『黒腕』の孫として転生したんだけど……   作:赤い靴

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12話目です。

読んで頂けたら嬉しいです。


第12話 飯屋にて

「ほら!早く吐くんだよ!!」

 

 僕は海賊に対し、首に腕を巻くように捕縛する。

 本部にて海賊が暴れている、との報告を受け参上した。

 

「誰が言うかよ!クソ海軍がぁ!!……俺は口が堅いんだ……仲間の情報なんて言うわけねぇ!!」

 

「OK〜。君がそのつもりなら、『そうしよう』」

 

 右手でホールドしているので、僕は左手を使い顔面を3発殴る。

 

 バキ!!グシャり!

 痛々しい音が鳴るが、その発生元は僕では無いので躊躇なく続ける。

 

「ごめん……!!ゔぅ……ゆるして……吐く!!吐くから!!!!」

 

「当たり前だろ!人間が痛みに勝てるワケねぇんだよ!!手間取らせやがって……」

 

 固く締めた腕を解き床に座らせる。

 

「ゼラ少佐!コッチ、制圧終わりました!!」

 

 酒場の奥からアルター大尉とエレナ曹長が現れた。

 

「他部隊と連絡取りまして、これで島の北部は制圧しました。まだ南部の情報が……あぁ、可哀想に……」

 

 アルターは僕に報告をし、そこに居る海賊に哀れみの目を向けた。

『またか』って表情すんじゃねーよ。まぁ、またやってるんですが……。

 

「あ!お姉ちゃん!!」

 

 カウンターの裏、そこから1人の男の子が走ってきた。

 そこからゾロゾロと酒場の店主、その家族、客人と姿を現した。

 

「怖かったね。もう大丈夫だよ!」

 

 エレナが子供の目の高さに合うように屈み、頭を撫ではじめた。

 おい、そこどけよガキ。

 月日が経ちエレナに対して分かったことがチラホラ……。

 お姉ちゃん体質もあるのか、子供に対して『特に』優しい。

 ほらほら!僕、身長が無いので、そのストライクゾーンにワンチャン入りませんかね?????

 

 ……虚しい。

 

 自虐したせいかイライラしてきた……。

 

「おい!表出るぞ!!!」

 

 海賊の襟を持ち、引きずる様に外に出る。

 

 幼い子供に、こんな残酷な事を見せられないからね。

 あぁ、僕はなんて優しいんだろうか!!

 

 店外に出るや否や、悲鳴が轟いた。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 島南部の制圧も終わった。

 懸賞金すら出されていない程度の海賊だった。

 規模は大きいものの、幸いにも現在死人は出ていないのだが、島民の4割が傷を負った。

 

 たまたま僕らは近場の海域に居た。その幸運も相まって、制圧に半日も掛からなかった。

 

「は~い。お薬塗りますからね~。沁みますが頑張ってください~」

 

「イデッ!!」

 

 腕を斬りつけられたオッサンに消毒を施し、包帯を巻く。

 

「次!」

 

 僕は今、島民の応急処置をしている。

 腕のある船医は皆、重症者の処置に回っているからだ。

 話によると、その重症者達は1か月間寝ていれば治るモノらしい。

 だが、『今』が正念場だそうで、油断は出来ぬそうだ。

 

 広場みたいなところに即席の病院を立て診ている。

 

 軽症者は10の列に並び、そのうちの1つ……僕が担当しているのだ。

 

 

「お願いします」

 

 民家から拝借した椅子に1人の女の子が座る。えらい美人だぁ。

 年齢は僕と同じぐらい……髪色や身長は違うのだが、エレナを見ているようだ……。

 

 所々よれよれの服。その所為で首元の痣が良く見える。

 紫色のソレはハッキリした人の手形だ。

 

「……少佐。いつもの『アレ』でフォローしたらどうですか?」

 

 薬品は入っている木箱をあさっているアルターが僕に言う。

 お?やっていいのか?

