【書籍化決定】とある男子高校生のラブコメ観察日記 作:サラダよりは肉が好き
2~3か月の間に完結まで持っていこうと思います。
楽しみにしていただけるなら幸いです。
F月α日
肝試しから数日。夏休みもとうとう終わりが近づいてきた中……メインイベントが始まった。そう、今日はラブコメイベントの大きなターニングポイント。夏祭りの日である。
この地域の夏祭りについてはあまり詳しくはなかったが、ラブコメの定番通りに神社で行われ、定番通り夜に花火を打ち上げるらしい。ベタだがあまりにもナイスなイベントだ。
という訳で夏祭り当日である今日は、榊原、高城、城波、海原、佐々木、天霧、龍地+私で夏祭りへ。榊原姉はどうやら仕事が入ってしまったらしく欠席らしい。ヤンデレ姉が居たらどうなっていたかわからないといえばそうだが、この一大イベントを逃してしまうのは少しネックかもしれない。ドンマイ。
夕方から集まり、歩き回った後に花火でも見ようという流れなのだが……私は既に昼過ぎの時点で夏祭り会場へと足を運んでいた。理由はもちろん、ラブコメ観察スポットの炙り出しである。ここの夏祭りはかなりの規模であるため、あらかじめスポットを厳選しておく必要があったのだ。同時に、立ち入ったらちょっと危なそうなとことかもあたりをつけておいた。ラブコメにハプニングは必要だがバイオレンスは必要ない。ガラの悪い連中のたまり場になりそうな場所などは町内会の皆さんとかに聞き込みを行い調査しておいたのである。我ながら惚れ惚れする下準備ぶりだ。
大体15時を回った頃だろうか。小腹満たしにチョコバナナを食べていると、なぜか龍地が私の目の前に現れた。待ち合わせの時間までは2時間程あったので不思議に思っていたところ、どうやら私がラブコメ観察の下準備をすることを先読みし、速めに会場に足を運んだのだという。龍地には私の行動パターンが筒抜けなような気がするが、中学からの付き合いなのでまぁ納得だ。私が昼過ぎくらいにここに居たことを伝えたら呆れた顔をしていたが。
そうして、少しの間二人で祭りを回ることになった。と言っても、疲れがこないように少々の食べ物を買い、休憩スペースでだべったりしていた程度だ。あとは、先に射撃とかもやった。龍地から「あの景品のぬいぐるみを先に落とした方が勝ち。ひとつなんでもいうことを聞く……どうだい?」と持ち掛けられたので、暇だったので承諾した。
結果としては龍地の勝ちだった。というより私の番が回るより先に一撃で落としてしまったのである。今思えば、一撃で落とせそうな景品に当たりをつけたあとに私に勝負を持ちかけたのだろう。探偵業に携わっている龍地程度ならそれくらいはやってのける。くそう。何を命令されるかは保留となったが、龍地の笑顔が怖かったのであまり考えないようにした。できることならそのまま忘れて欲しいものである。
そして潔く集合時間を迎え、合流。龍地もそうだったが、各々浴衣等を着て夏祭りを満喫する構えだった。私の服装は安い服屋に売っていた甚平である。
榊原、佐々木の男子組は中々様になっており、身体を鍛えているからか鎖骨が見えてなんかセクシーだった。実際ツインキャッスルは顔を真っ赤にしていたし、天霧も頬を染めていた気がしないでもない。海原は小悪魔系(私印)なだけあって余裕そうだったな。私とは目を合わせてくれなかったが。嫌われるようなことをしてしまっただろうか……。
高城、城波、海原、天霧、龍地の女子組は、それぞれ特徴が出ていたが皆素晴らしいものだった。高城はその黒髪ロングを活かした清楚な仕上がり。城波は髪を編み込み色鮮やかな浴衣を携えた派手だが美しく決めていた。海原は水色の模様が入った浴衣で本人のスポーティーなイメージと調和させていたし、天霧は紺色に花の模様が入った浴衣で色気があった。龍地は黒い浴衣で本人の雰囲気と相まってミステリアス美人が強調されていた。
