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─ランバルド大主教居城謁見の間。
周りをランバルド領から集められた首司祭、長司祭、司祭に周りを固められた大主教と
両手に枷を嵌められたアリオスが相対している。
その様な状況にも関わらず、両者の表情は真逆だ。
アリオスは笑っており、大主教は表情を固くさせている。
※首司祭が騎士団長、長司祭が副団長の様な役割。
「さて申し開きはあるかアリオスよ?」
「申し開きとは?」
「私の使者を殺した事についてだ!」
「使者……あれは使者だったのか。そうか……。」
詰問されているのにアリオスは心此処にあらずだ。
むしろ追い詰められているのは大主教の様に見える。
アリオスは考えが纏まったのか口を開く。
「あれは使者ではありませんでした。」
「何を言うか貴様!」
「使者であれば派遣された司祭様と修道士を殺める必要はない。
あれは使者じゃなくて殺人鬼だった。」
「言うに事欠いて!」
「審問官として大主教様に問います。異端とは何か?」
大主教は唖然として、それからしばらくして口を開く。
内容は新約派の考えそのもので、聞くに耐えない内容だ。
そこでアリオスは気付く。輔祭様は審問のために自分を送り込んだなと。
それならここからは自分の番だ。
「あの司祭様は原典派だったんですね。」
「何じゃと?」
「自分の部下を殺させる何て人でなしですね。」
「何を言っておる!」
「─判決。神の光による焼殺刑に処す。」
大主教の上に光が射した。建物の中で窓も無いのに。
光は大主教だけを焼き、やがて人の焼ける嫌な臭いで謁見の間は満たされた。
集められた司祭達は恐怖で一歩も動けなかった。
そして……一人残らず殺された。
"新約派"の"大主教"に属する司祭は全て新約派だ。
少し前に原典派の司祭云々と自分で言っていた事を忘れ、
アリオスは一切の慈悲なく神の裁きを下したのだ。
◆
城を出て、アリオスを待ち構えていたのは異端審問官と名乗る者達であった。
二段構えか、アリオスは素直に感心する。
死ぬつもりだったのかな?あの大主教は。そうだったら大した狂信者じゃないか。
大勢を前に自然と笑っている自分に驚く。相手は気圧されているのか腰が引けている。
その内の一人が話し掛けてきた。
「無事に出てきたと言う事は無罪だったのですか?」
「そうですね。無罪でした。」
息を吐く様に嘘をついた。
本来嘘をつくのは良くない事だが、自分の中の信仰心は揺るがない。
しばらく話していると異端審問官の後ろの方で騒ぎが起こった。
「ぎゃあ!何だお前は!」
「う、腕があ!」
「何事ですか!事態を収めるのです!」
リーダーと思しき人物が指揮を取るが無駄な様だ。
混乱は収まらず、やがてアリオスの前に混乱の主がやってきた。
目は血走っており、着ている法衣はボロボロだ。
もしや先日倒したあの男は異端審問官では無いのか。その考えが頭を過る。
大主教が狼狽していた理由も分かるな。勘違いで審問したのか私は……。
いや、奴らは新約派だ。生かしておいて良い訳がない。
そうだ、そうだと呟いていると男が寄ってきた。
「助けに参りました導師。」
「頼んでいないよ。それに導師とは何だい?」
「貴方様は私達を導くお方。故に導師とお呼びします。」
「そもそも何故、私をつけ狙うんだい?」
男曰く、少女の顔を持つ修道士が世界を変える云々。
何と限定的な内容なのだ。何を考えてそんな事を。信じる者も信じる者だ。
この先も同じ事があるだろう。……一度考えた者に会う必要があるな。
この場を収めるために男に着いて行く事を約束する。異端審問官の面々は悔しげな面持ちだ。
それもそうであろう。自分の信仰心が只一人のボロを着た男に敵わないのだ、
その場を収めたのも原典派の優男。面子はズタズタであった。
男に連れられアリオスは進む。
狂気への扉は既に開かれている。
戻る選択肢もあった。進む事を選んだのは彼自身だ。