ダンジョンにシカクイ奴が居るのは間違っているだろうか   作:taimanman

9 / 12
やっと、やっとこの時が来ました。
あの方が参戦です。あ、スマブラじゃありませんよ。
とりあえず言える事はスティーブになるべくしゃべる機会を与えないようにしたということですかね。
まあ、誰が来たかは自分の目でお確かめください。
正直多分この時点で誰だか分かっている方多いと思ってますけど。
何はともあれ第9話、どうぞ。


ミノタウロスよりもドラゴンよりも恐ろしい存在

 「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 目に見えて体力が減っていた。

 息が荒い。

 呼吸をするだけのことが、とても辛かった。

 喉元から呼気が漏れだす度顔が辛苦の表情に歪む。

 今の姿を表すなら、まさしく『限界』であった。

 

 6階層で2体の『ウォーシャドウ』との戦闘後、畳み掛けるようにダンジョンの執拗な攻撃が開始された。

 元から冒険者が多く潜りモンスターが分散される昼とは違い、今は皆がダンジョンから引き上げる夜である。

 そのぶん普段より多くのモンスターと出くわすのは必然と言えるが、それを差し引いても多い戦闘回数。

 ダンジョンが侵入者を滅殺する為ここぞとばかりに全力を尽くしているのがわかった。

 遭遇(エンカウント)は50を越えた辺りで数えることを諦めた。

 ただひたすら殺戮の為の装置となってしばらくして、今ようやくベルは休むことができている。

 息を吐き散らしながら必死に空気を吸い込む姿に既に捨て身の悲壮感はなく、何がなんでも生き残ってやるという気概だけが感じ取れる。

 一度は死にかける寸前までたどり着いていたが、それによりまだ自分は何もやっていないということ、己の帰りを待つものの存在に気づき、正気を取り戻した。

 そしてなんとかモンスターの群れを殲滅しきったが、今もなお余談は許されない状況にある。

 絶対に帰ると決めた今、なるべくモンスターと出くわさないよう帰りたいが、それに関してはダンジョンが許してくれないだろう。

 ならばなんとか体力を戻したいと、必死に息を整えているのが現状であった。

 

「ふぅーーー、よし」

 

 それもだいぶ落ち着いてきた。

 そろそろ行動しだしてもいい頃だろう。

 歩きながら帰り道を思い出すことにする。

 それと同時に落ち着いてきた今、酒場に置いてきてしまった彼の事が頭を過り出す。

 あの時は頭からつま先まで血が高速で巡り何も考えれなくなっていたが、今は猛烈に後悔している。

 今もまだあの酒場にいるとは思えないが、きちんとホームに帰れているのか心配していた。

 彼に迷惑をかけた。その事を謝るためにも今は帰ることのみを考えようと、既に疲れきった体と脳に鞭を打って進み続ける。

 今は周りに気配を感じない。

 この内になるべく上層に戻ろうとして......

 

 しかし、目の前の十字路から感じられる僅かな気配を感じて固まることになる。

 音はせず、ただ気配だけが微かに届くさまはとても気味が悪い。

 だんだん近づいてくる気配に、知らず汗が滲み出してくる。

 まだか、まだか、差し迫った遭遇に緊張しっぱなしでいる。

 いっこうに角の向こうから現れない気配に心臓が圧迫され押し潰されそうになる感覚を味わうが、さっきからどれだけ時間が立っているのだろう。

 永遠にも感じられる瞬間(とき)を、しかし実際には6秒の間を緊迫したまま過ごし、そしてついにそのときがきた。

 

 ぬっと、現れたその姿に目を剥く。

 その体は全身四角......等ではない。

 その出会いは、ベルに絶望を与えるものだった。

 ミノタウロスなど優に越えた、真の絶望が降臨した。

 

 抗う事などできない。

 10秒経つ間も無く、ベルの身体は地に伏していた。

 

 

         ○●○●○●○●○●○●

 

 

 「kokorahenka(ここら辺か)

 

