【書籍化決定】とある男子高校生のラブコメ観察日記 作:サラダよりは肉が好き
沢山の閲覧ありがとうございます。
こんな青春過ごしたかったなと思う今日この頃。
C月のラブコメ模様 前編
C月〇日
だんだんと気温もあがり、なかなかに暑くなってきた。
教室では、夏仕様の制服が恋しいとか、夏休みが楽しみだとかという声が聞こえてくる。
佐々木も男子たちに混じり、女子陣の夏制服の良さを語っていた。
具体的には汗をかいて張り付くワイシャツがいいとか、汗をぬぐう姿がいいとか、透けブラがいいとかである。共感できなくもないが、声を大にして語っているせいで女子から冷たい目を向けられている。友人キャラのあるあるすぎるな。その調子でもっとラブコメチックに盛り上げてくれ。多分なにかイベントが無いとモテないけど。
そういえば、中間テストの結果が返って来た。
その結果にクラスも大騒ぎだった。
佐々木は赤点が無かったことを全力で喜んでいたし、高城と城波は普通にオール90点台、榊原はほぼ100点。佐々木以外とんだハイスペック集団である。私も、最初の勉強会からも定期的に勉強会を開いていたからか、中々に良い成績をとることができた。ぽつぽつと90点が垣間見え、あとは70点くらいだった。
そんな話で教室が熱気と冷たさに包まれていた頃、担任の蒼柳先生が入って来た。帰りのホームルームである。他愛もない連絡事項の後、教室内のテンションが上がるお知らせがあった。
体育祭の開催である。
実に高校生らしいイベントに、我らが榊原ハーレム軍団(?)もテンションが高かった。
高城と城波は榊原にいいところを見せようと張り切っていたし、佐々木は運動に自信があるのか「俺の時代だ……」とか言っていた。榊原と、佐々木がご執心している海原は普通に楽しみにしているくらいだった。
かくいう私も楽しみにしている。体育祭というイベントはラブコメの宝庫でもある。先月の新入生歓迎会とはまた違い、全校生徒が紅組白組に別れて戦うらしい。スタンダードなシステム、つまりスタンダードなラブコメを見ることができる可能性が高い。
さまざまな競技、争う生徒と生徒、そしてフラグが立つ榊原……まさに青春だ。
これはチャンスだ。海原、フラグが薄い生徒会長、ツンデレ腐女子(?)副会長、そしてまだ見ぬヒロイン達との榊原との距離を一気に縮め、ラブコメに拍車をかけてやろう。楽しみに待っていろ榊原。ラブコメを、そして慌てふためくお前を隅から隅まで観察してやる。
体育祭が近くなると授業中に練習期間というものも取られるらしい。他クラスはあまり見る機会もないので、これを機会に新しいヒロイン候補を見つけておこう。正統派、ハーフ、ヤンデレ、ツンデレ、クール、小悪魔ときたら……文学系ヒロインだろうか。運動が得意じゃないのなら、寧ろ見つけやすいかもしれないな。些細なラブコメも見逃さないように、より一層気を引き締めて取り掛からねば。
C月△日
体育祭一週間前である今日から、体育祭練習期間が始まる。具体的には午後の授業がまるまる競技の練習になる。この学校の教育カリキュラムは大丈夫なのだろうかと心配になるが、私が気にすることでもない。
組分けも前に発表され、以下のようになった。
赤 榊原、海原、佐々木、私
白 高城、城波、生徒会長、副会長
私が知っている榊原ハーレム関係者はこんな所である。ツインキャッスルは榊原と別チームになったことに憤慨していたが、決まったものはしょうがない。榊原と同じ組になれたことは大きい。このチャンスを使い、ラブコメを加速させていくことにする。
そしてそのためには、同じ紅組である海原と榊原の距離を縮めること、そして新しいヒロイン候補を探して来る必要がある。これを探すのも、同じ練習をする紅組から探す方が丁度いいだろうと思い、私は今日の練習時間中、紅組の人間を観察することに注力していた。そのせいで海原に怒られたのはご愛敬である。普通に練習しなさいと怒られた。解せる。
怒られながらも観察をしていると、私が考える文学系ヒロインにぴったりな人が居た。
その少女は、リレーの練習中、頬を赤らめながら榊原に熱い視線を送っていた。眼鏡をかけ、少し目にかかっている黒髪、そして可愛い系の顔立ち。まさにぴったりな逸材だった。
紅組の名簿を見る、そして立ち聞きという情報収集をした結果、文学少女の名前は、天霧すみれ、というらしい。私と同じ一年生。何となく名前も文学少女ぽいと思った。
私は新ヒロインの開拓を進める為、敢えて天霧が近くにいる時に、榊原を大声で呼びつけ物理的な距離を縮めた。榊原は突然大きな声を出した私に驚いていた。「そんな大きな声出せたのか……」らしい。失礼な、私も大声を出すことくらいあるというのに。ここ一年は大声出した記憶は無いけど。
戸惑いながらも駆け寄ってきた榊原を見るや否や、天霧は恥ずかしそうに顔を手で覆い、物陰に隠れていた。しかしこちらの様子は見ていたっぽかったため、榊原との他愛ない会話の中で、「こういうタイプの女子っていいよね」的な流れに持っていった。
佐々木のような手口で若干自分でも引いたが、少しでもフラグを確実にするためである。必要な犠牲だ。
そして棚から牡丹餅。榊原から、「共通の趣味が話せる人っていいよな」という発言をゲットした。そして私は、榊原が人並みに文学的な作品を嗜んでいたことを知っていた。
