【書籍化決定】とある男子高校生のラブコメ観察日記 作:サラダよりは肉が好き
UAがもう少しで10万行きそうなんだなって思うと感慨深いですね……。特になんの脈絡もなく思いつきで投稿し始めましたが、沢山読んでいただいて光栄の至りでございます。
C月の裏側 天霧すみれの視点
C月 体育祭準備〜体育祭当日
正直、体育祭は憂鬱でしかありませんでした。私はあまり運動が得意ではありません。小学生の頃は外で遊ぶことが好きな時期もありましたが、今では小説だったりアニメだったり、インドアな趣味が大好きです。
授業での体育祭練習の時間。早く時間がすぎることを祈りながら日陰でぼーっとしていると、リレーの練習をしている一人の男の子が目に入りました。彼の名前は確か、榊原章くん。隣のクラスの人気者です。噂では入学初日に女の子二人に告白され、それでもなおアプローチの声が止まないくらいモテモテな男の子。運動も勉強も出来るスーパーマンだそうです。
なんて王子様みたいな人なんだろう。気がつけば、ずっと彼を目で追っていました。きっと憧れのようなものだと思います。……絶対無いとは思うけど、あんな素敵な人とお近づきになりたいななんて、小説とかの読みすぎのような感情も抱いていました。
そうすると、無表情な男の子が近づいてきました。そしてすぐさま、大きな声で榊原くんを呼んだのです。行動の意味が全く理解できません。思わず驚いて物陰に隠れてしまいました。
不躾に榊原くんを呼びつけた割には、会話の内容は普通な感じでした。今日帰りどこかに寄るかどうかとか、テストいい感じだったねとか。彼はもしかしたら、人に囲まれている榊原くんを気遣って、敢えて呼びつけたのかもしれません。
会話の最後の話題は、気になる女子のタイプについてになりました。そして榊原くんの口から、共通の趣味を話すことが出来る相手は良い、という話が聞けました。さらに会話を聞いていると、榊原くんはなんと読書が趣味の一つである、という情報を手に入れたのです。これは、もしかして本当にチャンスがあるのではと、淡い期待を抱いてしまいました。
そして意味不明なことに、榊原くんと話していた無表情な男の子がその……文学少女の良さについてそれはもう熱く語り始めたのです。
「共通の趣味か、なるほどな。であれば断然文学少女系は外せないんじゃないか?文学少女の良さを大まかに3点に分けて説明してやろう。
まずその1、趣味にのめり込むことが出来る情熱だ。文学を嗜むということは、相応に集中力が求められる。あとは文章を正確に、そして独自の解釈をまじえながら読み進めて行く頭の回転だ。アウトプットが得意かどうかはともかくとして、好きなことにのめり込む情熱はチャームポイントだよな。
そしてその2、大人しそうな雰囲気の子が多いことだ。重要なのは、その子が見た目通り大人しそうでも、逆に活発であろうとも美味しいということだ。安心感を得るも良し。ギャップを感じるも良し。これは相当最強だぞ。
最後にその3。ズバリメガネ率の高さだな。メガネというのは魔性のアイテムだ。別に眼鏡フェチではなくても、メガネを外して見える素顔にもグッと来るものがあるし、眼鏡の種類によっても色々と楽しむことが可能だ。黒縁という王道、赤縁というちょっとエッチな雰囲気、銀縁の厳格感などなどだな。本&眼鏡、この2つが並ぶことによって究極のエフェクトが発生する。
以上が、俺が独断と偏見の元推察する文学少女についてのプレゼンだ。ご清聴ありがとう御座いました。で、どうだ榊原?」
「全く意味のわからないまま謎のプレゼンが始まった挙げ句に感想まで求められて俺にどうしろっていうのさ……まぁ確かに魅力は感じるけど……」
外から聞いてる私からも全く意味不明でした。でも、そっか、榊原くんは文学少女的なのもアリなんだ……。と、ちょっと嬉しい気持ちになりました。思わず彼らに視線を送ってしまいます。
……その時、無表情な男の子の方と目が合ったような気がしますが、きっと気の所為ですよね……?
そして次の日、奇跡が起こりました。なんと、榊原くんと二人三脚のペアになることができたのです!
嬉しい半分怖い半分でした。私はあまり運動が得意ではありません。だから、足を引っ張らないように頑張って練習しないと……!
