【英雄志望の悪役モブ転生者、無自覚に原作鬱シナリオをぶち壊す】~拝啓女神様、俺ってこの世界の主人公ですよね?~   作:歌うたい

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109 原作乖離

 

 

「あー⋯⋯あの、ノルン様?大丈夫です?」

「うう、なんですか副官。いま、ちょっとメンタルやっちゃってるんですけど⋯⋯」

「お気持ちは分かりますよ。ハードな展開の連続でしたもんね」

「ハードってレベルですか!なんですかもう、せっかく噂のクオリオくんやあのネシャーナシスターズが仲間に加わったっていうのに、この悲惨な展開のオンパレードは!」

「小隊入りのイベントですね。といってもモクモンの件でシュラとリャムとで一悶着ありましたが」

「あれは正直びっくりしましたけど、シュラさんの境遇からすれば気持ちがわからない訳ではありませんし⋯⋯それに、クオリオくんが上手く説得してくれましたからね」

「そうですね。白魔獣を御すればより魔獣を制する術になる、とは彼らしい説得でした。というか、さらっと隊長のパウエル卿をスルーする辺り、ノルン様は相当彼が苦手だったようですね」

「そ、それは⋯⋯まあ。格好や髪型もちょっとキツいですし、選民思想バリバリの貴族主義さんですし。さらっとシュラさんを食事に誘おうとしてた所とかもうちょっと見てられませんでしたよ⋯⋯」

「露骨な屑キャラですからねえ。まあジオーサに着いてからはターゲットをローズに変えたみたいですが」

「ジオーサですか⋯⋯業の深い場所でしたね。墓地が無かったり、町の人達がずっと冷たかったり。特に審問会と顔合わせてからはずっと不気味な雰囲気でした。ワーグナー劇団の方々が癒やしに思えるくらいです」

「というと、二枚看板ですか?」

「はいっ。ローズさんもマーカスさんも⋯⋯その、味のある人達でしたから。騎士への陰口とかも言ったりしませんでしたし」

「ああ。あの冷遇は近年の騎士団の腐敗ぶりによる影響もあるのでしょうが、やはり後ろめたさの裏返しかと」

「過去の魔女狩り⋯⋯ですね」

「ええ。今回のジオーサの事変を招いた原因でもありますね」

「事変ってレベルじゃなかったですけどね⋯⋯劇の終盤からはホントに地獄の光景でした」

「人が魔獣に変化するあのシーンは今作でも指折りのトラウマシーンですから。いやあ、運命の女神たるノルン様がよもや泣き叫ぶとは。良いリアクションでした」

「鬼ですか!あんなの誰だって泣いちゃいますよ!」

「ははは。ですが、思い返してみればシュラ達が助かったのはパウエル卿のファインプレーのお蔭でしたね」

「えぇ⋯⋯あれ、ファインプレーって呼べます?自分に敬意を払ってくれないからって、劇場外で待機!って意地悪しただけですよ?」

「その結果、シュラ達は『神の毒』を飲まなくて済んだ訳ですよ。しかも魔獣化し、ボスとして立ち塞がり、今まで稼いだヘイトを発散させて、退場。実に鮮やかな悪役ムーブと言えますよ」

