【書籍化決定】とある男子高校生のラブコメ観察日記 作:サラダよりは肉が好き
A月のラブコメ模様
A月〇日
一人暮らしになるにあたり、何故か親に勧められたので、おそらく毎日書くことは出来ないが今日から日記をつけてみることにする。
今日は高校の入学式だった。心機一転親元を離れ一人暮らしとなった私は、少し早めに起きて朝食を食べ家を出た。なかなか一人暮らしというのはやることが多いものだが、少し大人になった気分だ。
校門に着くと、すでに何人かの新入生とその親御さん達が『入学式』と書かれた看板の前で写真を撮っている。私の両親は仕事で来れないらしいため1人でその看板の前に立ち写真を撮ろうとは思わないが、とりあえず無事に入学できましたと報告するために写真は撮って置くことした。
パシャリと1枚。正面玄関の外観を写真に収める。
それを終え、私は玄関の横にあるクラス分けの表を見る。どうやら、私のクラスはA組らしかった。
校舎内を軽く見渡しながら、階段を上がり自分のクラスへ向かっていく。
この日、私はクラスの中に入った時見た光景を忘れることは無いだろう。
これを書いている私も信じられないのである。
一見冴えない顔をしている男子生徒に、2人の美少女が迫っているところなど。
一体何を言っているのかと思うだろう。私も理解はできない。
どういう状況なのか、私は音を立てずに教室の外へ出て、ドアからこっそり顔を覗かせ聞き耳を立てた。
そして私は、状況を理解すると同時に口から砂糖を吐き出したくなる衝動に駆られた。
つまりはこういうことらしい。
美少女の内の1人は件の男子の幼なじみで、ずっと小さかった頃から好きだった彼に、高校生になったことを機に告白したらしい。ちなみに黒髪ロングのthe幼なじみ系正統派ヒロインみたいなやつだった。
もうもう1人は金髪ロングで欧米人風な顔をしていた(ハーフなのだろうか)。こちらは中学の頃に金髪が理由でいじめられていた彼女を件の男子に助けられて恋をしたらしく、同じ高校だと知って告白に踏み切ったそうだ。
なんだこれ
面白すぎるだろう!
こんな展開が実際に起こるということが驚きだ。何故この時、私はスマホでこの光景を録画していなかったのか。
修羅場も修羅場。テンプレもテンプレだ。
この場合、
主人公→件の男子
黒髪ロング→メインヒロイン
金髪ロング→メインヒロインその2
そして件の男子を巡る甘々でちょっと切ないラブコメが始まるのだ……。
興奮して少し変な事を書いてしまったが、ともかく私はその後も様子を見ることにした。
件の男子は、とりあえずはいきなり告白されても答えは出せないし、付き合うならその人自身を知ってからちゃんと付き合いたいという答えを出した。つまりはひとまずは両方ともお友達からということらしい。幼なじみである黒髪ロングは苦々しい顔をしていた。真面目だと言えばいいのか、ただ引き伸ばしているのかと解釈すればいいのかは微妙なところだが、まあ妥当なところだろう。
話がひと段落したようなので、私は足音を消してその場を去り、5分後くらいにまた教室に入った。流石にあんな出来事の直後に足を踏み入れてしまっては「貴様見ていたな!」ということになりかねないからである。
続々と入ってくるクラスメイト達と同じように、私は黒板に書かれていた番号の席に着く。なんと件の男子の左隣の席だったことが発覚した。これは観察のしがいがありそうだ。
黒髪ロングは件の男子の右隣、金髪ロングは件の男子の前だった。……ほほう、これは観察のしがいが以下略。
やがて自分達の担任と思われる女性が入室してきた。そこからの流れはまぁお約束である。
担任、そして生徒達の自己紹介を軽く行い本日の流れを確認。そして時間を置かず整列して体育館入場からの入学式である。
ここは特に面白いことが無かったので割愛する。
せいぜい黒髪ロングと金髪ロングが目と目で火花を散らし、件の男子がオロオロしているくらいだ。他の男子は美少女と仲良くしている件の男子に嫉妬の視線を送っていた。
ああそう、自己紹介から例の3人の名前が判明したのでここに記しておく。
件の男子→榊原 章
黒髪ロング→高城 愛
金髪ロング→城波 ドロシー
簡単そうでめんどくさい名前だった。特に榊原と城波。
入学式だが、校長先生という人種にしては珍しく?話は要点を抑えた短いものであった。内容は忘れた。
そうだな...あとは生徒会長の容姿がやたら目立っていた。背が高く細身で、その端正な顔立ちと話し方からは凛とした雰囲気を感じた。大和撫子という感じである。
本日は入学式を終え、教室で軽く連絡事項をしてから下校ということになった。
さて……君たちは一体どんな物語を見せてくれるのか。
1から100まで観察してやるから楽しみにしてるんだな!
