ミネルヴァのフクロウは夜にも飛べない。   作:トーマ

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 本当は瑞希メイン回の最初に書いた方がわかりやすいのかもしれませんが、念のためここにもあらかじめ書いておきます。
 
 瑞希の性別について、筆者は細かくこの小説では設定しています。

 生まれた肉体の性別は男性。
 表現したい性別は女性。
 性的指向はほとんど女性(オリ主に向けられている感情はここでは明言しないです)
 性自認は「?」 公式プロフィールでの性別「?」 をそのまま受け取り、筆者は瑞希をクエスチョニングだと解釈しています。


追記 既存の作品と、最初のシチュエーションが類似してしまっていました。ちょっとどうしようもないような気もしていますが、折を見て修正する可能性があります。


プロローグ

 絶望的なまでに、ボタンを掛け違えていた。彼女たちから向けられる信頼をそのままにとらえてしまったの事が、俺の最大のミスだと言えるだろう。

 

 

「ねえ、もしあんたがいなくなったら、私死ぬから。それが嫌なら、あんたが認めた私の絵……一生認め続けなさいよね」

 

 うん。思えば絵名がこんなことを言い出したころから、片鱗は見えていたのだ。いや、まあ、あの時は絵名も不安定だったし、それから解放されて少々大げさな表現になっただけだと思っていたんだけれど。

 

 

「わたしが誰かを救う曲を作り続けるために、あなたが必要なの」

 

 と、奏の言葉。これに関しても、俺は楽曲の演奏などで協力しているわけだし、「奏の曲」に必要な存在である自負はあるし、奏もそのことについて言っているのだと思っていたのだ。

 

 

「よくわからないけれど、健也がいないとダメだと思う」

 

 これは何度目かの打ち上げの時にまふゆから言われた言葉。作業通話にはほとんど顔を出していないというのに、打ち上げに参加する必要はあるのかと俺が聞いたところ、全員から来てほしいと言われたのだが。

 まふゆの言葉にしては、珍しく、強く俺の言葉を否定したから印象に残っている。

 

 

「ボクは、君がいたから、ここを居場所だと思っていられるんだ」

 

 瑞希の秘密を知っている俺の存在は、瑞希の今の居場所を脅かしかねない存在でもあった。けれど、だからこそ、それぞれの事情を知っている避難所のような役割を果たした。

 

 ただ愚痴を聞いていただけだった俺に、瑞希は随分と過大な評価をしてくれるものだと苦笑していたのだが。

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ、昨日の夕方、女の子と歩いているところを瑞希が見たって言っているんだけど」

 

 くっついてしまいそうなほどに俺に近づいて、低い声色で尋問してくる少女は、東雲絵名。加工の必要性を感じないほどに白い肌に吸い込まれそうな錯覚を覚えながらも、俺は首を縦に振った。

 

「あ、えっと、ちょっとした縁があって、軽く、アドバイスを求められたって言うか」

「しかも四人と歩いていたんだってね」

 

 聞いたこともないような声に、ゾワリと体が冷えた。まるで脊髄を急速冷凍されたかのように、全身が固まった。首を回すと、動かしている感覚はないが、それでも視界は動く。今の底冷えするような声の正体は、奏らしい。聞いたこともないような冷たい声だった。

 

 

「え。うん……四人いたけれど」

「ふうん」

 

 まふゆは相変わらず。相変わらず……のはずだ。

 声色はいつもと変わらないし、表情もいつも通りの無。他の三人と違って怒気すら感じられはしない。

 

 だが、今まさに俺の両手を片手で握りしめて拘束しているのはそのまふゆ。その手が、ギリギリと強い力で握りしめられて、僅かに痛みが走った。

 

「まふゆ。そっちに抑えといて」

「わかった」

「全くもう……健也には困ったものだよね。とりあえずしばらくはボクたちの話を聞いて貰わないといけないから、ちょっと縛るね」

「いや、ちょっと縛るねって……痛い! まふゆ! 痛い!」

 

 

 瑞希は俺に対して昨日の話を問い詰める風ではないのだが、先ほどから黙々と俺の身体を拘束し続けている。リボンで縛られているため、今のところ痛みは感じないのだが、それでも縛られて動けない状況というのは恐怖を感じる。特に、今のこの四人はいったい何をしでかすかわからない雰囲気を見せているのだから。

 

「よしっと。まふゆ、もう離してもいいよ」

 

 俺の両手を鉄塔に縛り付けた瑞希は、いつも通りのかわいらしい笑顔でまふゆに笑いかけていた。思ったより瑞希は怒っていないのかもしれないと、一瞬でも考えてしまった俺は間抜けなのかもしれない。俺の全身をがんじがらめに縛り付けた張本人は瑞希だぞ。

 

 案の定というべきか、俺の視線に気が付いたらしい瑞希はその可愛らしい笑顔のまま此方を向いたかと思うと、一転、怒りと軽蔑以外の表情の消え失せた顔で俺を睨んだ。能面の方が可愛げがある気がした。

 

「悪いけど、しっかり反省してもらうまで返すわけにはいかないからね」

「反省って……何を反省すれば……」

「そんなの決まってるでしょ」

 

 俺の胸ぐらをつかみながら、絵名が言う。先ほどと一転して笑っているのだが、まるで聞き分けの悪いペットに対して接するように、その目の奥には理不尽な怒りの炎が宿っていた。ペットが人間の言葉が理解できず、怒られたからと言ってすぐに行動を直せないように、俺には彼女たちの怒りが理解できず、何を反省すればいいのかすらわからない。

 自分で考えていてなんだけれど、自分をペットに例えるのはどうなんだろう。

 

「あんたは私たちのものなんだから、勝手な行動を取ったらだめ。ましてや、女の子と一緒だなんて」

「あ、案外ペット扱いされてるの間違ってない?」

 

 空気を読まずに茶化すようなことを言った俺だが、全員が全員、ペットというのも悪くないかもと言った思案顔になった。

 

 

 何かがおかしい。今更ながら俺はそのことに気が付いた。

 俺は彼女たちを、音楽をつくる仲間程度に感じていたのだが、どうにも彼女たちから向けられる感情には、それ以上のものが含まれているように思う。

 

 しかし今は、この状況の打開が優先。どうしてこんな状況になってしまっているのかもわからない以上、まずはもっと前の出来事から分析するべきだ。

 昨日、一昨日、いや――彼女たちと出会った時のことを、交流を深めていく過程を思い出せば、どこかにヒントが。




 

構成、どんな感じが良いか。

  • 奏編ヤンデレまで→絵名→……
  • 奏ここまで→ニーゴ個別→原作→奏病み→
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