彼の者の騎士道   作:zawadinosaur

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1ヶ月ぶりの更新です!!今回からバトルがスタートしていきます!多分お話全体で見たらまだまだ折り返しでもないので色々頑張ります!いやマジで!


第六話『開演、或いは怪演』

 

 

 

オークション会場から少し離れたとある一角。

前回の潜入任務と同じで、『コルタナ』の部隊はトラックに偽装した車内に待機していた。

しかし、今回は前回の少数精鋭での潜入とは違い、『コルタナ』の総力を上げた制圧戦。

車内には会話はなく、ほとんどの構成員が鎧の奥で瞳を閉じ、集中力を高めている。

──総勢、16名。

『コルタナ』は円卓の中でも、部隊のメンバーの全員が何らかの分野に秀でているバランスに優れた部隊だ。

情報戦、近接戦闘、狙撃手、心理戦、索敵、etc…

ありとあらゆる分野に通じた才人が集まるこの部隊は、盤石の安定感を有していた。

 

「……シャグラン、最終確認頼むぞ。」

 

車両の先頭から投げかけられたヴェナの声に、シャグランは狭い車内で立ち上がる。

頭だけはぶつけないように気を付けながら、すぅ、と息を吸う。

 

「皆さん。それぞれの役割と持ち場の確認をします。

──まず私とバリトンさんは、主催者であるギベリスとリリーの確保を。」

 

「………油断せずに行きましょう。」

 

暗い車内の中、バリトンは静かに力強く返事を返す。

フルフェイスの鎧を着込んだせいか、声色と相まって彼の厳格さにはさらに磨きが掛かっていた。

 

「そして、ヴェナさん、シーナさん。あなたたちには全体の指揮をお願いします。」

 

「…おう。」

 

「精一杯やらせていただきます!」

 

今度は対照的な返事が返ってくる。

『コルタナ』のブレーンであるヴェナと、その直属の後輩であるシーナはこの拠点に残り、通信越しで指示を飛ばすのが役割だ。

ただ一つ気がかりだったのが、ヴェナの様子がおかしい点だった。

普段なら高いテンションに任せていい加減なことを言ってそうなものだが、今日は眉間に皺を寄せながら黙ったままだ。

 

「他のメンバーは参加者の確保、そしてエルザさんの保護をお願いします。現場指揮は既に会場に潜入しているディナダン卿に一任してあります。」

 

鎧で顔を隠した11人の騎士たちはこくり、と全く同じタイミングで首肯する。

平時であればそれぞれに違ったキャラクター性があるのだが、任務の間ばかりは自分の殺して役割に全うしてくれている。

そんな彼らが頼りになると同時に、ほんの少しだけ寂しくもあった。

 

「今回の作戦は会場の完全制圧が目的です。参加者の確保及び、商品の回収も任務となっています。

…恐らくあちら側も我々の存在は警戒しているでしょう。非常に危険な任務となりますが…みなさん。どうかくれぐれも気をつけてください。」

 

前回の接触からして、オークション側は円卓の介入を予測しているだろう。

どのような罠があるのか、見当もつかない。

 

「他に何か伝達事項がある方はいますか。」

 

すると、パーカーを着込んだ小さな手のひらが視界に入る。

 

「…ヴェナさん、どうぞ。」

 

腕の主であるヴェナはシャグランに促され立ち上がると、いつもの気怠げなものとは一線を画する鋭い視線を全員に向ける。

 

「……多分こっからアタシは指示出しとかハッキングとかでゆっくり喋る余裕なくなるから今の内に言っておく。」

 

深く深く息を吸うと、腕を胸の前で組んで仁王立ちをしながら簡潔に要点を口にした。

 

「──アタシらの妹分に手ェ出したクソ野郎共、全員ボッコボコにしてこいよ。」

 

「………無論です。」

 

「そのつもりだ。」

 

「「「「「「ハッ!」」」」」

 

