息抜き息抜き
ヴァリエール家の3女、ルイズは学園の広場に来ていた。
自分の使い魔が同級生と決闘をするからだ。
事の始まりは食堂。食堂を終えて出ていく際に彼が何かを踏み潰した。ソレは香水らしくその持ち主のギーシュ・ド・グラモンは怒りに怒った。
正直そんなモノに付き合うだけ時間の無駄と無視して出口に向かったが同級生が発した言葉に一つだけ引っかかるものがあった。
「たかが
「っは! これだからゼロのルイズは!
「どうしたのかね? 今謝るのならボクも矛を収めるのだって吝かじゃないが?」
「良いだろう、貴族たるボクがソコの
私の相棒が平民? この男は何を言っているのだろうか?
理解が出来ないながらも相手の視点に立ってみれば少し分かる。自分の使い魔は人だ。解りやすく武器を持ち、鎧を身に着け、騎士の見た目。
杖を持たずに剣を腰に差し鎧を身に着ける。平民の武器を身に着けた騎士の様な男。
間違いなくコイツは平民だ。
そんな風にこの同級生は考えたのであろう事がルイズは理解できた。
正直悩んだ。
こんな事で血を流す必要は無い、無いのだが……自分が魔法というモノを正しく……いや、周りと同じモノを使えないが故に侮られているのだ。
些末な事で労力を割くのは馬鹿らしいと考え口を開こうとした時、灰からアクションがあった。
肩に手を置かれ此方を見ている。ただそれだけ。
彼は何も手間ではないと思っている。
やる事は何も変わらないと語る目にルイズは笑う。柔らかく、自分の使い魔であり共犯者に。
場面は戻りギーシュと灰が向かい合う広場。
ギーシュが口上を述べ周りが湧く。そんなギーシュのやり取りに一切興味を示さず標的を見る灰。
相手までの距離、装備品、自分の手持ち。何を使うのが一番簡潔にリスクが少ないかを無言で検討しているとギーシュが怒り出した。
相手が何に怒っているのか理解できず契約者に顔を向ければ相手が何をして欲しいのか説明してくれた。
名乗りを上げろと。
目の前の標的は『コレ』が決闘だと。神聖なモノらしい。
ただ殺し、殺される日常が神聖とは意味が分からない。だが、そういう事はまま有る。ならば満足する言葉を出せばいい。
『名を"灰" 不死であり火を継ぐ薪の王』
次の瞬間、周りが笑い出した。理解が出来ないが何か面白かったらしい。
その様な感情は随分昔に擦り減った。無言で立ち尽し腰から剣を抜く。
腰にあるのはアストラの直剣。
狭い場所でも使い易く、周りの弱さに合わせた武器。
背負っていた草紋の盾を取り出し左手に着ける。
フラットな状態で標的を見つめる。斬る箇所を選定する。
首、腕、脚、胴。
防具が何も無いに等しい。何処でも斬り放題。
そんな事を考えていたら標的が動いた。
身構えていたら……何か出てきた。ゴーレムらしい。
……コレが?
