ダンジョンにシカクイ奴が居るのは間違っているだろうか   作:taimanman

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気づけば近くに居るクリーパーは死ね

 天を衝く長大な建造物が建ち並んでいた。

 そこまで広大な訳でもない幅狭のスペースに密集している姿は槍衾のようにも見える。

 中でも中央に(そび)え立つ塔は、都市(オラリオ)中心にあるバベルには届かないまでもこの剣山の中では群を抜いて高い。

 見上げるのも首が痛くなってくる建築郡はオラリオ最北端にある。

 人が住むには過剰な大きさの建物は、ここを拠点としている【ファミリア】の威厳を示していた。

 

 そう、ここは都市最大戦力を誇るファミリアの拠点。

 【ロキ・ファミリア】ホーム。『黄昏の館』である。

 つい昨日まで静かであったこの場所は、今はロキ・ファミリアの団員達の声で賑わっていた。

 数週間にわたって行われていたダンジョン『深層域』への遠征が終わり、多くの者達が解放感に満たされた今は普段以上の賑わいを見せている。

 そんな中でもやるべき事は各々存在するようで、魔石の売却やドロップアイテムの売りつけ、不足したアイテムの補充等の為あわただしく動き回っていた。

 なかでもファミリア最高幹部である【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナ、【九魔姫(ナイン・ヘル)】リヴェリア・リヨス・アールヴ【重傑(エルガルム)】ガレス・ランドロックの三人は、主神ロキと共に遠征の顛末について話し合っていた。

 

 「......とまあ、こんなところかな。特に問題になってきそうなのは新種の芋虫型モンスターだね」

 「あー、さっき言うてた何でも溶かすっちゅうやつか」

 「ああ、あの新種は危険だ。対策しておかなければ次回以降の遠征で部隊がまるごと溶かされるかもしれない」

 「確かアイズたんの剣だけは溶かされんかったんやったっけ」

 「あの剣には『不壊属性(デュランダル)』が付いていたからね。それに『風』を使えばあの溶解液も届かせずに闘えていた」

 「つまり現状アイズだけがあの新種とまともに闘えるということだな」

 「逆に言えばアイズが居らねば闘いにすらならんということじゃ。出遭うたら即逃げるしかない」

 「うーん、つまり次回の遠征までには不壊属性(デュランダル)の武器をいくつか用意しとかんとあかんと」

 「まあそういうことになるね。それに関しては......」

 「あー、わかったわかった。それについてはうちがファイたんとこにお願いしにいくわ」

 「悪いね。神ヘファイストスと繋がりがあるのは現状ロキだけだからね。よろしく頼むよ」

 「おう。任せとき」

 「ああ。それに関してはそういうことで。それで他に注意しておかなければいけないことは......特には無いかな」

 「そうだな」

 「うむ」

 「それじゃそろそろ解散......と言いたいところだけど、一つだけ皆の耳に入れておきたいことがあってね」

 

 そう、不穏な事をフィンが言い出す。

 

 「ん?なんだ?」

 「知っての通り僕らはミノタウロスを逃がしてしまった」

 「ああ、我々の落ち度だ。......まさか誰か被害にあった冒険者が居たのか?」

 「いや、幸い今回は他のファミリアの冒険者に被害は出なかったよ。まあそれでも迷惑は掛けたろうけどね。ただ話はその事じゃなくて後に起きたことについてだ。あの後僕らは部隊を分けて帰っただろう」

 「ああ、そうだが?」

 「その時に僕やラウルが居た部隊は11階層である冒険者と出会ってね。その冒険者について知っておいてほしいんだ」

 「ん?そいつヤバイやつなんか?」

 「いや、彼は基本的に良識的な人だよ。......まぁ少しヤバイ所もあるけど

 「ん?何だ?」

 「ああいや、何でもない。で、彼、スティーブっていう名前らしいんだけど、その彼のしていたことが凄まじかった」

 

 ん?なんか雲行きが怪しくなってきたような......。

 

