最後まで読んでいただければ嬉しいです。
『キミの負けだ。再び会える事を願っているよ……』
深い闇の中、その言葉が何度も繰り返させる。
まるで押し寄せる海の波のように。
何度も何度も繰り返し、何度も何度もあの老人の顔が浮かぶ。
気が狂いそうになるほど繰り返し、僕は理解した。
あ、そうか。アイツは……
僕に殺されたがっているんだ──
◇◇◇◇
目が覚める。といっても、瞼は重く、意識が戻っただけなのだけど……。
鼻に入るは病院の香り──
真っ白な視界に。そろもうじき慣れてきた。そろ目を開けてもいいかな?
ガサゴソと布団から脱した両手を顔に持っていき、目を撫でるように触る。
一体何日間寝ていたのか分からない。
砂煙に潜ったので目ヤニが凄いだろうな、と思っていたが付いていない。
誰かが拭いてくれていたかもしれない……。感謝しなければ……。
ゆっくり目を開ける。
白い光にだんだん色がつき始め、視界が安定してきた。
昼。
窓から太陽光が入り壁に当たっている。丁度いい角度なのか虹色に見える。両目は大丈夫そうだ。
周りを見る。うん。病室。
複数人が寝る大部屋ではなく、僕専用の個室らしい。
そしてさっきからスースーと寝息を立てている娘が1人。
僕が寝るベットの横に椅子掛け、壁に背を当てている。
腕を伸ばせば届く範囲なので、ゆっくり、音を消して左腕を伸ばす。
人差し指でエレナの頬をつつく。
やっこい……可愛い……。
ガチャとドアが開いた。
普段の僕ならば足音を聞き逃す訳ないのだけど……夢中になりすぎた。
こうして僕は寝ているエレナの頬で遊ぶ『やべぇ奴』としてアルターに見られた。
「元気いいですね……。調子だと病院食もいらなそうですね……」
「待ちたまえ大尉。これはだな、僕の心臓がはっきり動いているのが調べるために行った訳で……後ろめたい気持ちは微塵もないんだ。あと、病院食は要らないとは『ぶっつけ本番、固形食』の話か、『食わせる飯など無い』の2通りの解釈ができるのだけど、どっち???」
早口で僕は言った。よく噛まずに言えたなと少し感心した。
「後者です。…………。まぁ、それはさておき……」
大尉は僕のベット、脚の方に座った。
「おかえりなさい、少佐。信じてましたよ」
拳を突き出してきた。あぁ、そゆことね。
「お待たせ。さぁ、明日からビシバシ働くぜ」
カツンと合わせる。
アルターと少し話をした後、「ダリウスについての報告をしたいから」と言うことで、彼の事を話した。
悪魔の実の能力者なのだろうけど『体から様々な虫を出す』、『体の一部を鉄のように硬質化させる』などなど……。
例えばムシムシの実の能力ならば、カテゴリーが固定されるはずだ。なんともイレギュラーな存在……。
それとウイルスの完成は2年後完成の目安……。
一貫して『高温』に弱いのだけど……対策するだろう……。
奴に勝つとしたら僕には何のカードがあるのだろうか……。
今の六式もより極めないといけないし、そもそもあの刀すら抜けていない……。
エレナが起きないように小言で伝え、大尉に報告書を作ってもらった。
大尉に僕が何日寝ていたのかを聞いたら、13日と返って来た。
カレンダーで確認すると現在、年終わりの数日前。鐘は鳴らせなさそうだ……。ガープ中将、ごめんね。
「……よし。これで私は行きますね。……少佐、貴方が倒れ血が足りなくなった時ですが……エレナが貴方に貧血で倒れるほどに……ゥッッ……。いえ、なんでもありません。ではまた……」
アルターは立ち上がり、軽く頭を下げるとこの部屋を後にした。
なんだアイツ……言葉を濁すように言って……。まぁいいか……。さて続きだ続きだぁ!!
