【書籍化決定】とある男子高校生のラブコメ観察日記 作:サラダよりは肉が好き
B月α日
大型連休も明け、学校が始まった。教室には、休みの気分のまま来たのかテンションが高い者、休みが明けたことに絶望しているのか沈んだ表情をした者、徹夜でもしたのか既に机に突っ伏して睡眠を貪る者など様々だ。
そんな中、ラブコメ主人公(私印)こと榊原を筆頭とした榊原ハーレム(私印)の様子はというと
幼なじみヒロイン枠(私印)こと高城は恥ずかしそうに榊原をチラチラと盗み見ていて
ハーフヒロイン枠(私印)こと城波は頬を膨らませていかにも怒ってますというわざとらしい態度で榊原をチラチラ見ていて
名誉友人枠(私印)こと佐々木は、寝ている振りをして海原をガン見しており
主人公(私印)こと榊原は、頭を抱えて何かを悩んでいた。
希代のラブコメウォッチャーの私はと言うと、この構図が既にラブコメだなぁとしみじみ感じてこの1団を観察していた。
どうやらそれぞれ休み中に何かしらあったらしい。榊原とヒロインズのラブコメを見れなかったのは残念だが、流石の私もプライベートまで張り付いてラブコメ観察をする気にはなれなかった。と言うより、私が榊原周辺の情報を聞くためには本人たちに聞く他ない訳で、それ以外だとヤンデレヒロイン枠(私印)こと榊原の姉にコンタクトを取らなければならない。本人に直接聞くと怪しまれるし、かと言って榊原姉に対して大好きな弟の、ほかの女とのデートの予定を教えてくれ、とは言えない。ワンチャン数人死人が出る。
そんなこんなで遊園地に遊びに行ったあとはSNSでのやり取りしかなかったのだ。お預けになっていたぶん。この日の私はラブコメ観察の熱気に満ちていた。
かと言って、休み明け1番目にイベントが起こるはずもなく、榊原達はいつも通りのラブコメを過ごしていた。しかし、初期ヒロイン組ことツインキャッスル(高城と城波)が榊原に対してそこはかとなくぎこちない感じで接していたところを見ると、やはりいつも通りとは言えなかったかもしれない。
これは100%の推測だが、恐らくそれぞれが榊原とちょっとエッチなイベント。いわゆるラッキースケベか何かを発生させてしまい、ヒロイン達は榊原をより意識してしまい、榊原は両方とそんなイベントが起きてしまったために頭を悩ませているのではないか……と、私は考えた。
ちなみに、ずっと悩んでる榊原を見かねて昼休みに連れ出して事情を聞いてみると、高城とは高城の家でうっかり高城を押し倒してしまい、城波とは街中で誰かとぶつかった拍子にうっかり胸を揉んでしまったらしい。私はもしかしたらエスパーかもしれない。
2人に対してどうすればいいかと相談されたので、とりあえずリア充爆発しろというお約束を言い放った後、普通に土下座でもなんでもして謝るしかないのでは、と返答した。こういう時は変に格好をつけず、こちらが悪くなくても先に謝っておく方が収まりはいいものである。それに、ラブコメ主人公の土下座謝罪は一種のお約束である。大事なのは誠意。
その後何事もなく一日が終わるかと思ったら、帰りのホームルームにて担任から、今月末に中間テストをやると発表があった。クラスからはなんとも言えぬ声の嵐。えー!とか、そんなー!とか。俺の力を魅せる時が来たか……とか。最後の奴はなんだったんだろう。
普通の高校生なら忌避すべきイベントである中間テストだが、ラブコメオーラに身を包まれた榊原ハーレム(私印)にとっては立派なイベントのひとつ。
案の定、佐々木から“勉強会”の提案があった。勿論参加表明する榊原。榊原につられるようにやってくるツインキャッスル(高城と城波)。佐々木がご執心の海原。そして佐々木が1人で置いてけぼりにならないように参加することになる私。完璧な布陣だ……。結局私が1人置いてけぼりになる可能性が高いが、むしろ置いてけぼり状態になり周りが私の存在を忘れてくれればラブコメ観察が捗るというものだ。だから少し視界が滲みそうになっているのは気のせいだ。きっと気のせいだ。ぴえん。
勉強会は榊原の家で行われることになった。理由は榊原が一人暮らしだからである。自由に家を使えるというのは本当に一人暮らしの利点だ。榊原は私が一人暮らしであることを知っているため、私の家という案も出てきたのだが、高城と城波のゴリ押しによって私の家は候補から速攻で外れたのである。気になる男子の家はそりゃ気になるというものだ。解せる。
ヤンデレ姉とかが介入してこないのかなとふと気になって榊原にSNSで聞いてみたところ、「姉がこちらに来れない日を指定したから大丈夫」だそうだ。抜け目ないな。ヤンデレを姉に持つと危機管理能力が上がるのだろうか。