だが初見の敵。油断は出来ない。
◆◆◆◆◆
駆けだすワルキューレ。相手は棒立ち。ならばこのままワルキューレで相手を叩きのめす、そう思っていた。
次の瞬間、男の姿がギーシュの視界から消えた。
黒い影が広場を駆け回る、影が駆け抜けた後に凄まじい轟音と共にワルキューレ達が破壊され魔力のラインが切れる。
理解できない現象に目を大きく開けていたら視界が揺れた。
したたかにぶつけた背中が痛く唐突な事に気が動転して訳が分からない。
情けない声が漏れ出たのに恥を感じながら立ち上がろうともがくが立ち上がれない。
チカチカする目で何とか目を開きながら両手で地面を掴もうとすると右手首と左肩から猛烈な痛みが駆け上がって来る。
「えっ?」
痛みで向けた視線に映るのは右手首から先の無い腕と二の腕から先の無い左腕。
痛みを忘れて自分の体を見下ろすようにすれば、視線の先に立つのは二本の足。
そのまま自分の足へ目線を送ると腿から切断された自分の足。つまりソコに立つ足は……。
「ひっ、あああああ"あ"あ"あ"あ"!!!」
理解した瞬間、今まで感じた事が無い激痛が襲い掛かる。痛みで気絶しそうになりながらも
思考が痛いの一つで塗りつぶされ何も感じられない。
見えているが見えない。苦しいが対処できない。
文字通り手足が無くなっている。
野次馬はその光景を理解できなかった。
ドットとはいえ魔法を使いゴーレムを顕現させたのだ、広がる光景は打倒された平民になる……はずだった。
決闘という名のイベントが始まってから直ぐに平民が轟音と共に視界から消えた。
気が付けばゴーレムはばらばらに引き裂かれ、対戦していた貴族、ギーシュが手足を無くし血を吹き出しながら悲鳴を上げている。
その事実に脳が追い付いた時、野次馬は悲鳴を上げながら逃げ出した。数名の生徒を残して。
上手い。ソレがタバサから見た対戦相手の感想。
彼女の目は男の動きを追っていた。彼女の目から見ても一瞬で詰める間合い。繰り出される攻撃。攻撃後の動作を利用してさらに次の攻撃へ。
行動の無駄が非常に少なく、途中で一度隙を見せていたが……恐らくは敢えて。今回繰り出された攻撃全てがつなげる事が可能。
どれだけの敵が居ようとも今回の攻撃速度以下は有り得ない。何より目の前の男は良き一つ乱さず、体幹のブレが一切ない。男の攻撃の流れから自分が戦った場合、接近戦では確実に負ける未来を想像して背筋がぶるりと震える。
◆◆◆◆◆
戦闘力を奪った。想定を下回る弱さだった……下手に手足を切り落とすよりも首を落とした方が良かったかもしれない。
苦しませるのも無意味かと首を刺し貫こうとした時、炎が襲い掛かって来る。
冷静に避け、対象との距離をとる。炎を放ったのは契約者と会った際に居た男性。
足運び等から感じるのは多少はヤル相手という事。だが何も問題は無い。
手を変え、品を変え、武器を変え、戦略を変え。相手に合わせた殺し方をすれば良い。
直剣から対人用の装備に変えようとした所で契約者から待ったがかかった。
「コルベール先生、何用ですか?」
「何用ですと!? ミス・ヴァリエール! この惨劇に何も感じていないのですか!」
男はそう言いながら手足を切り落としたモノに駆け寄り止血をしている。
「先生、これは決闘です」
「馬鹿な事を言わない事です。学園は貴族同士の決闘を認めていません」
「えぇ、ですので私の代わりに使い魔が戦いました。そしてまだ決闘の最中です」
「何をば……か……」
応急処置をしてルイズを見たコルベールは言葉を失った。
姿形、声等は間違いなくミス・ヴァリエール。しかし此方を見る……いや、正確にはミスタ・グラモンを見る眼はコルベールの知る生徒では無かった。
かつて戦場に居た男、自分の部下に居たあの男よりももっと先に行ってしまった者の眼。
人を人として見ておらず、ただ邪魔なモノを排除する者の眼。
そしてルイズは杖を一振り。ルーンを一言だけ唱えてギーシュの額を爆破させる。
唱えられたのはほんの1節、何なら杖すら握って居ない。だがギーシュは頭蓋を抉られ骨が露出し絶叫を上げる。
「先生、ここは先生の顔を立てて
恭しく礼をする目の前の女生徒が自分の教え子であると思えなかった。
彼女の後ろをあるく使い魔とその主人。
これは彼女達が引き起こした最初の犠牲。
後に爆殺の乙女と呼ばれ、敵対者の一切を鏖殺してみせた女傑の最初の1ページである。
いやー、爆殺の乙女。この先誰が被害にあうのか
誰か書いてくれて良いのよ?
絶対この作品は人気出ないしw