フェイス   作:おもちぴん様

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第11話

 フリード派誕生以降、正当な教皇は誰だか分からなくなった。

アリオスと言う者もいれば、ラウマ失墜の際の教皇グレゴリーと言う者、果ては当時最大勢力を

誇ったゲルニア府主教ハインと言う者もいる。

しかし、ゲルニア府はフリード派誕生後に、南部山岳地帯はドワーフの信仰する金教、

北部森林地帯はエルフの信仰する聖木教が勢力を伸ばし、中部以外を失墜することになった。

そのため、教皇の座はアリオスとグレゴリーの一騎打ちの様相を見せていた。

 

 オーバンヌ領リョーン州。

臨時の教皇府が置かれたこの地に異邦の僧がひとり。

この地に来ていたのは偶然ではない。

僧はアリオスを知る者としてグレゴリーに呼ばれていた。

─グレゴリーが新約派になる前の事である。

若き剣教と異邦の僧は出会った。彼らは教皇になる前に再会し、そしてまた出会う。

 

「異教徒の拙僧を呼ぶとはいよいよ進退窮まりましたかな!ガッハッハッ!」

「御僧、冗談は程々にお願いしますぞ。」

「すまんすまん!彼奴目の事でしたらワシは知りませんぞ。

 正しい道に導いたと思うたらああなるとは!」

「知ってるではないですか!」

「すまぬすまぬ。それで拙僧に何を?」

「うむ、教皇を詐称する者とワシの間に立ち交渉をして欲しい。」

「そうか彼奴は詐称であるか!教皇は強い者がなるとばかり思っておったわ!」

 

 異邦の僧に今回の事態を招いた反省の色は見られない。

彼は自分より弱い者に手は差し伸べても、頭は垂れない。

勿論、彼が信仰する教義にそんな事は書かれていない。

信仰するものは時が経ち形を変えていく。

自分に都合良く、信仰心はより強く。

 

 異邦の僧もまた怪物である。

アリオスの変貌に焦る素振りもない。

彼を構築するのは絶対的な自信。信仰心の具現化何するものぞ。

高々17年しか生きていない者に、長年に渡る研鑽により鍛えた体と

己の信仰心が負ける筈がない。そう思っていた。

 

「猊下、教皇を名乗る者の使者が来ております。」

「そうかい。通してもらって。」

「ははっ!」

 

 ─ラウマ州の教皇の座に座る者が教皇である。

至極単純な理由でアリオスは教皇を名乗っていた。

民草も同じ認識だ。表立って異を唱えるものはいない。

懸念されていた統治も原典派のやり方を踏襲し、魔女信仰と原始宗教にも寛容だ。

むしろ前よりも良くなった統治に民は湧いている。

異邦の僧はアメリア半島を歩いて民草の熱狂振りにグレゴリーの敗北を予見した。

しかし、それでもアリオスの前に立たねばならなかった。

友のため、自分のために。

 

「息災か少年よ!ガッハッハッ!聞くまでもないか!」

「久し振りですね。相変わらずの様で。」

「うむ。時に少年よ、教皇の座を渡してくれぬか?」

「いきなりですね。嫌いじゃないですよ。」

「して、返答は如何に?」

「嫌と言ったら?」

「ガッハッハッ!力ずくで貰い受ける!」

 

 アリオスはニコリと笑い、腹心の一人を見て頷く。

腹心は分かったと言わんばかりに僧の前に立つ。

僧は初めは笑い、そして怒り出した。

 

「ワシを舐めたか小僧!」

「いえ、彼らは強いですよ、貴方よりも。」

「喝!こやつを叩きのめした後、説教してやるわい!」

 

 相対する二人。異邦の僧とフリード派の黒衣の聖職者。

聖職者同士の戦い。信仰心のぶつけ合い。

初めは異邦の僧が押していた。しかし、押し切れない。

そして膠着状態が10分程続いた頃、戦況が変わる。

もう一人の腹心が戦いに加わったのだ。

卑怯だと叫ぶ僧。ここは敵地ですよと言うアリオス。

 

 異邦の僧は破れた。

四肢はもがれ、首は塩漬けにされ、丁重にグレゴリーに送られた。

誰がフリード派に意見できるのだ……。

グレゴリーは首を見て、これからの事を思い愁死してしまった。

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