「⋯⋯あの、副官、なんでそんな朗らかな笑顔で。ひょっとしてストレス溜まってます?」

「おっと失礼。話を戻しましょうか」

「はぁ⋯⋯」

「パウエル卿はともかく。ジオーサの住人の半分が魔獣化し、同じ住人を襲い出したあのトラウマシーンで、シュラの力が少し覚醒しましたね」

「レーヴァテインですか。やっぱりトリガーはシュラさんのトラウマでしょうか」

「無力な人が魔獣に蹂躙されれば、否が応でも過去の悲劇を思い出してしまうのでしょう。しかし途轍もない威力でした。街の殆どを焼き払ってしまうぐらいでしたから」

「⋯⋯あの、副官。あの時のクオリオくんなんですけど」

「ああ、気になりますよね。レーヴァテインの力に魅入ってたような描写がありましたし」

「ひょっとして彼って、マッドサイエンティストみたいな傾向が?」

「⋯⋯探究心や知的好奇心がかなり強いみたいですから。その分、彼の魔術は強力ですし。魔獣達との戦いでも大活躍だったでしょ?」

「それは、まあ⋯⋯でも結局、小隊以外は誰も助からなかったんですよね」

「大量の魔獣が所構わず暴れ回っていましたから。いかにシュラ達が強くても、あの状況では防ぎようがない犠牲ですよ」

「⋯⋯ロゼさん。復讐といってましたけれど、最初から死ぬつもりだったんでしょうか」

「彼女の家の跡地に埋められていた日記をお読みになって、ノルン様はどう思われました?」

「憎かったのは本当だと思います。でも、女優としての日々はとても充実していたみたいですから⋯⋯」

「私も同じ見解です。恐らく復讐は考えていなかった。ですがドルド劇団長──彼に扮した黒幕によって後押しされ、引くに引けなくなってしまった。だから⋯⋯」

「⋯⋯だからあのまま魔女として、炎に呑まれる結末を選んでしまったんでしょうか」

「ジオーサを死に齎した以上、此処を人生の終幕と定めたのかと」

「⋯⋯哀しいお話ですね」

「この章で灼炎のシュラを鬱ゲーと強く認識した、というプレイヤーも多いですから。本当に救われない話です。

 

 

⋯⋯

⋯⋯、⋯⋯

⋯⋯、⋯⋯、⋯⋯ええ。原作だとこれほどまでに救いのない章なんですけどね」

「ふ、副官? なんで急に白目剥いちゃってるんです?恐いんですけど!」

「いえ、ヴェルザンディ様からの報告が先程届きましてね。いやまさか、魔女ロゼが。いや、彼女どころかジオーサの住民も劇団員も全員生存とは。審問会も正規の手段で更迭されているようですし⋯⋯原作との乖離が今までの比じゃないですよこれ」

「わあぁ、ロゼさん生き伸びられたんですね!良かったぁ⋯⋯憧さんが改心させたんでしょうか!」

「うーん、どうでしょう。細かい経緯をまだ確認してないからなんとも言えませんが⋯⋯いや、ほんと今後の展開どうなるんでしょうかね」

「あ、あはは。まあ、あの『摩天楼のロキ』の主人公さんですから。なにが起きたって不思議じゃないですよ」

 

「そうおっしゃりますがね、ノルン様⋯⋯原作と乖離すればするほど、異世界外殻の維持作業が大変になるんですよ? 笑い事で済ませられます?」

「ふぐうっ⋯⋯そ、そうなんですよねえ⋯⋯あの作業、ほんと大変だし疲れるんですよねぇぇぇ⋯⋯ぶっちゃけヒビの入った部分に木板を貼り付けていくようなものですしぃぃ⋯⋯おかげで最近、ちょっと腰が痛くてぇ。ふ、副官。モノは相談なんですけどぉ」

「手伝いならば拒否します。というか、私にそんな権限はありませんし」

「うううううぅ⋯⋯」

「そんな恨みがましく見られましても。そもそもノルン様の身から出た錆ですし、ノルン様が責任をもって作業するからと大神様におっしゃったのではないですか」

「だ、だって、そうじゃなきゃ大神様、あの世界を破棄するって言い出しかねませんもん」

 

「ならば、愚痴はほどほどに頑張ってください。

 まあ────ただでさえ異物を『ふたり』も混入させているのです。外殻のヒビはどんどん生えていくでしょうけどね!」

 

「どびっきりの笑顔でいうことじゃないです副官の鬼悪魔悪趣味唐変木ぅぅぅぅ!!!!」

「はっはっは」

 

 

 

 

 

 

 

 

第四章 完.

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