『黒腕』の孫として転生したんだけど……   作:赤い靴

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13話目です。
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第13話 パクス・ウィールス

 知らぬ誰かに飯代を支払われてしまった。

 まぁ確かに、人の金で食う飯は美味いのだが……今回は状況が違う。

 

 環形のダリウス……?第一『顔』が違う。

 だが、マリンフォードの菓子屋を詳しく知っていた。

 海軍関係者(身内)なのは間違いない……はず。

 

 しかし、今の彼にとっては海軍は敵だ。

 何故こんなところに居る?大将赤イヌも居るんだぞ?

 

「まぁ、そんな険しい顔をするなさいな……。……観光。飯を食いに来ただけだ。たまたま海賊に巻き込まれたのだよ」

 

 所々穴の開いたマントを羽織るダリウス。風によりパタパタと音を立てている。

 

 僕たちは、島の西部に向かって歩く。

 先頭はダリウス。僕はその後ろで彼を凝視している。

 

 この並びで僕の顔なんざ見えないはずだ。見聞色の覇気持ちか、それともただの当てずっぽうか……。

 

 変装したので武器や銃なんてものは持っていない。

 いまだ抜けぬ刀は大尉に預けたまんまだ。

 生憎、電伝虫は持っている。連絡すれば早々に援軍が来るだろう。

 

 もし僕が『赤イヌ』なら間違いなく、微塵の後悔なく、目の前の老人を殺すだろう。

 マグマという高温ならば、ダリウスが計画しているウィルスもろとも始末できる。

 

 だが、今の僕はどうだろうか?

 

 そんな大それた能力は持っていないし、武器もない。

 相手は老人だが侮ってはいけない。

 この世界の老人はとても強いから……。

 

 だからこそ、今の僕がやるべきことは『情報収集』。

 ポケットに潜ませた小型電伝虫を器用に操作し、アルターの電伝虫につなぐ。ポケットから向こうの音声が聞こえては、元も子もないので消音にする。

 僕からアルターへの一方的な通信だ。あとは、気づいてもらうために『ワード』を言う。

 

 ダリウスのことは極秘情報だ。なので大尉は勿論知らない。

 そしてターゲット……ダリウスにバレてはいけない。

 

 お願いだぁ大尉ぃ!!!気づいてくれぇぇぇぇ!!!!!!

 

「観光……偶然……。本当に『運が悪い』ですね。この島に『大将赤イヌ』がいるなんて」

 

「確かに……それこそ1番の想定外だ。熱に強い虫もいるが……それは環境に対してだ。マグマの熱など論外だ……」

 

「へぇ環境……。あ、そういえば沸騰する程のお湯の中に居る生物も居るどか……」

 

 唐突にテレビの内容を思い出した。

 アメリカのイエローストーン。そこの間欠泉は虹色だと、よくやっていた。熱を好む細菌?の所為だというが……。

 思わず口に出してしまった……。

 

「ワシは虫の話をしているのだが……。まぁ微生物の話もよかろう。キミの言う環境で生きているものは好熱菌の分類……その中の超高熱性と言われとる……。……よく知っているな……」

 

「えッ……ま、まあ……昔、興味があって……。他にも塩分濃度が高いところを好む奴どか……なんとか……」

 

「そう。他には高圧の環境で生きるもの。酸素がない環境で生きるもの。強酸、強アルカリの環境で生きるもの。それらはすべて極限環境微生物と言う」

 

「極限……環境微生物……」

 

 メタ●ギアでしか聞いた事ねぇよその単語……。

 …………。こ、好奇心が抑えられねぇ……。キイテミヨウゼ……。

 

「あの~……金属を食べて生きる細菌っていますか……?」

 

「!?」

 

 ダリウスは驚いた顔で振り返った。

 が、直ぐに表情を変え前を向き歩き始めた。

 

「言いたくはないが……キミの問いだ。答えよう……。……存在する。しかし……うむ……。奴らにそんな脳は無いか……」

 

 存在した!!なんかカッコイイな!!名前つけてぇ!!命名してぇ!!

 

「あの名前は……」

 

「軍を去った後見つけた。まだ名は無い」

 

 うぉ──!いけるぞ!いけるぞ!!

 

「あの……もしよろしければ……メタリックアーキアなんて……どうですか?」

 

 ダリウスは立ち止まると、復唱した。

 

「採用だ。…………。キミは過程を知らず、結果だけ知っている……不思議な人間だ……」

 

 ゔっ……。痛いところを突かれた。路線変更。蛇足してしまった。

 ごめんよ大尉……どうしても聞きたかったんだ……。

 

「そんな事はどうでも良い(強引)!!ダリウス……お前は何が目的なんだ?『生物兵器』を使用して、『多くの人を殺そうとしている』。お前は数多くの人々を救ってきた!どうして!?」

 

 ビュウと強い風が吹く。

 

「……。愚かな人間を進化させる為……だ」

 

 また意味の分からぬ事を……。

 

「そんな事……しなくても……お前の頭が有れば出来るだろうが!?」

 

