フェイス   作:おもちぴん様

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第7話

 ─ランバルド大主教居城謁見の間。

周りをランバルド領から集められた首司祭、長司祭、司祭に周りを固められた大主教と

両手に枷を嵌められたアリオスが相対している。

その様な状況にも関わらず、両者の表情は真逆だ。

アリオスは笑っており、大主教は表情を固くさせている。

※首司祭が騎士団長、長司祭が副団長の様な役割。

 

「さて申し開きはあるかアリオスよ?」

「申し開きとは?」

「私の使者を殺した事についてだ!」

「使者……あれは使者だったのか。そうか……。」

 

 詰問されているのにアリオスは心此処にあらずだ。

むしろ追い詰められているのは大主教の様に見える。

アリオスは考えが纏まったのか口を開く。

 

「あれは使者ではありませんでした。」

「何を言うか貴様!」

「使者であれば派遣された司祭様と修道士を殺める必要はない。

 あれは使者じゃなくて殺人鬼だった。」

「言うに事欠いて!」

「審問官として大主教様に問います。異端とは何か?」

 

 大主教は唖然として、それからしばらくして口を開く。

内容は新約派の考えそのもので、聞くに耐えない内容だ。

そこでアリオスは気付く。輔祭様は審問のために自分を送り込んだなと。

それならここからは自分の番だ。

 

「あの司祭様は原典派だったんですね。」

「何じゃと?」

「自分の部下を殺させる何て人でなしですね。」

「何を言っておる!」

「─判決。神の光による焼殺刑に処す。」

 

 大主教の上に光が射した。建物の中で窓も無いのに。

光は大主教だけを焼き、やがて人の焼ける嫌な臭いで謁見の間は満たされた。

集められた司祭達は恐怖で一歩も動けなかった。

そして……一人残らず殺された。

"新約派"の"大主教"に属する司祭は全て新約派だ。

少し前に原典派の司祭云々と自分で言っていた事を忘れ、

アリオスは一切の慈悲なく神の裁きを下したのだ。

 

 城を出て、アリオスを待ち構えていたのは異端審問官と名乗る者達であった。

二段構えか、アリオスは素直に感心する。

死ぬつもりだったのかな?あの大主教は。そうだったら大した狂信者じゃないか。

大勢を前に自然と笑っている自分に驚く。相手は気圧されているのか腰が引けている。

その内の一人が話し掛けてきた。

 

「無事に出てきたと言う事は無罪だったのですか?」

「そうですね。無罪でした。」

 

 息を吐く様に嘘をついた。

本来嘘をつくのは良くない事だが、自分の中の信仰心は揺るがない。

しばらく話していると異端審問官の後ろの方で騒ぎが起こった。

 

「ぎゃあ!何だお前は!」

「う、腕があ!」

「何事ですか!事態を収めるのです!」

 

 リーダーと思しき人物が指揮を取るが無駄な様だ。

混乱は収まらず、やがてアリオスの前に混乱の主がやってきた。

目は血走っており、着ている法衣はボロボロだ。

もしや先日倒したあの男は異端審問官では無いのか。その考えが頭を過る。

大主教が狼狽していた理由も分かるな。勘違いで審問したのか私は……。

いや、奴らは新約派だ。生かしておいて良い訳がない。

そうだ、そうだと呟いていると男が寄ってきた。

 

「助けに参りました導師。」

「頼んでいないよ。それに導師とは何だい?」

「貴方様は私達を導くお方。故に導師とお呼びします。」

「そもそも何故、私をつけ狙うんだい?」

 

 男曰く、少女の顔を持つ修道士が世界を変える云々。

何と限定的な内容なのだ。何を考えてそんな事を。信じる者も信じる者だ。

この先も同じ事があるだろう。……一度考えた者に会う必要があるな。

この場を収めるために男に着いて行く事を約束する。異端審問官の面々は悔しげな面持ちだ。

それもそうであろう。自分の信仰心が只一人のボロを着た男に敵わないのだ、

その場を収めたのも原典派の優男。面子はズタズタであった。

 

 男に連れられアリオスは進む。

狂気への扉は既に開かれている。

戻る選択肢もあった。進む事を選んだのは彼自身だ。

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