『黒腕』の孫として転生したんだけど……   作:赤い靴

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23話です。
誤字脱字など有りましたら連絡頂けると嬉しいです!!


第23話 遠足③

 降り止まぬ雨は(シケ)となり、雷が刹那を青白く照らした。

 僕の後方では大砲や銃声、叫ぶ声が絶えず聞こえた。

 

 体勢を立て直した僕らは、オーラン兄弟に対し構える。

 そして──

 

「GO!!」

 

 イグアスの一声で一斉に駆け出し、リチャードに拳を振るう。

 武装色はまだ甘いが、ロギア系の実体は捉えられる。

 多少なりとも圧を掛けたいのだ。

 僕の心はまだ…折れていないと…!!

 

「来い俺の仇…!!」

 

 そう言ってリチャードは霧に変化した。

 僕の内ポケットに隠す海楼石を用いた小銃は使えない。

 その身体を現した時ではないと効果が薄い。

 なんなら、より警戒されてしまう。

 

 濃霧と横殴りの雨の中、立ち止まり集中する。

 

 霧をむやみやたらに殴っても埒が明かない。

 本体を狙わなければ意味が無い。

 

 ロギア系に言える事だが、凡その能力者は()()()()()()()()()()()()()()()()

 それは似たような悪魔の実。モクモクの実のスモーカーさんを原作で履修済みだからなぁ!!!

 故に彼らロギア系は、覇気によるカウンターに弱い。

 

 だから僕は立ち止まる。リチャードに攻撃してもらえる様に──

 

「半歩下がれ!!!野良犬!!!」

 

 無意識にその言葉通り動いた。

 鼻の先をブンと、風を切った。

 

 弟、トーマスの一撃だろう。イグアスの声が無ければ当たっていた。

 肝が冷えると同時に、自身の見聞色の無さを痛感した。

 危うく死んでいたかもしれない……。

 

「テメェの相手は…この俺だ!!!」

 

 視界が悪いので音による憶測だが、先輩はトーマスに一発重いのを入れられたらしい。

 その後、バギィッと大きな木音と共に食器が床に落ちる音。

 どうやら船内に誘導?ようだ。

 

 カチャ…!!

 

 後方から銃の構える動作が耳に入る。

 一発、脚に喰らってはいるが……撃たれると分かっていれば避けるのは容易い。

 

 放たれる銃弾を紙絵で避け、最速で拳を元凶に叩きつける。

 銃が損壊する気持ちの良い音と共に、辛酸をなめたようなリチャードの声が上がる。

 

 クリーンヒット!!良し!!!

 

「良い…反応速度だな……。思わず面食らったよ……。しかし、コレはどうかな……?」

 

 濃霧が薄くなる。

 流石に大技を打つには、濃霧のアドバンテージを捨てなければ出来ないのか…?

 視覚が確保できるので、僕としては嬉しいが……

 

 霧が完全に消えた。

 僕の目の前のリチャードは両手に剣を持っていた。右手に針剣、左手は……見えない!?

 右手をコチラに構え睨む海賊に対し、僕は口を開ける。

 

「おいおい……。さっきの霧が有った方が良かったんじゃないか??」

「アレは弟と組む際の…一時のモノだ。トーマスが居ない以上…自身の能力を制限するのはアホがやることだ」

「へー。ロギアも大変そうですね……ッッ!?」

 

 イヤな殺気を感じ、横に大きく逃げた。

 ボォッ!と空を割く音の後、リチャードから一直線に炎の道が出来た。

 

 キリキリの実の能力に炎!?

 カラクリが全く分からない…!!

 

「行くぞ!海兵ぃ!!」

 

 続いて左手を振るった。

 アドリブで避けるが、頬に浅い切り傷が出来た。

 見えない武器とでも言うべきか……。リーチを把握できないのは、かなり厄介だ。

 

 炎を放つ針剣と、見えない武器。

 これも悪魔の実の能力なのか…!!

 

 リチャードは身を屈み針剣を構える。

 それに応じ、僕は腰に下げる綻び刀に手をやった。

 

 数秒の沈黙。その後、一つの轟雷によって破られた。

 

 迫る針剣の鋭い一撃を抜刀した刀で弾いた。

 吹けぬけた猛烈な熱波。

 直撃を避けれたが、直に当たっていれば焼け焦げていたかも知れない……。

 

「その刀を抜いた時だけ……覇気が何十倍も増加している…。妖刀?…その代償は…寿命か?」

「うるせぇ!!」

 

 そのまま押しのけ、刀を仕舞う。

 月歩と指銃を組み合わせリチャードに追撃するが、見えぬ武器で弾かれてしまう。

 

「このままゆっくり殺しても良いが……あちらは劣勢の様だ……。地獄はまだ健在のようだ……」

 

