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アメリア聖国ゴール府カンパヌ領レンス州、戦勝を祝して作られた雄大な門と
大聖堂が名物の土地だ。
現在のレンス司教は新約派で土着のエルフやドワーフへの弾圧は厳しい。
女癖も悪いという噂もあり、今回の依頼はそれを見かねたカンパヌ大主教からの依頼であった。
エルフもドワーフも美人が多い。
基本彼らを下に見ている新約派にとっては格好の標的なのだ。
審問官は基本的に派閥関係なく選出するとしているが、実際はその全員が原典派だ。
審問官の長が代々原典派という事もあるが、平等な裁きを行う点で新約派は適さない。
では"異端審問官は何か"という事になるが、これは正式な役職ではない。
新約派が勝手に名乗っているものでアメリアの法的に何か出来るものでもなかった。
現在の教皇も新約派ではあるが、異端審問には懐疑的で解体はしないが認めてもいなかった。
今回の依頼は逃げきれなかった人々への救済措置だろうとアリオスは旅の最中に考えていた。
カンパヌ領はややこしい土地だ。
ゴール府主教は新約派、カンパヌ大主教は原典派、レンス司教は新約派、
他の4州は原典派で、新約派がトップの府で原典派の勢力が強い土地だからだ。
実際レンス州から他州へのエルフとドワーフの流入が止まらず、人間ばかりの土地となっている。
基本的に平民が他州へ引っ越す事は認められていないが、この領の原典派の面々は強かだ。
知らぬ、存ぜぬ、分からぬの玉虫色の返答でレンス司教からの追及を躱している。
レンス司教がいなくなれば、カンパヌ大司教が直接レンス州を治める予定らしい。
自分が審問に失敗しても理由をつけて追い出すため、心配するなとの事だった。
そもそも失敗すれば命はないだろう。
被害を抑えるためらしいが審問官は便利屋じゃないと嫌味を言いたかった。
頭の中でカンパヌ大司教への嫌味を思いつく限り考えていると隣の人が話し掛けてきた。
レンスへの移動は馬車で行っている。女の格好で馬に乗るのは怪しまれるからだ。
「お嬢さん、この先の町に御用で?」
「ええ、親戚に会いに。」
「おおそうですか。あの町は良い。亜人もいませんし。」
「はあ。私としては大聖堂に興味がありますが。」
「大聖堂!あそこは良いですよ。亜人がー。」
亜人、亜人、うるさい人だ。少し体の造りが違うだけでそこまで毛嫌いするものか。
信仰は人それぞれだが、他の人に迷惑を掛ける事は遠慮してほしい。新約派は本当に厄介だ。
私はエルフやドワーフの修道士や司教様と会ったことがあるが彼らは温厚で良い人だった。
そもそもエルフやドワーフの聖職者がいる時点でおかしいと思わないのか。
初代教皇の剣王様が任じられた司教の中にはエルフやドワーフもいたのに、
新約を作った前教皇の頭はどうなっているのだろうか。
生きていれば私が審問してあげたいくらいだ。
アリオスが退屈な話を聞き流しながらも馬車は進む。
修道院のある町から馬車を乗り継ぎ乗り継ぎ約1日、ようやく司教の居城のある町に到着した。
体はカチカチだ。馬車から降りて思わず伸びをする。
仕事遂行までの期間は残り2日。どうしたものかと目を閉じて考える。
相対するところまでいけば後は簡単だ。いつも通り審問すれば良い。
とりあえず人の多い所に行くか、そう思い歩みを進めていると話が聞こえてきた。
「司教様のところでまた召使が逃げたらしいぞ。」
「またかあ。これで何人目だ?」
「5人目。流石に人手不足で人員募集が口入屋に来てた。」
「この町に住んでいる奴で応募する奴はいないだろ。」
「違いねえや。」
……おあつらえ向きな募集があるみたいだ。
これも神の思し召しだろう。まずは口入屋に向かうか。
場所を聞き、彼は口入れ屋に向かった。