「理解できぬ者が居る……。その人間がいる限り前進出来ないのだよ。だからワシは、君たち海軍と同じことをするのだ。人を殺してはいけない、強姦しては行けない、金品を奪ってはいけない……そんな『簡単な事』を理解出来ぬ海賊が居る。だから君たちは、海賊を抑えるべく、正義を行使し、捕まえ、殺している。ソレと同じ事だ」

 

「違う。海賊は悪だ!だが、民間人は何も罪は犯していない!」

 

「無知は大罪だ。無知は偏見による差別、格差、暴力を生む。(ふるい)に掛けなければならない……」

 

「…………」

 

「病魔は格差を打ち壊し、暴力を無くす。人々はより手を取り合って団結するのだ。いずれ病魔を打ち負かす……。この事で差別は無くなる……。そして……人間、魚人、巨人、小人に至るまで『痛い目を受け学ぶ』だろう!!これこそワシが夢見た素晴らしき新世界!!……キミの様に名でもつけようか……平和……いいな」

 

 ダリウスは振り返り、硬く握り拳を作りこう言った。

 

Pax・Virus(パクス・ウィールス)!!ウイスルによる平和だ……平和による第1歩を征くのだよ!」

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 最早分かり合えないと理解した。

 なんなら、僕がダリウスの方に流れて行きそうだ……。

 

「ふっ……。流石だな赤イヌは。仕事が早い……」

 

 何かを察したようで、ダリウスはポツリと呟いた。

 

 赤イヌが動いた……?てかしたぞ大尉!!

 

「まぁ、当たり前か……。キミのポケット……ワシの虫達が囁くのだ。指摘したら楽しい会話が出来ないからな……。あえて乗ってやった」

 

 まさかここで撒くつもりなのか?

 だとしたらヤベェ!!!!

 

「剃!!」

 

 ダリウスの前に移動してから再び剃を使用し、背後をとる。

 

 首の骨を折る!!

 今まで不殺だのなんだのやって来たが……スケールが違う!!

 

 1発。渾身の力を込めてダリウスの首を目掛けて蹴り付ける。

 

 ドッと鈍い音が鳴る。首はマントに隠れているが、確実に当たったはず!

 しかし……折れない……。

 まるで大木を蹴った様な感覚だ。

 

「軽いな……少年!」

 

 目にも止まらぬ程のパンチが僕の腹に命中した。

 

 後ろに飛ばされ地に落ちる。それと同時に、さっき食べたものが逆流した。

 口の中が酸っぱい……。立ち上がるなり、唾を口の中で回しペッと吐く。

 

「吐いたのが食ったもので良かったな。今度は虫を吐いてみるか?」

 

「悪趣味なジジイだ……。だから嫌われるんだ!」

 

「子供の頃に痛いぐらいに理解している……。さぁ、もう少し遊ぼうか……。このままではワシが消化不良になってしまう」

 

 異様に肥大化した腕を僕の方に出し、クイクイと挑発される。

 さっき蹴った首も同様に太くなっている。飯屋に居た棒のようなオッサンは何処かに消えたようだ。

 

「なめんなよ!!」

 

 右手に砂を隠し持ち、地面をえぐるようにダリウスの元に走った。

 剃を使い再び背後に回り、煙幕のように砂を撒く。

 ダリウスの重い一撃を紙絵で抜け、拳に鉄塊をかけ胸を強く張る。

 歯を食いしばり腹を目掛け放つ──!!

 

 深々と刺さる腕。

 側から見れば僕の勝ちと思うことだろう。

 

 ゾワゾワゾワゾワ……

 

 僕の腕にナニカが大量に蠢く感触がした。

 コイツの腹の中……或いは身体中に『虫』でも居るのか……!?

 

 ダリウスは軽く笑い「半分正解だ」と言った。

 

 戦慄する僕の腹に彼は手を押し付け放った。

 

軟虫の先触れ(バーミンロード)

 

 ダリウスの手が一瞬膨張し、次の瞬間爆発した。

 いや、爆発では無い。

 白く巨大な蛇のような虫が複数湧き、押し出された。

 

 虫が出現する前に、腹を僅かに反らせたのでダメージを激減出来た筈だ。

 だが僕が軽々と飛ばられる程の威力だ。モロに受けたらたまったものじゃ無い。

 

 立ち上がる。その際に腹から出血していることに気づいた。

 距離をあけ服を上げて確認した。

 丸いギザギザの跡が何十も……。

 しかも血がサラサラと流れ落ちていく感じ……ヒルか?

 

 腹回りの服は赤で染まりつつあるが、たいした出血では無い。ならば……

 

「うおおおおおおお!!!」

 

 僕は走り出す。両手を広げ笑うヤツの元に!!

