【書籍化決定】とある男子高校生のラブコメ観察日記   作:サラダよりは肉が好き

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超お久しぶりです。今年もよろしくお願い致します。

中編を増量しようと思いましたが、特にボリュームを増やす必要も無かったので、来月の話を書きました。特に深い意味はありません( ˇωˇ )



F月
F月のラブコメ模様 前編


F月○日

 

 肝試し。それは、男女ペアで挑戦することによって、吊り橋効果的なサムシングでその仲を促進させたりするという、ラブコメイベント夏の陣の中でもド定番なイベントである。

 

 というわけで、この日私達は夜の学校へと集合した。生徒会が主催している肝試し大会へと参加するためである。メンバーは私、榊原、高城に城波、佐々木に天霧である。海原は部活、龍地は家の用事らしい。特に龍地は来れなくて残念そうにしていた。龍地がホラーとか好きだった記憶は無いが、実は好きだったのかもしれない。

 本物の心霊スポットを巡るガチの肝試しは危険も多いし、アクティブな性質を持つ我が校の生徒達がヨソで問題を起こさないように、学校側でイベントを用意してやろう……という建前の元、今から十数年も前の生徒会が学校側を説得し、企画として成立させたという謎に脈々と受け継がれている伝統行事だそうだ。

 

 なおこの裏話は、今日生徒会長である大和透華から聞いた。

 

 肝試しにはルールというものが存在していた。予め指定されたルートで校舎内巡り、写真を撮って来るというシンプルなものだ。肝試しで写真を撮らせる、というのも絶妙な経験である。心霊写真的な何か何かが撮れたという話もあるそうだ。

 この肝試しは二人一組で行い、最初のペア出発後に一定時間を置いて次のペアが出発する、というものだった。いつもの私お手性のクジを使い、ペアを決めた。

 

 肝試しのペアは

 

・榊原と高城

・佐々木と天霧

・私と城波

 

 となった。佐々木は本命の海原が来れないことに意気消沈していたみたいだが、天霧とペアになって息を吹き返したみたいだ。理由はおそらく天霧のヘビー級胸部装甲だろう。気持ちはわからんでもない。

 因みに、今回の順番決めには私は微介入である。男女の組になるような細工だけだ。……毎回私がこういう場でクジを用意するので、ちょっとだけ榊原には怪しまれていた。今後は何か別の手を考えねば。

 

 肝試しにはそこそこの人数が集まっていた。同じ学年の者だったり、上級生だったり。体感的には一クラスあたり6〜7名ほどだろうか。ひと夏の思い出、もとい吊り橋効果狙いっぽい連中も居たので、心の中でエールを送っておいた。頑張れ。

 

 私達の中では、榊原高城ペアが先に肝試しへと出立した。次は佐々木と天霧。最後には私と城波という順だ。

 

 他のペアが肝試しをしている間、城波と話をした。実はサシで話す機会はほぼ皆無だったため、この際だから榊原のどこを好きになったのか的なラブコメチックな質問をしたのである。

 すると、私の想像とはちょっと違った答えが返ってきた。彼女曰く

 

「最初は勢いで告白したところもあったよ。金髪が理由でいじめられて……今思えば半分以上妬みとかも入ってたんだろうけどさ。そうして気分が沈んでるときに、ドラマ見たいな助けられ方をしてもらって、かっこいい!って思ったし、だからこそ、高校が同じだって知った時は運命だ!なんて思った。……でもね、皆と一緒に過ごすうちに、榊原くんは本当に優しくて、強い人なんだなって……誰かを助けるのに躊躇が無い人だってわかって……彼のことは誰が助けるんだろうって。そう考えたら、他の誰でもないアタシが彼を助けてあげたいって思って……だから……えっと……し、喋りすぎた!今の無し!ナーシー!」

 

 らしい。ラブコメなことに関しての記憶力はMAXになる私でさえも驚くような文章量である。恋する乙女は強い(確信)。はっきりわかんだね。金髪に赤面は映えるぜ。

 ともかく彼女は彼女で、ちゃんと理由があって“榊原” という一人の男を好きになったらしい。

 

