【英雄志望の悪役モブ転生者、無自覚に原作鬱シナリオをぶち壊す】~拝啓女神様、俺ってこの世界の主人公ですよね?~   作:歌うたい

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125 ハイパー勘違いタイム

 

 大量のレバニラが食べたい。無性にそう思った。

 レバー単品でも良い。やはり王道のレバ刺し。ごま油と塩は鉄板。でも甘い醤油におろしにんにく溶かしてってのも良い。もしくは濃いタレまぶして串焼きで一口でいきたいね。

 ともかくレバーが食べたい。血の気が増える物が食べたい。そんくらい血が足りてない。

 だから、いまいち現状に理解が追い付かないのは仕方ないよね。

 

 拝啓女神様へ。どうも俺ですお久しぶりです。

 現在エインヘル騎士団のヴァルハラ本部。その最高権力者のお部屋にお邪魔してるそうです。はい。つまり御立派なテーブルに両肘ついて微笑んでるこの目の前のイケメンが誰か、お分かりですね?

 

「改めて名乗ろうか。俺はレオンハルト・ジーク。エインヘル騎士団の団長を務めているよ」

 

 単刀直入に言おう。血が足らないからレバーが食べたい。無理なら誰か教えてくれ。一体どうしてこうなった。

 

 

 

 

 確か、割と最高潮の最中に居たはずだ。

 ライブラ:REを無事鎮めて、俺を讃える歓声がワーッと響いて、うへへへへーって有頂天になって。

 そっから景色がぶわーっと真っ白になってふらーっとなってビターンって⋯⋯ああそうだ、そこで気絶したんだった。

 多分貧血が原因。あんだけ血をブシャーって流しちゃ、そらそうよってな具合だな。

 でも俺もまさかちょーっと掌刺しただけであんなドクドク流れるとは思わなかった。心臓フル回転した弊害なんだろうけど。おかげでまだクラクラしてる。

 

「⋯⋯うん。流石に性急過ぎたか。すまないねヒイロくん。君の活躍ぶりを見てつい話してみたくなったんだが、もう少し救護室で休ませるべきだったか」

「あァ?⋯⋯あァー⋯⋯問題ねえ。こんくらいでヘバるほど軟な鍛え方してねえからよ」

「そうかい? なるほど、逞しいね。あのライブラ:REの結界をも乗り越えるのも頷けるよ」

「ヘッ、あんなもん屁でもねえぜ」

 

 うーん、この。外も中身もイケメンってずるいね。つい強がってしまったけど、馬鹿にするでもなく持ち上げるとは。立場を鼻にかけた感じもないし、意外と身分を気にしないタイプなのか。

 

「健常であるならば、即刻、作法の方も改めるようにお願いしたいのですが?」

「構わないよリーヴァ」

「私が構います。下の者に示しがつきません」

 

 ただ、俺を救護室まで迎えに来た団長補佐さんはすっごく不服そうだった。この人とは以前のルズレー事変以来か。釈放してもらった借りがあるだけに、言うことは聞いておきたいんだけど⋯⋯口の悪さは俺の意志じゃないからどうにもならんのだ。さーせん、クオリオの姉ちゃん。

 

「無理をしてまで来て貰ってるんだ。そう目くじらを立てるものじゃない。ヒイロ君、気にしなくていいぞ」

「そうか?ならお言葉に甘えさせて貰うぜ」

「⋯⋯はぁ。育ちの悪い者はこれだから」

「育ちだけ良くても性格が良くなるとは限らないみたいね」

「何か言いましたか、エシュラリーゼ・ミズガルズ」

「別になにも」

 

 そうそう。この二人も以前からの知り合いっぽいんだけど、なんか仲悪いんだよな。互いに向ける視線が冷たいというか。どっちかと云うとリーヴァさんがシュラに隔意がある感じだろうか。

 

「これが団長さまの部屋なのかぁ⋯⋯なんか結構地味? うん、地味だね!」

「ね、姉さん。良い子だからちょっと静かにしてて。お願い」

「全く。貴方が加わった隊には、どうも礼儀作法に疎い者が多いようですね、クオリオ」

「⋯⋯否定は、しない」

 

 姉から水を向けられたクオリオも、非常に肩身が狭そうである。顔色も悪い。お前も一緒にレバー食おうぜ。シドウ隊長以外の小隊員全員揃ってるから、物理的にも少し狭い。シャムじゃないが、騎士団のトップの部屋にしてはって感じは否めない。

 

「賑やかで何よりだ、レギンレイヴの諸君。ジオーサでの活躍に加え、星冠獣の鎮圧。君達の活躍が新進気鋭に収まらなくなるのも時間の問題かな」

「ったりめーだ。なにせこのヒイロがアタマ張ってんだ。今にエインヘル騎士団の最優手まで昇り詰めてやんぜ?」

「ほう。それは心強いな」

「また調子に乗って。なに勝手にリーダー面してるのよ」

「あァ? 別に良いじゃねえか」

「リーダーならシドウ隊長で間に合ってるわよ。アンタは切り込み役で充分」

「ケッ。」

「⋯⋯ご覧の通りの内情で。レオンハルト様も、あまり真に受けないでいただきたい」

「おや、そうなのかい? 彼にはちゃんと周囲を引っ張るリーダーシップが備わってそうだが」

「強引なだけです。引っ張るんじゃなくて振り回してるんですよ」

「クオリオ、テメェ!」

「事実だろう」

「わ。ひ、ヒイロくん落ち着いて。クオリオさんも心にもないこと言わなくても⋯⋯」

「あはは、ヒイロン言われてやんの。やーいトラブルメーカー」

「あァン!? この猫娘が、調子付きやがって!」

「言っておくが振り回し役なら君も負けず劣らずだよ」

「にゃにおー!?」

「クカカ、ざまあ」

「ふしゃあああ!!」

 

 わーわーギャーギャーニャンニャニャニャー!