A月✕日
宿泊研修である。
どうやらこの高校は新入生の親睦を深めるという目的のもと、施設を借りて2泊3日の宿泊研修
を行うようだ。
内容は学校のオリエンテーションなど退屈なものであったが、1つ幸運なことがあった。
件のラブコメ主人公榊原章と宿泊部屋が同じになったのである。これはチャンスだ。
私は拙いコミュニケーション能力を駆使して、彼とコンタクトをとることにした。やはりラブコメの主人公と言うべきか、初対面で下の名前呼びから流れるようにSNSのアカウント交換。流石である。ぶっちゃけこっちは最初に話しかけた以外は相槌をしていただけなのだが、これが人間力の差と言うやつだろうか。
あと良く見ると普通にビジュアルも良かった。ラブコメ主人公に良く見る「普通の高校生といいつつも、普通にハイスペック」というアレだ。お前が普通の高校生であってたまるか、という点も含めてラブコメ主人公っぷりである。
ちなみに、もう1人同じ部屋になった男子生徒がいる。佐々木幸助というらしい。
私は彼と話しているうちに確信した。この佐々木というやつはラブコメに1人はいる、「主人公と距離が近い、お調子者のクラスメイト」枠であると。
佐々木はよく口が回り、冗談などをよく話した。さらに何となく察しが悪い。完璧な友人キャラである。
さて、男子が3人集まれば気になる女の子の話になるものである。というか、佐々木が高城と城波について熱く語りだしたのだ。発育がいいだの髪がキレイだの美人だの。こいつはどこまで完璧に友人キャラの型にハマっていくのだろうか。
榊原は微妙な顔をしていたが、やはり男子と言うべきか興味が無いようではないようだった。
もちろん同じ部屋にいる私にも話の矛先は向く。佐々木はもちろん榊原も自分に惚れている女子たちの話題から離れたいからか、佐々木に乗っかって私の好きな異性のタイプや気になる人がいないのかを問い詰めた。
適当に高城や城波の名前を上げるのもはばかられたので、生徒会長を上げておいた。名前は覚えていない。
すると2人は納得したのかそれ以上問い詰めることをしなかったが、佐々木はさっきと同じように今度は生徒会長について語り始めた。
ほぼほぼ聞き流していたが、生徒会長の名前は大和透華と言うらしい。容姿は整っていたので、もしかしたら榊原ハーレム(今適当に着けた)の一員になるかもしれない。とりあえず覚えておくことにする。
A月△日
宿泊研修2日目
朝食の時間、ある女子の1団が一緒に昼を食べないかと話しかけてきた。
メンバーは高城と城波、それに+1人である。
榊原が何かを言う前に、佐々木がハイテンションで了承した。榊原は苦々しい顔をしていた。残念だったな榊原、お前はラブコメディな運命からは逃れられんようだ。
高城と城波は榊原になんとかアピールしようと榊原の両隣を光の速さで陣取った。
佐々木が何か文句を言っていた気がするが、高城と城波の無言の圧力で黙らされていた。哀れ佐々木。
余談だが、ふたりと一緒に来た女子は海原 星と言うらしい。確かに美少女の枠には入るだろうが、ヒロイン枠かはまだ微妙である。
結局
高城 榊原 城波
海原 佐々木 私
という席順で朝食、ついでに昼食を食べることになった。
榊原は高城と城波にアーンなどのアピール攻撃を食らっていた。幸せなのか苦痛なのか分からない表情だった。
佐々木はそんな榊原に妬みの視線を送りながらも、持ち前のトーク力を活かして海原と会話していた。内容は聞いてなかったが、どうやら悪い雰囲気ではなさそうである。
私は困っている榊原を眺めながら、たまに飛んでくる問いかけに答え、ゆっくり食事を摂っていた。
彼らから感じるラブコメの波動ににやけを抑えるのに必死だったことを追記しておく。
A月□日
今日は休みだ。
一人暮らしである私にとっては家事をする以外は完璧に自分のために使える時間である。
といっても入学したてでさして友人が多いわけでもなく、ゲームでもして過ごすかと思っていた矢先スマホに通知が来た。
差出人は榊原。