「だぁ!!!お、起きていらしゃいましたか……」
振り向いたらエレナの目が開いていた。これは一種のホラーだよ……心臓が痛い……。
「大尉とお話している途中で……。……お元気そうでよかったです」
「あははは……何とか生きてるわ……ぼく。……なんか悪かったね……、血をくれたんだってね。ありがとう」
僕はエレナに頭を下げる。
遠のく意識の中、『血が足りない』と誰かが言っていた。
彼女は無理をしてでも僕の命を紡いでくれた……感謝しかない……。
「あ……あたし、キミのこんな姿なんて見たくないよ……。ねぇ……海軍やめない……?……そう、いっその事転職してさ、ゆっくり生きるのも……いいのかな……って……」
悲痛──
今のエレナにはその言葉が嫌になるほど似合っていた。
だけどダメなんだ……。僕には……『やるべきことが1つ増えてしまったから』。
「ごめん、それは出来ない」
断言した。軟弱なエレナの言葉を、刀で二分するかのように。
そして僕は笑ってこう続けた。
「なに弱気になってるんだ、未来の大将!!僕はエレナが大将に行くまで僕は決して死なねぇぜ!!!!」
海軍本部、とある病棟の1室。
背を丸め嗚咽する少女と、その背を摩る少年。
窓から入る眩しい光は、少年の宝物のピアスを煌びやかさせた。
◇◇◇◇
リハビリと味の薄い病院食に愚痴を吐き、4日が経った。
赤イヌが焼いてくれた横腹は、力を込めるたび激痛が走る。
そこは未だ赤黒く、当然だけど包帯が取れずにいる。
そんな中、僕ができる仕事といえば……
「はいどうぞー資料ですー」
資料配り。医者からは『内臓が癒着するから痛くても動け』と言われ、この仕事をしている。
臨時会議。将校を集い、とある男についての議論がなされているのだ。
配り終わり、僕は後列の席に座る。
相変わらず横腹は痛ぇが、何とかなっている、が……冷や汗が尋常じゃねぇ程かいている。
視線を上座に移す。
そこには3大将と元帥が座り、大きいホワイトボードの前にブランニュー大佐がこの件について説明している。
その議題は『環形のダリウス』──
資料を見る。
彼の経歴が初めにあり、古新の顔(新しい顔は僕の証言で、似顔絵捜査官が書いてくれた。メッチャ似とる)。
目的とウィルスについて……。
この資料のほとんどが僕によるもの。結構いい働きをしたのでは??????
ブランニュー大佐の大きな、そして聞き取りやすい声で会議は進行する。
……まぁ案外、ガヤガヤしている。抜け出してもバレなそうだ……。
ふと、隣の開いている席に誰かが座り込んだ。
匂いでわかる。アインさんだ!!!
「お、おひさしぶりです……アインさん」
「うん、そうだね。ゼファー先生と海賊狩りに出ていたから……半月ぶり?」
ニコりと笑みを浮かべて返してくれた。うれしい
「海賊狩りですか……どうでしたか?」
「えーっと……3億が5人……8億が1人……。1億以下が38人。って感じ」
可愛く言っても惨いんですけど……。
……まぁアレか……。ほとんどジジィの成果なのか……。
あの義手もまだ未完成なのによくやるわ……。
「それはそうとゼラ君……よく生きて帰ったね……。知らせを受けたときは……もう……」
「なんとか生きてます……ジジィはどんな感じでしたか……?」
カープ中将の隣に座るゼファーを見る。
資料をただ見つめ、腕を組んでいる。
「ゼファー先生は『そんな事でくたばる男じゃねぇよ』だって……。ビブルカードを持っていないのに断言するなんて……よっぽどキミを信頼しているんだろうね」
「そうか……」
何故か涙があふれてきた。
ポロポロと落ちる雫を手のひらで受け止める。
何故か苦しくなって、背を丸める。
いくら拭っても拭っても涙が溢れて止まらない。
声を必死になって殺すが息が詰まる。
ガサゴソと音を立て、前の将校たちが僕を隠すように詰めて座り直した。
「おい!!ブランニュー!!こっちまで声が届かねぇぞ!!!」
「元帥!!指名手配書を作成した方がいいのでは!?!?」
「否!!この件はもっと慎重にあるべきだ!!!」
僕の鳴き声を掻き消す様に、前方から声が響く。
「……皆んなキミが大切なんだよ……。今はゼラ君の部下も居ない……。気が済むまで泣きな……」
口に手を当て、嗚咽を漏らし机に伏せる。
そんな僕をアインさんは抱き寄せた。
言葉無く、ただそっと。力強く。
お疲れ様でした。
後書きで書くことは特に有りませんので、これで終わります。
ここまで読んでくださってありがとうございます!!
ではまたー