剣と言う名の盾【デルフリンガー】を手に入れた日の夜。
一つ事件が起こる。
盗人が学園に出現したのだ。名を「フーケ」
義賊気取りの盗人で貴族専門の盗人等と巷では言われている。
そんな義賊が学園に出現して宝物庫の壁をブチ破ろうとゴーレムを出現させ攻撃を仕掛けたのだ。
かの盗賊の不幸はその場に灰が居た事だろう。
契約者が眠りという仮初の死を体験している頃、灰は一人ルイズの部屋の外へ足を運んでいた。
何時もの道具や装備の性能チェックだ。そして何時も通りの性能である事を確認して新しく手に入れたデルフリンガーを左手に装備する。
右手にブロードソードを持ち、流れる様に攻撃を繋げていく。一通り動きの確認が終わり次の工程に入ろうとした所で武器に話し掛けられる。
「なあ、相棒。お前さん心は何処へ置いて来た?」
「……?」
「はー、初代も大概だったが、おめーはそれ以上かもな」
灰は右手の武器を直剣からロスリックの特大剣へと変え、再度動きの確認へと移る。
「(心を無くして……いや、削って擦り減らして生きながらえてる体。更には魂の内側から蝕む呪いかよ)」
デルフリンガーは灰に握られる事で見てくれこそボロのままだが、その本来の性質である『魔力を吸う事で使用者の体を動かす』というポテンシャルを発揮して灰の内側を調べていた。
本来であれば敵対者の魔法を吸う事で自身の性能を発揮するデルフであるが、灰の持つ魔力はそもそもの質がこの世界の者とは違う。
灰の魔力を100とした際、この世界の住人の魔力は小数点以下で示される。ソレほどの格差がある。
ルイズの全魔力を持っても『1』に届くか届かないか、何十回と世界を巡り終わりを求めた灰の能力とはつまるところ周囲と隔絶していた。
もっとも、あの世界自体が行き詰まりあらゆる物が停滞して凝り固まった世界なのだ。そんな所で
直剣、大剣、特大剣、短剣、鞭、杖、触媒、弓、クロスボウと一通りの武器を試し終えた頃、再びデルフが口を開く。
「なぁ相棒……お前さんどんな魔境に居たんだ?」
「……普通の所だ」
「いやいやいや、普通は俺様をメインウェポンで使うか、精々サブウェポンでメインが一本だろ! 何普通と称して武器を何十本と取り換えながら動いてるんだ! しかもさっき使った魔法は何だ! ありゃブリミルでも使った事が無い魔法だろ!」
「???」
「おまけにオメー『ガンダールヴ』の力を一欠けらすら使ってねーのに何でソレだけ動けるんだよ! 俺様の性能も何か限界近くまで引き出してないか!?」
「……補正を掛けた。魔法は使ってない、呪術だ」
補正とは灰が武器にとある鉱石を利用したソウルの術であり、彼の手持ちの武器はどれもが最大の+10まで強化されている。
長い徘徊の旅の中で注げるリソースは注いでおかないと結果として損をするという、ある意味魂にまで染み込んだ灰の癖であり、手持ちの鉱石を利用して既にデルフリンガーの補正も済ませてある。
尚その際に彼はルイズの部屋の隅に設置された篝火を利用していた。
常であればその行動に文句を言いそうなルイズであるが、瞳を得てからは灰の行動に口を挟む気は余りない。
皆無で無い所は持前の気質なのか……しかし彼と自分の性質の似通りを感じているルイズは篝火を設置する灰に文句は言わなかった。
何か得難い物を置いている程度の気持ちしかわかなかったためである。
閑話休題。
自己鍛錬も最低限済ませて何時も通りに目的も無く歩いていた所、巨大なゴーレムが建物を攻撃する場面に出くわした。
暫く観察していたが執拗に建物への攻撃を繰り返すばかり、ただまぁ……折角だからというフーケからしたらふざけるなと言える理由で灰は右手武器をグレートクラブに切り替えて滑るように走り出す。
ゴーレムを操っていたフーケは厚く硬い建物の外壁に辟易しながら、それでも得た情報を頼りに再度物理攻撃を仕掛けようとゴーレムの拳を振り上げた。