……と、柄にもなく張り切ったのがダメだったのかもしれません。私は練習の途中で足を挫いてしまいました。榊原くんが庇って受け止めてくれましたが、少なくともこの日の練習は諦めざるを得なくなって……悔しい気持ちで一杯です。
榊原くんは私を運んでくれようとしましたが、周りに人がいっぱい集まってきてそれどころじゃ無くなり、どうしようかと悩んでた時、手を差し伸べてくれたのは、なんとあの無表情な男の子だったのです。
彼は慣れているのかスムーズに私を背負い、保健室まで連れて行ってくれました。軽く手当までしてくれて、不在だった保健室の先生も呼んできてくれて。
お礼は言ったけど、彼は相変わらず無表情でこう言いました。
「気にすんな。苦手なことに一生懸命になれるのも強さだ。榊原には俺から言っとくから、次の練習も頑張れよ。」
何気ない励ましでした。でも、不思議と心にスッと入ってきて、彼が去ったあと、少しだけクスりと笑ってしまいました。
その後も榊原くんと練習を続け、何とか勝ちが見えてくるレベルまでに上達することができました。榊原くんは優しく練習に付き合ってくれたし、無表情な彼はどうすれば巧く走れるかというのをずっと考えてれていたみたいです。
そして、体育祭前の最後の休日。本屋で榊原くんと偶然出くわしました。ろ、ロマンスの神様は本当にいるのでしょうか……!
と、浮かれていたのもつかの間、榊原くんから、この間私を保健室に連れて行けなかったことを謝られてしまいました。前にも謝られてはいたんですが、これを機になにかお詫びがしたいというのです。榊原くんが悪い訳では無いし、そんなに気にしなくてもいいのに……。
どうしようかと悩んでいるところに、無表情の彼が現れました。事情を聞く前に、まず、その……デ、デートか?なんて訪ねてきました……!慌てて否定しちゃったなぁ……。榊原くんはすかさず彼に助けを求めました。すると、彼は喫茶店でも行けばいいのではと提案しました。
榊原くんは無表情な彼も誘いましたが……
「え?正気かお前……いや何でもない。俺はこれから新刊を買ったあとにアレをアレしてなんやかんやしたあとに晩飯の買い出しに行って飯を作る使命があるから。じゃ」
「ちょっ!?……適当だなぁ」
なんてことがありつつ、私は榊原くんと二人で喫茶店に。何を話したらいいか分からなくてあたふたしちゃった私を見かねたのか、榊原くんが話題を振ってくれた。その話題っていうのは無表情な彼のことなんだけど。
「不思議なんだよな。すごく気が利いて話してて面白いのに、無表情だからか誰も近づかないし。何考えてるのか分かりづらいけどさ、優しい人なんだろうなって。俺も一緒にいてなんだか心地良いし!」
とは榊原くんの談です。体育祭の練習中、私達のサポートをしてくれてたこともあるし、心当たりは多いように感じられます。
それに、何でしょう。少し懐かしい感じがするのです。ずっと無かったものが見つかってホッとした時のような安心感。彼といるときはそんな気持ちになります。そのまま榊原くんに伝えると、無表情な彼に気があるのかとからかわれてしまいました……!否定はしましたが、悪い気は何故かしませんでした。眼の前には憧れの榊原くんがいるのに……。
なんてこともありながら、体育祭練習最終日、練習終わりに、同じ学年で同じ組の人たちと親睦会に行くことになりました……!榊原くんに佐々木くん。海原さんに……無表情な彼。このメンバーでした。榊原くんと同じクラスの高城さんと城波さんも行こうとしてましたが、榊原くんが断っていました。本当に良かったのでしょうか……?
カラオケについた後は、好きな曲をみんなで順番に歌いました!歌は一人で口ずさむ以外あまりやってなかったのですが、何と高得点を連発してしまいました……!皆からも褒められました…!好きな曲をで褒められると嬉しいし、照れちゃいます……!
一番面白かったのは、無表情な彼が無表情なまま、見事に抑揚を聞かせてアニソンを歌っていた事でした。こう……無表情なまま恋とか愛とか……とてもシュールでしたね……。体育祭は苦手だけれど、こうやって友だちが増えて、とても幸せです!