勝利を確信した私は、近くにいる天霧の様子を伺いつつ、文学少女がいかに魅力的かを榊原に布教した。榊原は若干引き気味だったような気もするが、少しでも榊原に文学少女ということが心に残るならば、この場の作戦は成功である。
天霧の反応は上々、期待が籠った眼でこちらを見ていた。後は二人を自然に引き合わせるだけである。ちょうど明日、男女一組二人三脚という謎競技の練習がある。タイミングを見極め、榊原と天霧をペアにしてみせよう。
(実るかはどうかまでには干渉しないが)天霧の初恋らしきものの後押しを頑張るとしよう。
まぁほぼ私自身の楽しみの為だが。
C月□日
結論から言えば。半分成功して半分失敗した。
昨日考えた目論見の通り、榊原と天霧を二人三脚のペアにすること自体はできた。榊原は普通にイケメンとして人気があったため、誰が組むかでくじになったのである。というより、そんなに揉めるならくじとかやったら?と私が提案した。思ったよりすんなり提案が通った。榊原の友人という肩書が上手いこと作用したのかもしれない。
手口はこうだ。まず箱と、アタリが入っていないくじを用意する。そして天霧を最後にくじを引かせる。その段階で箱に開けた小さい穴からアタリをこっそり仕込み引かせた。我ながらド畜生である。バレたら殺される自信もある。この事実は墓まで持っていこう。
そうして二人三脚の練習が始まった。天霧が実にいい表情をしていた。期待と恥ずかしさを兼ね備えたいい表情である。運動神経はあまりよくないのか、時々ふらついていたが、その度に榊原に支えてもらっていた。この調子でお互いを意識すれば、ヒロイン候補からヒロインへと昇格させることができるだろう。ちなみに、佐々木は海原とペアになっていた。よかったな。でも多分実ることはないと思う。残念だな。
私は見学していた。というより、本日は女子が誰か休んだらしく普通に男子が1人余ったのだ。つまり私という訳である。
そうして練習が進んでいた時、事件が起きた。
天霧が足を挫いてしまったのである。これはこれで、榊原が天霧を運び、保健室で二人っきりなシチュエーションだ……と思っていたのだが、天霧が怪我したことをこれ幸いと思ったのか、周りの女子が榊原を囲み始めたのである。よくよく考えてみれば、いつも周りにいる高城と城波がいるために、近づくことが出来なかった。その反動だろう。榊原は勉強もスポーツもできるスーパー高校生だ。女子からモテるのは必然だったのだろう。
怪我をしているのに放置をするわけにもいかず、私が運ぶことにしたのだ。
これは榊原のモテパワーを甘く見た私の失敗だ。反省して次に活かすとしよう。
背負って運んだのだが、正直役得だった。プロポーションがとてもよろしかった。流石ラブコメヒロイン候補(私印)だ。
保健室の先生は出払っていたのか居なかったため、私が軽い処置だけ施し、先生を探しに行ってくることにした。
保健室を出ていく時に、お礼を言われた。正面切って純粋なお礼を言われると普通に心が痛い。元を辿れば私のお粗末な計画が原因のようなものである。普通に心が痛い。
気にしないように言った後に、私はさっさと先生を探しに行った。
先生を発見して保健室に行くように言った後、私はそのまま二人三脚を見学していた。
榊原は女子陣に揉みくちゃにされていたし、佐々木は海原との二人三脚を楽しんでいたらしい。顔が絶妙に気持ち悪かった。
だがきっと、この正直さが佐々木の魅力なのだろうな。それがわかってもらえる人に出会えるといいな。多分見た目が最重要視される高校では無理だろうが。頑張れ。
C月α日
今日は休みだ。体育祭前の最後の休日である。読んでいるラブコメ漫画の新刊発売日だったので、本屋へと脚を運び、そして偶然の、都合のいい出会いをした。
本屋に入ったその時、榊原、そして天霧とばったりと鉢合わせたのだ。
二人きりでデートでもしていたのかと思ったが、どうやら違うらしい。偶然出会っただけらしいのである。
とりあえず、デートでもしてたのかと茶化したらすぐに天霧から否定が帰って来たので間違いないだろう。
若干の落胆をしつつ、怪我の具合を聞いてみた。もう痛みはだいぶひいたらしい。罪悪感もあったので安心した。
榊原は、自身が二人三脚のペアであったにも関わらず保健室につれていくことが出来なかったことを謝っていた。真面目なのも榊原のいいところである。
天霧は慌てていたが、私はこれ僥倖と追い打ちをかけた。
簡単に言えば、お詫びがしたいならこのまま喫茶店かなんかで何かを奢ってあげれば?と、榊原をけしかけたのである。
私も連れていかれるところだったが、適当な理由をでっちあげてその場を後にした。男女二人きりのところを邪魔するのも、野暮というものだろう。
そうして本屋から出た後、榊原と天霧の二人を少し離れて見守ることにした。ラブコメ観察のチャンスだ。服装を変えて、こっそりと喫茶店の中から観察した。
会話の内容までは聞こえてこなかったが、天霧が顔を赤くしたり慌ててたりしてて可愛い感じだったのできっとうまくいったのだろう。
ひとしきり観察して、二人が帰ったので私も少し時間を置いて喫茶店を出た。
私のラブコメ加速計画はどうやら順調のようだ。
これは体育祭が楽しみになって来た。私も足手まといにならないくらいには練習したし、開催を待つのみだな。
そろそろ短編から連載にしたほうがいいのだろうか。