 ミシガン中将の事だろう。

 あの人は、かってジジィと共にしたと聞いている。

 なら問題ない。こんな程度で負けるわけがないからな。

 

「おりゃあ!!」と足元から声がした。

 それと同時に床板を突き破ってトーマスが現れた。

 

「すまねぇ兄者ぁ……オイラ、ダメだった……」

「やっとくたばったかゴミが…!!!」

 

 血で頭部が染まったイグリスが、穴から甲板に飛び移るなり、ダルそうに言った。

 

「まだ死んで無かったのか……野良犬……」

「ええ……お陰さまで……」

 

 袖で顔に血を拭うイグリスに僕は言う。

 

「右手の針剣は、直線状に熱波を繰り出します。溜め…構えの姿勢が合図です。…左手は、能力で武器を隠しています。恐らく大剣の類かと……」

「……分かった」

 

 僕らは再び構え直した。

 

「……。トーマスの雪辱、貴様らの首をもって晴らしてくれよう……!!」

「行くぞ!!」

「はい!!」

 

 再びイグアスの声と共に駆けだした。

 いつの間にか、空は青空をチラつかせていた。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 二対一だからだろうか。

 リチャードの攻撃は、武装色と鉄塊を混ぜれば耐えれる程度になった。

 しかし、構えからの熱線?の攻撃はやはり致命的で、的確に避けていく。

 

「クソッ……!!」

 

 腹を目掛けて拳を振るう。イグアスがヘイトを買っていた為、マトモなダメージを与えられた。

 

「畳みかけるぞ!」

 

 イグアスの息に合わせ、攻め続ける。

 リチャードは、器用に武器で応戦している。

 しかし確実にコチラが押している…!!

 

 素早く柄に手をやり、抜刀する。

 

「抜刀、一文字!!」

 

 横一線の紫の美しい残光と共に、リチャードの血が宙を舞う。

 分かってはいたが……急速な疲れに襲われる。

 

 だた刀を抜きガードする。覇気を纏い攻撃する。

 この二つの覇気の消耗具合は、天と地ほどに乖離している。

 

 綻び刀により攻撃は、次でラストになるだろう……。

 

「浅ぇぞ!!もっと踏み込め!!」

 

 と、イグアスの激励を右耳から左耳に移し、コートの裏に手を回した。

 対能力者用小銃。ジジィのお古、それを僕が改造したモノだ。

 

 リチャードの肩を狙い一発打ち込んだ。

 その弾は僕の目論見通り、半分霧と化した身体によって擦り抜けていった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()……俺を射貫ける訳が無ぇ……!!」

 

 新世界の戦いのイロハは、青キジから教わった。

 悪魔の実を食べた海賊。特にロギア系の能力者は、熟練の覇気使いを忌み嫌う。

 特に自身にダメージを与える武装色使いが恨まれやすい。

 

 同時に、自身よりも覇気が弱い相手を完膚なきまで叩き潰す。

 それは、彼らは新世界をある種、神聖視しているからだ。

 新世界はワンピースを求める海賊の憧れの海であり、ルーキー時代に苦汁を飲み込んだ思い入れの海でもある……と言っていた……。

 

 先程リチャードが霧と化して銃弾を避けたのは、覇気の程度や海楼石の有無を確かめる生存戦略である。

 だが今回の場合、その行為が仇となった。

 

「野良犬!避けろ!!」

 

 リチャードは再度、針剣を構え屈む。渾身の一振りを繰り出す為、より大きく力を溜めている。

 それに対し僕は、銃口を下げずにいた。そして、二発目を撃ち放った。

 

 海楼石製の銃弾は確かにリチャードの脚に命中した。

 しかし、突き刺すレイピアは止められず僕の左肩を貫いた。

 

「熱ッッ!!??」

 

 あの熱線は防げたものの、高温にさらされた針剣はジュゥウと音を立て血を焼いていた。

 急いで距離を取り、無理やり剣を引き抜く。

 

「お前……俺を……誘ったな……!!」

「弱者なりの……工夫だバカ…!」

 

 特殊な弾丸が効いている為、左手の大剣が露わになる。

 完全に能力を封じ込めた。あとは──

 

「海賊リチャード。今すぐ武器を置き、その場で伏せろ……。抵抗した場合、弟を殺す…!」

 

 イグアスは、その場に転がっていたサーベルを拾い上げると、未だ眠るトーマスの首元に刃を向けた。

 それを一(べつ)すると、武器を手放した。

 

 それは、僕らの勝利を意味した──

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 

 ミシガン中将が乗る軍艦は、確かに多数の海賊に襲われた。

 しかし、海兵に負傷者は多数いるが、終始圧倒していたらしい。

 