 スティーブは、焦っていた。

 さっきまでは酒場で酔いながら第1級冒険者の狼相手にイキって挑発していたが、今は探しても探しても見つからないベルに不安が芽生え、酒などすっかり抜けきっていた。

 今では大焦りでベルのことを追いかけている。

 方角はわかっているのだ。

 『コンパス』。

 マイクラ七つ道具に入るであろうこの道具をスティーブはベル用に作り、持ち運んでいた。

 コンパスの名の通りこの道具は指定された対象のいる方角を針が指し続ける。

 これならば広大な地下ダンジョンでも簡単にベルを見つけ出せると思っていた。

 しかしこのアイテム、一つだけ弱点があった。

 方角はわかっても高度が分からない。

 x座標y座標は分かってもz座標が分からないためダンジョンでは相手の居場所を突き止めることが非常に困難となる。

 実の所階層1つにも上下が存在する。となると一層ずつ丁寧に見ていかないとすれ違いが起きる恐れがある訳で時間がかかるのだ。

 上から直下堀りすればいいじゃんと思うだろうがそうはいかない。

 まずダンジョンというのは物凄く掘りづらい。

 固い場所と柔らかい場所が点在しており、ちょっと掘れたと思えばすぐに固い場所に突き当たって進めなくなる。

 ダイヤつるはしでも持っていれば別だったろうが、生憎エンドの帰りにこの世界に飛ばされた彼はもとより失ってもいい最低限の物資しか持ってきておらず、ダイヤつるはし等1つも無かった。

 故に下に掘ろうとしても大幅に位置がずれるし時間も掛かる。普通に正規ルートを通った方が早い。

 それによしんばベルのもとに辿り着いたとして、掘ってきた場合道が分からず帰れない場合がある。

 やみくもに進んだであろうベルが帰り道を知っているとは限らず、そんな無謀は犯せなかった。

 ちなみに、ダンジョン初日に直下堀りしていたのは防具も持っていなかった為にモンスターと遭遇(エンカウント)したくなかったという理由がある。

 この時のダンジョン直下堀りは実の所大幅に斜めにずれて掘っていた。全く直下堀りでは無かったのだ。

 

 それはともかく、彼はもう既に6階層にまで到達していた。

 いくら頭に血が昇っていても来た事の無い場所にまで来るなんて何をやっているんだ、とそう心の中でぼやきながら走る。

 いい加減そろそろベルが見つかってもいいだろうと思いながら通路をひた走り最後の角を曲がって、

 そして彼は見てしまった。

 

 ベルが、地面に倒れていた。

 息が詰まる。

 つい最近会ったばかりとは言え、しばらく共にいると誓いあった仲間が倒れる光景が眼前に広がっている。

 絶句し、しかし死んではいない筈と祈り近づいていく。

 ダンジョンで倒れることはすなわち死を意味する。そんな簡単なことを否定し祈るように近づいていくと、あることに気づいた。

 膝を地につける形で地面に倒れこみ、前に手を出し頭を地面に放り出している。

 要は正座の体勢で前に倒れこんでいるのだ。

 この体勢には、見覚えがあった。

 我らが親愛なるヘッポコ主神ヘスティアがしていた究極奥義。

 極東から来たかの武神タケミカヅチから教わったという最後の必殺技。

 これをすれば何をしても許される最終奥義であるとヘスティアが宣った(のたまった)その技の名は......

 『土下座』。

 武の神直伝の技を、何故か震えながらダンジョンで執り行っていた......。

 

 

         ○●○●○●○●○●○●

 

 

 ベルが死んではいない事がわかったのは僥倖。しかし代わりに訪れた謎は、彼の足を停止させるには十分過ぎるものであった

 正直意味がわからない。

 いや意味が分かっていたら謎ではないだろうがそれにしてもこれはひどい。

 しかも何となくだが理由らしきものに見当がついてしまう。

 だってベルが土下座をしている場所は通路の角であり、その向こう側、目に見えない場所から猛烈な威圧感が漂ってきているもの。

 ぶっちゃけまじで怖い。

 正直頭の中にベルを捨てて戦術的撤退が浮かんでいるくらいにはめちゃくちゃ怖い。

 これ、割り込んでベルの救世主にならなくてはいけないのだろうか?

