【書籍化決定】とある男子高校生のラブコメ観察日記   作:サラダよりは肉が好き

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筆が乗ったので連続投稿だ!


G月の追憶

「……」

 

「……」

 

二人の男女の間に流れる沈黙。花火は相変わらず打ちあがっているが、この貯水タンクの裏だけは、涼しい秋の風がほほをなぜるばかりだ。

 そうして男は、そのまままた貯水タンクの影から顔を出し……

 

「ってちょっと待ってくれないかな?!」

 

「ほんぎゃ」

 

 顔を強引に少女……龍地の方へと向けられる。

 

「今すっごい大事な場面だよね!?どうして君はそうなのかなぁ!?」

 

「だってその話は別に今じゃなくたって出来るし、結局榊原がどういう選択をしたのか気になるし……」

 

「無粋だとは思わないのかい!?」

 

「特大のブーメランめ……!」

 

 と、少しのじゃれ合いの後……。

 

「……仕方ない。結果は死角から仕込んでおいたカメラで確認するとして…」

 

「どこまでもある意味外道だな君は……」

 

「場所変えようぜ。ファミレスとかでいいか。」

 

 暴露された内容に動揺する様子も無く、男は先に歩を進める。どうやら、本来のメインであった少年少女は既に場を後にしたようだった。

 

 

「で?今度のビリビリ文庫の新刊が“ギャルゲーに入り込んだ転生者が、主人公とメインヒロインの仲を切り裂かないと死ぬ”って内容だったって話からだったっけ?」

 

「そんな荒唐無稽な話はしてないよ……君が読みたいだけだろそれ……」 

 

 ファミレスにて、目立たない端っこのテーブル席に座る2人。今から深刻な話をするとは思えない雰囲気だ。

 

「……で、結局何が知りたいんだ?」

 

「……全部、かな?」

 

「スリーサイズは上から……」

 

「そういうことを言ってるんじゃないよ!?」

 

 溜息を吐き、仕切りなおす。龍地の緊張は適度にほぐれ、改めて本題へと移る。

 

「……で、実際どうなんだい?君は誰なんだい?」

 

「……誰、と言われてもなぁ。俺は俺なんだが……うーん……どう話したものか……というか、どこで気がついた訳?」

 

「確信を持ったのは昨日。疑いを持ち始めたのは随分前からだよ。それこそ中学時代さ」

 

「そんな早くから……?怖すぎない?俺わかりやすい要素出てたっけ?」

 

「まずひとつ。君は年齢にしては中身が成熟しすぎている。冷めているといってもいい。そう感じたのは、特に人間のコミュニティを見ているときだ。仲違いだろうが失恋だろうが、“そういうもの“として冷めた感想しか抱かなかった。

ふたつ。単純に君頭良すぎ。ボクみたいに英才教育受けてる訳でも無いのにテストの点数高すぎたんだよ。国語と歴史100点はやりすぎだったね。高校からは自粛して点数押さえてたみたいだけど

みっつ。天霧さんが知っている君と今の君との差異。変化が無表情だけだというなら事故の後遺症か何かだと考えたけど、性格まで別人だ。疑わしいのは解離性同一性障害……二重人格や記憶喪失だね。」

 

1つ暴かれる度に、男は全力で顔を逸らす。ボロを出したつもりは無かったのだが、ここまで綺麗に違和感を拾われているとどうしようもない。

 

「細かいところはもっとあるけれど……でも、喉の奥に魚の小骨が引っかかったような違和感を感じるんだ……だから、君の口から本当のことを聞きに来た……強制はしないけど……」

 

数分、唸りながら考える男。決して深刻な様子は無く、本当に、どう話したら良いかを考えているだけのように見える。

 

「よし、全部話すか。とりあえず事実はな」

 

「……聞いたボクが言うのも何だけど、本当に話していいものなの?それ……」

 

「ある程度予想はついてるんだろ?隠すことでは……まぁあったけど、龍地相手じゃ隠したって見抜かれそうだからな。内容を適当に取捨選択してくれ……」

 

ドリンクバーから取って来たジンジャーエールを飲み、ため息をついてから口を開く。

 

「そう、アレは30万年前……」

 

「真面目に話してくれない!?」

 

 

 数年前、俺が小学4年生の頃だったな。俺は……というよりこの肉体は、交通事故に遭った。トラックと乗用車の衝突事故だ。勿論こっちは乗用車。

 まぁ結論として、両親は死んだ。そして……この肉体も死ぬはずだった。

そう、はずだったんだよ。……でも、そうならなかった。気が付けば、俺はこの肉体の主となっていた。

 ……説明が飛躍しすぎ?じゃあどうするかな……“俺”が何者か?聞かせろ?うーん……聞いて驚くなよ。

 