 その後、甲板上で海兵たちは、適当に声を上げ、武器を鳴らし、空砲を撃っていた。

 リチャードを僕とイグアスで捕らえる為に、一芝居うっていた……とのことだ。

 助けに来てくれよ……。

 

「それで……いい勉強になっただろう?」

「痛い思いしましたが……。…僕は覇気以前に、技術やフィジカルを磨かなければいけない…と分かりました」

 

 僕はそう言うと、後方支援を行っていたアルターとエレナも続いた。

 二人とも、僕と同じように明確な弱点・不足している事を述べた。

 

 僕ら三人にとって新世界の海は、自分を見つめ直すいい機会になった。

 それと同時に、「まだ強くなれる」と確信もした。

 

「いいことだ。この反省は今後に活かせ!ガープも喜ぶぞ。さて、これで楽しい遠足の時間は終わりだ!!貴様らを海軍本部まで送る!!それまで、甲板でも磨いていろ!!」

 

 こうして、人生初の新世界の海は幕を閉じた。

 アインさんと肩を並べるのは数年先だな、と思った。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 五日後──

 

 今は稽古先の大将や中将が不在の為、一人で軍艦を殴っていた。

 分厚い装甲は、ほんの少しだけ歪み始めた。

 しかし、相変わらず手が痛い。

 

 百回殴った後は走り込みや、懸垂など基礎トレを行う。痛みと腫れが引いたら、軍艦バッグ。

 この繰り返し。

 

「おー……やってんなー。相変わらず……忙しいヤツだな」

 

 この声は……。

 

「青キジ…さん……。会議は終わったんですね??」

「なんだ?その…あたかも『抜け出してきましたね』と、言わんばかりの顔はよ」

「あぁ、終わったのならダイジョブです。僕忙しいので」

「まったく…会議に出席しなかった、オマエの為に資料を持って来たのによ…」

「え”え”っ!!??聞いてませんが!!??」

 

 どういう事だ???僕には何一つアナウンスはされなかったぞ…!!!!

 

「ま、嘘だがな」

「……。死んどけ」

 

 良かった。変な汗が出た。

 肝も冷えた。最悪の気分だ…まったくもお……。

 

「で、本題よ」

 

 青キジが数枚の紙を差し出した。

 

南の海(サウスブルー)のマラカシ島…?あぁ、インペルダウンの南部…凪の帯(カームベルト)を越えた所ですね……。ここに何が…?」

「環形のダリウス……。ソイツを知る人物が居る所だ……。なんでも、その海域の海兵には一切口を開けんらしくてな……。ゼラ、オマエよ…会いに行って来いさ」

「???偉大なる航路(グランドライン)から南の海(サウスブルー)ですよ!?リヴァース・マウンテンまで戻るんですか??半年はかかりますよ!?」

「……はぁ。オマエに最近、良い『脚』が出来たじゃないの…?女帝ボア・ハンコック。その船で凪の帯(カームベルト)を突っ切って貰えばいいじゃない?」

「良くない良くない。僕、石化。OK?」

「センゴク元帥の命令だ…。やってこい」

「青キジさん……。ソレ、パワハラって言うんですよ????」

「世界の危機にパワハラは関係ねぇよ……。一応、モモンガ中将が着くようだが……前回同様、凪の帯(カームベルト)のど真ん中で停泊されるだろうな……」

 

 ポンポンと木箱の汚れを払い、青キジは座った。

 

「ダリウスと関係を持った海兵は、今はオマエしかいねェ……。あの婆さんも語らざる負えないだろうな。いざと成ったら、その傷を見せてやれ…。使えるものは全て使え……いいな?」

「……。アルターとエレナとは…今回も別ですか……?」

「好きにしろ……。だが、その二人の同行を九蛇が許すかどうかは……知らん」

「じゃあ……連れていきます。僕がこうして生きているのは……あの二人が居たお陰ですので」

「そうだな。ガープさんには……オレから言っておこう…」

「お願いします」

 

 その後、短い会話をし再び軍艦バッグに移った。

 明日の早朝に出航とのことで、九蛇には連絡済みだと言う。

 

『キミの負けだ。再び会える事を願っているよ……』

 

 ふとダリウスの言葉が脳裏によぎる。

 

「お前は今、何処で……何を考えているんだ……?」

 

 その疑問を晴らす様に、鉄の装甲を殴る。

 次は負けない。

 そう思いながら。

 

 

 

 

 

 

 




これで「ちょっと新世界編」は終わりまして、再び本線へと……。

ダリウスを知る婆さんは、何を語ってくれるのでしょうか?

次回も読んで頂ければ嬉しいです!!!

蛇足は有りません。

では、また~
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