生半可な攻撃では駄目だと思ったフーケが巨大ゴーレムを操り放とうとしたのは渾身の一撃。
土の体を捻り貯めた力を拳に集め、そのエネルギーを壁に叩きつけるべく捻りを解放しようとしたその時、フーケの足場であるゴーレムが膝をつく。
唐突に起こった事態に一瞬気が動転したがそこは盗賊として場数を踏んでいたフーケ。
何事かと原因を探ればゴーレムの足元に佇む一人の男。
左手のデルフリンガーはそのままに、右手にはグレートクラブを持ち片手持ちの一撃で目の前のゴーレムの片足を粉砕して見せた。
灰は一撃のインターバルの直後に
流れる様に叩き込まれる強烈な一撃がゴーレムをまるで達磨落としの様に次々に崩してゆく。
フーケは直ぐに精神力を練り上げ周囲の土を吸い上げ修復を試みるが……灰の一撃の方が俄然早くゴーレムの再生が追い付かない。
「くそっ!」
このままではジリ貧だと悟ったフーケはゴーレムに回していた精神力を別の魔法へと切り替える。
使う魔法は【アース・ハンド】
灰の足元から生えた土の手は彼の下半身を掴み動きを止める。
そして続けて使う魔法は【ブレッド】
フーケの足元にあるゴーレムの一部を成形、硬化させ相手に向けて飛ばす。
シンプルな魔法ながら単純故に決まれば間違いないダメージが見込めて、尚且つ使う精神力も少ない上に詠唱も短く扱いやすい。
相手が剣士である事も相まってコレで決着がつくと考えたフーケだったが相手は火を求め何度と死線を潜り抜けて来た男であり、単純な軌道が読める攻撃は意味が無い。
土礫が眼前に迫り接触まで1秒も無いタイミングで漸く灰は動く。
左手に持ったデルフリンガーを袈裟懸けに振る。
すると灰の下半身を掴んでいた土の手や、眼前にまで迫っていた土礫が掻き消えてしまった。
「は?」
「へ?」
これに驚いたのはフーケに留まらず、振るわれた本人(?)であるデルフも驚いた。
デルフ本人持ち得る能力は「探知、魔法吸収、使用者の肉体操作」だが、灰はデルフが各種「魔術、呪術、奇跡」の触媒になる事。
そして固有の戦技として【沈黙の禁則】が使える事を見抜いていた。
フーケが思考停止している隙に灰は動く。
滑るようにゴーレムの体を跳び、ゴーレムが殴りつけていた塔へ移り、さらに上へと昇る。
到達した頂上で移動の勢いをそのままに【ウォークライ】と共に宙へと駆ける。
頭を支点に宙を翻りながら両の手に持ったグレートクラブとデルフリンガーを気合一閃、ゴーレムへ振り下ろすと頭から股下に掛けて盛大に二つへ斬り分けてしまった。
これには流石のフーケも相手をするのは無理と判断しそのまま離脱。
戦闘は終了となった。
ぼろぼろと崩れ行くゴーレムを眺めながら灰が思ったのは……
「(ソウルが無い?)」
魔境に毒されていたが故にズレた感想だった。
沈黙の禁則
黒髪の魔女ベルカの伝える秘儀。
効果範囲内ですべての魔法が使えなくなる。
罪の女神ベルカは異端であるが古今あらゆる秘儀に通じており、
神々の中でも強い影響力を持つと言われる。
▼登場作品
DARK SOULS(ダークソウル)
▼データ
魔法種別 奇跡
使用スロット 2
使用回数 2
必要能力値 理力0/信仰30
▼効果
範囲内で一切の魔法(魔術・奇跡・呪術)が使用できなくなる。
効果時間は30秒。
敵だけではなく自分や味方も使用不可となる。
「魔術」ではなく、「魔法」と書いてあるとおり、魔術・奇跡・呪術が対象。
またデーモンの炎司祭が放つ衝撃波のような魔法攻撃も封じることができる。
対純魔系プレイヤー相手には効果絶大だが、
必要信仰値が高い・消費スロット2・使用回数が2回だけ・効果時間が短い・自分や味方の魔法をも封じてしまう
と欠点が多く、運用は難しい。
(攻略Wikiより抜粋)