 多分漫画のコマならそんな擬音が飛び交う騒々しさ。仮にも団長の部屋でやる事じゃないって常識くらい俺にもある。でも此処は引けぬ。許せよレオンハルトさん。

 

「⋯⋯総員、静粛にっっ!!!!」

「「「「!!」」」」

 

 団長が許しても、団長補佐が許すかな?

 そのアンサーは落ちた雷の威力が何より物語っていた。ピシャーンッて雷鳴が聞こえるかの様な一喝に、俺達は背筋を伸ばして直立した。やべえ、一喝のパンチ力はシドウ隊長とタメ張れるぞこのねーちゃん。

 

「ハハハ、本当に賑やかだね君達は」

「いえ団長、そこは厳重な注意をですね⋯⋯」

「他に示しがというけど、我々が気にしなければ良いだけの話しだろう?」

「いやですから私が気にするんですが⋯⋯」

「苦労してンな姉ちゃん」

「うるさいですね殴りますよ!?」

 

 あ。これ圧はあるけどクオリオと同じで弄り甲斐もあるタイプだわ。真面目過ぎるから小ボケにもちゃんとツッコんでくれる感じ、血は争えないねえ。我が意を得たりと頷いていれば、目の前の団長さんもなるほどと頷いていた。

 

「フフ、リーヴァ相手にも物怖じしないとは。なるほど、どうやら善き縁に恵まれたみたいだね、エシュラリーゼ。学園時代の退屈も少しは紛れたかい?」

「⋯⋯大きなお世話よ」

「あァ? なんだシュラ、団長と知り合いか?」

「赤の他人ね」

「保護者みたいなものかな」

「保護者?」

「ああ。俺には彼女をアスガルダムに招き、ヴァルキリー学園に入れた責任があるからね。そういう意味で保護者ということさ」

「ほう⋯⋯」

 

 マジか。未だにシュラの過去については知らない部分も多いけど、まさか騎士団のトップと面識があったとは。しかもシュラを招いて学園に入れたって事は、結構肩入れしてる感じだよな。

 ふーむ。やっと俺も主人公らしい活躍してきたって思った矢先に差をつけるとは。流石はライバル枠、やってくれるじゃん。

 そんな思いを籠めてシュラを見やれば、こいつにしては珍しく目を泳がせた。

 

「な、なに神妙な顔してるのよバカ。アタシが他人って言ってるんだから他人なのよ」

「エシュラリーゼ。レオンハルト様に目をかけて戴いてるからといって、増長してるのではありませんか? 非常な失礼な物言いである自覚がないのですか?」

「う。うるさいわね。妙に意味深な言い回しするそこの団長が悪いのよ!」

「なにも意味深な所はありませんでしたよ破廉恥な!」

「⋯⋯?」

 

 だが、返って来たリアクションはちょっと予想外だった。

 顔を赤く染めながら、何故か他人である事にこだわるシュラ。別にそんな否定しなくたっていいだろうに。念押しするようにわざわざ俺をチラ見してるし。

 補佐官も肯定してるし、逆に墓穴を掘ってるようにも見える。

 

(顔の赤いシュラ。敵意剥き出しのリーヴァさん。成り行きを見守ってるレオンハルト騎士団長⋯⋯)

 

 なんだろう。この、下手に踏み入ると危険な空気は。

 でもちょっとじれったいというか、何かを期待してしまう様なジリジリとした感じは⋯⋯どこかで⋯⋯⋯⋯

 

(──ハッ。ま、まさか、これはアレか? アレなのか!?)

 

 その時、俺の脳裏に電流走る。

 客観的に見れば、ライバル役のシュラには華がある。ルックスも活躍も鑑みれば、主役級の人気キャラなのは言うまでもないだろう。

 そういうキャラにはサブイベントを充実させ、より深掘りしていくものである。主役級キャラのサブストーリー。当然、シュラに用意されてないはずがない。

 そしてファンタジーな冒険活劇が主題ならば、サブには人気な要素を食い込ませるのが鉄板である。

 では果たして食い込ませやすい人気な要素とはなにか?

 あるのだ。古今東西、老若男女に人気なアレが。

 下手に踏み入ると危険な様でじれったいけど進展を期待しちゃう、アレが。

 

(こ、これはまさか⋯⋯シュラとレオンハルトの恋愛イベントなのかっ!?)

《⋯⋯はっ?》

 

 

 

 アレとは即ち──恋愛要素である。

 

 

 

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