『黒腕』の孫として転生したんだけど……   作:赤い靴

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第19話 綻び刀

 サンダーソニアの変質させた髪による攻撃。八岐大蛇を紙絵で避ける。

 しかし相手は見聞色の覇気を使える様で、適格に僕に向けられる。

 その都度、刀で対応していく。

 

 自らの攻撃が姉/妹に当たるのが恐ろしい余りの判断なのだろう。

 八岐大蛇を使用してから、二人の息が合わなくなった。

 マリーゴールドは姉の猛攻撃の所為で斧槍を満足に振れないらしく、サンダーソニアから距離を開けていた。

 

 僕にとって満足のいく『スキ』であった。

 月歩と剃を使い、素早く空中に突き進む。

 

「わざわざ空中に…!!何か策が…?いいわ、乗ってあげる!!」

 

 七つの頭がコチラに向き、一斉に迫る。

 大きく開かれた顎は、鋼鉄の様に石をも砕く。

 

 シラフの僕ならばこの行動はとらないだろう。採算が合わない。リスクしか無い。

 己の身を犠牲にして彼女の攻撃を誘う事は無い。

 だが今は違った。

 祖母が遺した刀。綻び刀があるのだ。

 

 溢れる力と、削れていく体力。

 短期決戦で駆けぬくしかない!!

 僕はまだ消えぬ推進力に身を任せ、納刀する。

 狙うは八岐大蛇。その七つの頭だ。

 

「酒は無いが……スサノオの様に行こうじゃ無いか!!」

 

 標的を定めた蛇頭は放物線を描きながら突き進む。

 一つ一つから放たれる殺気を感じつつ、目を閉じ集中した。

 

「ここか!?」

 

()()()()()()()()()()

 殺気の行く末。その軌道を。

 それに放たれた抜刀は、黒紫のオーラと共に七つの蛇の頭を容易に切断した。

 

 目を開く。

 地に落ちていく蛇頭は、能力者本人の髪色である緑色では無く黒色であった。

 武装色で硬化した為だろうか。それから一秒もしない内に元の綺麗な髪色に戻り、ひらひらと舞落ちていく。

 

「ッツウ…!!??これは……!?」

 

「そんな…ソニア様が……」「ありえないわ」「どうなっているの…!!!」

 ギャラリーから戸惑いの声が上がる。

 皆が驚愕しているのだ。女ヶ島、アマゾンリリーの女帝。その両翼の一つ、その切り札が容易くいなされたからだ。

 

 地面に着地し、マリーゴールドの元に素早く駆ける。

 

「姉様の髪を…!!よくもッ!!」

 

 サンダーソニアよりも強烈な武装色を纏わせた斧槍を、僕の頭部に向けて振り下げる。

 左腕に鉄塊と武装色を纏わせ、その一撃を受け止める。

 ダメージはほぼ無いに近いが重量(ウェイト)差が有る為に、勢いは消せず後方に激しく飛ばされる。

 しかし腕と斧槍が触れる瞬間、豆腐に包丁を入れる様に刃元を切り捨てた。

 

「ソニア姉様ッ無事!?」

「ええマリー…。あの刀……気を付けた方が良いわ……。()()()使()()()()……!!八岐大蛇を封じられたわ……!!!」

「……!?海楼石製の武器…?」

「判らないわ……ッ!!!構えてマリー!!まだ立ち上がるわ……!!!」

 

 砂煙。その中にフラフラと立ち上がる人影が一つ──

 

「ソニア!!マリー!!そなた達…何をやっているのじゃ……!!!」

 

 闘技場の玉座。そこで眉間に皺を寄せるボア・ハンコックが二人に言う。

 

「姉様!!」

「ご、ごめんなさい姉様!!」

 

 マリーゴールドは手に持つ柄を捨て、シュボッと音を立て自身に炎を付ける。

 その炎は全身に回りる。

 

「蛇髪憑き……炎の邪神(サラマンダー)!!!」

「マリーは正面、私は背後を狙うわ……」

 

 夜の闇がマリーゴールドの炎により(はら)われる。その事により、少()の全容が明らかになった。

 

「「なっ……!!」」

 

 闘技場にいる全ての人が絶句した。

 仄暗く忌々しいオーラに全身を包まれ、身体のあちこちから大量の血を流す怪物が居た。

 光を飲み込む漆黒の刀が元凶だと、全ての人間が気づいた。

 そして同時に誰もがその怪物を倒せないと察した。

 

 怪物は姿勢を低くし、刀を鞘に納める。

 ボウッッ!!!と炎の様にオーラが立ち込める。

 

「ソニア姉様…!!」「マリー……!!!」

 

 二人はその殺気に怖気付き息を呑んだ。

 

 そして怪物による一撃が放たれようと──

 

「ほう…その刀がオマエを操っているのだな?実に哀れな()()よな……!!!」

「「姉様!!」」

 

 二人の前にハンコックは玉座より出で、ゼラに対し皮肉を言う。

 抜刀に合わせるように女帝は、その軌道を変えるためにゼラの細い腕を蹴り上げる。

 

 バリバリ!!バリ!バリバリバリィ!!!!