へぷる、と送られてきた。ヘルプと送りたかったのだろうが、何となく手遅れな感じがした。
放っておいて大丈夫だろうとたかを括っていると、今度は電話だった。相手はもちろん榊原。
出ないのも不自然である。私は仕方なく電話に出た。
榊原は息を切らしながら、姉から逃げているから匿って欲しい、ということを伝えてきた。
今も走っているらしく、にじみ出る必死さから断ることもどうかと思いとりあえず家までの道順と、目印になるであろう喫茶店前まで来いと伝えた。
電話をつなげたまま、喫茶店前で待っていると数分後汗だくの榊原が来た。
とりあえず家に榊原を連れていった。一人暮らしをして初の友人がこんな形で家に来るとは思ってもいなかった。
家に着くと榊原は早口で消臭剤を玄関にかけておくことと、風呂を貸してくれという旨を告げた。
理由を聞くと、匂いを消しておきたいのだという。普通の人間ならば何言ってんだこいつとなるところだが、私のラブコメセンサーは全てを察した。
榊原の要求通りに丹念に消臭、念の為靴も隠した。
とりあえず自分の部屋に案内し、彼から事情を聞く。
そうすると彼はポツリポツリと白状し始めた。
予想通りと言うべきかなんというか、彼の姉はいわゆるヤンデレらしい。
高校生になって自立するため、そして姉から逃げるために一人暮らしを始めたは良いものの、入学してから数日で居所が割れ追われているのだという。
姉は姉でも義理の姉らしく、何度も貞操を狙われているとのことだ。なんだこいつラブコメの主人公か。ラブコメの主人公だったわ。
とりあえずほとぼりが冷めるまでは家にいるといいという旨を伝えるとお礼を言われながら土下座された。さすがラブコメの主人公は土下座のフォームが綺麗だなと思った。
それから榊原と雑談をしていると玄関のチャイムの音が鳴った。
ごめんくださぁーいと言った感じのおっとりした若い女性の声だった。
その声を聞いた瞬間、榊原がカタカタと震え出した。どうやら件の義姉らしい。
ラブコメの展開的にはここで義姉を榊原と引き合せることも面白そうなのだが、さすがに我が家でR18なやつを繰り広げられても困るため、適当に言いくるめて帰ってもらうことにする。
榊原に部屋から出ないように伝え、念の為自分に消臭剤をかけたあと玄関の扉を開ける。
義姉であろうと思われる女性はほんわかとした雰囲気の綺麗な女性だった。髪の毛はセミロングで少しふわふわしている。ハーフなのか髪の毛は白っぽく(ハーフ多いような気がするが気にしないことにする)、白っぽい服を基調としており、まぁなんというか今どきの女性という感じな格好をしていた。しかし、私は気がついてしまった。目が怖い。目がひたすら怖いのである。口元は笑っているのに、超怖いあれ。確かにこの人に追いかけられるとか恐怖しかない。ヤンデレ怖い。
挨拶を終えると、榊原姉は事情を話し始めた。怖い。弟の写真を見せ、自分は彼の姉なのだが、数日前から行方不明であり、ついさっきこっちに走っていくのを偶然目撃した。心当たりはないだろうかという建前であった。怖い。
嘘はなんとなく見抜かれる気がしたので、とりあえず榊原の詳しい特徴を聞くなどして時間を引き伸ばし、友達にも連絡を取ってみるという体で榊原に「逃げろ」という意味合いのスタンプを送った。友達に連絡を取ったことは嘘ではないのでバレてないと信じたい。怖い。あとから聞いたのだが、榊原は我が家の窓から脱出したらしい。私が住んでいるのは8階マンションの2階なのだが…蜘蛛男かなにかなのだろうか。
その後、何とかごまかせたのかなにか分かったら教えて欲しいという理由で連絡先を交換し(させられ)、私自身は事なきを得た。後、なんで他にも家があるのにどうしてここに来たのかを尋ねると「ここに章がいる気がしたんですよねー...おかしいなー?カンが鈍ったかなー?」
だそうだ。怖い。榊原、きっとお前はどこへ逃げても捕まえられる運命だ。諦めろ。
それにしてもラブコメの主人公(私印)は凄い。義理の姉という現実ではほぼありえないヒロインさえも獲得している。