 

「い……いつものアレ……?」

 

 少女はポカンと不思議そうに見つめてくる。

 ゴホンと息を整えて、まじまじ彼女を見つめて、大変真面目に僕は口を開く。

 

「ちょっと痣が見えないからさ。上の服、脱いでみよっか」

 

 にこやかに言った僕の頬、その真横に細い剣がヌッと出てきた。

 後ろを振り向かなくても分かる。

 エレナの得物。鎧刺し(エストック)だ……。

 

「一回首跳ねないと学びませんか?少佐??」

 

 冷ややかな声が聞こえる。

 

「すみません調子乗りました。でも、仕方ないんです。これは仕事なんです」

 

 苦し紛れに言う僕に、あぁもう!と、エレナは声を上げた。

 鞘にそれを仕舞うと、彼女と一緒に近くの民家に入っていった。

 

 

「大成功ですね、少佐。あの子、笑ってくれましたよ……」

 

「ならいいけど……。はぁ……」

 

 彼女のケアは僕では出来ない。またエレナに苦労させてしまった…。

 

「次!」

 

 椅子に座るは逞しい男性だ。

 両腕に広がる痣。棍棒により受けたものらしい。

 ……。コレ骨にヒビはいってますね。骨折っす。

 

「薬塗って、添木しつつ包帯巻き巻き……。両手、治るまで使えないのは不便ですね……」

 

「あぁ、いいんだ!嫁が居るからな!!」

 

「へぇー。それは良いですね……」

 

 添木の位置を調整しながら包帯を巻いていく。

 ところで、そのマウント辞めてくれませんか?

 

「そうそう!新聞で知ってるぜ!兄ちゃん『ゼラ少佐』だろ!?カッコいいねぇー!!応援してるよ!!頑張んな!」

 

 処置が終わり、その男性は早々と行ってしまった。

 

「少佐。薬が少なくなったので、取りに行ってきますね」

 

 リスト表にチェックをするアルターは僕に言う。

 

「いいよ。5分で戻ってこいよ。もう交代……。いろいろ疲れた……」

 

「サボるのは……まぁ、良いですけど……大将赤イヌさんに見つからない様にして下さいよ〜」

 

「……頑張るわ」

 

 アルターは空箱を持って、停泊する海軍の船に向かって走っていった。

 

「次!」

 

 もう時期、手当待ちの列が無くなりそうだ。

 お腹が空いた。変装して飯屋にでも行こうか。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 この島の北部に負傷者を集めて治療をしている。

 南部に捕らえた海賊を集めて居る。

 赤イヌが居るのは南側だ。

 この島はそこまで大きく無い。つまり、サボりが案外バレてしまうのだ!(累計6敗)

 

 さぁ、考えろ!どこで飯をたらふく食べるか!!

 北部は何度も言うが、負傷者が居る。そんな中、飯屋で爆食いするのはやや目立つ。

 南部は赤イヌが居るが、絶賛復興の最中だ。腹を空かせた人々が多い。

 

 木を隠すなら森の中。

 

 そう僕は、南部の飯屋に向かった!!

 

 そして今、変装を終えカウンター席に座り、メニュー表をじっくりと見ているワケだ!!

 

 この島特有の牛肉をふんだんに使った炒飯……。

 付近で海流がぶつかる事により、豊満に育った魚。その刺身……。

 デザートはどうしようか?ココナッツプリン?美味しそう!!

 

 あと1時間迷わせてくれ!!!

 

「そこの君……決めかねて居るのだね?」

 

 僕の隣に座るオジサンが言った。

 

 内心かなり焦った。変装がバレた!?と思ったが……どうも違うらしい。

 

「この店の、魚の素揚げはとても美味い。何度もこの島に来て食べるぐらいだ」

 

 柑橘系の香り。どうもその素揚げに、レモンの皮でも添えたのだそうか?

 メニューを見る限り、柑橘系はデザートしか無い。

 それはそうと、その素揚げめっちゃ美味そう。

 

「あぁ、コレコレ……みかんじゃ。君もどうかね?このみかんはワシが作ったものなんだ……。ほら」

 

 袋からみかんを1つ、小さな摺り下ろし金も取り出した。

 

「えへへ……あ、じゃあ……。頂きますね」

 

 僕は、炒飯、刺身、魚の素揚げ、デザートにプリンを頼んだ。

 

 1番先に来たのが炒飯だ。

 ゴロゴロした牛肉と共に頬張る。

 いい焼け具合の四角の肉。噛めば噛むほど、肉の旨みが溢れて出る。

 米も卵もホロホロと崩れ、香辛料のパンチの効いた香りがたまらない!