そんなこんなで近日開催勉強会。色々と考えうるイベントに胸を馳せ、今日の日記はこれで閉じることとしよう。
B月β日
勉強会当日。この日は午前授業ということもあり、昼すぎ辺りに全員が榊原の家に集まっていた。それぞれポテチにチョコレートにコーラを持参している。勉強会とはなんだったのか。だが高校生の勉強会なんてそんなもんだともと思った。
家に入るとリビングに通され、そこは綺麗に片付けられていた。榊原は意外と几帳面な性格らしい。棚に見える漫画は作者の五十音順に揃えられていた。それに気がつく私も大概なのだが。
大きなテーブルを囲むように床に座り、それぞれが勉強道具を持ち出す。榊原の両隣りは高城と城波が、海原の隣に佐々木がそれぞれ陣取り、私は榊原ハーレムの正面に1人ポツンと座っていた。ここまで来ると新手のいじめなのでは?とも思わなくは無いが、ラブコメが観察できるならOKです。
実際に勉強を進めながら榊原たちの様子を観察すると、予想通りというかなんというか、高城と城波は榊原と必死に距離(物理と心両方の意)を詰めようと、質問したり体を近付けたりしていた。榊原はどうやら頭が良かったらしく、普通にノータイムで質問には答えていた。体の密着については嬉し恥ずかしといった様子だった。
それを嫉妬の目で見る佐々木は海原に窘められながらも勉強を進めていた。海原も榊原達をチラチラ見ていたので、やはり榊原ハーレムに加わる可能性は高そうだ。やったぜ。是非小悪魔枠(私印)として物語を盛り上げてくれ。
私はラブコメ観察をしながら、普通に問題集を解いていた。ちなみに私の学力は多分中の上くらいである。特段苦手な教科は無い。こういう風に書くと頭良さげに見えるが、勉強を頑張っても頑張らなくても、中学時代は成績にさほど変化が見られなかった。悲しい。
何だかんだ勉強自体は2時間ほどしていたが、勉強そのものが苦手な佐々木が休憩という名目で、ゲームでもしようぜともちかけた。これにノリ気だったのが榊原。普通に美少女サンドイッチは青少年的にキツかったみたいである。
選ばれたゲームは格ゲー。色んなゲームのキャラがドッタンバッタンブラザーズするアレである。榊原が最近ハマっているらしい。日頃の溜まった色んな鬱憤やら煩悩やらを晴らしているのだろう。やった事がない高城と城波も興味を示し、普通にやったことがある海原と佐々木も了承した。私?一緒にやる友達がいなかった。正確には、格ゲーをやる友達がである。普通に中学時代の友達である龍地とはアニメ見たりしていた。インドア極まれり。
そして結論から言うと、私はとんでもないポカをした。
なんか普通にみんなに圧勝してしまったのである。
普段から彼らを観察していたせいか、何となく癖が分かってしまい、嫌がることも何となくわかってしまったのである。
最初操作を教わりたての時は普通に負けてたのだが、2回目あたりでギリギリまで迫り、3回目になると辛勝。4回目になると普通に勝ててしまった。
どうやら私は別段格ゲーそのものが上手い訳ではなく、人の癖とかを把握するのが得意なことが自分の中で判明した。
その証拠に操作を教えてもらった佐々木に圧勝したあと、榊原には普通に負け、対戦を繰り返す程に勝てるようになった。同じ初心者である高城に対戦相手を変えた時も、最初は負け、回数を重ねると勝てるようになった。
多分、対戦相手が全く知らない人だったら普通に負けてるだろう。限定的すぎる活用法である。
というか私の話はどうでもよかった。この後ラブコメ的な意味で面白い事が起こったのだ。
格ゲーも終わり、夕方の4時くらいに差し掛かったところで、突然家のインターホンが鳴ったのだ。
聞こえてきた声はそう、恐怖のヤンデレヒロイン枠(私印)、榊原の姉である。
来ないはずではなかったのかと榊原に聞いてみるも、「仕事で出張してたから来ないはずなのに!」とガタガタ震えていた。一方私は震える榊原を尻目に、見事なフラグ回収だと感服していた。流石はラブコメ主人公だ。
まぁ流石にここを殺人現場(語弊のある言い方)にする訳にもいかないので、みんなに軽く事情を説明したあとで、私は生き残るために思いついた作戦を共有した。
女子陣は消臭して待機、私、佐々木、榊原で出迎えて「友達と遊んでた」という感じを出す、というものである。単純だが嘘もついていない。
早速決行した。メインで喋るのは私だった。佐々木はもちろん、特に榊原は声の震えや小さな動作で見抜かれる可能性がある。ヤンデレパワーは恐ろしいな。
久しぶりに榊原姉と遭遇した結末だが、とりあえず失敗した。
あの目超怖かった。やべぇ。マジやべえってあれ。狂気なんてちゃちなもんじゃねぇ。怖い。