……ということは、あとテンプレ的なヒロインも数人増えるのではないか?と予想する。転校生キャラとか。
とりあえず今日は疲れたので昼寝でもしようかと思ったら、榊原姉からメールが来た「無事弟捕獲しましたーありがとうございますー」だそうだ。アーメン。
A月α日
休みが明け、学校が始まる。普通ならば憂鬱な所だが、榊原というラブコメ主人公とヒロイン達のおかげで私の気分は下がることは無い。さて今日はどんなドタバタ劇を繰り広げてくれるのか。
そんなことを考えながら学校を目指して歩いていると、榊原に会った。なんか燃え尽きた顔をしている。
どうしたのか、と声をかけてみると。「守りきった……俺は守りきったんだ……」とうわ言を繰り返しているので、私式眠気覚まし(KARATEチョップ)を脳天にシュウウウウ!チョウエキサイティン!した。見事覚醒したようである。
話を聞いてみると、どうやら住んでいる場所は割れてしまったものの、毎日姉に(実家にではない)連絡することと、数日置きに姉に(実家ではない)顔を見せることを条件に一人暮らしを許してもらったらしい。本人は姉と一緒に暮らすよりはマシだと言っていたが、正直なにも状況は好転してないと思った。ちょっと可哀想に思ったので、昨日うちに置いていった靴と一緒にお菓子もあげておいた。
榊原と共に学校に着くと、生徒会が持ち物検査をしていた。今どき持ち物検査とかやるんだ凄いなーと思っていると、榊原が検査に引っかかった。流石ラブコメの主人公(私印)である。イベントにはことごとく引っかかるらしい。
どうやら私がさっき返した靴が原因らしい。流石私である。榊原のイベントフラグを無意識に立ててしまっていたらしい。まぁ特に何も無い日に外靴がカバンに入っていれば気にもなってしまうというものだが。
私が、昨日自分の家に遊びに来た時、汚れていたので丸洗いし、今日それを返したのだと説明すると、生徒会長は信じてくれたが、副会長の腕章をつけてた女子が「男子2人…2人っきり...遊び...ハッ!」とか言ってた。あいつは許さん。
その後何事もなく教室につき、高城と城波の第n回榊原争奪戦が始まった。何回みても面白いものである。榊原が女子と戯れている間、私に話しかけてくる人もいないのでじっくり榊原ハーレムを観察していられる。ふう……この瞬間のために俺は生きている。
いつもの愉快な日常がすぎていくのかと思われたが今日は変わったことが起こった。
昼休み、私は屋上へ行った。そう屋上である。日記には書いていなかったが、この学校は今どきでは珍しく屋上の使用が許可されている。私も常にラブコメ観察をしている訳では無い。昼は屋上で1人で食べている。ラブコメの屋上はカップルがイチャイチャするためにあるようなスポットだが、現実はそんなことも無く、数人がポツポツと集まって昼食を食べる。そんなスポットだ。私も例に漏れず、ベンチに座り自作の弁当を食べていた。
そんな時に事件が起こった。
勢いよく校舎へ戻る扉が開かれたと思ったら、大きく靴の音をたて、私に近づいてくる人物が1人。眼鏡をかけ、腕に副会長と書かれた腕章をつけた彼女は、間違いなく今朝の副会長だった。
そして私の前に立つと、ビシィッっと人差し指を私に向け「あなた!ちょっと生徒会室にそのボーッとした面を貸しなさい!!!」とか言われた。この瞬間、私は思い至ってしまう。この副会長は榊原のことについて私に聞きに来たに違いないと。とどのつまり、副会長はツンデレヒロインであると。
私はこの数日間、榊原の女難を観察してニマニマする反面、何かが足りないと感じていた。それがようやくわかった、ツンデレである。
ラブコメのヒロイン枠に必ず1人はいるであろうツンデレ女子。思えば榊原といつも一緒にいるあの2人はツンデレではなく最初からデレデレである。ツンデレ枠が持ってくるトラブルこそ、榊原ハーレムに足りない物である。
しかも目の前の女子は生徒会である。トラブルには事欠かないだろう。
そんな神がかった直感に従い、昼飯を高速でかき込んで彼女に同行することにした。そんな急いで食べなくてもいいのにという顔で見られていたような気がするが気の所為だろう。