ヴェナに言われるまでもなく、全員が初めからその意気でここに集っている。

車体が揺れるほどの意気込みと共に、此度の任務は動き出したのだった。

 

───────────────────

 

───会場内。

舞台の上では、狐面のオークショニアがマイク越しだというのになにか叫んで、それに応じて参加者がまるで獣のように手を掲げ、意味があるのかないのか定かではない単語を口にしている。

その様は、ヒトの本能を鏡写しにしているようで心底気分が悪い。

耳の奥がキンキンとうるさくて、エルザは大きく舌打ちをする。

だがそんな悪態も、あっという間に喧騒の中に溶けて消えていく。

 

「…想像の倍は下衆いイベントね、これ。」

 

「それが人の性ですよ、エルザ嬢。」

 

カレンとエルザは、一周回ってなお騒々しいホールの最後尾に陣取っていた。

シャグランに任された作戦開始の合図を送る役目だと分かってはいるものの、エルザはさっさと帰りたくて仕方がなかった。

顔に付けた邪魔なだけの仮面もさっさと外したい。

それに、ステージに群がっている連中が家の力だけならエルザと同格ということも、自分がソレらと同じ格好に則っていることも心底気持ち悪い。

鬱陶しいことこの上ないイベントだ、と呆れながらエルザは壁に背中を預ける。

だがこのアクションに合いの手を入れるように、カツン、と軽快な靴音が鼓膜を叩く。

いつの間にそこにいたのだろうか。

エルザの視線の先には、白袴に身を包んだ蛇面の男が佇んでいた。

 

「…何、貴方?」

 

「初めまして、主催のギベリスと申します。此度はご参加いただきありがとうございます。」

 

彼の言葉に、エルザは目を見開く。

だがそれを気取られないようにわざとらしく吹き出すと、純度100%の作り笑いを彼に向ける。

 

「へえ、貴方が?」

 

──こいつが、お義兄様の敵なのね?

 

滲み出そうになる敵意を抑え込んで、エルザはギベリスの真正面に立つ。

その身長差はまさに大人と子供そのものだったが、言葉の力強さだけならエルザは彼に引けをとっていなかった。

 

「初めまして、エルザ・モルオートよ。あ、握手は遠慮してもいいかしら?お父様が厳しいのよね。」

 

「ええ、ええ。よろしいですとも。」

 

ギベリスは胸に手を当てると、紳士らしく軽く会釈をする。

 

「今日は何をお求めで?」

 

「そうね、見ながら決めることにするわ。初めてのオークションだもの。これでも緊張してるの。」

 

「そうですかそうですか。」

 

言葉を交わしながら、エルザはただただ驚嘆する。

 

(………何なの、こいつ…?)

 

言葉の底が、読めない。

エルザは年若いが、モルオート家の当主だ。

他の貴族家との社交パーティーや交渉など様々な場面を潜り抜けてきた。

そんな中である程度相手の目線や言葉遣い、呼吸のリズムからその思惑を測ることがエルザの十八番だ。

だが目の前の男は、何も見えてこない。

ただそこに存在しているだけだ。

不気味ったらありゃしない。

 

「それでは、心ゆくまでお楽しみください。」

 

口元だけの笑みを浮かべると、ギベリスは踵を返して会場の喧騒の中へと消えていった。

 

「何だったのかしら…。」

 

「牽制…には見えませんでしたね。」

 

何かしらの下準備、それともただの興味本位の接触だろうか?

