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司教に会うチャンスは城に来たその日に訪れた。
仕事を終えて宛がわれた部屋で先輩と話をしていると、司教からの使いが来たからだ。
使いと先輩は話のために部屋の外に出て、しばらくすると戻ってきた。自分をお呼びの様だ。
先輩は嬉しさと悲しさが入り混じった複雑な表情だ。
「じゃあ行ってきますね。」
「え、ええ、頑張りなさい。」
使者と2人廊下を進む。司教の部屋は城の最上階の様だ。
道中、他愛もない話を使者としていると到着した。
扉の前には朝に会話した司祭が2人居る。
これから騒ぎが起こるのに厄介だ。どうにか遠ざけられないものか。
逡巡していると司祭の一人が自分に気づき話し掛けてきた。
「君は……何かあったらすぐに叫ぶんだよ。」
「何かとは?」
「良いから躊躇したら駄目だからね。」
司祭は本当に自分を心配している様だった。巻き込んでしまうのは申し訳無い。
恨んでくれても良い。頼むから気付かないでいてくれ。そう思いながら私は司教の部屋に入る。
寝台に机、戸棚にタンスとシンプルな部屋だ。
意外にも清貧な暮らしを送っているらしい。
ついでに好色さも捨てて生きれば良いものの。
そこが捨てられないから人間なのか。考え事をしていると話し掛けられる。
「よく来たのお。仕事は辛くないか?」
「はい司教様。先輩も優しくて問題ありません。」
「くくく、優しいか。まあ良い、そこの寝台に座れい。」
「はあ、分かりました。」
寝台に腰掛け司教の方を見る。丁度自分を押し倒そうとしたので避けた。
寝台に倒れ込んだ司教を見下ろし、審問を開始する。実際のところ、するまでもないが。
「我は審問官のアリオス也。レンス司教に問う。」
「し、審問官じゃと?!そんななぜワシが?!」
「汝、司教でありながら姦淫を行った。違いないか?」
「ち、違う……ワシはやっておらん!」
「それは神の識ること。ajwmjtj。」
「ひいいいいい!助けてくれえ!」
「─判決……神の槌により圧殺刑に処す。」
アリオスが聖典の一節を唱え始めた時、乱入者が現れる。
部屋の前で待機していた司祭達だ。
顔は怒りに満ちていたが、やがて困惑の表情に変わった。
司祭の一人が口を開く。
「……君を助けようとしたのだが、余計だったかな?」
「はい。出来るならば入ってこないで頂きたかった。」
「見た者を生かす訳にはいかないということか……。」
「ええ、すみませんが暫くお待ちを。」
「ああ、只では殺されないように準備させてもらうよ。」
「な、何を言っておるのじゃ!助けろ!」
「死は救済。今からあなたを助けます。」
「やめ、やめ、やめ……。」
不可視の槌が司教の体を押し潰した。
部屋には血が散乱し、同じ部屋にいた司祭二人も返り血を浴びている。
唯一アリオスだけが血を浴びずに佇んでいた。
司祭二人はそれを見て肝を冷やす。引き返す方法は既にない。
怪物に、この信仰心の怪物に勝たねば命は明日は来ない。
自然と剣を握る手にも力が入る。先に口を開いたのはアリオスだった。
「さて、心苦しいですが始めましょうか。」
「ああ、もう言葉はいらないだろう。」
「うむ、審問官と戦うは武門の誉れよ。」
それは戦いと呼ぶには一方的過ぎた。
不可視の剣、槍、槌……あらゆる武器が司祭達の体を貫き、叩き、切り裂いた。
5分も経たずに司祭達は血の海に倒れ、命を落とした。
部屋に立つのは唯一人、審問官の少年。その頬は涙で濡れていた。
彼は審問官で在る前に一人の少年である。悲しい時は泣き、嬉しい時は笑う。
心のバランスは信仰心だけで保たれていた。