生徒会室は綺麗に整頓されていた。長机がふたつと普通の机が合わさっており、The生徒会室みたいな雰囲気である。
そんな普通の生徒会室に驚く対象がひとつ
なんで生徒会長がいるのだろうか。
いや生徒会室に生徒会長がいるのは何もおかしくないのだが、一体どういうことだろう。副会長が私に榊原のことについて聞きたいのではないのか。
こうして日記を書いていると、普通に早とちりだということに気がつくが、この時の私はまだ混乱していた。
ほぼ初対面ということで、軽い自己紹介をした。そして生徒会長に座るよう促される。
生徒会長は私が席につくと、要件を話し始めた。どうやら榊原ハーレムの女子2人が榊原と距離を縮めようとベタベタしているのが、風紀を乱しているという形で報告されたらしい。そこで、同じクラスで榊原とよく話す私に彼の素行調査をしたかったようだ。よくよく考えてみれば報告自体は妥当なところであるが、私は美少女2人を独占している榊原が気に食わないために起きた事態だと考えている。
隠しても仕方が無いので、正直に榊原とその取り巻く環境について簡潔に話した。生徒会長と副会長は終始微妙な顔をしていた。まぁ気持ちはわかる。実際問題、2人の女子のどちらの気持ちにもはっきりと答えてない状況だ。しかし、一応は納得したのか解放してくれそうだったので大人しく去ろうとすると生徒会長に呼び止められ、放課後榊原と一緒に来るように言われた。
……ここで私に電流が走る。上手く行けば、生徒会長と副会長まとめてヒロインにできるのではないかと。そんな野望を抱き、私はYESの返事とともにサムズアップして今度こそ生徒会室を後にした。
そして放課後、榊原ハーレムを何とか説得し榊原単体で連れてくることにした。別に彼女らが一緒にいても良さそうな気もしたが、新しいヒロインを作り出すためには仕方のない事だったのである。
榊原は事情を話すと、なにかずっとにやにやして気持ち悪かったのでそのまま伝えると、「いーっていーって分かってるから!匿ってもらった恩もあるし、生徒会長の前では持ち上げておくから!」とか言い出した。そういえば宿泊研修で、話題から逃れるためにそんなことも言ったような気がする。仕方ないので、榊原に昼生徒会室であったことを伝えると今度は顔を青くし始めた。表情豊かな男である。
そして生徒会室前、嫌がる榊原を引きずり、扉をノックして生徒会室に入った。
そこには堂々と座っている生徒会長と副会長がいた。いや普通に椅子に座っているだけだったのだが、主に生徒会長からカリスマオーラが流れていたような気がする。
生徒会長は椅子に座るよう私たちを促した。言う通りに座ったところで、早速本題に入っていった。
榊原が本当に女の子の心を弄ぶクソ野郎ではないか、そういったものを確かめる問答のようなものだった。今までの交際歴や、榊原の人なりを確かめるようなものだったような気がする。
2人が問答しているあいだ、副会長は榊原の方をちらちら見ていた。ははぁ……なるほど……これはヒロイン確定ですな(唐突な神推理)。
…ん?まてよ?副会長は今朝荷物検査の時なんて言っていた?男子が2人……遊び……あぁそういうことか。副会長が見ていたのは私たち2人という事だったんだな(白目)。日記を書いていて初めて分かった知りたくもない真実だった。
榊原と生徒会長の問答は無事に終わったようだった。しかし、生徒会長から女の子を待たせるのは良くない。誰かと付き合うにしろ、付き合わないにしろ、答えを出すのは早めにした方が良いということ忠告を受けていた。榊原は難しい顔して悩んでいるようだった。
ようやく解放されるかと思い、榊原と共に生徒会室を出ようかと思ったその時、私が名指しで生徒会長に引き止められてしまった。
少し疑問に思ったが、榊原に先に帰るように言ったあと、大人しく席に戻ることにした。
そして、生徒会長が発した言葉に私は驚くことになる。なぜなら
君は一体どういう人間なんだい?