真相はわからなかったが、一先ずの脅威は去った。

 

「まあいいわ。で、首尾はどうなのカレン?」

 

エルザの問い掛けに、カレンはインカムを耳に何かヒソヒソと会話をしている。

おそらく相手はあの赤髪のゲーマーだ。

あんなのが部隊の統括なんて大それた仕事しているのだから笑えない。

 

「……会場の出入り口の封鎖は完了したそうです。突入の準備は、いつでも。」

 

「そう。なら、始めましょうか。」

 

不敵な笑みを浮かべながら、エルザは決戦の火蓋を切って落とすのだった。

 

───────────────────

 

─オークション会場正面エリア

『コルタナ』の構成員により封鎖完了。

 

─オークション会場2階エリア

シャグラン、バリトン共に配置済。

 

装備も準備も心構えも、全てが整った。

会場周囲にはバリケードを張り、施設内のカメラ類も全てヴェナがハッキング済だ。

あとはエルザの合図を待つのみのこの状況。

集中力が極限に達したその瞬間、全員の通信機にけたたましくヴェナの咆哮が響いた。

 

『GO!』

 

その声に突き動かされるように、『コルタナ』のメンバーは会場に突入する。

 

「なッ!?」

 

「コイツら…ッ!?」

 

流石というべきか、会場に配備されていた警備たちは即座に胸元から拳銃を取り出し応戦しようもする。

並の相手であれば狼狽えるフェーズが挟まるものだが、それをまるで感じさせない。

おそらく選りすぐりの警備なのだろう。

だがヴェナの采配と、『コルタナ』の練度がそれを蹴散らしていく。

性格無比な麻酔銃の射撃で彼らを1人残らず無力化するとメインホールの扉が蹴り開けられる。

 

「動くな!!この会場は包囲されているぞ!!」

 

会場の空気を引き裂く一声と共に、カレンは動き出す。

 

「──さぁ征こうか、ルプス。お嬢様、それでは後ほど。」

 

「ええ、心配ないと思うけど、一応無事は祈っておいてあげる。」

 

「それは何よりです。」

 

カレンは、ウィッグと狼の面を脱ぎ捨て床に放り投げると、相棒の宿るメダルを取り出しそのまま舞台の上に投擲する。

眩い一筋の閃光と共に顕現したルプスと共に先程までオークショニアの立っていた舞台に降り立つ。

 

「初めに言っておくが、逃げ道には期待しないことをオススメするよ。仮面の皆々様?」

 

舞台の上で、スポットライトに照らされたカレンとルプスは、さながらバレーのプリマ。

円卓の騎士の名を授かる彼女の姿と、10メートルを超えるリバイバーの威容は観客たちの心を折るのには十分だった。

参加者たちの瞳に宿るのは困惑や恐怖、絶望など様々だったか総じて暗い色が宿っていた。

 

「抵抗さえしなければ、手荒い真似はしませんとも。」

 

優しく囁かれるようなカレンの言葉に、参加者は次々と両手を頭の後ろで組み膝を突き始める。

制圧完了、そう思った矢先のことだった。

 

『皆さま!!ご心配には及びません!!』

 

ここで、強がりや虚勢とも取れるほどの勇猛果敢な声がスピーカーを通して広場につんざく。

声を発していたのは、マイクを片手に持ったオークショニアの男。

先の報告の通り、顔は狐の面で隠している。

主催者に次ぐ優先確保対象。

この場の全員の視線を集めた男は、胸元から何かを取り出した。

 

『こんな時のために、皆様は入場の際受け取ったモノがあるでしょう!!?

私が持っているこれと同じものを!!」

 

男が掲げる手に握られているのは、円形の縁取りが施されたメダル。

数多の任務を潜り抜けてきた円卓の人間が見間違えるはずもない。

その手に握られていたのは、恐竜メダル。

 

『──さあ、皆様それを掲げて投げてください!!』

 

「ッまさか…!?」

 

オークショニアの声を皮切りに、恐る恐るといった様子で仮面の軍勢は一斉に何かを投げる。

小さな小さな、しかし確かに巨大な生命の宿るメダルを。

 

「総員戦闘体勢!!」

 

嫌な予感が胸に走ると同時に、カレンはシャグランに代わって『コルタナ』のメンバーたちに指示を飛ばす。

それと全く同じタイミングでホール内は無数の、過剰なほどの閃光に覆われた。

 