 「まず多分スキルなのかな?何もない場所から巨大な角石を出してダンジョンに敷き詰めだしたんだ」

 「な、何もない場所からだと!?」

 「ああ、多分物体をどこかに仕舞っておけるんじゃないかな?それかその場で作り出したかだけどあまり魔力を感じなかったから多分前者の方だね」

 「収納スキルか......。凄まじい能力だな」

 「儂らもそんなスキルがあればのぅ」

 「ああ、質量か体積かあるいは個数辺りに制限はあると思うけどね。精神力(マインド)の消費は多分無いと思うけど」

 「?何故だ?それだけのスキルならあってもおかしくはないと思うが」

 「出した石を考えるにダンジョンで採ったものじゃない。だとすると元から用意していた事になるがそうすると彼はダンジョン探索中ずっとあの能力を使用していた事になる」

 「それだけ長時間精神力(マインド)を消費していたならとうに精神疲弊(マインドダウン)になっている......か」

 「そういうこと。それで話を戻すとその後彼は何か特殊なポーションを飲んだ。そしたらインファント・ドラゴンの炎が効かなくなった」

 「な!?まずあのドラゴンと闘っておったのか!?それに炎が効かなくなったじゃと!?」

 「ああ。彼の手持ちには不思議なアイテムが多そうだったよ。その後また爆弾を何処かから取り出して相手に投げ出した。こうなってしまったらあのドラゴンはなにもできない。そのまま殺していたよ」

 「ふーむ。11階層の冒険者が一人でインファントドラゴンを倒したか。だが実際聞くからにスキルとアイテムに頼って倒したんじゃろう。確かに凄いがそこまで言うほどのことか?」

 「いや、実際はもっとすごい。後で聞いたんだけど、彼はまだLv.1らしい」

 「は?......いくらなんでもそれは嘘だろう」

 「いや、多分本当だ。嘘を言っている感じがしなかった」

 「そんな馬鹿な......それで(Lv.1)一人だと......。」

 「ああ、全く嘘をついてない保証は無いけど、もし本当だとするなら彼はLv.1なおかつ単独で11階層に来ていることになる。いくらなんでもスキルとアイテムだけじゃそこまでは行けないよ」

 「それはそうじゃが」

 「見ていて思った事だけど、彼はなんというかダンジョンに異様に慣れているような気がしたんだ。見ていてとてもLv.1とは思えないほどに。まるで動じていなかった。多分だけど、彼にはまだ何かある。」

 「その何か、が今回儂らにその冒険者を教えた理由か」

 「というよりは全部だね。彼の持つ強力なスキルも、不思議なアイテムも、Lv.1の身で単独で11階層まで来る度胸も。全てが普通じゃない。今はともかく、この先彼は強くなる。その時に協力を得られれば僕らにとってこの上無く頼りになるだろう」

 「なるほど、つまりはその冒険者を見かければなるべくこちらに好感を抱くようにしてほしいというわけか」

 「まあその通りだね。逆にもし彼が敵に回ったとすれば......それはこの上無く厄介なことになると思うよ」

 

 そう強くフィンが言う。

 

 「それはお前の勘か?」

 「ああ」

 「なるほど、それならば気を付けた方が良さそうじゃ」

 「頼むよ」

 

 それで今回の話は終わった。

 この話により、今後この場の四人は彼、スティーブに注目することになる。

 だが、この四人は勘違いをしていた。

 強くなったときに協力してほしいとはいったものの、その時はまだまだ先になるであろうと考えていること。そしてその時は彼一人に協力してもらうと考えていること。

 その時はすぐであり、また彼のとなりにもう一人の男が居ることを、まだ彼らは知らない。

 

 「それで、そのスティーブという冒険者はどんな見た目をしているのだ。」

 「全身四角いね」

 「「「は?」」」

 「うん。僕も最初はそんな感じだったよ」

 

 

         ○●○●○●○●○●○●

 

 

 「n?nankaimadarekaniyobaretayouna(ん?なんか今誰かに呼ばれたような)

 「へ?」

 

 一方、四角い奴とその白兎(ペット)はダンジョンに居た。

 現在幼少期に兎にトラウマを与えた緑色の奴と戦闘中である。

 ちなみに昨日仲間になったのだからといって敬語は無くなっている。

 あと無駄に勘のいい君は別に呼ばれてはいないしそれ以前にちゃんと闘いなさい。

 

 「変なこと言ってないでちゃんと闘ってよ!!夜にはシルさんの店に行くんだから」

 

 そう、この二人は先程とあるメインストリートにある店の店員に巧妙な罠を仕掛けられ、夜には店に食べに行くというお約束をさせられていた。

 まあ掛かったのも狙われたのもベルの方なのだが。

 スティーブはその巻き添えを食らった形になる。

 しかし食べに行くと約束したからには行かなければ社会人として最低限のことも守れない事になる。それはいやなのでこの二人は全力で軍資金を稼いでいるわけだ。

 

 

 「anotokiberugawananikakattenakerebana(あの時ベルが罠に掛かってなければな)