 甘酸っぱいラブコメの気配を感じていると、満足気な顔をした高城と、青い顔をした榊原が帰って来た。

 榊原がホラー苦手だという話は聞いていなかったし、肝試しに来る途中も別段変わった様子はなかっため、こっそり榊原に確認を取ったら

 

「他意は無いけど音楽室に気をつけてねホントにマジで……!」

 

 と迫られながら言われた。その時に妙な視線を感じた気もするが気の所為だろう。そう思いたい。

 

 マジで幽霊的なサムシングが居るのか不安に駆られながらも、帰るわけにも行かず。私達の番になり、城波と共に肝試しへと向かった。

 

 結論から言えば、最終ポイントである音楽室まではスムーズに進むことができた。途中途中生徒会の仕込みに驚くことはあったが、私がそもそも表情が乏しいからかお化け役であろう生徒は悲しそうに持ち場に戻っていった。大丈夫だ。ちゃんとチビリそうになってるから。城波は楽しんでいる節があった。ホラーにお強いのは羨ましい限りである。

 

 問題の最終地点。特に写真を撮り、その場を去ろうとしたその時に、ポーンと、ピアノの音が鳴った。

 誰も触っていないし、そもそも私達以外誰も居るはずもない。気の所為だ、と二人で結論付け、再び去ろうと音楽室の扉へ歩を進めると……

 

 ポーン…と、今度は違う音が鳴った。思わずピアノの方向へ目を向けると、次々と音が鳴っていく。

 流石の城波も腰を抜かし、私は棒立ちのままその様子を見守ることしかできなかった。すっげぇ怖かった。

 

 恐怖でその場を動くこともできず、ただピアノから紡がれる音を鑑賞するしか無いかに思われたその時に、私はとんでもないことに気がついてしまった。

 

 ピアノの奏でているのは、十数年前に流行った学園モノラブコメアニメ「ラブっとラブル!」のオープニングテーマ「恋はジハード!」だったからである。

 何を言っているのかわからないと思うが私も良くわかっていなかった。何故曲を奏でているのか、よりにもよってなんでこのチョイスなのか。どうすれば良いのか良くわからず、混乱した私は一先ず歌うことにした。振付完備で。

 私が動画配信サービスで見つけて視聴したことのある「ラブっとラブル」は所謂昔ながらのハーレム物ラブコメであり、金持ち学校内の派閥争いに巻き込まれた一般男子転校生が、全ての派閥の女の子のハートを射止め、争いの平和的解決をするというお話である。

 最初はお嬢様同士の派閥争いだったものが、主人公登場により主人公の取り合いへと変化していく様が面白いのだが、当時の大衆の理解を得られず打ち切りになってしまったらしい。残念。

 

 とりあえずがむしゃらにピアノのリズムに合わせて歌って踊りきった結果、曲が終わった直後に、城波を含め2人分の拍手が響き渡り、そのまま一礼をして城波を連れて音楽室を去った。謎の達成感と胸に校外へたどり着き、生徒会長に校内で撮って回った写真を見せてOKを貰った。

 その時に、生徒会長に音楽室の仕掛けについて尋ねて見たところ、特に何も配置していないと告げられた事が、ある意味一番怖かったかもしれない。

 

 

F月×日

 

 肝試しも終わり、残す大きなイベントは夏祭りのみとなったなぁなんて考えていた今日だったが、珍しくっ高城から連絡を貰った。

 榊原について聞きたいことがあるから突然だが会えないか、という内容だった。そもそも男子を誘うなら榊原を誘えと思わないでもなかったが、ある意味チャンスでもあると思い承諾。以前龍地と待ち合わせた店で会うことにした。城波から榊原を好きになった理由を聞けたように、高城からもそれを聞けるかもしれないと考えたのだ。

 