 世の中には謎にしておいた方が良いこともあると思う。それをわざわざ突撃し当たって砕ける必要があるのか、考えてみて結論が出た。

 

 ――よし。置いてこう。

 

 (いや流石にそれは不味いだろ)

 (だってめっちゃ怖いんだもん)

 (だからってほっとくわけにはいかないだろ)

 (だってだって)

 (だってもあさっても無い!)

 等と知能指数がめっちゃ下がった状態のスティーブ。

 

 「ア、スティーブ!!」

 

 まずそもそもどうしてベルはこうなっているのか。そこが分からず動けずにいると、ベルが横を向いてこちら側に気づいてしまった。

 ア、オワッタ。

 そう考えながら観念して出ていくと、

 

 ――そこには、とてもキレイで美しい女性が、ものすごくキレイな笑みを浮かべながらたたずんでいました。

 ――ぶっちゃけ、一瞬ドラゴンか何かと見間違えるほどには、その笑顔は恐かったです。

 

 何事にも限度はあるものなのでしょう。

 お金も有りすぎれば不穏を運んでくる様に、キレイ美しいかわいらしいにも限度はあったのです。

 

 問:今すぐこの場から逃げ出して宜しいでしょうか?

 解:言葉ではなくその目がありありと語ってくる。駄目です。

 後ろにハートが付くような感じではなかった。逃げたら死ぬ事になるやつだと、一瞬で悟ることになる。

 ダメか~、ダメね~、なるほどこりゃ死んだな。

 

 ――絶望への扉が、今開かれた。

 

 

         ○●○●○●○●○●○●

 

 

 出会って5秒で負けた。

 別に闘って負けたとかいう訳じゃない。

 ただその全身に一瞬で漂った圧倒的な(オーラ)に、無意識に敗北を悟っていた。

 理由も分からずとりあえず神様から学んだ土下座をする。

 全身が震え心が相手に屈したその直後、その一言が放たれた。

 

 「何故ダンジョンにそのような姿で居られるのでしょうか」

 

 私服姿で居る事を言っていると理解した瞬間、何故目の前の人がこんなにも怒っているのかが分かった。

 そして彼女がとても優しい人であるということも。

 彼女はこんな無防備な姿で危険(ダンジョン)に挑んでいる事に怒っているのだ。

 今の自分の姿は見るも無惨な事になっている。

 身体中血だらけになっており、軽い私服姿は所々にいくつもの破れた穴を開けている。

 土や砂にもまみれたその姿は、ダンジョンの中にいなければどこかで複数人にリンチでも食らったものだと勘違いされるだろう。

 

 あまりにも無謀な行動だった。

 人は命を賭けてダンジョンに挑む者達を冒険者と呼び、その命懸けの行為を冒険と呼ぶが、今回のそれは冒険では無い。『無謀』、もしくは『自殺行為』と呼ばれるものだ。

 それを一瞬で見抜き、その少女はここまで怒っているのだ。

 全く見知らぬ、初対面の男に対して本気で怒っている。

 本当に、彼女は心優しい少女であった。

 

 その事実にとても感謝し、しかし黙り続けた。

 言えなかった。

 言って怒られるのが恐かったからではない、これは己の仕様のないただの意地。頑固な自分の心は己の屈辱を語る事を拒んでいたのだ。

 その代償に、今も頭上から絶えず注がれる視線を受け入れることになっても、これだけは譲れなかった。

 怯えて震えながらも黙り続けた。

 相手が諦めてくれるまでひたすらに待ち続ける。

 そんなときに、少し横を見た。

 見覚えのある人がいた。

 全身四角い、ていうかどこからどう見てもスティーブだった。

 何でここに居るのかという疑問は一瞬で蒸発した。

 まず一言、口から零れ出る。

 

 「ア、スティーブ!!」

 

 助けて、と願う。

 ぶっちゃけ巻き込んでしまったが、おかげで彼女の視線は一旦バラけることになった。

 何故か圧は変わっていないがそこはしょうがない。

 