『さあ、我々を裁かんとする者たちに鉄槌をッッ!!』

 

現れたるは、優に100を超えるリバイバーの軍勢。

おまけのように、彼らの殆どは共通して戦闘に向いた獣脚類のリバイバーたちで構成されていた。

あまりに手の込んだ歓迎パーティーに歯噛みしながら、カレンは『ディナダン』として次なる指示を下す。

 

「この場のリバイバーを全て無力感せよ!やり方は各員の裁量に任せる!!」

 

「「「「コピー!!」」」」

 

そうは言ったものの、100を超えるリバイバーを全て制圧するのは流石に骨が折れる。

それに、まだもう一人の黒幕であるリリーの姿も見当たらない上に報告も来ていない。

事態は想定よりも悪化していると見るべきだ。

 

「……これは流石に、『彼』の助けが必要かな?」

 

 

───────────────────

 

オークション会場の2階。

ライフルを背負ったシャグランと、バリトンは全速力で第二ホールへと向かっていた。

ヴェナがハッキングした監視カメラの映像によると、どうやらギベリスはそこにいるらしい。

SPや警備の類は下の階に集中しているようで、道中に妨害などはなかったが、それがむしろシャグランには不気味に感じた。

まるで、手招きをして誘っているかのようだ。

口を開けた蛇の牙の眼前に向かっているような本能的な嫌悪感が心中に渦巻いていた。

 

ハンドガンを構えながら、バリトンとシャグランはホールの扉を開け放つ。

 

「おや、遅かったですね。」

 

伽藍堂のホールの中。

舞台に備えられたグランドピアノに腰掛けたギベリスはこちらに視線を寄越す。

侵入者を迎え撃つ態度でも、自身に危機が迫っている態度でもない平時と変わらないその態度に気味の悪さを覚えつつも、シャグランはフェイルノートの宿るメダルに手を伸ばす。

ギベリスの足元には大型のトランクケースが置かれている。

何が入っているか分かったものではない。

警戒は最大限に必要だ。

 

「………まるで、我々が来るのが分かっていたような口ぶりですね。」

 

「ええ、それはもちろん。折角の機会です、お話でもしませんか?」

 

口元に笑顔を浮かべながら立ち上がったギベリスの仮面を、弾丸が掠める。

 

「………申し訳ない、外しました。」

 

発砲したのはバリトンだ。

会話する気はない、と言い表すようにバリトンは麻酔弾を放っていた。

それはシャグランとて同じだ。

大切な恩師の愛娘を傷付けた外道と会話するつもりは毛頭ない。

煙を燻らせる銃口を鎧に仕舞うと、カセキメダルを構える。

まるで遊びがない彼の行動に、ギベリスはやれやれ、と言った様子で首を振る。

 

「……円卓の方は誰も彼も連れないですね。仕方ありません。

──お願いします。」

 

足元のトランクケースを拾い上げると、明らかにシャグランたちに向けたものではない言葉を呟く。

 

 

『コードネーム・ミュー。』

 

『コードネーム・ラムダ。作戦を開始します。』

 

ギベリスの耳元でそう短く告げられた言葉と共に、会場が大きく揺れる。

 

 

「!!?」

 

突然の縦揺れに、2人は動揺しながらも即座に周囲の状況を確認する。

しかし、このホールに変化はない。

となると考えられる可能性は…

 

「バスターポイント、ご存知ですか?」

 

原因に思考を巡らせるよりも早く、ギベリスは答えを仄めかす。

 

「まさか…!」

 

「ええ。たった今私の知り合いたちにこの会場の急所となる柱の破壊を頼みました。会場全体が潰れるまで大体10分ほどですかね?」

 

──10分。

あまりにも短い制限時間を聞いて、シャグランが真っ先に取った行動は、

 

「トリスタン卿!!」

 

「はい!!

