フェイス   作:おもちぴん様

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第1話

◆

 ここはブライズ聖国が支配するアメリア大陸。

剣教を国教とする国で、そのトップは教皇が務める。

教皇は20年ごとに行われる選挙で選出され、任期は寿命を迎えるか、選挙に落ちるまでとされる。

最も選挙時に高齢であるから、再選を果たした者はごく少数に限られるが……。

 

 聖職者の位についても触れておこう。

教皇の下の聖職者は、主教(総─、府─、大─、司教)、司祭(首─、長─、司祭)、

輔祭(首─、長─、輔祭)がおり、最後に修道士が続く。

聖職者以外の者は全て平民で一括にされていた。

国の運営は聖職者により行われており、一代限りの世襲のない方法で国を上手く治めていた。

 

 話は変わるが修道士で裏の顔を持つものは多い。

修道院は各地にあり、その利便性から、審問官、暗部、諜報部と表には出せない役職の者が

多くいる。彼らの多くは信仰心に溢れ、役職に誇りを持っていた。

その信仰心を利用されているとは知らず。

 

 アリオスも表向きは修道士であったが、秘密裏に審問官として教義に背くものを裁いていた。

彼が審問を行う際は女装をして行動しており、今のところ正体がバレている様子はない。

教義に背く者は女性関係が多いため、彼が嫌う女顔は彼の意に反して、仕事の役に立っていた。

 

 さて、話は変わるが剣教には大きな2つの派閥がある。

元の聖典の教えを忠実に守る原典派、先代教皇が新たに約した聖典の教えを重視する新約派。

原典派は他宗教、人間以外の人種にも寛容で、原典派が治める領国は信仰の自由が保障されている。

新約派は反対に強硬で他宗教、エルフやドワーフに対し、異端審問と称して弾圧を加えていた。

 

 アリオスは原典派に属する審問官だ。

その教えの通り、異端は存在しないと考えている。

そのため異端審問官と対峙した事は何度もある。

ベクトルは違うが信仰心は強いため、何度も危ない橋を渡ってきた。

顔は綺麗だが、服で見えない所の傷は多いのだ。

 

◆

 修道院に戻り早3日、アリオスは久し振りにいつもと変わらぬ暮らしをしていた。

朝起きて掃除、食事、お祈り、雑務、また掃除、お祈り……。

変わり映えしないが彼はこの様な毎日が好きだ。

子供の頃からの友人達と気兼ねなく生活する日々。

嫌な事は色目を使ってくる者がいるくらいか。

 

 禁欲的な生活を送っている聖職者が年端もいかぬ子に手を出す例は多々ある。

アリオスが幼い時分も、そういう事が幾度となくあった。

その度に修道院長(輔祭)が助けてくれたが、あれは修道院長も自分を狙っていたのであろうか。

結局、自分を狙った者と輔祭はある日を境に全員消えた。

彼が思い出に浸っていると修道院の輔祭が自分を探している声が聞こえた。

 

「アリオスはいるか?」

「ここに。輔祭様。」

「祭事の手伝いの為にレンスの司教を訪ねよ。」

「分かりました。手伝いの期間は?」

「3日。」

「承知しました。」

 

 この輔祭は、本修道院における審問官の上司である。

簡単な符丁で会話しており、"祭事の手伝い"は"性関係の審問、"レンス"は"場所"、

"司教"は"対象人物"だ。簡単すぎてバレるのではないかと思われるが、

意外と普通の人相手だとそうでもないらしい。

似たような仕事をしている暗部、諜報部の面々にはバレバレではあるが、

彼らは同じ穴の狢、わざわざ危険な事に自分から首を突っ込むことはしない。

(そもそも彼らはもっと上手く話すが……。)

審問のための準備を進めていると弟達が話し掛けてきた。

 

「兄様、またお出掛けですか?」

「うん。お土産楽しみにしていてね。」

「はい!寂しいですがお待ちしています!」

 

 出発の時は弟達の悲しそうな顔が並んで憂鬱だ。

そう思いながら、アリオスは準備を整えて隣町に向かうのであった。

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