 

 およそ、この世のモノの衝突では無い音を盛大に鳴り上げる。

 ゼラの斬撃は上空に打ち上げられ、分厚い雲を美しく二分した。

 

「覇王色の覇気か……。しかし、わらわの方が上手(うわて)だったようじゃな」

 

 体勢を大きく崩したゼラの頬を、ハンコックは両手で押さえつける。

 

天使の口づけ(エンジェルキッス)

 

 その片側の頬にハンコックは唇を当てる。

 彼女の美貌によって編み出された『キスされた()()()()()()()()()()()()()()()(わざ)

 漆黒の刀に自我を奪われたゼラに対しても有効だった。

 

「さて……」

 

 ハンコックは闘技場の観客席を見渡す。

 先程の衝突が原因だろうか。1/5ほど戦士や市民達が失神していた。

 事態を収拾するために彼女は嘘を吐く。

 

「この者は我が城の宝物殿、その奥に封印されているゴルゴンの呪い。それを打ち壊す為に女ヶ島に侵入した海兵だったのじゃ!!しかし呪いはこの者を蝕んだが……今この瞬間消え失せた!!これで、この国の脅威は本当の意味で無くなったのじゃ!!!!」

「姉様……これはどう言う訳で……?」

「話を合わせるのじゃ、ソニア、マリー。……この者からは聞きたい事が増えたのじゃ……!」

「「は……はい」」

 

 サンダーソニアとマリーゴールドは即興でハンコックに合わせる様に、あたかもゼラが悲劇の勇者かの様に物語った。

 会場は『ゴルゴンの呪いに打ち勝った』として大いに沸いた。

 

 ハンコックはゼラの石化を解こうと振り変える。

 だがその身体は石化が『強制的に解かれ』ており、仰向けの少()の胸には、先の刀が納刀した状態で収まっていた。

 

 その後、血だらけのゼラは救護班によって医務室に早急に運ばれた。

 闘技場。その玉座にて少年の海軍のコート。そのポケットから引っ張りだした『手紙』を持つニョン婆は、この状況をただ静かに見守っていた。

 まるでこの先の未来を案ずるかのように。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 陽の光によって目が覚めた。

 いつもの海軍の病棟では無いのだが……。

 

「またこれか……」

 

 幾度となく病室のベットで目覚めるのも慣れた。

 上体を起こし窓から外を見る。太陽の位置が低く、徐々に昇っている。

 朝。しかも早朝とみた。

 

 そのまま視線を右手に移し、握りこぶしをつくる。

 その状態で闘技場での感覚を思い出す。

 

 一部分。本当に指だけなのだけど、武装色の覇気を纏えている。

 

「……。よし……」

 

 安堵の息を漏らす。

 自分は確実に強くなっている。そう確信できたからである。

 エースの救出。それはつまり、白髭と交わらなければならない。その為には覇気の使用は最低条件と踏んでいる。

 

「…あれ?僕は確か……宝物殿にて盗みを働いた逆賊という設定だったけど……」

 

 今さら気づく。なんかやけに高級そうな部屋に居た。

 そういや記憶も曖昧だ。

 綻び刀を抜刀出来た辺りから……ん?

 

「刀どこいった!?やべぇ!!笹食ってる場合じゃねぇ!?」

 

 布団から飛び起き、近くに掛けてあったいい感じのローブを着、ドアを開け廊下に出る。

 あの刀は僕を飲み込んだ。そのことは理解している。

 飲み込まれた僕が言うのはいささか可笑しな話だが、アレは手放しにして良いモノじゃない。

 見つけなければ……。僕同様に誰かが飲まれる前に……!!!

 

 武装色の使用も可能(練度最低だが)に成ったおかげか、見聞色も取得できたようだ。

 この先の廊下をまっすぐ行き、階段を上った先。その先に誰かの気配を感じた。

 

 焦る焦燥を感じつつ、しかし冷静に僕は全力で駆け抜けた。

 この先のドアだ……。頼む無事で居てくれ……!!