結論から言えば、俺は転生者だ。そうそう、良くラノベとかで言うアレ。ふざけてるのかって?大真面目だから困るんだよな。

 俺は前の世界で……まぁこの世界と大して変わりはしない世界で22歳まで生きた。大学生さ。でも死んだ。内定を受け取った日に、何の偶然かトラックとの追突事故でな。で、目が覚めたらこの肉体に入っていた。……だから嘘じゃないって。何なら前の世界の経歴を細かく話してもいい。……まぁ、それで目覚めたのは病院だった。この肉体の記憶はバッチリ残ってた。だから生活するには困らなかった……まぁ、今両親が引き取ってくれなきゃもっと苦労してたけどな。

 

俺も最初は混乱した。どうしてこんなことになってしまったのか。これからどうすればいいか……とかなんとか。

 だから、好き勝手に生きることにした。昔からラブコメとかが好きだったから、現実でも探すことにした。開き直ってな。

 

今だからぶっちゃけるが、龍地に声をかけたのも、その時読んでたラブコメの登場人物みたいだなーって思ったからだし……痛いって。氷を投げるなマナー違反だろ。

 そんなわけで、確かに俺はこの肉体の元の持ち主とは言えない。二重人格とかじゃないぜ?何とかできないかって色々調べてみたけど、解決策なんてある訳もなかったからな。

 

 

「という訳だ。」

 

「……困った、嘘はついてないみたいだね……」

 

 龍地は頭を抱えた。仮にも中学時代を共に過ごした仲だ。龍地の推理力から読心術からは、嘘を感じることはできなかった。

 

「それで?俺をどうしたいんだ?……ってまぁわかってるけどな。“大きな謎があれば、明かさずにはいられない”……大方、龍地の中で確信を得て居ても立っても居られずに俺に迫って来た……ってところだろ。冷静だけど、結構激情家だもんな」

 

「うぐ……で、でもそれだけじゃないんだよ……言えないけど」

 

 言えないんかーい。と言いながら、残りのジンジャーエールを飲み干す。

 

「で、満足したか?」

 

「……嘘はついてないけど、全部じゃないよね。」

 

 再び、沈黙。初めて男の表情が少しだけ歪む。

 

「仮に君が本当に転生者だったとして……なぜ転生者と言い切れるんだい?単にこの世界で死んだ魂が、その肉体に宿っただけかもしれないのに?」

 

「言葉の綾だって…」

 

「うん、それは嘘だね。声のトーンが少し下がった」

 

「流石にそれは怖いって……」

 

 表情、歪みまくりである。

 

「君は、転生者であるという確信を自分の中で持っている……しきりに、“前の世界”と言ってたことからもそこはなんとなくわかる……だとしたら、なんで?……この世界と自分の生きていた世界は別物だといえる決定的な何かがあったんじゃない?」

 

 男は息を飲む。自分の友達、怖すぎである。よくもまぁ中学時代ずっとつるんでいたものだ。

 

「……例えば?」

 

「そうだね……元の世界と地名が違ったとか……君の趣味に合わせるなら“この世界を俯瞰的に見たことがある”…とか?」

 

「………………」

 

男から冷や汗が流れる。

 

「…当たり、みたいだね」

 

「…………あー、負けだよ負け負け。やっぱり隠し事はできないよな。流石龍地だ……本当に」

 

 観念した。という風に両手を上げる。

 

「…………本当、なんだね。信じたくは無いけど…」

 

「……まぁな。って言っても、俺のせいでもうだいぶズレはあるんだけどな。…というか、別物?」

 

 肩を落として、ジンジャーエールを飲もうとして先ほど飲み干したことに気が付き、そのまま口を開いた。

 

 

 

 

 その通りだ。俺はこの世界をなんとなく知ってた。タイトルは忘れたけど、昔に読んだことがある小説まんまだったからな。

それに気が付いたのは、龍地に会ってからだ。忘れるはずなんてない。龍地は、俺の推しだったからな……面と向かって言うのは恥ずかしいけど。だから、俺はお前を一人にさせちゃいけないって思った。今だからぶっちゃけるパート2だけど、あのままだと、お前は孤高の探偵として事件を解決し続けることになっていた。その姿は格好良かったけど……その代わり、人らしい感情が表にでてこないようになっちまう。