──ヴェナさん!!会場にいる全員に伝えて下さい!!今すぐ退避を!!」

 

会場にいる仲間たちへの最大の警告。

たとえ作戦が失敗したとしても、最優先すべきことは仲間の命だ。

 

「───────」

 

「ッヴェナさん!?」

 

だがいくら叫んでも、インカムには何の反応も起こらない。

 

「まさか…ッ!?」

 

「ええ。この一帯にはジャミングを仕掛けさせてもらっています。手抜かりはありませんとも。」

 

認識が甘かったことをシャグランは心底から悔いる。

敵の考えを甘く見過ぎていた。

ギベリスは、この場で『コルタナ』との決着をつけるつもりだったのだ。

そのためであれば、自身の裏社会での信用すら投げ捨ててこちらを全滅させるつもりだったのだ。

完全に常軌を逸しているが、現実にシャグランたちは追い詰められてしまっている。

 

「さあ、あと9分。それまでに、私を倒せますか?」

 

こうなってしまった以上、メンバーの命を預かる『コルタナ』のリーダーとして最善の行動が必須となってくる。

割り切るべきことも多い。

その中で真っ先に切り捨てるべきは、

 

「………バリトンさん、支柱の破壊を食い止めに向かってください。」

 

「よろしいので?」

 

自身の身の安全。

本来なら少しでも被害を減らすためにも、仲間のところに向かうべきだ。

だが、目の前のこの男を放置することは絶対に出来ない。

底の見えないドス黒い悪意の塊。

それが目の前の男の本質。

今ここで自分がギベリスと相対することが結果的に仲間を救うことになる。

 

だがバリトンの杞憂も当然だ。

かつての後輩が敵の親玉と一騎討ちをするのだ。

彼の心内も推し量ってあまりある。

しかしそれでも尚、シャグランは笑った。

 

「──私が負けるとお思いですか?バリトンさん。」

 

「……ふ。愚問でしたね。」

 

口元に笑みを浮かべると、バリトンは全速力で方向転換しホールから離脱する。

それを見届けるとシャグランは背負ったアタッシュケースからライフルを取り出す。

 

「なるほど、自らを犠牲にしますか。勇猛ですね。」

 

ギベリスはそう言うと、手持ちのトランクケースをブン、と宙に投げる。

無軌道に舞い上がるそれが空中で開くと同時に、眩い無数の閃光が当たりを包む。

そして次に聞こえたのは、機械のような無機質な起動音。

シャグランは嫌な予感と共に目を開く。

そこにいたのは、

 

「噂によれば、円卓の方々はリバイバーと繋がって加護を発動するのだとか。実に興味深い。」

 

──無数の、機械化されたリバイバーの軍団。

獣脚類、竜脚類、水棲爬虫類、翼竜、三葉虫、ありとあらゆる既存のリバイバーの型を模したレプリカたちが、そこにはいた。

これは正式なカセキバトルなどではない。

命をかけた戦場だ。

 

「…………ギガー、エラース、フェイルノート。来てください。これは、かなりの難敵ですよ。」

 

静かに相棒たちを呼び出すと、シャグランは弾倉に麻酔弾を込める。

 

「さあ、始めましょうか。貴方のリバイバーを、円卓の力を、私に見せて下さい。」

 

───────────────────

 

所変わって、『コルタナ』の簡易拠点。

 

『バリトン!その通路突っ切ったら直近の階段から下のフロアに行け!ターゲットはまだそこだ!

ッアレクは出過ぎんな!!ロロのサポートに回ってろ!!

