Blank Paper 〜凡人サイクリストのオレが天才メカニックに恋してしまった結果〜   作:fuyu_plus

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原作31巻の「2人でいればできないことはない!!」の後のイメージです



#027

 四月。今日から新学期が始まり、新入生も入ってくる。

 田所さんや金城さんたちの代が卒業して静かになった校舎も、今日からまた元のような騒がしさを取り戻すだろう。

 

 荷物を部室に置いてから、青八木と共に昇降口に張り出されている新クラス表を見に行く。掲示板の前を賑わす人集りの中に、見知ったリュックの後ろ姿を見つけた。

 

「瀬上おはよう」

「あ、おはよう二人とも」

「新しいクラスは見つかったか?」

「うん。私、自分のよりも先に青八木くんのクラス見つけちゃった。こういうとき目立つよね」

 

 瀬上にそう言われて掲示されているクラス表に目を向けると、一番最初に青八木の名前が印字されていた。

 

「……一組か」

「出席番号もまた一番だな」

 

 三年一組一番、青八木一。一だらけだという意味でオレが言うと、青八木はどことなく誇らしげな顔で頷いた。

 

「オレを抜かせるやつはほとんどいないからな」

「青八木ィ! 今のスプリンターのセリフとしちゃかっこよすぎるだろ!」

「あはは! 新学期の朝から二人は面白いねー」

 

 オレたちのやりとりを見て瀬上が笑う。進級しても何も変わらない光景だ。

 

「瀬上は何組?」

「さて何組でしょうか〜?」

「え、それくらい教えてくれたっていいだろ?」

「ヒントはね……『手嶋くんと同じクラス』! 自分のクラスを確認するというドキドキの瞬間を奪わないでいてあげたんだよ」

 

 瀬上は「じゃあね!」と言い残して部室へ走っていってしまった。

 

 同じ……クラス? 瀬上と、オレが? いや、可能性はなくはない、か。文理選択の時に青八木は文系を選択したが、瀬上はオレと同じで理系を選択したと言っていた。

 

 理系クラスは四組以降が該当する。四組のタ行のあたりから自分の名前があるか確認すると、そこにオレの名前があった。

 総北に入学した時も、四組だったっけ。あの時はオレと青八木が一緒のクラスで、瀬上と古賀が同じクラスだった。

 

──それで、本人の言葉を信じるなら瀬上も四組のはずだ。

 

 名前を辿ると、たしかに同じ四組の括りの中に瀬上の名前がある。マジ、なんだな。いや瀬上が嘘つく理由とかないけどさ。

 

 ……最後の最後で瀬上と同じクラスになるなんて。これはラッキーと思うべきか、部活引退したら告るというプランは絶対になくなったと考えて憂うべきか、それとも──

 

 ハッとして口を抑えて隣を見る。青八木は何か言いたげな顔をしているが、じっとオレを見つめたまま口を開かなかった。

 

「……なんだよ青八木。言いたいことがあるなら言えよ」

 

 いつもよりほんの少しだけ乱暴な言い方をすると、青八木はちょっと笑った。

 

「ふふっ……よかったな純太」

「なんかちょっとムカつくけど……ありがとよ!」

 

 

 新しいクラスメイトや自分の席の場所を覚えたあとは、自転車部のキャプテンとしての仕事が次々とやってきた。

 

 新一年生の入部届の束。昨年のインターハイ優勝がきっかけなんだろう、例年とは比べものにならない数の入部希望者が押し寄せてきている。この昼休みの間にも、入部希望だという一年生がどこからか聞きつけてうちのクラスにまで提出しに来ていた。

 

「それ入部届?」

 

 青八木と入部届の束を捌くオレの席にふらっと現れたのは、瀬上だった。部活では毎日顔を合わせているのに、教室でもというのはなんだか新鮮で、不思議な感じがする。

 

「ああ。オレらの時の倍以上の数」

 

 確認が終わった方の紙束を青八木が手渡すと、瀬上は受け取って一枚ずつパラパラとめくった。

 

「インハイ効果かな? すごいねー」

 

 果たして名前だけ見て何かわかるのだろうか。瀬上なら名前よりもマシンを見たほうがいろいろわかりそうだ。

 その推測が当たっていたのか、瀬上は入部届に書かれた名前を見ても特に何もコメントすることはなく、青八木に紙束を返していた。

 

「メカニック志望の子はいた?」

「今のところいねーな」

「私の弟子は……」

「放課後以降、来ることに期待かな」

「じゃあ女の子は!? マネージャーでも栄養士見習いでも、空力学者の卵でもなんでも!!」

「それはもっと聞いてねーな」

「えー」

 

 瀬上が渋い顔をした。メカニック志望も女子の入部希望者もいなくて残念なのはわかるが、さすがに空力学者の卵は来ないだろう。いても自転車部じゃなくて物理部に行くんじゃないか。

 

「いや最後の方は高望みしすぎだって。うちはマージナル・ゲインを追求する資金潤沢な某ワールドチームじゃないんだからさ」

「うっ……それはそう。新歓オリエンテーションで弟子候補が見つかることを祈ろう……」

 

 自分の友達のところへ戻っていく瀬上を見送った後、隣の席を借りている青八木の方を見る。いつもなら瀬上にツッコミのひとつくらい入れるはずなのに、今回は黙っていた。

 

 オレが鏑木と段竹に「一年生レースでワンツーフィニッシュを決められたらインハイレギュラーメンバー入りだ」と約束したことに対して、納得がいっていないからだろう。こっちもこっちで、たぶんみんなからはわからないだろうが、不服そうな顔をしていた。

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