉悦に歪んでいる。

 そんなふたりの様子を後ろから眺めていた琴里は、チュッパチャプスを口にくわえたままため息をつく。

 

「やっぱりこうなった。士道、これで十香の機嫌が悪くなったらちゃんとフォローしなさいよ」

「ああ」

「……なんでうれしそうなわけ?」

「理由はどうあれ、あの鳶一が自分の意思で十香の家に遊びに来たことに、ちょっと感動してる」

「あんな憎しみ丸出しな感じでも?」

「憎しみって言っても、以前のそれに比べれば可愛いもんだ。ゲームで勝ってニヤニヤできるくらいなら、喧嘩友達の範囲に収まるだろうしな」

「ふーん」

 

 もう一回! と叫ぶ十香とうなずく折紙。再び光の巨人同士の戦いが始まる中、琴里はコントローラをガチャガチャ鳴らす彼女達の背中を眺めていた。

 

「ていうか、あれでニヤニヤしてるの? 鳶一折紙」

「微かにな。よーく見ないとわからないレベルだけど」

「……ぜんっぜんわかんない」

 

 顔をしかめる妹を見て、士道は笑う。折紙のポーカーフェイスを見破るには、付き合いの長さがなにより必要なのだ。

 

「わ、私はなんとなくわかるかも……」

「おう、やるなあ四糸乃。鳶一のことが好きだからわかるのかもな」

「シドー、私の仇をとってくれ! 折紙を倒してくれー!」

 

 助けを求める十香の声。どうやらまた負けたらしい。

 

「しょうがないな。見ていろ、俺のゼットンが火を吹くぞ」

「五河先生が相手でも勝負は勝負。容赦はしない」

 

 その後も、なんだかんだで場はそこそこ盛り上がり。

 

「え、えっと……ここをこうして、スペシウム光線」

『四糸乃とよしのんの共同作業だよー』

「四糸乃は上達が速い。見込みがある」

「あ、ありがとうございます」

 

 パペットをつけたまま器用にコントローラを操作する四糸乃を折紙が褒めたり。

 

「確かに四糸乃はいい子だが……むう」

「なんだ、十香も優しくしてほしいのか?」

「だ、誰が鳶一折紙なんかに!」

「まあまあ。じゃあ俺が手取り胸取り教えてあげよう」

「シドーが教えてくれるのか? それならいいが……む? 手取り胸取り?」

「バカ兄は変な造語を十香に教えないの」

 

 琴里にツッコまれながらも、士道が十香にゲームのコツを伝授したり。

 そんな、ありふれた日常の一コマを楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 同時刻。

 天宮市のとある裏路地で、ひとりの少女が夕焼け空を見上げていた。

 

「ああ、ああ。もうすぐ、ですわ」

 

 軽やかなステップを踏むその姿は、彼女がすこぶる上機嫌であることを示している。

 

「五河士道さん。わたくしと出会えるその日を、楽しみにしていてくださいまし」

 

 一度も会ったことのないはずの青年の名を親しげに呼びながら、彼女は優雅な……それでいて不気味な笑みを浮かべていた。

 




先日劇場版見てきました。久しぶりに動くヒロインたちが見られて大変満足できました。でも折紙さんの出番少なくないですかね……元気そうだったのでいいですが。

長期間間隔が空いてしまった本作ですが、大まかなプロット自体はできているのでなんとか続きを書いていきたいです。
まだ期待してくださっている読者の方がいらっしゃるかどうかわかりませんが、完結目指して頑張ります。少しでも楽しんでいただけると幸いです。
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