そう聞かれてしまったのだから。
そして、その時私はこう思ってしまった。
やべっ、榊原を中心にラブコメ的展開を観察、あまつさえ作ろうとして楽しんでることがバレた?と。
私は頭をフル回転させて考えた。どうしたものか、なにかそれっぽいことを言えば解放してもらえないだろうかと、某ゲームの青ネズミくらいの速度で考えた。嘘ではなく、しかし真実でもない言い回しで、何とかやり過ごせないものかと考えた結果、私はこう答えた。
俺はただ、(ドタバタラブコメ的に)みんなの幸せな姿が見れれば(私にとって面白いので)それでいいと思って日々を生きています。
そう答えたあと、ボロをだす前に生徒会長の静止も聞かず私は飛び出していった。あ、榊原と生徒会長と副会長のフラグ立てるの忘れてた。いま気がついたよちくせう。
生徒会室を出て、帰ろうと校門へ歩いていると、榊原が校門でスマホをいじっていた。どうやら律儀にも待っていてくれていたようである。帰っていてくれてもよかったのに、と話しかけると、榊原は「やましいことは何も無かったとはいえ、生徒会に目をつけられなかったのは君のおかげだ、ありがとう」と返してきた。ぶっちゃけただ生徒会長と副会長とのフラグを立たせたかっただけなので罪悪感マシマシなのだが、お礼を言われるのは気分がいいので素直に受け取っておいた。というかそういうシチュはヒロイン達の前でやりなさい。
帰り道の途中、そういえばいつも榊原と一緒にいる女子2人が居なかったので、榊原に聞いてみると、どうやら部活勧誘に捕まっているらしかった。哀れ……っていうかそれなら私のこと待っていないで、そっちの方へ行けばいいのに。
その後、お互い一人暮らしの苦労やなんの部活動に入るかなど他愛のない話をし、お互い帰路に着いた。
今日の帰りのホームルームで聞いたのだが、新入生歓迎のスポーツ大会が授業の中で行われるらしいことも話題に挙がった。私は新しいラブコメイベントの気配ににやにやしながら、一日を終えた。
A月Ω日
今日は新入生歓迎のスポーツ大会の日、本来ならこういった催し物はあまり得意としない私だが、この日のテンションは少し高かった。
そう、学校行事でのハプニングはラブコメの定番なのである。
大会の内容は、先輩後輩交えてチームを組んで外と体育館で球技をやるという単純なものだった。種目は外ではサッカー。体育館ではバレーである。昼休み後の授業ぶっ通しでやるのだから恐ろしいものだ。この学校の教育カリキュラムはどうなっているのだろうか。
くじ引きの結果、私は榊原と佐々木と同じチームになった。高城と城波は別のチームになっていた。
ハプニングは起こりそうにないかなー残念に思っていたら、ある先輩が声をかけてきた。生徒会長である。
私はやはりラブコメの神に愛されているのかもしれない。榊原とフラグを立たせるチャンスではないか!そう考えた私は早速行動に移ることにした。
最初はバレー。チームは私と榊原と佐々木。先輩は生徒会長とほかの女子2人である。正直女子2人については、生徒会長と榊原の間にフラグを立てようと色々考えていたせいであんまり眼中に無かった。
私は昔から運動は特別できる訳では無い。だからあまり体育の授業とか体育祭はあまり好きではなかったし、目立つのも嫌いだ。しかし役に立たないというのも癪に障る。そこで、私はスポーツ、こと球技においてはパスやレシーブなどを頑張って練習していた。中学時代の友達には「なんなのその脇役独特のプライドみたいなの...」と引かれるくらいには頑張っていた。
それが今回功を奏した。
相手のサーブを捌き、アタックを上にあげ、榊原と生徒会長(おまけで佐々木)がアタックを打ちやすいような位置へボールを導く。この3人の運動神経はなかなかの物だった為、試合自体は楽勝だった。
しかし、このままではフラグを立たせるのも夢のまた夢……そこで私は一手を打つ。
前の列に生徒会長、榊原が並んだ時、私は持ち前のコントロールを用いて、彼らの丁度真ん中にボールを上げる。
そう。上手く行けば互いの手と手が触れ合いドキドキ展開。そうではなくても物理的な距離が近くなる為にお互いに意識をする。これぞラブコメな一手である。
目論見はまんまと成功した。榊原と生徒会長の肩と肩が触れ合うシュチュエーションに。パンチは弱めだが、意識するきっかけくらいにはなっただろう。
その後も我らが榊原率いるチームは勝ち進み、見事優勝を勝ち取るまでに至った。私はひたすらサポートに徹していた為特に目立つことも無く、先程のような際どいパスを狙って飛ばしていた。超楽しかったです(無邪気な笑顔)。まぁ私は表情の変化があまりないらしいので、実際に笑顔になることはおそらく無いのだが。
バレー中生徒会長がちらちらこっちを見ていたので、もしかしたら気が付かれていたかもしれないが、流石にそんなことは無いだろう。
これからもこんな感じで、気が向いたら日記に出来事を綴っていこうと思う。A月の日記はこれで終幕とする。
初投稿です。気が向いたら続くかもしれません。