 

 バン!!!と勢いよくドアを開けた。

 

 大丈夫か!?という台詞は、その人物を見て消滅した。

 なんなら震えてきた。いい意味でも、悪い意味でも……。

 

 ボア・ハンコックだ。

 

 大きな湯舟。大浴場とも言うのだろうか。その湯に肩まで浸かっていた。

 そう僕は、彼女の気配を感じ無頓着に風呂場まで突っ込んで行ってしまったのだ。

 

「ほう…?丸一日寝て元気に成ったではないか?ゼラ()()殿()?」

「……あ、あ(察)。お陰様で……。ところで僕なんですが……また闘技場行きになりませんか?」

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 僕の正体はニョン婆から聞いたとのことで、当然の事ながら僕の性別が男という事実もバレた。

 もういい加減フリル付きの服も飽きていた所だ。

 

 僕は軍服に着替えなおし、蛇姫の自室。皇帝の広間で正座をしている。

 何故正座をしているかと言うと、僕の背後に妹二人がコチラを見ているからだ。

 穴が開きそうなぐらい。……まるでカエルの気分だ。

 あとニョン婆。何故オマエもココに居る???

 

 女帝と話して僕が医務室で丁重な治療を受けていた理由が分かった。

 ボア・ハンコックの計らいだった。

 右に向けと言えば右に向き、カラスは白色と言えば白くなる。

 彼女には、国民をそう操作できる力が有る。

 恐ろしいことだ。

 

「まぁよい……。で、本題だ」

 

 パサ……と僕が仕込んでいた手紙を取り出し、見せつける。

 そう、これこそ僕の切り札。『ミョスガルド聖との一方的な熱意の手紙(ラブレター(笑))』だ。

 

「なんだコレは?」

「見ての通りです……。ミョスガルド聖との手紙です」

「何故こんなものを持って来た?」

「天竜人とやり取りした手紙です。僕のような一般市民には家宝以上の価値が……

「本音を語れ」

「はい!!!!!!!」

 

 怒られた。怖いぞこの人。

 

「僕には……」

 

 口を開け重々しく続ける。先ほどのテンションと真逆な冷ややかな声で。

 

「僕には、誰にも語っていない野望があるんです……。それが──

 

 

『天竜人。その権威を地に堕とす』

 

 

 そう告げた。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 この思想に行きついたのは自然な事だった。

 僕の祖父は黒腕のゼファーともあり、やや正義感が強く育った。

 まぁそう言うが、幼少期にいつものメンバーで食い逃げをしたのは事実だが……あと飯代の横領も。

 

 しかし、前世の記憶。日本に生まれ育った僕はこの世界の……奴隷制度の意味が理解できなかった。

 人間を人間以下の『モノ』として見下す文化。それが判らなかった。

 

 サボの一件もあるのかもしれないが、僕が目指す平和には奴隷の存在は要らない。

 

 その為、僕にとって天竜人は天敵なような存在だった。

 しかし転機が訪れた。ミョスガルド聖である。

 彼は奴隷制度に違和感を持った『異端者』だった。僕はそれを、彼の優しさに付け込んだ。

 

 その結果として、ミョスガルド聖の考えに耳を貸す天竜人が一人、また一人と増えていった。

 そして僕の浅はかな計画が幕を開けた──

 

 その事を言った。正直に。流石に転生あたりは話がめんどくさくなるので隠したが。

 

「……もし、天竜人同士の対立が起きれば、真っ先に殺されるのが奴隷だ。それを食い止めるために、この島。女ヶ島が地理的に最高の場所なんだ!解放した奴隷を女ヶ島に匿う。ここは凪の帯(カームベルト)のど真ん中!幾ら海軍の船底に海楼石が有っても、無理な追撃は避けられるはずだ!!」

 

 僕が手紙を持って来たのは、『ボア・ハンコックが天竜人の元奴隷だった』と原作を読んで知っていたから、実行した……と言えばそうだ。

 多少、彼女の情を引くための卑しい作戦でもあった。

 しかし、女ヶ島での奴隷の匿いに関しては、最高に適した土地であるという事も事実だ。

 同時に奴隷を救いたい、という思いも本物だ、と胸を張れる。

 

 こんなバカげた話、普通ならば「無理でしょ」と匙を投げられるような夢物語だったが、彼女。女帝ボア・ハンコックは静かに聞いていた。

 

 一通り話し終わると女帝は口を開く。

 