 

「やはり男児はこうでなければ!!では次だ!刃蟲!!」

 

 ダリウスが手を大きく払うと10個の手裏剣のようなモノが飛んできた。

 手の甲に鉄塊を張り巡らせ弾くが、右肩、左腿に1個刺さる。

 深々刺さったそれを引き抜く。

 まじまじ見れていないが「ギィギィ」と鳴いていた。感触から甲虫のようだ。

 

 引き抜く際に掌を切ってしまった。

 痛みを怒りに変え拳を固く握ると、指の間から血が滴った。

 

 飛んでくる攻撃を受けつつ進む。

 ただひたすら血が流れる。

 

 人間に対して絶大な効果を持つ薬を作った男だ。

 どこを斬ればより血が流れるのかを理解しているのだろうか……。

 

「刃蟲」

 

 次は足を狙って放ってきた。

 

「月歩!!」

 

 何度も体勢を変えながらダリウスに近寄る。

 至近距離……さっきの

 

呪われた金属針(マギアアクス)

 

 トトッス……

 

 腹に指ぐらいの大きさの黒色の針、それが2本刺さった──

 

 なんの!!これしき……

「ゔぇっ……!!??」

 

 突然の眩暈と吐き気、耳鳴りに襲われ地面に向かって落下する。

 

 呼吸も何故か苦しくなった。

 ゼェゼェと水を求める魚の様に呼吸する。

 

「鉄、亜鉛、ニッケル、銅……。人間の体には様々な金属が必要だ……。どれも欠けてはいけない大切なものだ……。だがどうだ?充分過ぎる以上の量を摂取すると直ぐに狂う……」

 

 足跡を立ててダリウスは近寄ってくる。

 

「薬と毒は紙一重だ……。その関係は実に興味深かったよ。毒=量の関係。今のキミはその身を持って体験している……」

 

「人間は痛い目を受けない限り学ばないのだ……。幾ら我々科学者が安全と言っていても、毒だなんだだの(たか)りかける馬鹿共が居るのだ……。その者どもが居る限り世界はクリーンにならない……」

 

「聞かぬのなら死ねば良い……。この世は正しい知識をより啓蒙し、拝領した者たちが繁栄し、謳歌するべきなのだ……」

 

 仰向けになる僕の視線にダリウスが写る。

 

「キミはワシにとって面白い生徒だ……。直接殺しはしない……が……。そうだな……脇腹でも抉ろうか……」

 

 彼の右手が開かれる。

 

「運があれば生き残るだろうが……この虫は特殊でな……血の凝固作用を喪失させるのだ……。死ぬとしたら血の流れ過ぎによるショック死……。まぁよいか……」

 

 

「1つ教えてあげよう……。例のウイルスは2年後あたりで完成予定だ……。中々、継代と改良が上手くいかなくてな……。さて……」

 

軟虫の先触れ(バーミンロード)

 

 左の脇腹にナニカが通り過ぎた。

 

 とても熱い。

 とても痛い。

 とても寒い。

 

 だけどまだ身体は動く!!

 

「でりぇぇぇああぁぁぁ!!!!」

 

 刺さる針を一つ抜き僕はダリウスの喉元を目掛け、最後の力を振り絞り、立ち上がって刺した。

 

 キン!!

 

 金属音が響く。

 

 目をやると、ヤツの首元は鉄の鱗のような物に覆われていた。

 

 終わった。完璧に負けた──

 

 左脚は腹の夥しい出血により染まり、その脇腹からはコンニチワと言わんばかりに、内臓が顔を出していた。

 

 

 

「キミの負けだ。再び会える事を願っているよ……」

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

「血液が足りねぇぞ!!輸血パックはこれで終わりなんだな!?」

 

「はい!!今、X型の血を集めています!」

 

「なんとしてでも生かせ!!ここで死んでしもうたら1からやり直しじゃけ!!」

 

「ですが大将!!脇腹の傷が……凝固剤を打っていますが……出血が抑えられないのです!」

 

 意識がハッキリしないが目覚めた。

 

 病棟……?違う。床は地面丸出しだ。

 ではココは……野戦病棟……。

 つくづく運がいい……。僕が死ぬ前に見つけてくれたのか……。

 

「あ……あか……さん」

 

 僕は必死に声を出す。

 痛くて痛くて肺が満足に膨らまない。

 だけど声を出す。

 

「!?ゼラ!!意識あるようじゃな!!お前は此処で死ぬわけにはイカン!!死ぬ気で生きろ!」

 

「焼いて……くれ……。……血が止まら……ない……んだ……」

 

 カチャカチャと金属の音や、外で一際目立つ鳴き声が聞こえる。

 エレナ……??

 よく響くな……あの娘の声……。

 

 破けた横腹に手が当たる。

 

 僕の四肢が重い腕により固定される。

 

 そして──

 

 血と肉の焼ける匂いが部屋に充満した。

 

 




お疲れ様でした。
ゼラ君の敗北回でした!!

サブタイトルですが、使い方があやふやなので…こう…そう……。違和感あっても無視してくれれば嬉しいです。

この回はパクスハンバーガーナ!!!を聴きながら書いてました。
ダリウスの元ネタは言わずもがな…です。

以上です。蛇足でした

ではまた〜


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