 「いやまだ言ってるの!?て言うか罠っていうのは流石に言い過ぎだよ」

 「iyadoukangaetemo(いやどう考えても)choroiusagiwohameruwanadaro(チョロい兎を嵌める罠だろ)

 「チョロい兎!?」

 

 自覚はあったらしく横に傾く。

 いや違った。ただゴブリンの突撃を避けただけだ。

 そのままナイフを突きだし横を通過する緑の物体を切り裂く。

 

 「これで終わり!!」

 「グエッ」

 傾く流れのまま回転し最後の一匹を蹴り飛ばした。ものすごい勢いでとんでいく。そのまま壁に激突し崩れ落ちる。

 

 「いやーやっぱり独りの時とは全然違うね」

 「soryahutariirebasonobun(そりゃ二人いればそのぶん)yoyuugadekirusina(余裕ができるしな)tadanandomoiuga(ただ何度も言うが)zettainiyudanhasurunayo(絶対に油断はするなよ)tunenisikaiwohirokumote(常に視界を広く保て)tatoesoreganakamanoiruhoudemoda(例えそれが仲間の居る方でもだ)soregadekirebahuiutiwo(それができれば不意討ちを)kuraukotohanakunaru(喰らう事はなくなる)soreninakamanopintinimo(それに仲間のピンチにも)kigatukeruyouninaru(気がつけるようになる)

 「なるほど。いいこと尽くしだ」

 「gyakunidekinakyaitumadetattemo(逆に出来なきゃいつまで経っても)nakamanitayorippanasino(仲間に頼りっぱなしの)dekisokonaigadekirukotoninaru(出来損ないが出来ることになる)sorehaiyadarou(それは嫌だろう)?」

 

 それはとってもかっこ悪そうだ。

 

 「うん、嫌だ」

 「narathuisiteokukotodana(なら注意しておくことだな)isikisezutomoshuinohaakugadekireba(意識せずとも周囲の把握が出来れば)risoutekidazo(理想的だぞ)

 「わかった。やってみるよ」

 

 そう言って周りを見回すベル。

 強くなりたいという願いから、忠実に指示に従い続ける。

 愚直に。ただひたすら。

 真剣に取り組み続ける姿を見ていると、すぐに覚えるだろうと思う。

 

 「daijinanohatadamirudakejanakute(大事なのはただ見るだけじゃなくて)mitamonowoyokukansatusurukotoda(見たものをよく観察することだ)soregadonnamonodearuka(それがどんなものであるか)donoyounaseisituwomoti(どのような性質を持ち)donoyounaugokiwotoruka(どのような動きを執るか)soregawakarebataosukotohatayasui(それがわかれば倒すことは容易い)

 

 逆に判らなければ相手に翻弄され続ける事になり、こちらが死体に変わることだろう。

 スティーブはそれをよく知っていた。

 ある時は蜘蛛が毒を持つことを知らずに攻撃をくらい毒に苦しめられ、またある時は旗持ちピリジャーを倒し変な呪いを貰ったせいで決戦を繰り広げることになった。

 相手がどのような事をしてくるか把握出来ていれば避けられた事態であり、それ以降相手の目的等を強く意識するようになった。

 相手が何をしたいかがわかれば自ずと相手がしてくることがわかるようになり、こちらのとるべき動きも導き出せるからだ。

 

 また周りをよく見ておくというのは彼自信よく不意討ちをされ続けてきた結果強く意識するようになった事である。

 特に洞窟を掘っているときに後ろからくるやつらが原因で周囲の観察力が磨かれる事になった。

 今では後ろから緑の爆弾が迫ってきても、音がするより先に気づくほどである。

 その前はよく爆風で死んでいた。思い出すだけで腹立たしい。

 あの時のダイヤを返せ。

 と言っても返ってきはしないが、その経験をこうして伝える事はできる。

 これによってベルが周りをよく見るようになれば、あの時の悲しみと怒りも報われることだろう。

 

 「sorejaakiwotukenagaraikouka(それじゃあ気を付けながら行こうか)narubekuomenikaseganaitodasina(なるべく多めに稼がないとだしな)!」

 「あ、うん!そうだね!」

 

 じゃあこれで話は終わり。

 さっきまでの事を意識しながらたくさん狩ろう。

 

 そう、二人は意気込むのだった。




洞窟でブラマイ中に来るクリーパーに苦しめられた人ってどれだけ居るんだろう。
まあ大量に居るんだろう。
やはり死すべし。
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