 そうして高城と邂逅。緊張した様子の高城だったが、自分から要件を話し始めた。

 どうやら、高城は夏祭りで再度榊原に告白する腹積もりらしかった。そしてそれは、城波も同じらしい。 

 そして、告白をする前に榊原と一番仲が良い(高城視点)私から、榊原についての情報を聞き出そう、というのが本題らしかった。おどおどした雰囲気を醸し出しながら、やっていることは情報戦である。強かだなこの人。

 

 私は承諾こそしたが、ひとつ条件を提示した。それは、高城が榊原のどこが好きかを話すことである。勿論九割はラブコメ大魔王である私の興味本位であった。しかし、榊原は最早観察対象であり、友人の一人でもある。何となく、高城が本当に榊原の事を好きなのか知りたくなったのだ。無いとは思うが、高城のスクールカースト的ステータスの一助のため的な答えが帰ってきたら教えないつもりでいた。

 

 まぁ杞憂だったのだが。

 

「章君はね、最初からあんなに何でもできる訳じゃなかったんだ。勉強が得意になったきっかけは、勉強が得意じゃなかった私に勉強を教えるため。運動が得意になったのは、運動好きなお姉さんと一緒に遊ぶため。彼は誰かの為に、一つずつできることを増やしていったの。決して表には出さないけど、何度か心が折れそうになったことも知ってる。……そんな時、私はなにもできなくて……だから、今度は私が支えてあげたいって思ったの。護られていた私じゃなくて、彼と共に歩ける私になりたい。頑張り屋だけど少し寂しがり屋な章君が、大好きだから。」

 

 並々ならぬクソデカ感情がそこにはあった。因みに章というのは榊原の下の名前である。

 付き合いの長さが為せる技なのだろうか。流石は幼馴染み黒髪ロング枠ヒロインである。

 このクソデカ感情を抱えている高城だからこそ、自分以外から見た榊原のことを知りたいらしかった。好きな人のことは何でも知りたい系っぽい。

 恐らく高城の予想内の部分しか話すことは無かったが、私の知りうる限りのことは話した。

 その会話の中で、文学少女いいよねって話を榊原とした話題を出したら、メガネを買おうか本気で検討したあたり、好きな男に染まるタイプの女の子感を感じた。危うい一面を見てしまったかもしれない。

 

 その後は私の、というより龍地との関係について聞かれた。どういう付き合いだったのかとか、中学時代どう過ごしていたのかとか。別段隠す事でもないのでスラスラと話していたら、次第に高城が天を仰ぎ始めて「頑張れ……龍地さん……」と絶望とも取れる声色で呟いていた。何故龍地が頑張る必要があるのか意味不明である。

 

 余談だが、高城と別れた直後に龍地が現れ、後頭部を平手打ちしてきた。偶然近くに居合わせたらしいが

 

「高城嬢と密会して何をしていたんだいさぁ洗いざらい吐きたまえさぁ!」

 

 と物凄い剣幕で詰め寄られた。心配しなくても、高城は榊原にゾッコンだと言うのに、訳の分からない心配をする奴である。

 




※オマケ

「恋はジハード!」歌詞

こーいは戦争だ!


(近接戦!情報戦!制したものは恋をも制す!
容姿!財産地位名声!使えるものは何でも使え!
勝ち取れ!愛しのあの隣!さぁさぁ今こそ尋常に!
ガチンコ勝負!どんとこーい!)

「好きだよ」の4文字求めて
(今日も今日とて裏こうさーく!)
気になる、あの子をリサーチ
(明日の為のプラン二ーング!)

たーたーかいは~
既に始まってるのよ!
武器は(笑顔!)
盾は(涙!)
フルスロットルで~いざ~開戦~ッ!

恋はジハード!休みなどない~!
言葉の弓で~狙うはハート!
ホントにマジハード!突き進むのよ~!

あなたのことが、Die!好き!だからね!(ふぅー!)

(近接戦!情報戦!制したものは恋をも制す!
容姿!財産地位名声!使えるものは何でも使え!
勝ち取れ!愛しのあの隣!さぁさぁ今こそ尋常に!
ガチンコ勝負!どんとこーい!)
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