もちろん佐々木は大興奮。榊原はその美しさ可愛さにたじたじ。私も表情には出てこなかったが感嘆していた。
そんなこんなで、皆で屋台を巡ることになった。輪投げ、ヨーヨー釣り、金魚掬い、射的、くじ引き、型抜きとかメジャーなものは大体やった。ハイスペック集団(私を除く)である彼らが取り組んだものはかなりの戦果を出していたが。射的の全景品落としはやりすぎだと思う。
食べ物ではお約束イベントが沢山見れた。具体的には榊原へのアーンである。祭りという空気がそうさせるのか、ツインキャッスルは積極的に榊原にアプローチをかけていた。いつもの光景だが、こうして衣装違い(不適切な表現)の彼らを観察しながら食べる焼きそばは中々に美味だった。佐々木は中々恨み顔で見ていたが……。
花火の時間が近づくにつれ、女子組の顔がだんだんと暗いものに変わっていった。私はこの時、灰色の頭脳により女子たちの様子の変化の原因に気が付いていた。そう、花火を榊原と一緒に見たいが、この空気からどうやって榊原を連れ出そうか……これが彼女たちの悩みの種である。そして、この神社にはとある恋愛に関する言い伝えがあるのだ。
『鳥居の下で結ばれた二人は未来永劫幸せに暮らすことができる』
とかいうものだ。そういわれるまでには色々とストーリーがあったらしいが、詳しいことはあまり覚えてはいない。私が知っていることと言えば、これにあやかって花火大会前にイベントが設けられているということくらいである。
というわけで、「チキチキ!想い実らせスタンプラリー!」始まった。ルールは簡単。運営が決めたコースに沿ってスタンプを集め、鳥居の下まで駆け抜けるというシンプルなものだ。ただし、スタンプを貰うためにはさまざまな条件がある。
例えば、第一チェックポイントではなぞなぞに答えないといけないし、第二チェックポイントでは恋愛クイズなるものに正解しなければならない。最早夏祭りなんて関係ないが、ここら辺の謎イベントもラブコメのお約束といえばそうである。
かくいう私はせず、あらかじめ調査しておいたポジションを移動してみんなの様子を観察することにした。龍地から物凄い目で見られた。何故だ……。
というわけで観察開始をしたのだが、面白すぎて書き切れないのでダイジェストで書きだすと
・一部の男連中が天霧の揺れるプロポーションに夢中で転んだりして脱落していた。
・最初はトップで走っていた佐々木がなぞなぞで苦戦して後続に抜かれまくっていた。
・運動が得意ではない龍地が途中で人の並みに飲まれ脱落した。
などなどである。そうして最終的に先頭を走っていたのは、榊原とツインキャッスル。そして数名の一般参加者たちだ。最後に鳥居の下にたどり着くのは誰かなぁと思いながら観察していると、ここでハプニングが起こった。
まさにゴール前。イベントのために建てられていた大きい看板が、先頭を走っていた集団が通りかかったところで倒れてしまったのである。とっさに榊原は、高城と城波をかばうために二人を両脇に抱え込み、全力で前に飛んだ。……察しの良い方ならわかってしまったかもしれないが、その拍子にゴールに三人で飛び込み同時ゴールとなったのだ。因みに看板はそれほどの重さではなく、他の参加者には怪我はなかった。あまりの展開に、一瞬私の仕業かと自分を見たが、そもそも看板の場所に私はいなかったので、偶然の出来事だろう。自分で自分を犯人だと疑うとはこれ如何に。
そういうわけで、結局榊原、高城、城波の3人で鳥居の下で写真を撮った。カメラマンは私である。
時間は過ぎ、とうとう花火大会。ハプニングが起こったせいか、結局全員集まって花火大会を見ることとなった。どうやら、この花火大会は恋愛ゲームでいうところの共通ルートイベントだったらしい。大幅な進展こそ見られなかったが、皆の仲は進展しているように感じる。嗚呼素晴らしき哉青春。……今こうして日記を書いている時に気が付いたが……帰りの時に用事があると一人で離脱し、帰り際の彼らを眺めればよかったのでは……?