その後、榊原くんと二人きりになる時がありました。体育祭頑張ろうね的な内容で、頼りにしてるよなんて言われてしまいました……自信は相変わらず無いですが、頑張りたいと思います!……というのを噛んでしまって、顔が熱くなってしまいました……不覚です……。
やってきた体育祭。みんなやる気満々で、私もそんな雰囲気に引っ張られて張り切っていました。競技も順地に進んで行き……私と榊原くんとの二人三脚で、私はとんでもないことをやってしまいます。
別のペアとぶつかった衝撃で、私がまた、捻挫してしまったんです。
せっかく皆が頑張っている所に水を差してしまった。榊原くんに迷惑をかけてしまった。空気を壊してしまった……悲しさとか悔しさとかごちゃまぜになって、私はその場から逃げ出してしまいました。
……泣いても仕方ないことはわかってました。でも、どうしても涙を抑える事ができなくて。そんな時、榊原くんと、無表情な彼が私の所に来てくれました。……榊原くんは、私の力を貸してほしいと、それだけを告げて去って行きました。本当に力になれることがあるのかはわかりませんでした。でも体育祭はまだ終わっていません。せめて、応援だけでもと身体を動かそうとしても、迷惑をかけてしまった後に戻るのが怖くて、その場から動けません。
……そうしていると、その場に残った彼が、隣に座って、こう言ったのです。
「あー疲れた……しんどいよな……。」
彼は続けます。
「天霧さんが頑張ってたのは、榊原が一番良くわかってると思うし、だからこそ一緒に戦ってほしいって思ってるんだと思う。それにさ、考えてみてくれよ。天霧さんが全力で応援した榊原がぶっちぎりで勝つんだ。他の誰でもない、天霧さんの応援でさ。天霧さんに向けてガッツポーズして、サムズアップしてさ。……そうなったらちょっと、面白くないか?……ぜぇ、はぁ……俺も行ってくるわ。」
何故かはわからないけど……昔、幼稚園の頃から小学校3年生の間に良く遊んだ幼馴染の男の子のことを思い出していました。。私は天霧の天が、空という意味だと幼稚園の時にお話に出てて、皆からソラちゃんと呼ばれていました。
その子は、私が落ち込んでいたり、泣きそうになったりしていると、決まってこう言って引っ張ってくれたのです。
「ソラちゃん!あっちにもっと面白いものがあるから行こうよ!」
……去っていく無表情の彼の背中が、感情豊かだったあの子の背中に重なって見えて……思わず、私は追いかけてしまっていました。
皆の所へと戻り、精一杯の謝罪をした後、私は必死に応援しました。普段の何倍も大声を出して、頑張っている皆に届くように。
榊原くんは出た競技に全力を出してくれていました。全部1位という驚異的な結果を出してくれていました。
そして最終種目のリレー。無表情な彼と榊原くんが出場する種目です。
無表情な彼がトップバッターで、榊原くんがアンカー。ドキドキしながら、開始の合図を待ちます。
そして、スタート。私は全力で応援しました。喉がここで潰れても良いというくらいの心持ちで。
無表情な彼は、開始早々最下位になってしまいました。でも無理はありません。だって、彼と走っていたメンバーは全員運動部だったのですから。それでも、彼は必死に食らいついていました。いつもの無表情を崩して、歯を食いしばって。結果、差は離されずに次の人へとバトンが渡ります。差を離されないままバトンを繋ぐなんて凄い……!走りきった彼は、トラックから離れてゴロンとうつ伏せに倒れ込んでいました、お疲れ様…。
最後に、アンカーの榊原くんが、2位の状態から走ります。順調に差を詰めていたその時、榊原くんの靴紐が千切れてハラハラと靡いていました……。思わず榊原くんに皆で全力で、頑張れ、と大声で声援を送りました。……榊原くんは、靴を脱ぎ捨ててまで走って、見事に1位を取ってくれました!思わずその場で大号泣してしまったけれど、それくらい嬉しいことでした。
そんな私に、榊原くんはお礼を言ってくれました……恥ずかしいけれど、榊原くんがそう言ってくれたのが嬉しくて、顔が熱くなってしまいました……。
無表情な彼も、榊原くんに促されたのか私の前に立ち…
「……な?面白くなっただろ?」
と、少しだけ口角を上げて。……やっぱり、小さい頃一緒に遊んだあの子を思い出します。でも、あの子は表情豊かで良く笑う子でしたし……まさか同一人物なんてことは……。
なんて考え事をしていると彼が突然周囲の人達に向けて
「見たかお前ら!これが文学少女の力だぞ!!!崇め奉れ!!文学少女バンザイといいなさい!!!さぁ!!!」
と謎のことを言ってたので榊原くんと佐々木くんに連行されていきました。男の子って感じですね……!
見事に優勝し、体育祭は無事に終わりました。その後、榊原くんのクラスメイト達と私、そして無表情な彼の友達の龍地さんと一緒にファミレスで打ち上げをしました!
龍地さんが無表情くんの中学生の話を沢山聞かせてくれました。中学生時代からやはり無表情で、にらめっこでは無敵だったとか……納得出来るようなそうではないような?
……うーん。思い返してみると、何故かはわからないけど無表情くんのことが気になります。さ、榊原くんも勿論気にはなりますけど!
こうして、私が苦手だった体育祭は、楽しく過ぎて行きました!少しだけ、苦手意識が薄れたかも……?
龍地は私の性癖も反映されてたりします。ミステリアス系一人称ボクキャラっていいよね。