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フリード派誕生以降、正当な教皇は誰だか分からなくなった。
アリオスと言う者もいれば、ラウマ失墜の際の教皇グレゴリーと言う者、果ては当時最大勢力を
誇ったゲルニア府主教ハインと言う者もいる。
しかし、ゲルニア府はフリード派誕生後に、南部山岳地帯はドワーフの信仰する金教、
北部森林地帯はエルフの信仰する聖木教が勢力を伸ばし、中部以外を失墜することになった。
そのため、教皇の座はアリオスとグレゴリーの一騎打ちの様相を見せていた。
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オーバンヌ領リョーン州。
臨時の教皇府が置かれたこの地に異邦の僧がひとり。
この地に来ていたのは偶然ではない。
僧はアリオスを知る者としてグレゴリーに呼ばれていた。
─グレゴリーが新約派になる前の事である。
若き剣教と異邦の僧は出会った。彼らは教皇になる前に再会し、そしてまた出会う。
「異教徒の拙僧を呼ぶとはいよいよ進退窮まりましたかな!ガッハッハッ!」
「御僧、冗談は程々にお願いしますぞ。」
「すまんすまん!彼奴目の事でしたらワシは知りませんぞ。
正しい道に導いたと思うたらああなるとは!」
「知ってるではないですか!」
「すまぬすまぬ。それで拙僧に何を?」
「うむ、教皇を詐称する者とワシの間に立ち交渉をして欲しい。」
「そうか彼奴は詐称であるか!教皇は強い者がなるとばかり思っておったわ!」
異邦の僧に今回の事態を招いた反省の色は見られない。
彼は自分より弱い者に手は差し伸べても、頭は垂れない。
勿論、彼が信仰する教義にそんな事は書かれていない。
信仰するものは時が経ち形を変えていく。
自分に都合良く、信仰心はより強く。
異邦の僧もまた怪物である。
アリオスの変貌に焦る素振りもない。
彼を構築するのは絶対的な自信。信仰心の具現化何するものぞ。
高々17年しか生きていない者に、長年に渡る研鑽により鍛えた体と
己の信仰心が負ける筈がない。そう思っていた。
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「猊下、教皇を名乗る者の使者が来ております。」
「そうかい。通してもらって。」
「ははっ!」
─ラウマ州の教皇の座に座る者が教皇である。
至極単純な理由でアリオスは教皇を名乗っていた。
民草も同じ認識だ。表立って異を唱えるものはいない。
懸念されていた統治も原典派のやり方を踏襲し、魔女信仰と原始宗教にも寛容だ。
むしろ前よりも良くなった統治に民は湧いている。
異邦の僧はアメリア半島を歩いて民草の熱狂振りにグレゴリーの敗北を予見した。
しかし、それでもアリオスの前に立たねばならなかった。
友のため、自分のために。
「息災か少年よ!ガッハッハッ!聞くまでもないか!」
「久し振りですね。相変わらずの様で。」
「うむ。時に少年よ、教皇の座を渡してくれぬか?」
「いきなりですね。嫌いじゃないですよ。」
「して、返答は如何に?」
「嫌と言ったら?」
「ガッハッハッ!力ずくで貰い受ける!」
アリオスはニコリと笑い、腹心の一人を見て頷く。
腹心は分かったと言わんばかりに僧の前に立つ。
僧は初めは笑い、そして怒り出した。
「ワシを舐めたか小僧!」
「いえ、彼らは強いですよ、貴方よりも。」
「喝!こやつを叩きのめした後、説教してやるわい!」
相対する二人。異邦の僧とフリード派の黒衣の聖職者。
聖職者同士の戦い。信仰心のぶつけ合い。
初めは異邦の僧が押していた。しかし、押し切れない。
そして膠着状態が10分程続いた頃、戦況が変わる。
もう一人の腹心が戦いに加わったのだ。
卑怯だと叫ぶ僧。ここは敵地ですよと言うアリオス。
異邦の僧は破れた。
四肢はもがれ、首は塩漬けにされ、丁重にグレゴリーに送られた。
誰がフリード派に意見できるのだ……。
グレゴリーは首を見て、これからの事を思い愁死してしまった。