クソッ、気が付くと悔しすぎて泣ける。今日はここまでにしてとっとと寝てしまうことにしよう。
F月θ日
夏休み最終日。このイベントがあることを忘れていた。そう、宿題消化イベントである。膨大な時間を有していたにも関わらず、宿題が終わっていない者の求めにより開かれる勉強会……もとい救済会だ。
当然のように宿題が終わっていない佐々木。そして意外なことに宿題が終わっていない榊原、として海原がやばいということで、集まれるメンバーで勉強会を開くことに。会場は何故か私の家だ。一人暮らしなら当然と言えば当然だが解せぬ。
本日のメンバーは私、榊原、高城、城波、佐々木、海原だ。他は用事とかで欠席である。因みに私、宿題はとっととやる派だ。その方がラブコメ観察に時間を回せるからである。まんま写させてもよかったのだが、それだと大変面白くないので教え合う方式を取り、教鞭をとることとなった。前の勉強会でも思ったことだが、どうやら皆地頭自体は悪くないらしい。他に夢中になっているものがあるだけで、やればできる子の集まりなのである。
榊原は頭が良いので手助けの必要が皆無。佐々木だって宿題の量が多いだけで、教えて行けば大きく躓く事は無かった。海原も同様である。
気合を入れた勉強会だったが、内容自体は夕方で終了した。意外だったのは、ツインキャッスルが榊原に積極的アプローチを仕掛けなかったことだ。勉強会が終了した後も、早々に解散という流れになった。
私が不思議がっていると、最後まで私の家に残った榊原から、衝撃の報告があった。
「俺、文化祭でちゃんと二人の告白に返事をしようと思うんだ。」
何ということでしょう。ハーレム崩壊の危機である。すぐさま阻止を…ということはしないが、ツインキャッスルがいつもと違う様子だったことには納得が行った。どうやら夏祭りの帰りに、彼女たちにこのことを伝えたそうだった。
皆で遊べる心地の良い空間が出来上がり、それが当たり前だと思っていたところに榊原の宣言が来たことによって、心に焦りとか色んなものが生まれているのだろう。文化祭までは少しばかり先とはいえ、今までのようなラブコメは少しお休みになってしまうかもしれないな。
それは少し寂しいが、こればかりは介入することもできない。私がやることは誰かの背中を押すことと、面白くなるように手を加えることくらいである。誰かに肩入れすることはしないし、真面目な場面になるのなら茶化したりもしない。
まぁその間にヒロインが増えてかっ攫われてしまう可能性も微レ存だ。そもそもにおいて、榊原がどちらかと付き合うのか、それともどちらもフるのかすらわからないし聞かなかった。
私は榊原の宣言に相槌だけを打った。ここから誰かが追い上げて来るのか、誰かを選ぶのか、ハーレムエンドなのか。行く末はわからないが、その時が来るまではいつも通り観察を続けようと思う。
今までを色々と思い返してみたが、思えば今日の勉強会のメンツがある意味始まりだったような気もしている。たかだか数か月前の宿泊研修がなんだか懐かしい。
あの頃は、目の前で展開されるラブコメにただ夢中だったが、物語にはいつか終わりが来てしまうものだ。終わりというよりは、節目だろうか。ラブコメ漫画だって、連載が終わっても登場人物たちの人生はきっと続いていくのだ。終わりという表現は適切ではないかもしれない。アニメで言うところの1期終了か、それとも最終回となってしまうのか。それもまた楽しみである。
なんだか中学時代の龍地が色々と事件を解決し、最終的に様々な事件を起こした黒幕を突き止めて探偵業がひと段落した時を思い出すな。私はほぼ助手というか雑用だったが、一時期ニュース番組を総なめしたものである。もちろん私は表に出ていない。あの頃も色々あったが楽しかったな。ラブコメを目当てに近づいたら探偵モノが始まってしまったが、いい思い出である。
明日からはまた学校だ。ゆっくりと休み、ラブコメ観察に備えるとしよう。
ちょこちょこ修正を加えております。内容に変わりはありませんが、矛盾っぽくなってたりとか誤字とか。
完結までどうかお付き合いくださいませ。