途中までは誤魔化せそうだったのだが、榊原姉の要件が「忘れ物を取りに来たんですー。」といって間髪入れずに上がり込んでしまったために普通にバレた。一人暮らしの弟の家に何を忘れたんだろうか。
とりあえず事実を普通に話したが、榊原姉の目が怖すぎて事実以外何を喋ったか覚えていない。榊原姉はひとまずは納得し、忘れ物らしい封筒を抱えて帰っていったが、榊原が耳元で何やら念押しされていた。あとからきいてみると「女の子と2人きりになったらどうなるか……ふふふふふ!」とか言われたらしい。怖い。
その後遊ぶ雰囲気にもならずに解散となりそうだったが……急に天気が悪くなり、電車やらなにやらが止まってしまった。故に、この日記も、書いてることがバレないように、真夜中にスマホのライトを使い書いている状態だ。明日が休みで本当に良かったと思う。
男子はリビングで、女子は鍵のかかる榊原の部屋で寝るというふうに落ち着いた。妥当だな……。
ラブコメあるある、主人公の家にお泊まり、が思わぬ形で達成されてしまったが、流石に眠いので今日は寝るとする。
B月γ日
無事に帰宅出来た。起きてみると天気とインフラは回復していて、スムーズに帰宅することが出来た。帰り際、高城と城波の顔が赤かった気がするが、惚れてる男子の部屋でなんやかんやあったんだろうと邪推した。一体何があったのかは、彼女達の名誉のためにも知らない方がいいのだろう。
そういえば帰り際にちょっとだけ話した海原の顔も赤くなっていたような気がする。ようやく榊原ハーレムに加わったらしい。良きかな。そしてドンマイ佐々木。慰めるように肩ポンしたら露骨に疑問を抱えた顔を向けられた。
そして私にしては珍しく、帰りに寄り道をした。ふと気になって視界に入ったラーメン屋に何となく入ってしまったのである。空腹とは怖いものだ。
中に入ると、見覚えのある人と出くわした。我がクラスの担任の先生である。名前は確か蒼柳先生。美人で良い先生ではあるのだが、如何せん男勝りな人だ。
トラブルがあったとはいえ、普通に男女入り交じった中でお泊まりした後に出くわしたため内心ビクビクしていたが、ラーメン奢りという餌には抗えなかった。
差し当たりのない会話をしラーメンを啜っていたのだが、ふと蒼柳先生がとんでもないことを言い出した。
「昔に何かあったのか?虐められていたとか……」とかなんとか。どうやら私の表情があまりにもポーカーフェイスなため心配してくれていたらしい。美少女と幼なじみだったことを除けば、あまりにも普通の過去しか持ち合わせていないので二重の意味で申し訳なく思った。普通にこの顔は性質的なものなのだ。
そういう旨を伝えると、信じているのかいないのか、何かあったら相談に乗るからなと肩を組まれた。普通に豊満なアレが当たって気持ちよかったです。でもそういうのは榊原にやってください。
まぁそんなことがあってあとはダラダラして一日が終わったわけである。今日は特段他に何も無かったので日記を締める。
B月ω日
今日は中間テストがあった。何だかんだ定期的に勉強会も行い、中々に調子よく解答できたと思う。
他のメンツも上々なようで、佐々木に至っては「赤点が無いかもしれない!」と狂喜乱舞していた。よくこの高校合格出来たな佐々木。
返却はまだだが、テストが帰ってくることを楽しみに思うのは初めてかもしれない。
テスト後、打ち上げでカラオケに行こうという佐々木の提案に乗っかり、勉強会のメンツで遊びに行った。
カラオケ部屋の配置は、榊原の両隣りにツインキャッスル。佐々木の隣に海原。そしてひとり席に私である。蒼柳先生。やっぱり私って虐められてんのかな。いや違うのは知ってるし寧ろ都合がいいまであるが。
榊原は歌が激うまだったし、女子陣は全員歌手か声優かなにかかってくらいの美声で歌い上げ、佐々木と私は肩を組んでノリのいいというか盛り上げ曲をうたっていた。私が自分のパートを歌ってる時、皆が爆笑していたがなんだったんだろうか。気になるので後でSNSで聞いてみることにしよう。
それにしても、ツインキャッスル達のラブソング合戦は中々に見ものだった。ヒートアップしていくにつれ苦笑いが止まらない榊原を見るのは実に楽しかった。私も悪ノリして、榊原の番が回ってきた時にラブソングを入れたらはたかれた。げせぬ。
いい時間になり解散し、それぞれが帰路についた。
……何だかんだ普通に青春してしまっている。楽しいし問題は無いのだが、ラブコメ観察が少しだけ疎かになっているかもしれない。夏も近づいてきている。より一層、ラブコメ観察に力を入れる決意をして、今月の日記を終えるとしよう。
日記の裏側、主人公以外の視点も書いてみようかな……。