ディナダン卿は右側を抑えてて!他が片付き次第援護回すから!!』

 

『ヴェナさん!バリトンさんが敵影と接触します!!』

 

『よしじゃあ後はアイツに全部任せていい!アタシはホール側の支援やるからシーナはシャグラン周りのジャミングの解除が仕事だ!』

 

『はい!』

 

無数のモニターに映し出された映像だけを頼りに、ヴェナは戦況を分析、的確な指示を送り続けていた。

その様は、まるで百面差しの棋士。

そんなヴェナに羨望と尊敬の眼差しを向けながら、シーナもまた彼女の補佐に当たっていた。

与えられたジャミングコードの解析に急ぎ取り掛かる。

しかし流石に一筋縄ではいかない。

何十、否、何百もの層に重ねられたコードを解除していくのは至難の業だ。

ヴェナであれば数分もあれば解除してしまっていたのだろうが、彼女は今それどころではない。

実力不足を痛感しながらも、シーナは必死に画面に食らいつく。

それが戦線で命を賭けて戦う彼らと同じステージに立つための最低限の責務だ。

 

「………え?」

 

シーナの口から、疑問符が漏れる。

一瞬、この場所にいるはずがない人物の姿が、モニターに映ったような気がした。

 

──深緑色の隊服と、ひとつ結びにした金髪。

ミラが、地下に続く階段を降りているのが目に付いた。

嫌な予感に胸を掻きむしられながら、シーナは恐る恐るヴェナに声を掛ける。

 

「ヴ……ヴェナさん…これって……。」

 

「ッッッ!!!」

 

「っひ!?」

 

ドン、と轟音と衝撃が狭い空間に轟く。

見れば、ヴェナの拳に血が滲んでいる。

手元のキーボードに鉄槌を振り下ろしたのだと理解するまで少し掛かったが、呆気に取られているシーナを他所に、ヴェナは安楽椅子から立ち上がる。

激情のカケラも感じさせないその様子に恐怖を覚えながらも、シーナは言葉を振り絞る。

 

「ヴェナ……さん?」

 

「……………っ痛ぁ…。んじゃシーナ、ここ任せるぞ。」

 

「は!? 任せるって…!?ヴェナさんバトルは苦手じゃ…」

 

とんでもないことを言い出す彼女に、思わず大声が喉から飛び出す。

シーナとヴェナはあくまでも後方支援の人間。

カセキバトルは不得手だし、肉弾戦なんて無理無理の無理だ。

そんな彼女が援護に行くなんて、リスクを考えればあり得ない話だ。

というか、これは指揮官としてやってはいけないことだ。

だがそんなことはお構いなしに、ヴェナは扉を開け放つと外に飛び出す。

 

「うっせえ。それが妹分助けない理由にならねえだろ。

──それに、ここにはまだシーナが残ってるだろ。なら大丈夫だ。」

 

振り返りざまにそう語ると、ヴェナはメダルから呼び出したディッケロに跨って会場へと向かっていってしまった。

残されたシーナは、ただただ空いた口が塞がらなかった。

『任せる』、なんて、無理な話だ。

シーナはヴェナみたいにはなれない。

情報処理も、頭の回転も、何もかも彼女の足元にも及ばない。

 

 

 

──でも、それでも。

それでも、いつもはちゃらんぽらんな彼女は自分を信じて任せたのだ。

なら、やることはひとつ。

 

「………あーーもうみんな勝手過ぎるよ〜〜!!くそぉ!!やってやんよぉ!!!」

 

一人取り残されたシーナは、肩にかかった髪をポニーテールに結び直す。

ある意味ヤケクソになりながらも、モニターにもう一度向かい合うのだった。

 

 

───────────────────

 

「…オイ、なんか端末鳴ってるぞォ"!!」

 

「あちゃ〜、ヘルプ必要な感じか。」

 

「…ヘルプって……これから我々は任務では?」

 

「う〜ん…?じゃあ俺は行ってくるから任務の方はそっちでヨロシク!」

 

「「はぁ!?」」  「はァ"!!?」




ラストで次回以降誰をゲストで呼ぶか分かったですよね!!バレバレです!!
次回更新も未定です!名前だけでも全円卓出したいけど難しいかな…?
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