ウマ娘がいる世界において、アイドルはどういった立ち位置なのかか

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ウマ娘界のアイドル事情

「今日もか……」

 

 新聞の一面を眺めながら男は小さくつぶやく。その新聞の表紙には大きなゴシック体の赤字で『シンボリルドルフ、二冠制覇。三冠に王手。』と書かれた記事が載っていた。しかし男の関心はそこでは無い。男は彼女が三冠を取ろうが途中で夢が途絶えようがそこまで気にはしない。問題は別にあった。

 

「配信楽曲ランキングTOP3は今週もウマ娘達が独占か……」

 

 それは音楽関連の記事であった。そこには今週や今月のカラオケで歌われた楽曲や配信サイトでダウンロードされた曲などがランキング形式でリストアップされており、その順位はここ最近は軒並み変わらずウマ娘達が使用する楽曲が独占状態にあった。

 

「いい曲だとは思うが、このままじゃなぁ……」

 

 男は憂鬱そうな顔を浮かべる。男としてもこの順位に不満がないわけでは無いが理解はしている。しかし納得はしていなかった。

 

「このままじゃアイドル業界の先は暗いな……やっぱり楽曲勝負じゃなくてキャラクター重視で行くべきか?……いや、ウマ娘達はレースでかなりのドラマを見せるからな、そこに感銘を受けてファンになる奴も多い。てなるとキャラクター勝負じゃ負けるのは目に見えるな……かと言って楽曲勝負は今のとこ全戦全敗。時たまTOP10圏内に入るが相手を考えるとまだまだだが……いやいやいやいや、焦んな俺。目的は彼女達を世界一のアイドルに育て上げる事でありウマ娘達に勝つ事じゃねぇ。現にファンは少しづつ増えてるし、このままいけば……」

 

 男はどんどんと自分の世界に入っていった。やがて完全に没入し、言葉が止まらなくなっていく。

 

「だが、彼女達のアイドル生命は短い。俺にとっては計画の一部だとしても、彼女達にとっては人生の全てでもあるそれを忘れんなよ。だが生き急ぐと確実に喰われる。なんせ向こうの業界は綿々と続く一大グループ。それにこんな中小アイドル事務所が勝つには並大抵の覚悟じゃ焼け石に水だ。だが彼女達のスペックは確実に勝てる可能性を秘めてる。それに前例が無いわけじゃねぇ。90年代の『バーニング娘、』に2010年代の『UMA76』も一時期はウマ娘達以上のブームを作ってみせたんだから可能性はあるんだ……」

 

「失礼しまーす。プロデューサー、プロデューサーさん目当ての客来てますけど……プロデューサー?」

 

 ドアがノックされると同時に一人の男が入ってきた。

 

「プロデューサー……プロデューサー!!」

「どうわ!!なんだ!?ってお前かよ。何度も言ったがノックをしろ」

「さっきからずっと鳴らしてましたけど全然出ないんですもん。それより、なんかプロデューサー目当てで人来てますよ」

 

 部屋に入ってきた男の言葉を聞きプロデューサーは目つきを変える。

 

「……女子か?」

「はい。結構明朗快活な感じでしたよ。今時珍しい」

「ほほう、歳は?」

「詳しくは聞いてないですけど、高校生くらいですかね?制服も来てましたし」

「ふむ、高校生か……分かった。通してくれ」

「え?いいんですか?」

 

 プロデューサーの一言に男は少したじろぐ。

 

「何を驚く?わざわざこんなところに尋ねてきたんだ。面会もせずに突っぱねるのは言語道断だろ」

「い、いや、そういう訳じゃなくて……あのー」

「なんだ?はっきりしろ」

「いや、えーっとですね……」「すいませーん!まだですかー?」「あ!ちょっと!」

 

 男の奥の方から女子の声が聞こえてきた。声色はまだ若く、高校生である事が嘘ではないという事は分かった。

 しかし、次の瞬間男の思考は一時停止した。

 

「あ!あなたがこの事務所のプロデューサーさん!?初めまして!あなたのハートをスマートにダッシュ♪ スマートファルコンです☆」

 

 そこには目下の敵であるウマ娘(アイドル色強め)がいたのだから。

 

 

 



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