……おせっかい焼きなのかもしれないけど、なるべく一緒にいるように心がけた。そして、もう大丈夫だなって思って、敢えて離れたんだ。俺に依存しちゃいけないって思ってな。……自意識過剰かな。すごい恥ずかしくなってきた。忘れてくれ……。

 

 

 

 

「………………」

 

「………………」

 

 何度目かわからない沈黙。お互いに顔は少し赤い。

 

「……君、実は鈍感じゃないだろ」

 

「……………まぁうん。はい。」

 

 気まずい雰囲気が流れるが、探偵の本能は、まだ謎があると叫んでいる。

 

「えっとその、君がこの部分をぼやかしたのは…ショックを受けるって思ったから?自分たちが、創作物上の存在だってわかったら……」

 

「………まぁな。でも、この世界が小説まんまの世界かって言われたら、そうじゃない。皆生きて、自分の人生を歩んでる。その一部分が小説って感じで切り取られただけなんじゃないか…っていうのが俺の持論だ」

 

「…そうか。じゃあもう1つ質問するけど……さっき、日記をつけながら榊原君たちを見ていたよね。アレはずっと書いてるの?」

 

「……まぁ一応な。日記って形をとったのは高校入ってからだけど、中身が入れ替わってから、記録はずっとつけてるよ」

 

 男は日記を取り出す。その日記帳は分厚く、中身を開くと、中にはびっしりと文章で埋まっていた。

 

「どうして?」

 

「……なんというか……俺が俺だった間の記録っていうか…」

 

 歯切れ悪く男話を始める。

 

「……実のところ。この肉体の本当の持ち主は、まだ俺の中で生きてるんじゃないかって思うことが時折ある」

 

「…というと?」

 

「夢を見るんだ。事故に遭った時の夢……元々の肉体の主人が事故に遭う夢だ。光景だけじゃなくて、感情もダイレクトに伝わってくる。焦り、恐怖、絶望……とてもいいもんじゃない。……だからこそ」

 

「中身が元に戻った時に、どんな人生を歩んできたかを示すために……?」

 

 男は頷く。観念したように、憑き物が落ちたかのように。

 

「……不思議だな。気持ちがすごい楽だ。話してしまうってのはこんなにも楽なんだな」

 

「……当たり前だよ。到底個人で抱えきれる秘密じゃない……君の心情を考えると、重すぎる……」

 

 少女は後悔する。探偵の性とはいえ、暴かければ良い真実だってある。だが、自分は暴こうと動いてしまった。……探偵の性以上に、自分を想っている相手の事を知りたいという欲求に、逆らうことが出来なかったのだ。

 

「……で、結局どうするんだ?俺が特殊な存在だと知った探偵は、俺をどう処分する?」

 

「……どうにもできないよ。確かにかかわってきた事件の中にはオカルトチックなものもあるけど…これはレベルが違いすぎるし……なにより、ボクが知っているのは事故に遭って、入れ替わってからの君だ……中身が今更もどっても……どうしたらいいかわかんないよ」

 

「……だよなぁ。」

 知ってしまったからには、知る前には戻れない。龍地欄は、男の秘密を抱えたまま生きるしかない。それでも…

 

「よし、保留!」

 

「人の秘密を暴いといてそんなあっさり……」

 

「うん、だって仕方ないじゃないか。知りたかったんだから!」

 

「この根っからの探偵め……」

 

「それに……うん。知ったとしても、ボクの気持ちは変わらない。この気持ちは、嘘偽りなんかじゃない……それがわかっただけで、収穫だ」

 

「俺は多大なメンタルダメージ負ったんだけど……」

 

「楽になったんじゃなかったの?」

 

「それはそれ、これはこれだっての……」

 

 また沈黙。しかし、次にこぼれるのは小さな笑い声だ。

 

「ところで君……表情が動いてるの、初めて見たよ」

 

そこで初めて、男は自分の顔を触る。…浮かんでいる。無表情と言われ続けた男の顔に、確かに表情が浮かんでいる。

 

「……なんだろうな、うーん……理由はわかんないけど……わからんな。保留で」

 

「なにそれ」

 

「……帰るか」

 

 会計の為に、立ち上がる。ふと、男は靴紐がほどけていることに気が付きしゃがんで結ぶ……立ち上がる時に、見覚えのある顔が見えた気がして、ふと右にを見てみると……。

 

「……よ、よう…………」

 

 どうしたらいいかわからない顔で、友人キャラである佐々木幸助が、隣の席にいた。

 




友人キャラ、参戦。
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