フェイス   作:おもちぴん様

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第4話

◆

 司教に会うチャンスは城に来たその日に訪れた。

仕事を終えて宛がわれた部屋で先輩と話をしていると、司教からの使いが来たからだ。

使いと先輩は話のために部屋の外に出て、しばらくすると戻ってきた。自分をお呼びの様だ。

先輩は嬉しさと悲しさが入り混じった複雑な表情だ。

 

「じゃあ行ってきますね。」

「え、ええ、頑張りなさい。」

 

 使者と2人廊下を進む。司教の部屋は城の最上階の様だ。

道中、他愛もない話を使者としていると到着した。

扉の前には朝に会話した司祭が2人居る。

これから騒ぎが起こるのに厄介だ。どうにか遠ざけられないものか。

逡巡していると司祭の一人が自分に気づき話し掛けてきた。

 

「君は……何かあったらすぐに叫ぶんだよ。」

「何かとは?」

「良いから躊躇したら駄目だからね。」

 

 司祭は本当に自分を心配している様だった。巻き込んでしまうのは申し訳無い。

恨んでくれても良い。頼むから気付かないでいてくれ。そう思いながら私は司教の部屋に入る。

寝台に机、戸棚にタンスとシンプルな部屋だ。

意外にも清貧な暮らしを送っているらしい。

ついでに好色さも捨てて生きれば良いものの。

そこが捨てられないから人間なのか。考え事をしていると話し掛けられる。

 

「よく来たのお。仕事は辛くないか?」

「はい司教様。先輩も優しくて問題ありません。」

「くくく、優しいか。まあ良い、そこの寝台に座れい。」

「はあ、分かりました。」

 

 寝台に腰掛け司教の方を見る。丁度自分を押し倒そうとしたので避けた。

寝台に倒れ込んだ司教を見下ろし、審問を開始する。実際のところ、するまでもないが。

 

「我は審問官のアリオス也。レンス司教に問う。」

「し、審問官じゃと?!そんななぜワシが?!」

「汝、司教でありながら姦淫を行った。違いないか?」

「ち、違う……ワシはやっておらん!」

「それは神の識ること。ajwmjtj。」

「ひいいいいい!助けてくれえ!」

「─判決……神の槌により圧殺刑に処す。」

 

 アリオスが聖典の一節を唱え始めた時、乱入者が現れる。

部屋の前で待機していた司祭達だ。

顔は怒りに満ちていたが、やがて困惑の表情に変わった。

司祭の一人が口を開く。

 

「……君を助けようとしたのだが、余計だったかな?」

「はい。出来るならば入ってこないで頂きたかった。」

「見た者を生かす訳にはいかないということか……。」

「ええ、すみませんが暫くお待ちを。」

「ああ、只では殺されないように準備させてもらうよ。」

「な、何を言っておるのじゃ!助けろ!」

「死は救済。今からあなたを助けます。」

「やめ、やめ、やめ……。」

 

 不可視の槌が司教の体を押し潰した。

部屋には血が散乱し、同じ部屋にいた司祭二人も返り血を浴びている。

唯一アリオスだけが血を浴びずに佇んでいた。

司祭二人はそれを見て肝を冷やす。引き返す方法は既にない。

怪物に、この信仰心の怪物に勝たねば命は明日は来ない。

自然と剣を握る手にも力が入る。先に口を開いたのはアリオスだった。

 

「さて、心苦しいですが始めましょうか。」

「ああ、もう言葉はいらないだろう。」

「うむ、審問官と戦うは武門の誉れよ。」

 

 それは戦いと呼ぶには一方的過ぎた。

不可視の剣、槍、槌……あらゆる武器が司祭達の体を貫き、叩き、切り裂いた。

5分も経たずに司祭達は血の海に倒れ、命を落とした。

部屋に立つのは唯一人、審問官の少年。その頬は涙で濡れていた。

彼は審問官で在る前に一人の少年である。悲しい時は泣き、嬉しい時は笑う。

心のバランスは信仰心だけで保たれていた。

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