 

「美味い!!」

 

 確かに美味い。だけど、少し重い。

 この身体は若いから胃が元気なのだけど、元の僕の胃にとってはかなり重い炒飯だろう……。

 だからこそ噛み締める!食に対する幸福に!!

 

 半分ほど食べ進めると、そのオジサンが誘惑をかけた。

 

「海の航海をする者は良く『果物不足』になりやすい……。果実は痛みやすいからなぁ……。このみかんも同様。甘いと直ぐに悪くなる……。だから酸っぱい品種のモノを持参しているのだ……」

 

 僕はハッとする。

 

「えっ!つまり……。この少し重い炒飯に、酸っぱいみかんの果汁を垂らすと……より美味しくなる……ってことですか!?先生!!」

 

「いかにも」

 

 いざ実践。みかんを1/4に分け、それを搾りかける。

 手についた果汁を舐める。

 

 酸っぱい。だけど香りは甘いみかんだ……。

 

 米が果汁を吸いこむ前に食べなければ……!!

 スプーンを口に運ぶ。

 

 美味すぎる……。

 

 まてまて、炒飯でこの美味さ。魚の素揚げにかければ、どんだけ美味くなるんだ!?

 想像するだけで唾液が止まらない。

 

「どうやら口に合ったようだ……。ワシにとって……みかんは特別な存在でな……。そんな顔されたら、『人の心が解らない』と言われているワシでも、嬉しくなるな」

 

「へーそれは辛い人生で……。あ、コレ……刺身にも合いますよね?」

 

「へッ……。ジジィの過去には興味無し……か。…………。気に入った。このジジィに飯の感想を聞かせてくれ。もう胃が終わってるんだ」

 

 じゃあ何故素揚げなんて重いもの食ってるんだ、と疑問に思った。

 

「ヘイ!刺身と素揚げ!!お待ち!」

 

 ゴトンと2皿やってきた。

 そんな些細な疑問など、飯の前では消えてしまった。

 

 

 刺身、素揚げを堪能し、デザートのプリンを頬張った。

 

 満腹満腹。みかんの香りのおかげで、より食事を楽しめた。

 味変ならぬ香変。いい勉強になった。

 

「とても美味しかったです!このみかん……賞を余裕で取れますよ!」

 

 オッサンは笑いながら返した。

 

「そうかそうか。だが、このみかんはマリンフォードにも稀にだが送られている。カーキと言うクッキー屋があるのだが、そこはこの皮を使ったモノなんだ。いつ死ぬ運命かわからなんだ。買って食っても損は無い筈だ」

 

「あー、あそこか……。プレーンの……普通の奴しか買ってないです……。是非買ってみますね!」

 

「あ──。キミ、やっぱり海兵だったのか……。残念だよ」

 

「ん?は?えっ??」

 

 赤イヌの部下の人か?

 なら終わりじゃ無いか!?

 逃げないとやばく無いか?でも、顔見られてる……。オワタ

 

「あのー、何処の何方ですか……?」

 

「ワシは……」

 

 オッサンはポケットから数枚、紙幣を取り出した。

 1人ではこの金額の飯は到底到達出来そうに無いが……。

 

「アウコレー・ダリウス。最も有名な呼び名は『環形のダリウス』」

 

 

「少しワシと話さんか?」

 

 

 

 

 

 

 




お疲れ様でした!
どうでしたか?

ゼラのサボりで6敗とありますが、色んな中将に怒られた(見つかった)回数です。
変装は、その辺に干したある服を拝借しました。
軍服は変装したのち隠しました。
飯のお金は海軍のお金です。息をするかの如く横領してます。
ですがおじさんが奢ってくれるそうですね。良かったな!!


今回はここまでです。
毎度読んで頂いてありがとうございます。
ではまたー
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