 「toriaezukokowohanarete(とりあえずここを離れて)danjonkaradenaika(ダンジョンから出ないか)

 

 どうなるのかと眺めているとスティーブがそう話し出した。

 そりゃそうだ。そもそもダンジョンでこんな風にしゃがみこんでいる事がおかしい。

 

 「......そうですね。わかりました、一旦ダンジョンから出ることにしましょう」

 

 全くもって正論であるその発言に、さすがにこの人も反論できなかったらしく、一緒にダンジョンの外まで行くことになった。

 ひとまず解放されたわけだけど、外に出たらまたお話を再開することになるらしい。

 そのときまでになんとか諦めてくれないかな、と思ったけど望みは薄そうだった。

 

 「少し待ってください」

 

 立ち上がって、さあ行こうという時に、呼び止められる。

 何だろうと思って立ち止まっていると、想像外の返答で返される事になった。

 

 「【癒しの滴、光の涙、永久の聖域。薬奏(やくそう)をここに。三百と六十と五の調べ。癒しの(おと)万物(なんじ)を救う。そして至れ、破邪となれ。傷の埋葬、病の操斂(そうれん)。呪いは彼方に、光の枢機へ。聖想(かみ)の名をもって——私が癒す】」

 「【ディア・フラーテル】」

 

 その詠唱は『祝詞』では無かった。

 何がなんでも目の前の人を癒すのだという傲慢極まりない文言。 

 祈りは無く、祝意も無い。

 いついかなる時であれ例え相手が死にたがっていようが絶対に殺す(癒す)という意思をもって執行される『宣告』。

 何よりも残酷であり何よりも優しい少女の決意がそこにあった。

 

 純白の光輝に包まれる。

 その光は全てを照らす眩き輝きだった。

 その輝きが収まった時には、身体を覆う傷は全て無くなっていた。

 

 「これで傷は治ったと思います」

 「え、あ、はい」

 

 あまりの出来事に呆然となりながらなんとか返事を返す。

 正直何がなんだか分からなくて録な言葉が出てこなかった。

 するとそれが可笑しかったのか、彼女はようやく少し微笑んでくれた。

 

 「傷が治ったからと言ってまた無理をしないでくださいね」

 

 しっかり釘も刺されたけど。

 流石にもう分かっていますとやさぐれそうになったけど、それよりも今は彼女が何者か気になっていた。

 

 「貴方は、いったい......」

 

 何者なのか?

 その問いに彼女は、またさっきまでと同じ顔を浮かべてこう返してくれた。

 

 「改めまして、私の名はアミッド・テアサナーレと申します。現在は【ディアンケヒト・ファミリア】団長を勤めている治癒士(ヒーラー)です」

 

 どうぞよろしくお願いします。

 

 それが、僕らとアミッドさんとの出逢いだった。

 今後も続く僕らの関係は、この時から始まった。

 これから幾度と無く彼女に助けられる僕は、最初から彼女に助けられる事になった。

 とても情けない始まりだけれど、彼女に出会えたこの時は、この先も絶対に忘れることは無いだろう。




てことでアミッドさん登場回でした。
タグに出してるくせに実際に出てきた事は一度だけ。それも2話でほんの僅かに台詞だけしか出ていないという暴挙をなしていたので、いい加減に出したかったんですよね。
何故アミッドさんを主要人物に出すのかと言われると、単純にアミッドさん好きだからです。
もっと言えばベル×アミッドが好きだからです。
そもそもこの話を始めた理由はそういう二次創作をほとんど見ないので自分で作っちまえというものでした。
それで楽しそうなのはマイクラコラボかなと思ったのでこういう形になっています。
じゃあアイズに惚れている理由はと聞かれればだってダンまちはベルアイが基本だという考えの持ち主だからです。
つまりベルの嫁さんはこの二人......あれ、これタグにハーレムぶっ混んどくべきなのか?
まあともかくこれで記念すべきアミッドさん登場回で区切りのいい9話終了です。
次回からは二桁。目標は三桁投稿として頑張っていきたいと思います。
それではさようなら。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。