「オマエは……他人の命の為に、己の命を差し出せるのか?」

「当たり前だ、そのために海軍をやっているからな……と、いっても悪人に差し出す命は無いですがね……」

「はたまた……可笑しな男じゃ……。その発想は『あの男』以外に出来ぬモノだと思っていたが…」

「あの男……フィッシャー・タイガーですね…」

 

「あぁそうだ……彼には……いや、この話はまた後で話すとしよう……。しかし……しかしだゼラよ。オマエは天竜人を地に堕とそうとしておるが……それは世界政府にとっては敵対行動だろうに…。『その時』が訪れた時、ゼラお主はどうするのじゃ?海軍を続けるのか……?」

「僕は……」

 

 ふとジジィを思い出す。

 ジジィも映画路線では、正義に失望し海軍を辞め、ネオ海軍を設立した。

 ならば僕も──

 

「自分が信じた正義を貫く」

 

 ほぉ、とハンコックは感嘆を漏らした。

 

「そうか、そうか……。どの時代も愚か者は生まれるのだな……。……。気に入ったぞゼラよ。環形のダリウスの件、請け負うこととしよう」

「本当!?まじか!よっしゃあぁあ!!これで凪の帯(カームベルト)の捜索範囲が段違いに拡大したぞ!」

 

 歓喜の余り両手を上げる。

 

「そしてゼラよ」

「……あはい。まだ何か……」

「…もし……お主の行く道により、この世全てを裏切ろうとしても、わらわは……九蛇海賊はお主の味方だと心しておけ。……わかったな?」

 

 ハンコックの手には僕の刀が有った。

 アレから保管してくれていたのだろうか?

 

「……ありがとうございました」

 

 ハンコックの放った一言は確かに僕の心臓を確かに貫いた。

 全てを裏切る。……そうだ、そうだよな。僕がやろうとしている事は大罪だ。

 きっと僕の部下や周りにも迷惑を掛ける事になるだろう。

 だがそれも十分承知している。

 

 そうとも。その時が来たら僕は…この世界を売ってやる。

 

 そして僕は、綻び刀に手を伸ばした──

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 その後僕を凪の帯(カームベルト)で停泊している軍艦に返還(?)し、モモンガ中将に環形のダリウスの捜索を了承した事を伝えたボア・ハンコックは、そのまま女ヶ島に帰還した。

 治療を受けた身ではあるが、出血が酷かった所為か、海軍本部への帰路は眠ってしまった。

 

 そして──

 

 

 暇。どうしようもなく暇だった。

 

 海軍本部、その名医に身体を診てもらった。

 ほとんどの骨はヒビが入っており、筋肉もズタボロ。

 横腹の傷も再度開きかけていた。

 今なお痛みを感じないのは、一時の神経障害だと言う……。

 

 医者からは一週間の絶対安静を受けた。

 ただ今五日目──。あと五日も休まなければならない……。

 

 僕の部下であるアルターとエレナは任務中だ。

 

 故に暇なのだ。

 

 だからこうして、いつものベンチにて海風に当たって菓子を食っている。

 美味しいと有名のクッキーを口に運ぶ。

 柑橘類の皮を入れているのだろうか。とても爽やかな風味だ。

 そういえばダリウスも、柑橘類がどうとか言っていた……。少し洗ってみるか……。

 

「とう!」

「!!」

 

 背後から気配を感じ、上体を右に避ける。

 

「あれ?避けられた…?」

「あ、アインさん……。非番ですか……?」

「そうそう」

 

 手に包めた新聞紙を渡してきた。

 

「後ろから三ページ目ね」

「?」

 

 ペラペラとめくり、該当するニュースを見る。

 

「おお!!」

 

 片隅。普通なら見逃すような小さな枠にアルターとエレナが写っていた。

『大将赤イヌの下に活躍』と書いてある。

 うわ……大変だな……。

 

「そうとキミぃ~あの女帝を手駒にしたんだって???」

 

 さも当たり前の様に隣に座るアインさん。

 心臓に負荷が掛かるのでヤメテくれませんか……。

 

「本当にマグレで……。天が味方してくれました……」

「ほ──。でも、その一生懸命さに惹かれたんじゃないのかな~?」

 

 頬に貼られた絆創膏に触れながら続けた。

 

「……痛覚、無いんだってね……」

「今だけですよ。時期治ります!!」

「ダリウスに躍起になりすぎるのもね……少しはしっかり休みなよ?」

「りょーかいです」

 

 

 




お疲れさまでした。
いかがでしたでしょうか?

ゼラが持つ刀の正体は一体……

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